おぬごん さんの感想・評価

4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態：観終わった

京都アニメーションここにあり

京都アニメーションの新作は、高校の吹奏楽部を舞台にした「部活モノ」
部活を題材とした京アニ作品は「けいおん!」や「Free!」などもありましたが、今作はそれらとは毛色の違う、スポ根あり複雑な人間関係ありの、ガチな部活モノとして描かれました

この作品の良いところは、作中の「緊張感」がこちらに伝わってくるところですね
というかこの作品、緊張感のあるシーンがやたらと多いんですよｗ
顧問の先生の指導、オーディション、大会、そして恋愛…
これらのシーンそれぞれで、キャラの手先や表情、台詞、時には背景や手前のキャラの動作なども駆使した、緊張感の演出が印象的でした
特に最終回なんかは、もう30分緊張しっぱなしでした

また、入り組んだ人間関係の描き方も良かったですね
{netabare}
特に面白かったのは、再オーディション
2人に演奏させ、「良かった方に拍手をさせる」という方法で部員たちに選択権を与えた滝先生
挙手や投票じゃなく集計が困難な拍手な時点で、滝先生の憎らしさが窺えますねｗ
どちらかが圧倒的多数ならそれはそれで良し、僅差なら本編同様に香里に意志を聞く、という意図でしょう
ところが、部員たちは4人を除いて拍手をしませんでした
このシーンからは
「ずっと頑張ってきた香里に実力通りの評価を冷徹に下すことができない」
「他の人が拍手をしていないのに、自分の意志を示すことが出来ない」
「音を出して賞賛の意を表明する拍手は、挙手と比べハードルが高い」
などなど色んな複雑な心理が窺えてきて、非常に面白かったです
まあ若干胸くそ悪い感じではありましたけどねｗ
{/netabare}

演出の話が出ましたが、けいおん!の監督で知られる山田尚子が演出（1話は絵コンテも）に入った1,4,13話は、特にキャラの細やかな描写に力が入っていましたね
特に1話と最終回の13話は、入学式と大会当日、全く違う日なのにどこか重なるような、対称的なような造りになっていて、唸りました
また祭の中で変化する人間関係を描いた8話も、印象的な演出が相まって白眉でした
こちらは藤田春香という方が演出・絵コンテを担当されていたようですが、これからが楽しみな方です

キャラは結構、等身大の高校生な感じでしたね
主人公の久美子は、1話のポニーテール姿がめちゃくちゃ可愛かったのですが、普段は…まあ最終回でまた見れた時はテンション上がりましたけどねｗ

キャスト面でも京アニらしく、メインを若手で固め、サブを実力派で固めていました
メインキャストの演技は良かったと思いますが、唯一、久美子のモノローグだけはやや棒読み気味だったかなあと思いました

楽器の描写や音楽面での音作りも（素人目＆耳ですが）素晴らしく、京アニの力をまざまざと見せつけてくれました
そもそも原作選びからして、京アニらしさ全開ですからね
最近は自社レーベルで原作を募集していた京アニですが、やはり「けいおん！」や「氷菓」など、他者が選ばないような作品を名作に仕立て上げるのもまた京アニの魅力です
最近ではPA WORKSや動画工房など、一定のブランド力を持つ制作会社も増えてきました
一方で最近の京アニはかつての大ヒット連発の時期は過ぎ、やや安定期に入っていた印象がありました
しかし今作で「やはり京アニは違う」と思わせてくれました

次の京アニ作品は「Free!」の劇場版になるかと思いますが、個人的には正直見に行かないと思うので（笑）、早く次のTVアニメを見たいですね
期待しています