移住おすすめアニメランキング 13

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの移住成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年03月29日の時点で一番の移住おすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

65.0 1 移住アニメランキング1位
FREEDOM フリーダム(OVA)

2006年11月17日
★★★★☆ 3.7 (266)
1327人が棚に入れました
23世紀、人類は月に移住していた。「科学技術の研究の自由」「地球の渡航への自由」が奪われた月共和国「EDEN」(エデン)では、高度の放射能によって地球文明は崩壊したと伝わっている。一方的に与えられる自由に不満を持つタケルは、本当の自由を求める中で、EDENがひた隠しにしていたある真実に触れてしまう。

che さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

大友 克洋ではありません。

日清カップヌードルのCMとしてできたアニメプロジェクト。
なので、そこらじゅうにカップヌードル出てきますw
王道的内容なので、見やすいし面白いですよ。
時間も短いし手軽に見れるので、休日にビール飲みながら見たらいいと思うw
OPアニメーションと宇多田ヒカルの「this is love」が印象的です、かなり好きですこのOP
特に宇多田ヒカルは好きじゃないんですが、宇多田ヒカルの曲のいくつかは、何故か「未来」を感じさせてくれますw
これは凄いな~と思います。
曲から未来を感じたのは、ジャミロクワイ以来ですw
ジャミロクワイの曲は今聴いても新しいと思うし。

これ、監督大友克弘じゃないんですよ、じつはw
初期設定だけで、あとはほかの人がやってるみたいです。
電通のせいで、大友さんは降板したそうですw
にもかかわらず、あたかも、この大友さんが作ったような作風、内容。
「AKIRAの大友克洋が作った」って看板が欲しかっただけですよね絶対。
電通ってホント駄目だよね~、キライです!
だからこの国の映画って面白くないんだよ(日本ででっかい映画を作るためには電通なしでは作れないので)、電通怠慢すぎるよ、金のことしか考えてねえ奴ばっかってイメージしかありません!
そういえば、NYのタイムズスクエアのカップヌードルの看板って年間いくらぐらい払ってるんでしょうね?
やっぱ、年間1億ぐらいするんですかね?気になりますw

追記、調べましたw、タイムズスクエアのカップヌードルの看板は、日清が撤退したのでもう無いようです。
とても残念です、あの看板があそこにある事が僕にとってのTSの象徴だったんですねえ、まあ仕方ないです、調べたところカップヌードルのあった看板の広告費は月額で日本円すると、おおよそ2000万~3500万だったようです、一億は言いすぎでしたwでも高いですね~、まあそれだけの価値がある場所ですけどね。
(タイムズスクエアのカップヌードルの看板があった場所は、電光掲示板時計がありニューイヤーカウントダウンの際は世界中のTV局がそこを映してカウントダウンするので、必ずその看板はアングルに入り全世界にアピールすることができるのです。)57へぇ


こういう人にオススメ

SFの人
カップヌードルの人
王道の人
AKIRAの人

投稿 : 2024/03/23
♥ : 2

エスペランさ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

月→地球→月→地球、壮大な未来宇宙モノ!?

OVA7話として作られた作品。未来の発展した月と、衰退した地球のお話。両者がもう一方を滅亡したもののと思っていたが事実は・・・。主人公の楽天主義が非常に気持ちいい作品でした。最後の決断などもオッケー。あんまり深く考えず気楽に見れる作品となっています。(といっても政治の裏側的要素も扱っていますが。)
気になるのは特別協力の日清カップヌードル!いたるところで出てきて金(スポンサー)の力を思い出させ現実に引き戻されます。大友さんがキャラ&メカデザインですがメカはさすがですが(ビーグルなど燃えます)、ヒロインがねー、どうして一目惚れすんのかな的な。
歌は宇多田ヒカル「Tjis is love」歌詞がそぐうかどうかは別としていいかんじでした。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 3

@ねみゅ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

カップヌードルのCMで有名

カップヌードルのCMとして大友克洋さんを中心に
作られ、その後OVAとして公開された作品ですね。
見た印象としては作画のこだわりとカップヌードルですね。
作中に出てくるバイク(?)や宇宙船の細かい部分が丁寧に
作画されていてリアリティが半端ではないですね。
そして、ことある事にPRを忘れないという感じで
カップヌードルが出てきます。

物語自体は人情もので可もなく不可もなくといったところ。
個人的にはOPが宇多田ヒカルだったのがプラス点なのですが
コアを攻めるなら見ておくべき作品ではないでしょうか

投稿 : 2024/03/23
♥ : 3

84.8 2 移住アニメランキング2位
おおかみこどもの雨と雪(アニメ映画)

2012年7月1日
★★★★☆ 3.9 (1822)
9943人が棚に入れました
いまや全世界が待望する、細田守監督の最新作は「母と子の物語」。おとぎ話のような不思議な恋をした女性・花は、おおかみこどもの姉弟、"雪"と"雨"を育てることになる。「親と子」という普遍的なテーマを、人間とおおかみの二つの顔をもつ ≪おおかみこども≫ というファンタジックなモチーフで描く。いまだかつて誰も見たことがない傑作が誕生する。

声優・キャラクター
宮﨑あおい、大沢たかお、黒木華、西井幸人、大野百花、加部亜門、林原めぐみ、中村正、大木民夫、片岡富枝、平岡拓真、染谷将太、谷村美月、麻生久美子、菅原文太

魔女旅に出る さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

おおかみ?にんげん?どちらとして生きるか?それを見守るお母さん!

おおかみ男と結婚した女性から生まれた子供はおおかみと人間のハーフでした。子供は2人いて一人は活発な女の子、もう一人は引っ込み思案な男の子。その二人の子供を育てるお母さん。この三人が主人公です。小学校高学年になった少女と少年はおおかみとして生きるか人間として生きるかを決断します。それを見守るお母さん。どうなるかは実際にご覧ください。自分で道を決めることに大切さや子育ての楽しさや苦しさを観ることができる作品です。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 79

お茶 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ドラマツルギー

一人の女性が、オオカミオトコとの出会いから始まり、二人は子供を授かるが、オオカミオトコは、狼の本能なのか、寿命なのか、人間として思う事があったのか、身投げして亡くなる、そんな悲しみの只中にありながらも、残された人間と狼との間に、出来た子供を育てていく母親の物語でもあり、3人の家族の物語。

正直に言ってしまえば、この上ない悲しい物語に感じるが、本作はこの悲しさを愛で覆い尽くすかのように、家族の過酷な生き様を、本当の家に帰ったような安堵を覚えるような安心感に変換してくる。オオカミ子供を育てる過酷さ&母の強さの中に育くまれた「生きる」という中に、「シアワセ」があるという単純さを、まじまじと味あわせてくる。

観ているだけでいつ倒れてもおかしくない母の姿。オオカミ×人間の子を誰にも知られずに、ただ一人育ててゆくと決めた母の姿は、何よりも美しい。たが現実という名の風は、容赦はしてくれない。オオカミの姿を誰かに見つかってはいけない、ただそれだけでも、どれだけの神経をすり減らして暮らせばならないのだろうか。まさに綱渡りのような毎日。それは見ていて苦しい位だった。

だが、逆に子供達が成長し家族3人の笑顔を見る度に感動してしまう程で、3人の笑顔はどのカットの場面もアルバムから出てきたように、満面の笑みで「シアワセ」を感じさせてくれる。

子供達がある年齢になり、交差点に差し掛かることになる。それは人間として生きるか、オオカミとして生きるかだった。ラスト、二人が決断した道の上で、微笑む母の笑顔が本作を物語っている気がした。二人の子供達はずっとこの笑顔に守られて、自分の生きる道を見つける事が出来たからだろう。本作のような作品に出会う度にアニメのありがたさと、ドラマっていいよな、と改めて痛感する。

「そう・・・・・・、人はドラマを求めるだろう?まるで栄養でも求めるように」 by 阿良々木暦w

投稿 : 2024/03/23
♥ : 55

風紀 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

心がほっこりする

予想以上に良かったです。
物語の展開が今までにない新しいスタイルでとても面白い作品でした。

声優は宮崎あおいさんと大沢たかおさんということで正直、
あまり期待していませんでしたがなかなかすごい。
特に大沢さんのおおかみおとこはかっこよかったです。
カッコよさを主張するわけでもない冴えない感じがとてもキャラと合ってました。
雨と雪の声も結構、というかとても上手でした。
俳優・女優が声優に挑戦した映画の中では例外といえるほどなじんでいました。

さて、メインのストーリーはというと。
サマーウォーズのような派手さはなくて、
むしろありふれた日常を描いた作品だったように感じました。
一番近いのは「となりのトトロ」でしょうか。
もちろん、神様がでてくるわけではありませんが子供たちのやりとりがメイとさつきのようでした。
生まれてから少年期までのお話なのでハイペースで成長していきますが、
まったくはしょった感がなく自然なストーリー展開でした。

おおかみこどもを育てる大変さがとても実感できます。
都会での冷たい人間関係。
夫が死んでしまい母子家庭で頑張る花。
それを暖かく見守る田舎町のやさしいご近所さん。
特に生活の描写が丁寧で、かといって小難しくなく、
こういったところで細田監督の実力を垣間見た気がします。
子供二人の遊ぶ姿が萌えとかではなく純粋に可愛かったです。

成長するにつれて変化する二人は素晴らしかった。
半分の狼だけどやっぱり女の子な雪に、
半分人間だけどやっぱり狼な雨の考え方や人格の表現の仕方がすごい。
特に後半からの思春期の二人や親子の掛け合いがジーンときます。
狼人間なんていないけど胸を打つシーンがいくつもありました。

でも、小学生が見る作品ではないなと思います。
10代後半以上ぐらいがターゲットでしょう。
大事件やアクションシーンはないのでそういうの目当ての人には微妙かもしれません。
むしろ、童話や絵本とかが好きな人にはすごくおすすめします!

もちろん作画もいうことなし。
そこはさすが細田監督というかアニメ監督としてのプライドを感じました。
キャラデザは最初はちょっと目が離れてるなって思いましたが、
見ていくにつれとても自然になっていきました。
全体的に高水準。

ここ最近で見た映画の中でダントツ一番です。
とても感動できる心温まる映画でした。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 20

89.4 3 移住アニメランキング3位
彼方のアストラ(TVアニメ動画)

2019年夏アニメ
★★★★☆ 4.0 (974)
3794人が棚に入れました
宇宙への往来が当たり前になった近未来で、9名の少年少女たちが惑星キャンプへと旅立つ。宇宙旅行に胸を躍らせながら出発した彼らを待ち受ける、予想外の事態とは……!?

声優・キャラクター
細谷佳正、水瀬いのり、武内駿輔、黒沢ともよ、木野日菜、松田利冴、内山昂輝、早見沙織、島﨑信長
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

私たちは変わることができる、そして人生は続く

アニメーション制作:Lerche
監督:安藤正臣、シリーズ構成:海法紀光
キャラクターデザイン・メイン総作画監督:黒澤桂子、
音楽:横山克、信澤宣明、原作:篠原健太

子供たちだけで惑星キャンプが行われる時代。
ケアード・ハイスクールのB5班は、
無人の惑星で5日間過ごす野外学習に出かけた。
9人の少年少女たちは、惑星マクパで降ろされ、
楽しい日々を過ごすはずだった。
しかし、彼らの前に謎の球体が現れ、事態は急変する。

集英社のウェブコミック配信サイト『ジャンプ+』で
連載された作品。口コミなどで評判が広がり、
『マンガ大賞2019』の大賞を受賞した。
宇宙という舞台、子供たちだけの冒険、
陰謀がうごめく背景、9人全員が抱える事情、
惑星でのサバイバルなど、様々な要素のある
エンターテインメント作品となっている。

原作漫画は完結しているため、
1クール12話、しかも1話と12話を
1時間ずつを使う特別編にすることで、
5巻分を余すところなくアニメ化している。
{netabare}無料開放の漫画を少し読んでみると、
原作に忠実に作られているだけでなく、
宇宙空間に飛ばされたアリエスを
カナタが助けるシーンでは、全員が手をつないで
ふたりを救助するという改変も行っている。
(漫画では、このシーンは残されたワイヤーに
戻り、それを辿って帰還している。
1度ワイヤーを巻き取って、再度、別の誰かが
助けに行けばいいなどの意見もあるだろうが、
ここは全員で手をつなぐという行為に意味があったわけで、
良改変だったと個人的には思う){/netabare}

SFの部分では突っ込みどころが多く、
アニメが終了した後にSNSなどで大論争が巻き起こり、
作者が降臨する事態にまで陥った。
ある意味、SF要素のある人気作の宿命だ。
ただ、この作品はSFを見せようとするものでないことは
明らかで、批判する人の気持ちは分かるが、
そこについて深く突っ込み過ぎるのは違和感がある。
この作品において、SFのリアリティは枝葉の部分に過ぎない。

では、どこを重視しているかというと、
9人の子供たちが抱えている問題と、
その悩みを解消するために、仲間が相手のことを
思いやり、本当に大切なものを得ることについてだ。
9人の子供たちは、それぞれ幼少期から、
大きな喪失感を抱えながら生きてきた。
旅を続けるなかで、一人ひとりが体験してきた背景を
各々が理解しながら、解決していく構成になっている。
9人もいるキャラクター全員の過去について、
しっかり語っているため、彼らが失い続けてきたものに
思いを巡らせることができる。
だから、そこから彼らが何かを獲得する様子に
カタルシスを感じられるのだ。
それがこの作品の最大の見どころだろう。

舞台装置としては、孤島の閉鎖空間での
ミステリーと同様の形を取りながら、
それだけに止まらない群像劇として、
最初から最後までしっかりとまとめられている。
{netabare}特に11話『CONFESSION』での回想から
カナタの怒りにつながる流れは素晴らしい。
カナタ役・細谷佳正の演技は、抜群の説得力がある。
反重力シューズを履いてきて、
ワームホールを飛び越すという展開からの
決着の付け方も完璧だった。
この回は、夏クールの私が観た全話のなかでも
出色の出来だったと思う。{/netabare}

9人の少年少女たちは、数ヵ月の旅の間に、
自分の支えになる原点を獲得することができた。
アストラ号で過ごした日々は、
何事にも代えがたい時間として
今後の人生の支えになるに違いない。

引きこもりや親子断絶などが、
もはや当たり前になった現代において、
子供たちの心に響く物語に思える。
ここではないどこかに行けば変われるかもしれない。
行動すれば誰かとの出会いによって、
人生が動くかもしれない。
親から愛されない境遇にあったとしても、
生きていていいのだ。

そして、人は絶対に変わることができる。
(2019年10月19日初投稿)

投稿 : 2024/03/23
♥ : 93

ニワカオヤジ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

スケットダンスが好きなら更に楽しめる

あらゆる漫画を読み漁ってきた私の中で、ギャグ漫画家トップ3に入る篠原健太先生の作品です。

●SFじゃないという批判について
別にハードSFを謳っているわけではありませんし、むしろこれぞSFと言って良いと思っています。自分が子供のころにガンダムやドラえもんでSFに興味を持ったのと同じように、SFの門戸を広げてくれる素晴らしい作品ではないでしょうか。


●ギャグが面白くない説
スケットダンスでも同様の傾向があるので、そのうちスケダンのレビューで考察しようと思いますが、原作者のギャグは漫画でこそ栄えますが残念ながらアニメではあんまり面白くなりません。
なので、アニメを見てギャグが寒いと感じられた方は是非とも原作を読んでください。同じ内容なのにめちゃくちゃ面白いです。そしてスケダンを読んでから読むと更に面白いです。

原作には「アカツノチリゲムシ」などスケダンのファンにはたまらない小ネタがありますが、アニメでは出てこず、残念ではありました。
しかし、宇宙服のメーカー名が実は全てスケダンのクソゲーシリーズという、どうでも良いネタをちゃんと拾ってもらえたのは嬉しかったです。
「FALKEN」とか、めちゃスポーツメーカーとして自然なのが笑えます。「SMB」は「Special Mariko Broken(壊れちまった特別な真理子)」の略称。どう考えても宇宙服メーカーの名にはふさわしくないwww

ギャグといえば、原作コミックの巻末にある番外編四コマ漫画がめちゃくちゃ面白くて、四コマだけでも連載を続けて欲しいほどでした。
特に「紙ずもうレスリングトーナメント」の話が秀逸ですが、アニメではEDの一枚絵で紙ずもうチャンピオンのグレートロブスターが出てくるだけでした。


以上、ほぼ原作のギャグを褒めただけのレビューになってしまいましたが、SFミステリとしての完成度はアニメ史上でも類を見ないレベルだと思います。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 35

〇ojima さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

ボッスン(スケット・ダンス)の宇宙物語

原作既読でした。
なので物語もわかっていましたが知ってても楽しめる作品でした。
でも、内容を知らない方が格段に楽しめますので、是非ネタバレ情報なしで楽しんでください。この作品、一気見タイプです。

設定は未来の高校生8人と10歳1人の計9人で惑星に行ってキャンプをするようです。
主人公はカナタ・ホシジマ。
運動能力とサバイバル能力に長けています。
どうやら他の高校生達も能力に特徴があるようです。。。


原作者はジャンプでスケットダンスを連載していた篠原先生
本作品もスケットダンスのギャグセンスそのままです。
篠原先生は東日本大震災直後に応援メッセージを作成して被災者に元気を与えたことを記憶しております。
ボッスン、カナタ達が人助けをするのは篠原先生自身の当たり前の気持ちなのでしょうね。

元気を与えてくれる作品。おすすめです。

原作は全5巻と読み易い作品なのでアニメ視聴後に楽しんでください。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 72

62.7 4 移住アニメランキング4位
迷家-マヨイガ-(TVアニメ動画)

2016年春アニメ
★★★☆☆ 3.0 (916)
3513人が棚に入れました
興味本位で参加した胡散臭いバスツアーで合流した若き30人の男女。
ツアーの目的地は納鳴村(ななきむら)と呼ばれる存在が定かではない幻の村。
『納鳴村』では現世でのシガラミに縛られないユートピアの様な暮らしができる……と都市伝説のように囁かれていた。
現実の世界に絶望している…退屈な日常を抜け出したい…人生をやり直したい…。
それぞれの思惑や心の傷を抱えた30人を乗せ、バスは山奥深くへと導かれてゆく……。
そして30人が行き着いたのは、朽ちつつも微かに生活の匂いが残る無人の集落だった。
30人につきつけられる『納鳴村』の真実とは?
1話たりとも見逃せない!
謎が謎を呼ぶスリリングな展開!
閉鎖された村での人間模様と主人公の心の葛藤を描く、前代未聞の群像アニメが幕を開ける!

公式サイト
http://mayoiga.tv/

公式twitter
https://twitter.com/mayoiga_project

声優・キャラクター
酒井広大、相坂優歌、八代拓、佐倉薫、鈴木達央、五十嵐裕美、清水彩香、加隈亜衣、多田このみ、長谷川芳明、三好晃祐

要 塞 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

生き迷う人々の群像劇

 最初は和風ミステリー+Jホラーという印象を受けました。
特にオープニングのインパクトが強かった。
なんかヤバそうな村が背景に映りこんでいて、
初見で、ホラーっぽい印象を持ったのは自分だけじゃないはずです。
もしホラーだとしたら・・・
下手すりゃ登場人物全滅?
だとしたら視聴後、ムナクソ悪くなるのではないか?
と、不安になりましたが、水島監督を信じて視聴しました。
その結果は・・・

 この作品には、
「自分」という存在に対する、問い、が含まれているように感じました。
総勢30人のツアー参加者+αの抱える心の闇。
地図に無い村の謎。
真実が明らかになったとき、
あなたがツアー参加者だとしたら・・・
どちらの結末を選択しますか?

 登場人物が多いので、どうかな、と視聴前は思っていたのですが、
案外、苦になりませんでした。
キャラ全員の名前が覚えられなくても、全然いけると思います。
主要人物は名前と特性が頻繁に描かれているので、
お気に入りのキャラを決めて応援するのも、楽しい見方かもしれません。
 社会に馴染めないと思っている方、
今の自分を変えたい、生まれ変わりたいと思っている方、
そして、自分が嫌いな方・・・
バスツアーに参加すると、
自分なりの答えが見つかるかもしれませんよ。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 10
ネタバレ

ポル さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

面白いと思った

感想見るとみんな辛口というか評価低すぎのような気も。
ホラーで怖い部分もありましたし、普通に続き気になりました。
キャラ絵デザインも好きな感じでしたし。
謎もある程度解決?したような感じでしたし。今期のアニメではまだ見れる方だったんじゃないかと思いますよ。

シリーズ構成は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の岡田麿里とのことですが、「あの花」と比べないで見てあげてください。ジャンルは全然違いますしあまり期待しすぎるのもよくありません。

{netabare}
ただトラウマって誰もが好き好んで向かい合いたいものじゃないから気分を害する人もいるんじゃないかと。登場人物で自分のトラウマと似たような経験をされた方とかは気分良く見れなかったんじゃないかと思います。ナナキ村のトラウマの具現化がなぜあの場所だけ起こるのかや残った人たちのことは投げっぱなしで終わっちゃったな。
{/netabare}

投稿 : 2024/03/23
♥ : 5

シャベール大佐 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

どの回もそれなりに面白いけれど、観終わって心に残るものは特にないかも

現実生活で問題を抱えた人たちが「人生やり直しツアー」に参加して、納鳴村(ななきむら)という謎の村に行く、みたいな設定のオリジナルアニメ。
ジャンル的にはホラー、ミステリー、ファンタジーといったあたりになるのでしょうが、なんだかどれも微妙にしっくりこなくて、どう分類していいのかよくわからない感じ。とりあえず、全体のストーリーが面白かったかというとそうでもなくて、最後まで観終わっても何か心に残るようなものは特に感じなかったけれど、毎週の話を観ていると、どの回もそれなりに楽しめました。
登場人物は非常に多くて、第1話で一気に大量のキャラが紹介されますが、当然いっぺんに覚えられるわけもなく、観ているうちに流れで目立つキャラだけ覚えるくらいでも特に問題ないと思います。
作品全体の雰囲気は、ちょっと頭のおかしいキャラがいて物騒な言動があったり、謎めいた不穏な空気が漂っている割には、あまり陰湿ではなく、ユーモアを感じる部分もあったりします。特に、処刑処刑と叫ぶ「らぶぽん」というキャラは、観ているとつい笑ってしまいました。
作画は綺麗。キャラデザも結構好みで、かわいい女性キャラもいたりしたのが、なんだか少しもったいない気がしました。(こんな変人だらけの作品ではなく、もう少し普通の作品に出してほしかった的な思考でしょうか)
声、音楽も悪くなかったです。
この感想を書くにあたって他の方の採点をさらっと見たところ、どうも評判は微妙なようですね。自分は動物園が好きでたまに行くのですが、動物たちを眺めていると、特に何か事件が起きるわけでもなく、ずっと観ているからといって最後に面白いオチがあるわけでもないのに結構退屈せずに楽しめたりしていて、今回この「迷家-マヨイガ-」という作品を振り返ったときに、なんとなくそんな感覚の面白さだったのかなと思いました。(そういえば、らぶぽんを愛でるのも珍獣を観察するのに近い感覚だったのかもしれません)

投稿 : 2024/03/23
♥ : 26

72.1 5 移住アニメランキング5位
機動戦士ガンダム F91(アニメ映画)

1991年3月16日
★★★★☆ 3.8 (461)
2541人が棚に入れました
宇宙世紀0123年、シャアの反乱から約30年が経った時代。大きな戦乱も無く平和な世界の中、人類はその大半が地球から月までの軌道に設置されたスペースコロニーに移住し、地球連邦政府という国家の枠組みを超えた全地球規模の組織に統治されていた。しかし、地球連邦政府の疲弊・腐敗から、秘密裏にコスモ貴族主義を掲げる軍事組織クロスボーン・バンガードが設立され、スペースコロニー「フロンティアIV」を急襲する。その最中、民間人の少年 シーブック・アノーは襲撃から避難するために、友人達とともにコロニーを脱出するが、同行していた内の一人 セシリーが連れ去られてしまう。近隣のコロニー「フロンティアI」に辿り着いた一行は、地球連邦軍の宇宙練習艦スペース・アークに保護される。艦内にはF91と名付けられた整備中の新型MS(モビルスーツ)があった。混乱の中成り行きでF91で出撃することになったシーブックが戦場で対峙したのは、クロスボーン・バンガード軍のMSビギナ・ギナに搭乗していたセシリーだった…。

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ブルーレイよりDVDがオススメです

どうも昔からガンダムにはあまりハマれなくて・・・
いやちゃんと見てはいましたけど・・・
ただこのF91では宇宙世紀という世界観だけは引き継がれつつも、登場キャラクターを一新することで新鮮な気持ちの作品に仕上がっていると思いました
要はアムロだのシャアだの言わんのですw
この辺は旧作にこだわりを持たない人の方が入り込みやすいと思います
そしてとにかくラストが感動的だった
今までの悲しみばかりが残るガンダムシリーズのイメージを全て吹き飛ばしてくれましたね
ガンダムが「人を殺すため」ではなく「人を救うため」に使われるのが素晴らしい
ちなみにブルーレイ版はマスターフィルムの状態が悪いらしく、無理矢理に鮮明さを出そうとした妙にコントラストの強い色彩になっています
フィルム上の傷やゴミなんかも逆に目立っていました

投稿 : 2024/03/23
♥ : 10

chanchan さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

平成ガンダムしか知らない人に特に見て欲しいガンダム!!

私も平成生まれですけど昔からスパロボやGジェネのユーザーなので、基本的にガンダムシリーズはほぼ全作の内容を知ってますし、ちょいちょいアニメも見てます。
だからこそ言いますけど、F91は半端なく面白いです!!ゼータとかも捨てがたいけれど、私はF91が一番面白いと思います。

劇場版なので尺が短く、多少話を詰め込み過ぎな点は認めますけど、ガンダムに必要な要素をしっかりと含んでいて、見応えがあります。

この作品の評価すべき点はまずストーリー!!ガンダムシリーズは大体主人公が一般人で戦争に巻き込まれていくものが多いですけど、このF91もそれらと同様に戦争に巻き込まれるパターンです。それ故に戦争の愚かさを恋愛要素も含みつつ短い尺で表現出来ている点が素晴らしいです。

後は音楽ですね。森口博子さんの曲が良すぎて…。EDなんて場面にもぴったりで号泣ものですwww

時間軸は逆シャアの30年後で、宇宙世紀を舞台とした話ですが、その割にはこれまでのガンダムシリーズとストーリーの関連性が無く(背景的にはありますが)、ガンダム初心者にもオススメ出来る作品です。

まぁ何が言いたいかと言うと、タイトルにもある様に平成ガンダムしか知らない人に見て欲しいって事です。別に平成ガンダムを否定してるわけではないですよ!?私だって種や00見ましたし、どっちも大好きです。
ただ少しでも興味を惹かれたなら見て欲しいな~って素直に思ってます。

ちなみに、漫画でしかありませんが続編の機動戦士クロスボーンガンダムも完結編まで全巻持ってます!!こっちもオススメです!!

投稿 : 2024/03/23
♥ : 8

さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

是非ともリメイクされて欲しい不遇の名作

まず最初にお伝えしたいのは、この作品が「劇場版のガンダム作品」として屈指の名作でありながら、とにかく時勢に恵まれず、内容に見合った扱いを受けられずにきた不遇の名作であるという点です。
この作品の魅力については他のレビュワーの方々が語ってくれていますので、私はまず、この作品がなぜ不遇の名作となってしまっているかについて私見を交えて書かせてもらいたいと思います。

この「機動戦士ガンダムF91」という作品は、ガンダム劇場版10周年を記念する作品というふれこみで製作されたものですが、当時はガンダムシリーズの展開が行き詰まりを迎えつつある冬の時代だったようで、そういった状況の打開を図るべく、過去作の反省も踏まえて「分かりやすいTVガンダム」を作ろうという構想の基で企画が生まれ、現在でも第一線で活躍している名だたるクリエイター達が結集し、それまでのシリーズ作にはない挑戦的な作りこみがなされながら製作されてゆきました。(企画が生まれる要因となった過去作の反省については後述させてもらいます)

そのためこの作品は、初代ガンダムから始まった「宇宙世紀」と同じ時間軸の下で物語が描かれているにも関わらず、良くも悪くも他のガンダム作品とは一線を画した仕上がりになり、公開当時はシリーズファンの間でも評価が割れた作品となりました。

評価が割れた大きな要因として、それまでの歴代ガンダム作品の魅力の一つとなっていた「過去作の登場人粒や設定」が時を経て最新作品に登場してくるオマージュ的展開がこの作品では殆ど用いられておらず、それと同様にそれまでの歴代作品が膨大に積み上げてきていた敵勢力側のモビルスーツ(ロボット兵器)の系譜も排除され、全く新しいアーキテクチャーによるロボットデザインがいきなり導入されたりしている点が挙げられます。
故に熱烈なガンダムシリーズファンの方々にとってこの作品は、初代ガンダムに連なる歴代の「宇宙世紀系ガンダム作品群」の一つとして受け入れられ難い側面を持っており、色んな意味で一線を画した作品として捉えられることが多いようです。

この作品は元々、当時の歴代TVガンダムが描いてきていた「人類の戦争」という子供向けTVアニメで扱うには重く難解すぎるテーマを、それまでより分かり易く描くことを目標に1クール分のTVアニメ番組として企画されたものだったらしく、この企画が生まれた背景には、TV版第2作の「Zガンダム」が作品自体の出来は良かったものの「難解で複雑な内容」故に子供市場へのウケが良くなく、製作側とスポンサーが期待した程に商業成果をあげられなかったことと、連続して製作されたTV第3作「ガンダムZZ」がZガンダムの反省を踏まえすぎて迷走し、番組途中で路線変更を余儀なくされた上に、結局Zガンダムを下回る商業結果を残しそうだと判断され、そこから商業的巻き返しを図るために第3作「ガンダムZZ」の放送期間中に急遽物語ラストの核となるプロットを丸々抜き出して「逆襲のシャア」という劇場版作品を作る羽目に陥った製作側の苦い経験があったようです。(逆襲のシャアは大ヒットし名作となりました)

しかし子供市場にも受け入れてもらえる「分かりやすい新ガンダム」を実力派クリエイターを集めて作ろうとしたものの、戦争という「題材」を使って魅力的なアニメ作品を作ると、結局子供向け作品としてベビーすぎる内容になってしまい、当時のTV局の自主規制的縛りやTVスポンサーとの折り合いなどがつけられなかったのではないかと言われています。
逆にいえば、実力あるクリエイター達が作品を面白くしようとするこだわりが、「TV版F91」製作の足枷になってしまったといえなくも無いかもしれません。
様々な背景事情が入り乱れ製作状況を二転三転させる羽目になったサンライズは、最終的に「機動戦士ガンダムF91」という作品を劇場用の120分映画に濃縮する形で製作・公開することにせざるをえなかったようです。

そうした製作環境の変動は少なからず作品の品質にも弊害を与えていったようで、この作品では、本来なら時間をかけて描かれるべき繊細な場面が、尺の都合などで止むを得ず端折られたり削られたりしている所が幾つか存在しています。この点もまた、この作品についてファン達に物議を醸させ、作品への評価を割れさせる一因となったようです。

しかし尺の都合で削られてる所があって唐突に場面が飛んでしまうことがあるにしても、本作は全体的に話の流れがとてもスムーズでテンポも良いので、私個人としては観ていてどんどん惹きこまれ120分間があっという間に終わってしまった感じでした。そして「端折られた箇所への違和感」は私的にギリギリ許容できる範囲ではありました。(気になる人はとことん気になるかもしれません)
この作品に高い評価と共にレビューコメントをつけていらっしゃる方々の多くが、この作品のそういった部分を「展開を急ぎすぎている」「話が駆け足しすぎてて勿体無い」と仰っていて、劇場版でなくTVシリーズとして相応の話数と尺を使って描かれたこの作品を観てみたいという願望を持っていらっしゃるようですが、私も全くの同感です。

(ここからはこの作品の魅力について具体的に書かせていただきます。)


視聴して頂ければ納得していただけると思いますが、この作品にはガンダム世界のエッセンスが作品公開当時にサンライズが費やせる最高のクオリティで詰め込まれており、公開から25年余りが過ぎた現段階においても、その内容が殆ど色あせておらず、劇場用のガンダム作品としては屈指の名作であると言い切れる出来栄えになっています。

この作品の具体的な時代設定は宇宙世紀0123年で、これは初代ガンダムの一年戦争時代(宇宙世紀0080)から40年後、ZガンダムとガンダムZZのグリプス戦役と第一次ネオジオン戦争時代からは34年後、逆襲のシャアの第二次ネオジオン戦争からは30年後、ガンダムUCのラプラス戦争時代からは27年後にあたる設定になっています。
F91では、この時代に起こった紛争の中で必死に生き抜こうする人々の「出会い・裏切り・葛藤・成長・愛憎・決別・和合」といった様々な人間ドラマが、宇宙戦艦やモビルスーツ(ロボット兵器)を主兵器とした戦争を通じ繰り広げられてゆきます。

この作品のロボットアニメとしての戦闘シーンは、今の時代でもこの作品を凌げるものに中々お目にかかれない程に魅せ方を心得た好演出が多く、そういった観点からも時折無性に観たくなる程の魅力を備えています。
ただ、佳境を迎えたラストバトルの最後の最後のシーンはとても素晴らしい演出がなされているのですが、私は個人的にあともう一つ「決め手」となる演出が加えられていて欲しかったなとも感じました。(ここは人によって意見が分かれる部分だと思います。)
そしてそこからエンディングにゆくのですが、森口博子さんが歌っていらっしゃるEDテーマがこれまた非常に素晴らしく、ラストの感動を否がおうに盛り上げてくれます。私は初観直後にクライマックス~エンディングの流れを3回ほど観直して余韻に浸りまくっていました。そしてこの曲はガンダムのテーマソングとしては初の「NHK紅白歌合戦」出場を果たしたヒット曲でもあります。

この作品は当時の名だたる実力派クリエイター達が結集して作られたため、作品全体に凄まじいほどに秀逸な演出が惜しむことなく散りばめられており、物語の土台となる世界観を徹底して「肌で感じられる」描写で描きまくってあります。(昔の勘違い高品質アニメにありがちだった無駄に細かい描写などでは決してありません。作品の魅力をきっちり引き立てている好演出ばかりなのです。)

それによってこの作品は、主人公が活躍する戦闘シーンだけでなく「戦争によって人々の日常が破壊されてゆく」ガンダムシリーズでは通例となっている場面や、紛争の中で人々があがいてゆく「非日常の日常」の場面などがガンダムシリーズ中随一の出来となっており、そこは必見の価値があると思います。
物語中に流れる価値的描写も、様々な価値感を持った登場人物達がそれぞれの存在意義と生き方に根ざした行動をとってゆき、それらがきめ細やかに絡められてゆく形で描写がなされており、「戦争に絶対の正義無し」されど「人の道は如何や?」というガンダムの真髄ともいえるスピリッツがあますことなく表現されています。

少し穿った言い方をしてしまうと、通り一編のテンプレ的な行動しか登場人物達に許容できない子供的感性の人からみると、この作品のキャラクター達の行動は矛盾だらけで中途半端で意味不明なものに映ってしまうかもしれません。が、そこがこの作品の人間ドラマとして実に味わい深い部分だったりします。これは年齢を重ねないと見えてこない「大人の特権」的な味わいかもしれませんね。
この作品が企画されたきっかけは「子供にも分かりやすいTVガンダムを作ろう」でしたが、良くも悪くも随分と大人が愉しめる「味わい深い作品」になってくれたものだと思います。

しかしこの作品に更なる+@の魅力を与えている何より要因は、「命の儚さ」や「人間の厭らしさ」といった「戦争や人のネガティブな側面」を様々な人間の価値感を織り交ぜながらがっぷり描きつつ、その泥沼の先に「光明」を見出せる「人間の持つ可能性」をポジティブに描けている所なのではないでしょうか。



「機動戦士ガンダムF91」という作品は、時間と尺をかけてじっくり描かれた作品として世に出るはずが、当時の作品の受け手である市場が未成熟だったために、尺に限界のある劇場用作品として世に出ざるをえなかった「不遇の名作」だと思います。
もし可能であればこの作品をOVAやTVアニメとして、是非ともリメイクしていただきたいと思います。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 5

67.8 6 移住アニメランキング6位
おもひでぽろぽろ(アニメ映画)

1991年7月20日
★★★★☆ 3.5 (339)
1741人が棚に入れました
東京の会社に勤めるタエ子は東京生まれの東京育ち。27歳のある日、結婚した姉の縁で、姉の夫の親類の家に2度目の居候をしに出かける。山形へ向かう夜汽車の中、東京育ちで田舎を持つことにあこがれた小学生時代を思い出し、山形の風景の中で小学5年の自分が溢れ出す。

声優・キャラクター
今井美樹、柳葉敏郎、本名陽子、伊藤正博、寺田路恵、増田裕生、山下容莉枝、三野輪有紀、北川智恵子

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ん~「おもいでぽろぽろ」の味がわかる年になったか

ん~「おもいでぽろぽろ」の味がわかる年になったか、としみじみ感じ入った。小さい頃からジブリ作品をさんざん見てナウシカ、ラピュタのような冒険活劇にワクワクした自分としては、小品な本作のような作品の味わいがまだわからない年頃だった。しかし、日常系とかがありふれたジャンルになった現代で見ると、むしろ進んだ作品だったのかもしれない。


 とにかく目につくのが背景の良さ。流石の男鹿さん!としか言いようがない。新海さんとかのように美しすぎたり、フォトジェニックなタイプではなく、あくまで現実に忠実という感じである。


 しかし、田舎の風景の現実感があるしみじみとした味わいの素晴らしさ、郷愁の思い出の甘い味わい。どちらも見事としか言いようがない。特にツボだったのが小学生の頃の恋の思い出のところ。目立つ過ぎず、騒ぎすぎず、静かに世界を包んでくれている。


 もう一つのポイントが近藤喜文さんの作画。スッキリとしながらも、漫画的な表現に留まらない表情豊かさがあるキャラクターデザインの妙。大人の時のリアルに寄せた表情が良い感じで、幼い頃はスッキリした味わいが初々しさを強調している。「耳をすませば」の時もそうだったが、この作画で恋愛展開をやられると、そのあまりのいじらしさに思わずニヨニヨしてしまう。


 田舎の人々まで言葉からして田舎感が溢れているのが偉い。理想化された田舎ではなく、地味で目立たないし、少しも綺麗でない、それなのに日本人の共通のノスタルジーとでもいうところを突くものがある。芸能人の起用も、この頃はハマってたのにのう…。


 ストーリーも、薄味な中にもしっかりメリハリがあるから物語にちゃんと没入できる。しょせん自分は、田舎を外から見てる人間に過ぎなかったと主人公が感じるところも、大袈裟に過ぎないように気遣われながらも心に沁みる。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 25

ソーカー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

心に染み渡る昭和ノスタルジー

高畑勲監督のアニメ映画。
ジブリ作品の中ではあまり評価は高くないのだけれど・・・
過小評価されすぎているのは、間違いないと思う。
大人になって見れば、この映画の良さがしみじみとよく分かる・・・

もちろん団塊の世代がノスタルジックな気分に浸る映画だ、
と言ってしまえばそれまでかも知れないけど
その世代とはかけ離れている自分ですらも、
軽く泣きそうになってしまうのだから不思議だw
何回も見てるアニメ映画なのですが、本当に何回見ても良い
それだけの魅力は、このアニメ映画にはあります

ストーリーは主人公が田舎に行って農作業をする中で
子供時代の回想シーンを交えながら、その心情を綴っていくものです
本当にそれだけなので、退屈だと思ってしまう人もいるでしょうけど
どの世代の人でも、大人になってみれば懐かしく思えるエピソードばかりです
心情描写や演出は本当に素晴らしい出来で、この点では高畑監督は宮崎監督よりすぐれている。
ちょっとしたシーンにも、緻密な描写・リアリズムが徹底されている。
声優はちょっと微妙だけど、逆に味があって良いんじゃないかなw

一人の女性が思い出を通じて、精神的自立を果たしていく様を描いた秀作
子供の時に見てつまらないと思った人は、もう一度見直してみて欲しいですね

投稿 : 2024/03/23
♥ : 11

しまっちゃうおじ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

時を経て

子供の頃に幾度と無く視聴しています。

私の実家はクソ田舎です。小学校からも離れていて家の近くに友達の家は無

く、学校から帰ると金曜ロードショーを録画したビデオをテープが切れるほ

ど何度も繰り返し見ていました。父が録画していてくれていたのでほとんど

がジブリとルパン、アクション系の洋画でした。セリフなんかもほとんど覚

えていました(笑)その中にもちろんこの作品も入っていました。

当時、キャラクターのほうれい線が大嫌いだったのを今でも覚えています。

主人公のキャラクターデザインも全然可愛くなくてジブリの中で1位2位を争

う嫌いな作品でした。だけど、ギバちゃんが何故かツボにはまって腹を抱え

て大笑いしてました。夜も布団の中で思い出して1人で笑っていたのを覚えて

います。客観的に当時の自分を思うと「子供のくせにギバちゃんの良さがわ

かっていたのか」と少し感心してしまいます(笑)

何ヶ月か前にやっぱり金曜ロードショーで放送されていて、「久しぶりに見

てみるかー」なんて軽い気持ちで視聴しました。




「なにこれ・・・最高じゃん。」




と、ジブリの凄さを思い出してしまいました。


現代(大人の妙子)で起こる出来事が「あの時は」と小学5年生の自分と照ら

しあわせて、今と昔を交互に移し替えながら物語が進んでいきます。

小学五年生の自分が今の自分に何を伝えようと、おもひでとして出てくるの

か、自問自答し答えはわかっているのにその答えから目を反らしているよう

に感じます。人間臭さがいい味を出しています。

そして、最後の「おもひでを置いていく」と思わせるカットは胸に来るもの

があります。


ジブリの作品の中でも「大人向け」と評価はいまいちですけど、今だからこ

そ評価できる作品だと思います。

「あの時」だけを切り取って日常モノとして「妙子の日常」なんてあったら

面白そうなんて思うのは私だけでしょうか?妙子と妙子を取り巻く登場人物

は個性があっていい物語になると思います。特に妙子をないがしろにするま

ん中の姉と人生を達観していそうな祖母の一言、貫禄があるのに娘に甘い父

が良いキャラクター過ぎます。

今まではジブリ作品の中でも下から数えたほうが早い順位でしたが、今回一

気に急上昇しました。「千と千尋の神隠し」以降ジブリは観なくなってしま

いましたが

「ジブリってほんっとに良いものですね」

「あの頃は」なんて言いたくはありませんがこの頃のジブリはホントに良い

と思います。


「妙子の日常」はマジで観てみたい。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 7

67.3 7 移住アニメランキング7位
地球へ…(テレビ版)(TVアニメ動画)

2007年春アニメ
★★★★☆ 3.8 (227)
1472人が棚に入れました
現代から遠く離れた未来―S.D.(Superior Dominance:特殊統治体制、西暦3千数百年)の時代。人類は環境破壊により滅び行く地球を再生させるため、植民惑星へ移住した。コンピュータ管理により整然と生きる人類。その一方で疎まれる、特殊な能力を持つ「ミュウ」という存在。彼らは過酷な弾圧の中で政府の目から逃がれ、息を潜めながらも自分たちの存在意義を考え、そして地球への帰還を夢みていた…。ミュウのリーダー、ソルジャー・ブルーは、アタラクシアに住む少年ジョミーを自分の後継者として選び、夢を託す。

声優・キャラクター
斎賀みつき、杉田智和、子安武人、小林沙苗、井上麻里奈、羽多野渉、増田ゆき、小杉十郎太、浪川大輔、喜多村英梨、杉山紀彰、高城元気

クアーレ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

文句無いです

物語
大雑把に超能力といっているのでどういうことが出来るのかがはっきりと分からないのですが、主要なミュウ達は皆タイプブルーといって、我々が超能力として「できるだろ」と思っている大概のことはできます。できることは色によって異なるらしいのですが失念しました。
構造としてはミュウ側の主人公ジョミーと、人間側の主人公キースの両視点から描かれています。
ミュウ側は、完全管理下であるCE体制により異端とされ追われる超能力者達で、逃げ、隠れ、そしてかつて人類が汚染し人が住むことの出来なくなったテラ(地球)を目指します。
人間側はCE体制を覆す存在となりかねないミュウの殲滅せんとしています。
とまあよくある逃亡劇のような物語ですが、逃亡側の規模も、追跡側の規模もデカイです。人数の規模も距離の規模も隠れる規模も違います。
また、ミュウの寿命が長いからこそ起こる世代間の対立など彼らならではの問題もあり新鮮さもあります。
ミュウ側のことばかり描きましたが、人間側にもほぼ同等の時間が割かれています。“ただ追いかけてくる嫌な連中”ではないのでご安心を。


作画
これに関してはあまりよくわからないのですが、原作を真似て描くようなものでもないので問題なく見れるのではないでしょうか。
自分はもう見慣れてしまったので分からないです。
キャラデザには少々古臭さを感じることがあったような気がしますが、違和感はあまり感じませんでした。

声優
これに関してもあまり詳しくないのでどうこう言えることはあまりないのですが、終盤に何度も泣かされました。もちろん悪い意味ではありません。いい演技だったのではないかと思います。

音楽
すばらしいです。悲しげな曲が多いですが、そういった場面が少なくないので仕方ありません。サントラを購入するくらいには気に入りました。
主題歌も非常によいです。
個人的にはOP1であるUVERworldのendscapeと、OP2である高橋瞳のJET BOY JET GIRLがお気に入りです。
見ないですっ飛ばす方もいらっしゃるかと思いますが、特にJET BOY JET GIRLの方は声の伸びがまっすぐで素敵ですので是非。

キャラ
ミュウと人間の違い、重ねた年の違い、してきた経験の違い、置かれている環境の違い、能力の違いなどからそれぞれが違う考え方を持っていて非常にいいキャラクターたちだと思います。
最近の作品にときどき見られる“展開のためだけに存在する考え方がおかしい意味の分からない登場人物”というのはいません。
それぞれがきちんと考えを持って様々な気持ちで物語に関わっています。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 6

nani-kore さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ただただ涙が溢れて止まらなかった。。

そういえばものすご~く昔、まだオタクという言葉も定着していなかった頃、オタだった長姉が原作マンガを所有していたなぁ~3
たしか、雑誌っぽい粗い紙のA4サイズで、紙が真っ茶色になるまで納戸の中に放置されていたのだ。
そして、いつの間にかなくなっちゃったんだよね~
何べん読んだだろう、あのマンガ?
同時期に映画も公開されたけど、原作ファンだった姉が舌打ちする位の、ヒドイ出来だったらしい。。

竹宮恵子といえば、「風と木の詩」等、BLモノの先駆けとして有名な少女漫画家だけど、SF漫画家として高名を馳せた時期もアリ。彼女のSFモノの代表作が本作「地球へ・・・」だけど、同系列では「アンドロメダ・ストーリーズ」等が挙げられる。
「アンドロメダ」も原作本があったよーな気がするけど、「地球」より先に処分されたみたいで、その内容はうろ覚えだが、どちらも遜色無く面白かったよーな。
ファンタジー物として、「イズァローン伝説」を最後に読んだのがいつだっけなぁ?
コレは良く出来たファンタジーストーリーなんだけど、BL的表現は「風と木」に勝るとも劣らなかった;;

ごめんなさい、アニコレの骨子からズレてしまった。。
原作者、竹宮恵子のマンガはどれも面白かったけど、上記のよーに、たいていBL的表現が絡んでくる。
ただ、「地球へ・・・」や「アンドロメダ・ストーリーズ」等のSFモノに関しては、少年誌「月刊マンガ少年」で掲載していた関係上か、竹宮流BL表現は珍しく無かった。
唯一、主人公ジョミーのシャワーシーンだけが、風木っぽくて竹宮臭が漂っているなぁと、ションベン臭い子ども心に苦笑した記憶がある。

再度になるが、当時ものすごい前評判で作られた映画は、原作ファンには大変残念な仕上がりだった。
その後ン十年が経過し、ナンで今ごろリメイク?と首をかしげながらも郷愁にかられ、TVの前に座った2007年。
原作と少々違う部分はあれども、ようやく素晴らしいアニメに生まれかわって、原作を読んだ者として本当に嬉しかった!!
やっぱりキース、昔と変わらず、一番好きなキャラだなぁ~3
非情な堅物エリートとして振る舞っているけれど、その実、誰よりも情が深くて人間らしいのだ。
こんなイイ男、好きにならない方がムリだよ~~;;

ラストには、ただただ涙のナイアガラ。
そうでなくとも、EDの切ない調べには、勝手に涙がダラダラ流れてきて、老いた母にアキれられたのが、もう5年前か~3
色々あったなぁ、あの頃。。
ワケもなく涙が止まらなかったあの時も、なんとなく原作に触れた少女期の自分と今の自分を重ね、色んな感情がブワッと湧き上がっきて、堰き止めきれなかったダムのように、ただただ涙が溢れて止まらなかったんだよネ。。

さすがにちょっとクラシックなSFだけど、作画もキレイな良作でした。
う~ん。。でも当時はキレイさに感動したけど、今ちょっと観直してみると、ちょっとなぁ。。アニコレフレンドのメッセ・エッヘンさんのレビューを読んで、もういっぺん確認してみたら、おっしゃる通りの作画評価でした;ただ5年前当時はえらく感激したので、作画★4.0のままとさせていただきマス;;

原作を知る世代の方には、ひときわ感慨深いアニメでしょう。
原作を知らない方も、漫画&アニメ史に残る本作、ご興味があればぜひどうぞ~(^ ^)

投稿 : 2024/03/23
♥ : 19

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

現在社会の問題に関して、考えさせられるアニメです。

竹宮恵子さんの古い漫画が原作のSFヒューマンアニメです。
文明社会の進歩により、地球環境を破壊した人類。
このため、人類は地球外へ脱出することに。
何故か、ミュウという異端遺伝子を持つ超能力者が出現。
管理型人類社会はミューを排除するようになります。

このアニメは、ミュウと人類の双方の視点より描かれます。
ミュウ側の主人公は、ジョミー。
他人思いのやさしい性格で、圧倒的な超能力を持つ指導者です。
人類側の主人公は、キース。
機械のような冷酷な性格で、徐々に頭角を現す有能な人物です。

ミュウと人類の戦いの結末は?
ミュウと人類の相互理解は?
人類は何故ミュウを排除?
「地球」の行く末は?
など、興味は尽きません。
また、現代社会の人類の問題も二重写しになります。

それぞれの登場人物の思惑が複雑に絡まったシナリオ。
素晴らしいです。
そして、ラストは感動。
涙ザザ漏れでした。

<大昔の劇場版アニメに関しての話>
私は未視聴です。
嫁さんに聞いたら、あっさり
「見たよ。」と。
悔しいので、これ以上聞くのはやめました。

当時、このアニメは話題作でした。
特に、ダ・カーポが歌う主題歌「地球へ」は良く耳にしたものです。
「地球へ」の歌詞、「ただひとつの夢のために、ただ一度の命かけた」
こんな人生を送りたいですね。
視聴後、改めてこの曲を聴いたら・・・、涙ザザ漏れでした。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 41

75.5 8 移住アニメランキング8位
キャロル&チューズデイ(TVアニメ動画)

2019年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (394)
1287人が棚に入れました
人類が新たなフロンティア、火星に移り住んでから50年になろうという時代。多くのカルチャーはAI によって作られ、人はそれを享楽する側となった時代。ひとりの女の子がいた。首都、アルバシティでタフに生き抜く彼女は、働きながらミュージシャンを目指していた。いつも、何かが足りないと感じていた。彼女の名はキャロル。ひとりの女の子がいた。地方都市、ハーシェルシティの裕福な家に生まれ、ミュージシャンになりたいと思っていたが、誰にも理解されずにいた。世界でいちばん孤独だと思っていた。彼女の名はチューズデイ。ふたりは、偶然出会った。歌わずにいられなかった。音を出さずにいられなかった。ふたりなら、それができる気がした。ふたりは、こんな時代にほんのささやかな波風を立てるだろう。そしてそれは、いつしか大きな波へと変わっていく───

声優・キャラクター
島袋美由利、市ノ瀬加那、大塚明夫、入野自由、上坂すみれ、神谷浩史、宮野真守、堀内賢雄、宮寺智子、櫻井孝宏、坂本真綾、安元洋貴、大塚芳忠、菅生隆之、梶裕貴、蒼井翔太、東山奈央、佐倉綾音、飯塚昭三、白熊寛嗣、浅沼晋太郎、久野美咲、田村聖子、落合弘治、吉野裕行、谷昌樹、岩崎ひろし、諏訪部順一、青山穣、柿原徹也、山寺宏一、沢木郁也、林原めぐみ、木村昴

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

魂を揺さぶられる音楽が聴けるアニメ

このアニメを楽しんで見るこつは、音楽を純粋に楽しむことです。
そうすれば、素晴らしい歌に出会えます。魅力的な音楽を楽しめます。

実際に、このアニメで歌われる音楽で、私は魂を揺さぶられました。
音楽好きの人にぜひともお勧めするアニメです。

音楽は世界共通の言語です。
年齢や国籍に関係ありません。
ましてや文化や肌の色にも関係なく、
歌い手や演奏者の心を聴き手に伝えてくれます。感動を与えてくれます。

今回、第二話ででてきた 「The Loneliest Girl」の歌、
これが実にすばらしい。
歌詞はすべて英語ですが、キャロル&チューズデイの二人の心が、じわーっと伝わってきました。
また、オーディションの決勝戦でアンジェラが歌った「Light a Fire」も名曲です。私の心にしっかりと響きました。

そして、キャロル&チューズデイが準決勝で歌った「Lost my way」も名曲です。
単純なピアノの伴奏だけなのに、透きとおるような二人の歌声が見事に調和しています。
さらに後半のエンディングの「Not Afraid」も素晴らしい。低音部から高音部まで歌いこなせるアンジェラならではの魅力的な歌でした。
ついでにサイドニアフェスでキャロル&チューズデイが歌った「messege in the Wind」は、まさに風の妖精が歌っているような美しい音色でした。


この物語では、音楽を通じて、孤独だった少女たちが友達になり、やがて、仲間が増えていきます。
これも、音楽の力です。
おそらく孤独だったのは、キャロル&チューズデイだけでなく、アンジェラもでしょう。

世の中に、魔法というものは確かに存在します。
そのうちの一つが音楽です。
音楽は人の心を変えます。人の行動を変えます。そして、世界を変えます。
それは素晴らしいことです。

この物語は、キャロルとチューズデイの成長だけではなく、アンジェラの心の成長も描いています。
今まで我儘で世の中の厳しさを知らなかったアンジェラが、芸能界で生き残る厳しさを知り、少しずつ人間としての優しさを身につけてゆく物語でもあります。

最後にみんなで歌った「Mother」。あれはキャロル&チューズデイやアンジェラに仲間ができたことの証明です。
多くの人が一緒に歌うのは、それだけで感動します。

少々脱線しますが、
昔は交響曲と合唱とは全く別物として扱われていました。
しかし、ベートーベンの第九により、この二つが初めて融合したのです。
音が聞こえない型破りの作曲家が、音楽は何ものにも束縛されない自由なものであることを証明してくれたのです。
彼女らも、それを証明してくれました。
難民キャンプで育ったキャロルと大統領候補の娘のチューズデイ。
この二人がつくる歌は、まさに人類の輝かしい未来を象徴しています。

もし、海外の人と話す機会があれば、キャロル&チューズデイの話をしてみませんか?
それがきっかけで多くの人と親しくなれるかもしれませんよ。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 68
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

火と火星と火曜日と

オリジナルアニメ

視聴動機は2位以下を大きく引き離し【楽曲提供:Nulbarich】。好きですこの人。
2位は【キャラクター原案:窪之内英策】。『ツルモク独身寮』は名作なのです。“声優” “BONES” “Netflix提供オリジナルアニメ” 等が理由というわけではありませんでした。

そのNulbarichの楽曲はOP「Kiss Me」 ⇒ 良き
2クール全24話の前半1クールのOPでした。後半のOPに何がきたかと思えば、【小山田圭吾】。これまたどストライク。懐かしき渋谷系ってやつです。

そして作りに作ったりの挿入曲39曲。全部にハマることはなかったとはいえ、ことごとく良い。音楽の嗜好性で評価がわかれそうな作風でした。良きにつけ悪しきにつけ音楽アニメです。端的に、


 曲が素晴らしかっただけに他を頑張ってたら名作になりえた作品


視聴後の「えらい手のかかったPV」だったなとの印象が拭えません。

人類が火星に移住しだして早50年。移民出のキャロル(CV島袋美由利)と引き籠りお嬢様チューズデイ(CV市ノ瀬加那)とが意気投合して音楽で成り上がっていく、みたいなストーリーライン。
楽曲作成は人間からほぼAIに取って代わっている世界で、アナログな彼女らがどうのし上がっていくのかしら?といったところが興味を引くポイントでした。


▼物語
エピソードが軽いのと連続性を感じられない

{netabare}・高視聴率番組決勝出場の娘を監禁とかむしろ騒ぎ大きくしない?
・ストーカーのシベールもパッと登場しパッと退場{/netabare}

どうも違和感が残ります。ただし重要なところは消化不良ながら一定の答えは導き出せている。

{netabare}・母親と大統領選挙に絡む悪事
・火星の移民と移民への差別の問題
・タオとアンジェラのデザイナーチャイルド設定

3つめはぶん投げっぱなしに見えますが、兄と妹のような繋がりを意識させてアンジェラに救いを与えたんだろうと解釈してます。
前2つはそれなりでした。{/netabare}


▼キャラ
主役二人のキャラがびっくりするほど薄いと感じるのは私だけでしょうか。


▼作画 音楽 声優
GOOD!



いかんせん主役二人のキャラが立ってません。単発エピソードも説得力に欠けるため感情移入がしづらい。毎話新曲が聴けるのは良しとして、穿った見方をすれば、プロモとしてのアニメ動画を見せるのありき。日常エピソードは次のプロモまでの尺繋ぎかのようでした。

2クールの中でピークとなるような回{netabare}(12話:マーズブライテスト決勝、最終24話){/netabare}はあるものの、物語の描写が希薄なためカタルシスを得るまでには至らないのです。


でもまあいっか。なんだかんだ歌唱シーンではもってかれるし、そういう音楽を聴くものとして楽しむことにしたら気持ちも楽になりました。
普通の作品ならストーリーやキャラで魅せるようなエモーショナルな部分を歌が担ってくれてたようなもので、これはこれで実験的だったと思います。高評価の理由ですね。


  “ 音楽の持つ力 ”


そんなものを愚直に信じて、言葉ではなく音楽で語ろうとした意欲的な作品であると評価しました。詳細は後述します。
{netabare}※音楽史を紐解けば、人種問題について音楽が社会を変えていく役割を担った部分が認められます。『キャロチュー』主に後半で描かれた移民の問題などはそんな現実世界とのシンクロ率が高い。{/netabare}

・・・ただし良曲のなかでもアーティガン(CV宮野真守)のだけはイマイチのれませんでした。彼は癒しキャラとしてポジションを確立してたのでそれで良しとします。



※ネタバレ 音楽で語るetc

■ A I 社会でのアナログへの憧憬

私よりちょっと上の世代ですと、CDとアナログレコードとの転換期を目の当たりにしてます。
音もデジタルとアナログとでは違う。CD全盛となって温もりのようなものが無くなったと嘆く声をよく耳にしました。この皮膚感覚の有無は作品評価に繋がりそう。
チューズデイが音楽に触れたきっかけがシンディ・ローパーと実在のアーティストをフィーチャリング。サブタイトルはこれまた往年の名曲をもってきてアイキャッチはアナログ盤のワンカットです。
楽曲もやや80年代の匂いがしますね。“ベストヒットUSA”に馴染んでる世代の方には違和感がないと思われます。

{netabare}作中の世界は人の心の機微すら汲み取って曲を作れるAIが存在する設定です。
ロボットが人に取って代わる話はSFの定番であり、そのカウンターとしての人間賛歌を音楽という題材を使って描いたらこうなるんだろうな、のわりと分かり易い世界観でした。
近未来AI万能社会での人間のあり方といったテーマを、デジタルCDとアナログレコードとの関係とで示唆してた気がします。

アンチAIという立場を意識せずに、自然体で向き合ったのがキャロルとチューズデイの主役二人。{/netabare}

{netabare}裏主人公アンジェラ(CV上坂すみれ)だって、「マネージャーをAIにするわよ」と言われて露骨に嫌悪感を示した序盤でした。AIシンガーのアイコンであり、その現実を受け入れながらも温もりを求めて苦悩しアナログへ回帰していく。起伏のある魅力的なキャラでした。
キャロル&チューズデイの二人とアンジェラはいわば表と裏。合わせ鏡のようで作品の魅力に繋がってましたね。{/netabare}


■ 火にまつわるエトセトラ

火星。火の星が舞台です。情熱だったり生命の輝きだったり人の温もりだったりを、 “火” という言葉を使って歌詞に取り入れていたのは火星とかけてるんでしょうか。
ついでにチューズデイは火曜日。この作品は火に溢れてます。キャロルだって“聖歌”の意味合いがあって、クリスマスキャロルにはキャンドルの灯りが良く似合います。

{netabare}アンジェラの「Light A Fire」とキャロチューの「The Loneliest Girl」を聴き比べてみてほしいです。マーズブライテスト決勝で両者が披露した珠玉の一品。

闇・孤独・火といったワードが共通しており、抱える孤独に対して“寄り添う”キャロチューと“立ち向かう”アンジェラといった両者が呼応するかのような曲になってます。
歌詞も曲調もそうだし、キャラクターを表している曲にもなってあり、さらに今後の展開をも示唆していました。

アンジェラに必要だったのはキャロルにとってのチュー、チューズデイにとってのキャロルみたいな存在。

言葉ではなく曲で!
どっかのマンガの拳で語り合う世界と変わりません。{/netabare}


■VOICES FROM MARS

「火星の歴史に刻まれることとなった奇跡の7分間」毎度のガスのアバン。

{netabare}登場アーティストが増えてくるうちに7分ってそういえば!とわりと早い段階でネタの見当はついておりました。

「We Are the World」がクライマックスというこれ以上ない高いハードルを設定して大丈夫か?

この曲も7分です。そしてレコードとCDの端境期に埋もれた曲でもあります。レコードで一通り収益をあげて、その後CDを発売してみたもののさっぱり売れずに権利関係の煩雑さでしばらく絶盤となってたとか。アナログ時代の徒花のような大曲がモチーフとなってるのも感慨深いところです。


歌唱前。
「あなたたちこそが闇の中の光」「その光でもっと多くの人を照らすべきね」とクリスタルさん(CV坂本真綾)。いつの間にか「Light A Fire」してるキャロチューさん達だったりしました。


そして大曲「Mother」↓

 愛をともし火にして

 =火の正体は“愛”でした


 (母よ)進むべき道を示して

 =まだまだあなたが必要です


楽曲のクオリティは高かったです。というか好み。{/netabare}


{netabare}「Mother」って“地球”の意味もあるよね?

苦境に立ってる地球や難民に向けてのメッセージでもありました。あー言いたくてたまらない…

 {netabare}愛は地球を救う!{/netabare}{/netabare}



他にも歌詞に込められたメッセージなどひも解くと面白いかもしれません。なにせ39曲ありますからね。主題歌含めると40曲超えます。
ただしでもね、、やっぱりカタルシスが足りない。これだけの曲があってしっかり耕しておけば猛烈に感動しただろうに。。。もったいないなあ。




※閑話休題

■+Ultra

海外展開を視野に入れた作品を提供していく枠とのこと。
吹き替えが主戦場の声優さんの投入が目立ちましたね。おかげで洋画っぽかったです。
マーズブライテスト審査員(カトリーヌ、ベニート)、大統領補佐ジェリーの声あてはそういった方達でした。
セリフ回しなんかわかりやすかったかも。カトリーヌやTVショーの司会者のあの「HAHAHA」とテロップ出そうなセリフ回しをアニメ専業声優さんだと難しかったかもしれませんね。

{netabare}先述の火星・火・火曜の繋がりとか外人わからんでしょう。しかし敢えてそこわかってて狙ってるとしたら面白い。そんな茶目っ気が好き。{/netabare}



■奇跡って?

{netabare}そういえば、最終話Bパートを指して「どこが奇跡なん?」のツッコミ多数。

・ビッグアーティストが集まったのが奇跡?
・奇跡的な良曲を作れたこと?

“ミラクル”は最終話Bパートの7分間そのものを指さず、作中では描かれていない7分間の後日談を指して、“奇跡”と言いたかったのかもしれません。

・地球と火星間の関係が良好になったとか
・親子関係が好転したとか
・アナログシンガーの再評価があったとか
・デズモンドが一命を取り留めたとかフローラがスターダムに戻ったとか

知る由もありませんが、きっかけとしての7分間。
その根拠はこれ↓

{netabare}「奇蹟とは、常に結果に対してではなく、信仰を深めるきっかけとして起こるものなのです」
 byパイナップルARMY{/netabare}{/netabare}



視聴時期:2019年4月~9月 リアタイ視聴

-------


2019.10.09 初稿
2020.04.14 修正

投稿 : 2024/03/23
♥ : 54
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

トゥルー・カラーズ

アニメーション制作:ボンズ
総監督:渡辺信一郎、監督:堀元宣、
キャラクター原案:窪之内英策、
キャラクターデザイン:斎藤恒徳、音楽:Mocky、
音楽制作:フライングドッグ
原作:BONES・渡辺信一郎

西洋の油絵を彷彿とさせるようなオープニング。
女性デュオのヴォーカルに
アコースティックギターの音色が美しく重なる。
カーペンターズやキャロル・キングが脳裏に浮かぶ。
街並みはニューヨークを思わせる。

フジテレビがノイタミナとは別枠で、
より海外を意識した作品を発信することを
目的として制作される
「+Ultra(プラスウルトラ)」の第3弾。
あらゆる部分で海外のテイストが見受けられる。
そばかすのある金髪お嬢様のチューズデイと、
アクティブでサロペットパンツを着こなす黒人風のキャロル。
ふたりが火星のアルバシティで出会い、
音楽で意気投合するところから物語は始まる。
女性デュオとしてミュージシャンを目指すふたりは、
マネージャーのガスやAIプログラマーのロディーたちと
ともに音楽による表現の道を歩んでいく。

各話タイトルは、60~80年代のアメリカのヒットナンバー。
どれもインパクトのある良い曲ばかりなので、
知らない曲があれば、ぜひ聴いてみて欲しい。
総監督・渡辺信一郎の趣味が色濃いのではないだろうか。
個人的に思い出深いのは5話タイトルの
ザ・ポリスの『Every Breath You Take』。
日本語タイトルは『見つめていたい』。
アメリカ・ビルボードチャートのランキングで
8週連続1位を記録した大ヒット曲。
ウッドベースを弾くスティングを中心とした
モノクロのPVが最高に格好良くて、
子供ながらにこれは何か違うと思ったものだった。
インパクトがあって好きなのは9話タイトルの
モット・ザ・フープル『All The Young Dudes』で、
日本語タイトルは『すべての若き野郎ども』。
イアン・ハンターの気だるげで絡みつくような
ヴォーカルに泥くさいギターとキーボード、
若者の胸を打つメッセージ性のある歌詞も良い。
当時の若者のアンセムになったグラムロックだ。
解散寸前だったグループを存続させるために
デヴィッド・ボウイが曲を提供したが、
自身でも歌っていることがある。
キャロル・キングの作った曲が『A Natural Woman』と
『It's Too Late』の2曲入っているのは、
渡辺総監督の嗜好の表れだろうか。

この作品の最も特異なポイントは、
レベルの高い劇中曲を全てオリジナルで作成したことだろう。
オリジナルサウンドトラックを購入したが、
テイストの違う良曲揃いで、
何度でも繰り返して聴くことができる。

特にコンテストやライヴで披露された
アンジェラの『Light A Fire』、『Move Mountains』
『ALL I WANT』、そして
キャロル&チューデイ『The Loneliest Girl』や
『Someday I'll Find My Way Home』、
ピョートル『Dance Tonight』、
シベール『La ballade』、GGK『Gravity Bounce』などは
どれもその1曲で通用するほど聴きごたえ十分。
中でもいちばん好きなのは『Light A Fire』だ。
よくこれだけのアーティストと曲を集めたものだ。
70年代から00年代くらいまでに海外で流行った曲の
テイストが散りばめられているように思えるが、
インタビューなどを読むとかなりざっくりとした
指示しか出していなかったようだ。
それでも、どの曲も懐かしさを感じさせる。
例えばキャロチューの曲は、生音と女性ヴォーカルが特徴の
カーペンターズやキャロル・キングが基本だろうし、
アンジェラはフージーズのローリン・ヒルあたりを
意識しているのだろう。
GGKの曲は、90年代にアリーヤなどが一世を風靡した
プロデューサー・ティンバランドのチキチキと呼ばれる
サウンドを意識しているのは明らか。
幅広い魅力ある楽曲を聴かせてくれるのは嬉しい。
それにしてもアンジェラとキャロル&チューズデイ役の
アーティストのアリサや
ナイ・ブリックスとセレイナ・アンを
抜擢したのは、さすがのセンスの良さを感じさせる。

それと、キャラクターの造形や背景でモデルを想起させる。
タオ→テイ・トウワ、
キャロル&チューズデイ→カーペンターズ
(サイモン&ガーファンクル)
アンジェラ→ローリン・ヒル
クリスタル→ビヨンセ
ピョートル→ブルーノ・マーズ
OGブルドッグ→50セント
ガス→ジャック・ニコルソン(『シャイニング』)など。
事細かくチェックすれば、もっと出てくるだろう。
そういうことを想像する楽しみもある。

この作品は、基本的にはやりたい音楽をやるための
アニメと言っても差し支えない。
そもそも出発点はボンズの社長と渡辺総監督、
フライングドッグの社長によって、
本物の音楽のアニメ作品を作ろうという
コンセプトで立ち上がったもの。
世界に通用する良い音楽を違和感なくやるために、
火星という舞台が考えられたという。
これが地球だとどうしても様々な制約が
生まれてしまうからだということを
フライングドッグの社長がインタビューで語っていた。
上質な音楽を自由にやり切るために
全てが始まった企画なのだ。

さまざまな方面のアーティストに声をかけて、
幅広い有名アーティストが集まった。
フライング・ロータス、サンダーキャット、
ベニー・シングス、スティーヴ・アオキ、
エヴァン・”キッド”ボガート、ローレン・ダイソン、
コーネリアス、Nulbarich、cero、
アリソン・ワンダーランドなどのメンバー。
最近の最前線の音楽については疎いので、
私にとっては知らない名前もたくさんあるのだが、
例えば、サンダーキャットというベーシストは、
ケンドリック・ラマーのアルバム『To Pimp a Butterfly』に
参加しており、そのなかの『These Walls』という曲が
グラミー賞を受賞するなど世界的に知られている人物。
フライング・ロータスはジャズのジョン・コルトレーンが叔父で
6枚のアルバムをリリースしている親日家だ。
また、ここで初めて知ったベニー・シングスは、
作品内で多くの楽曲を手がけているが、とても質が高いと思う。
オランダ出身のプロデューサーということで、
これからさらに有名になるかもしれない。
前期OPを担当したNulbarichも初めて知ったが、
とてもセンスの良い曲で、日本人ということに驚いた。
挿入歌を手がけるアーティストは音楽のジャンルも多彩で、
映画制作でも集められないほど、あり得ない企画といえる。

ただ、そのせいでシリーズ構成や脚本を
練られなかったのは残念なところ。
当初の脚本は渡辺あやの名前で発表されていた。
これは『カウボーイ・ビ・バップ』の脚本を
TVドラマ『白線ながし』の脚本を手がけた信本敬子が
書いたのと同様に、普通のアニメにはしないために
新たな風を入れる試みだったのだろう。
しかし、スタートした時点で既にクレジットはなく、
原作とシリーズ構成を渡辺総監督自身が担当している。
テイストの違うオリジナルの楽曲を
多くのアーティストに依頼したため、
ストーリーに費やす時間が短くなってしまい、
降板する事態になってしまったと想像する。

渡辺あやは映画『ジョゼと虎と魚たち』で、
一躍有名になった脚本家。
この作品は、監督の犬童一心や
俳優の妻夫木聡、池脇千鶴などの名も高めた傑作。
とても心に沁みるラブストーリーなので、
もし未見な方がいたら、ぜひ観てもらいたい。
私は映画館で2度観て、田辺聖子の原作にも手を出し、
DVDも購入してしまった。
今度はアニメ化もされるので、
実写と併せて観るのもいいかもしれない。

話が逸れてしまったが、
そんな事情もあり、シリーズ構成や脚本に問題点が
あるのは否めない。曲に細かい指示を出せないことが
多かったらしく、曲に合わせてストーリーを
作り変えたこともあったそうだ。
物語に合わせて曲を作ったのは、
『The Loneliest Girl』だけ(12話までは)と
いうことだったので、ストーリーにはかなり苦労したようだ。
そんななか、唯一脚本が良かったと思えたのが
15話の「God Only Knows」だったのだが、
この回だけを信本敬子が担当していた。
やはりじっくり時間をかけて脚本を書いてもらえれば、
良いストーリーになったと思える。

一応、作品全体には、ぼんやりとしたひとつの流れがある。
それは人々が誰もが持っている「素晴らしい色」とでも
言うべきものだろうか。
第1話タイトルにシンディ・ローパーの
『トゥルー・カラーズ』を持ってきたことに
作品が目指したものを何となく読み取ることができる。
{netabare}それは、現在の世界情勢を反映させた、
民族主義的な火星の政治家たちの動きや、
現在、アメリカやブラジル、イギリスで起こっている
世界の流れをつなげて描いているのだろう。
しかし、ストーリーとしては、そのような民族主義に
LGBTやデザイナーズ・チャイルドなどの素材を
散りばめただけで終わってしまった。
音楽も当初はAIと人での対比で進めていたはず
なのだが、どこかへ飛んでしまっている。{/netabare}
おそらく主役をアンジェラにしたほうが、
ストーリーとしてはまとまったと思う。
全体を見渡すと、ほぼアンジェラが中心にいる
ストーリーに見えてしまう。

{netabare}最終話でミュージシャンたちがボランティアで集まり、
『We Are The World』的なメッセージを送る。
あらゆるものは、歌詞にあるような「母的」な
自分自身のアイデンティティに帰属し、
それぞれが違った美しい光を放つということだろう。
この『MOTHER』という言葉には、
おそらく「地球」という意味もあって、
常に変化が求められている時代であっても、
皆が地球という共通の「母」があるということか。{/netabare}
ラストのタイトルがサム・クックの
『A Change is Gonna Come』という差別体験について
歌った公民権運動につながる曲を使用している
ことからもそれは想像できる。
ただ、『MOTHER』を歌うことが
当初から煽り続けた「奇跡」かと問われると、
そこまでは感じられないし、
シリーズ構成が崩壊したせいで、積み重ねが弱く、
心に届くような物語にはならなかった。

とはいえ、アニメではまず集められそうにない
面子を集め、質の高い音楽を制作し、
それに合わせたストーリーを構築したのは素晴らしい。
演奏やダンスの動きもクオリティが高く、
実際に撮影をしてアニメに取り入れた、
こだわりの作品となっている。

これまで誰もやったことのない領域に手を伸ばし、
一定のレベルでやり遂げた。
それについては称賛したい。
(2019年10月26日初投稿)

投稿 : 2024/03/23
♥ : 60

68.1 9 移住アニメランキング9位
異世界のんびり農家(TVアニメ動画)

2023年冬アニメ
★★★★☆ 3.3 (202)
641人が棚に入れました
ブラック企業で体を酷使し闘病の末に命を落とした青年・火楽(ヒラク)が神様に授けられた「万能農具」を手に、異世界で吸血鬼や天使、エルフなどと出会いながら、第二の人生を送る農業ファンタジー。

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

スローライフもだけど内政物として観るととても楽しいなろう原作アニメ

ただし「のんびり農家」なのは3話くらいで、どちらかというと「農村」ないしはほぼ「国家」と言った方が正しいかもしれません。

『転生したらスライムだった件』のスピンオフ『転スラ日記』にも通じるところがあるかも。

「小説家になろう」での原作は読んでいて、コミカライズもかみさんが購入しているのでそちらを読ませてもらっていますが、商業出版されているライトノベルは未読です。

お話としては生前はオーバーワークが原因で結局病死してしまった街尾火楽(まちお ひらく)が異世界の創造神さまの力で転生し、そのときに転生ボーナスとして病気にならない健康な身体と「万能農具」を授かり、「死の森」と呼ばれる危険な秘境を開拓して「大樹の村」を作って仲間を増やしていくというものです。

なかなかヒラク以外の男性の住民が増えずにハーレムっぽくなっていく「なろう転生ファンタジー」的なところはあるのですが、このアニメ化ではヒロインの一人であるルールーシー・ルーを中心として演出などでハーレム感をマイルドに表現していて、忌避感を下げていると思います。

またルー中心に描くためのエピソード順の変更や登場キャラクターの整理(原作には出てくるがアニメでは登場しないキャラがいる)ということが生じているのですが、私見としては原作のエッセンスは大きく損なうことなくうまく処理できていたと思います。

あとはいくつか特筆すべき点を挙げるとすると:

[作画]
動きとかで作画枚数を多く割いたりはしてないけど、SDキャラの使い方が最高に上手い。

[声優]
作中で様々な状況により外見年齢や心情の変化が多いルーの、状況による演じ分けが素晴らしい。

[音楽]
第6話でのワイン造りのために収穫したブドウを踏むときに初出だった挿入歌が名曲で、後のエピソードでも様々なアレンジで使用されます。
(ただし、歌詞はまったく意味わからんですが。)

[キャラ]
ヒラク以外のキャラの多くが、大樹の村の内外を問わずけっこう経済的あるいは政治的な合理性に基づいて行動するのでストレスがたまりにくいです。ここまでみんな有能に描かれるなろう作品は少ないかも。

[ストーリー]
ヒラクが感じることと、むこうの世界の常識が微妙にすれ違っていてそこから生じるコント的なやりとりが面白いです。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 21
ネタバレ

フリ-クス さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ウラ設定がヤバい、DASH(it)村

いきなり私的な嗜好のハナシで恐縮なのですが、
基本的に僕は『ハ-レムもの』というのがキライであります。
最近だと、完走した作品はほとんどありません。

  だってさあ……

  なんだコイツ、とか思っちゃうような主人公に、
  よりどりみどりの美少女が次々寄ってきてキャッキャウフフ。
  ねえよ、と言いたくなるご都合テンカイに世界観がムンクの叫び。

  でもって、その美少女たちが、
  リアル女子なら一発でカエル化しそうなクサいセリフに感動し、
  好きよ好きよのがぶり寄り。
  優柔不断な主人公をめぐって押し合いへし合いせめぎ合い。
  ラッキースケベもたっぷりあるでよ皆の衆。

  と、DT乙、としか言いようがないハナシが目白押しなんですもの。


本作『異世界のんびり農家』も、見る前はその系統かと思っていました。
あいかわらず原作は未読なんですが、その原作が、
  なろう系
  +異世界転生もの
  +ハーレムもの
  +スローライフもの
なんて、ほとんどマンガン確定じゃないですか。
ですからまあ「Aパ-トぐらいは見てもいいかな」ぐらいのつもりで、
点棒8000点ぶん握りしめて視聴を開始しました。

  結果はというと……みごとに完走。
  ためいきもストレスもなく、楽しく見ることができました。
  けっこう、というか、かなり好きかもです、これ。

  そもそも、妄想ラブ要素が満載の『ハ-レムもの』じゃなく、
  いわゆる『環境ハ-レムもの』でしたしね。
  アレな方には物足りないでしょうが、拙にとっては実によき。

  あにこれの評価を見る限り、けっこう厳しめの意見が多く、
  完走しなかった方、ハナから相手にしてなかった方も多そうですが、
  モノづくり的にも『かなり興味深いトコロ』があるんですよね。

  というわけで、ほとんどの方にスル-されるのを覚悟しつつ、
  製作的な見どころも踏まえたりしながら、
  ちくちくと本作を語ってみようかと思う次第であります。


おハナシは、神さまの手違いで過酷な人生を強いられたという、
主人公の街尾火楽(まちお ひらく)39歳が、
つぎの人生では人のいないところでのんびり農業でもしたい、
という願いを聞き入れてもらい、
健康なカラダと『万能農具』を与えられ、森の中へ転生したところから始まります。

この森、実は『死の森』と呼ばれ、
魔物がめっちゃ徘徊していて人が寄りつかない(寄りつけない)という、
おおよそ『のんびりと農業を営む』には全く適さない過酷な場所でした。

ただ、与えてもらった『万能農具』がスグレモノ。
あらゆる農具(それも超高性能)に変化するというだけでなく、
  ・どんなに作業を続けても疲れない。
  ・念じて使うだけで、種がなくても願った作物がすぐに芽をはやす。
  ・ドラゴンすら倒す武器にもヘンシンする。
という、リアル農家の方々が逆上しそうなチ-トグッズであるわけです。

この『万能農具』のおかげで、
テレビでしか農業を知らないヒラク君もなんとか体裁を整え、
柵で魔物を防止しつつ、孤独な自給自足生活をスタートさせることができました。

やがて、一人、また一人と、
同居する『村人』が増えていきます。
(ヒトではなく、吸血鬼や天使、エルフなどの亜人ですが)

最初のころの村人は「追われてる」「住むところがない」など、
ワケありの、そしてけっこうな、いや、かなりの美人さんばっか。
ところがこの村人たち、建築や道具づくりなど村づくりに有用なスキルもち。
しかもなかなかにパワフルかつワイルドで、
居住区は少しずつ、健全かつ文化的に発展していきます。

こうなると移民希望者が増え、雪だるま式に人口が増加。
リザードマンだの鬼人族だのも移住してきて、
ワインなんかも作れるようになり、そこそこの『農村』へ進化します。

近隣の町や村、さらに魔王なんかと物々交換による『交易』もはじまり、
ついにはじめての赤ちゃんも産まれたりして、
のびのびと、明るく楽しい農村ライフが続いていくのでした。

 ……とまあ、リアル農家の方々からはジト目でにらまれそうな、
   ある程度はリアルだけど、かなりのご都合主義、
   アニメだからこそ許される『楽しい農村づくり』物語なのであります。


僕がこの作品を『よき』と評価しているのは以下のポイントです。

  ① ロリっ子がでてこない。
  ② ラブ要素・恋のさやあてみたいな部分が一つもない。
  ③ 女の子が『守るべきもの』でなく『たくましきもの』として描かれている。
  ④ ラッキースケベみたくチープな演出がない。
  ⑤ 主人公のヒラクくんがオンナにハァハァしない。

まず①『ロリっ子がでてこない』ですが、これ、ダイジですよね。

  このテの作品って『ロリ成分命』みたく考えてる方が少なくありません。
  開拓初期に非労働力のロリはいらんだろ、
  という極めてまっとう、というかイッパン常識的な考察に対しても、
   『見た目はロリだけど実は300歳』
  なんて使い古された手で強行突破してきますしね。

  その点、本作にはロリ成分がほとんどありません。
  物語後半、移民の中にショタだのロリっぽいのが混じりますが、
  あくまでもモブで本筋にカンケイなし。実によきです。

次に②『ラブ要素・恋のさやあてがない』のもグッジョブかと。

  村にやってくる美女たちは、
  みんなヒラクくんに『好感』はもつけれど『好感どまり』なんですね。
  あくまでも『いい村長さん』であってレンアイ対象じゃありません。
  (繁殖の『種馬』にしたいとは思ってますが)
  {netabare}
  そもそもヒラクくんは第一村人のルールーシーに、
  誤解と勢いでプロポーズをして、OKされているんですよね。
  ですから、
  最初っから『他のオンナのだんなさま』ポジションですので、
  ラブの対象としては外れているんです。
{/netabare}
  そんなわけで、実にケンゼンにのびのびと、
  明るく楽しく農業に従事しているところが実によき、であります。

そして③『女の子がたくましきものとして描かれている』ところも好感度大。

  ラノベ系の作家って女の子を『守りたい』傾向があるっぽくて、
  どんなツンデレだろうが女騎士だろうが、
  最後はオトコに守ってもらって目がハート、というのがお約束かと。

  その点、本作のキャラには『男性依存』の傾向がみじんもありません。
  ヒラクくんってチ-ト武器のおかげで最強なんですが、
  本作においては、それと『目がハ-ト』は別モンダイになっております。

  開墾・土木・建築などの力仕事も自分たちでこなしますし、
  『自分のチカラで生きる』という姿勢が身についているんですよね。
  丸の内の有能OLみたく、しっかり働き、しっかり飲み、しっかり遊び、
  いやほんと、みんなかわいいクセに、たくましい。
  オトコがなんぼのもんじゃい、と。

  こういう自立性、というかたくましさって、
  なんかあったら『政府・世間のせい』にする男連中にも
  ぜひぜひ見習ってほしいものであります(←差別発言)。


さらに④『ラッキースケベみたくチープな演出がない』ところもよき。

  というか、みんなワイルドかつたくましいし、
  そもそも亜人ですからジョ-シキも我々とは違うのであります。
  ハダカ見られたぐらいで赤面して、
   「ばっ、バカっ、あああ、あっち向いてなさいよっ」
  なんて定番のセリフ吐くヤツ、いないんですよね。

  男の子みんな大好き『モジモジ・うじうじ・テレテレ』演出もなし。
  混浴も平気で、ヒラクくんの方がモジモジだし、
  脱衣麻雀も大喜びでやって「脱~げっ、脱~げっ」の大合唱。
  
  で、そういう設定だからサービスカット大満開の章かと思いきや、
  全12話で、お風呂シ-ンが一回あるだけ。実によき。
  おさわり厳禁オトナの社交場、がきんちょはお帰りくださいまし、

最後の⑤『ヒラクくんがオンナにハァハァしない』もポイント高し。

  環境的には、美女にかこまれウハウハのハ-レム状態。
  そしてその美女たちのほとんどが『繁殖』をしたがっているわけでして、
  その気になればアラブの王様みたいな暮らしもできるわけです。

  でも、しない。奥さま一筋。
  だからといって、べつに草食系をこじらせているわけでもなく、
  奥さまとの間には、きっちり子どもを作っております。

  いやあヒラクくん、アンタ男だよ。


とまあ、ここまでがアニメに描かれているハナシ。
なかなかにケンゼンな『環境ハ-レム村』だと思うじゃないですか。
で、その方向でレビュ-しようかなと思い、
下調べとしてウィキペディアで原作情報を見てですね……思わず

  Dash it!(なんてこった、ちくしょうめ)

と叫んじゃった次第です(あ、いえ、実際には叫んでませんが)。

で、ここからはウィキで調べた原作情報・ウラ設定。
正直『反転術式かよ』と思うぐらい作品を見る目が変わっちゃいますので、
まるっとネタバレで隠しておきますね。
  {netabare}

 原作では、第二村人のティアって、
 入村当初からヒラクくんの『第二夫人』なんですね。
 ルールーシーの策略でティアもヒラクくんと「励む」ようになって、
 なりゆきで二番目の妻になっているそうなんです。

   アニメでルーが「わたし一人じゃカラダがもたないのよぉ」なんて、
   なにそのオモシロ掛け言葉、みたいな台詞いってましたが、
   実際は掛け言葉でもなんでもなく、マジでガチなアレだったわけです。
   (ヒラクくんが転生の際に神さまにもらった
    『健康な身体』がゼツ〇ンだったみたいですね)

 さらにウィキペディアによりますと、
 ヒラクくんは二人の妻でマンゾクしているのですが、
 種族繫栄のための『種馬』リクエストにお応えするカタチで、
 たいていの女の子とカンケイをもち、
 次々に子どもをこさえていくそうであります。

   アニメと同じく正妻であるルールーシーの子どもが一人目ですが、
   原作ではそれ以降、10人以上も、
   別の女の子との間に子どもを作っちゃうんだそうです。

   ちなみに原作の時系列では
   アニメ最終回のすぐあと、同じ年の秋にティアが出産するんだとか。

 え? そんなに原作改変したの? よくカ〇カワが許したなあ、
 なんて思って再視聴してみるとですね……

   『してる』描写は一つもないけれど、
   『してない』とはヒトコトも言ってない。

 ということに気づくわけです。
 まいった、完全にやられた。
 おまえ『シックス・センス』かよってハナシです。
 いや、確かにこれ、カ〇カワも文句言えないわ。
 原作改変(専門用語で言うと『翻案』)してるわけじゃないんだもの。

   まあ確かに、原作に描かれていることをそのまま表現していたら
     ご都合満載の『農村ゼツ〇ン物語』
   みたくなっていたことが容易に推察できるわけです。

   それはそれで別のリアリティなり需要なりはあるかもですが、
   少なくとも僕は、あんまり見たくないかな。
   そんなもん、大枚はたいてアニメ化する意味がわからんし。
 
 というわけで本作は、
 なんかちょっとかなりアレな原作を改変することなく、

   『健康的で楽しい農村づくり』

 にベクトル変換するという、レベル5級の能力が発揮されているのであります。
 製作的には、菓子折りもいらず大助かり。えらい、スゴい。
 倉谷涼一監督、グッジョブです。
{/netabare}


で、本作の拙的なおすすめ度は、
あまり深く考えずまったり楽しむ、という前提でAランクです。

万能農具のチ-ト性能もさることながら、
物語の中盤あたりからかなりのご都合テンカイで村が発展していくので、
そこのところにツッコむと一歩も前にすすめません。

本作の視聴ポイントというのはそこではなく、

  健康的でたくましく、おまけに相当きれいな女の子たちが、
  元気に、明るく楽しく農村づくりをしていくさまを、
  ちょい鼻の下をのばしつつ、にこにこ笑いながら健全に楽しむ。

という、かなりマニアックな楽しみ方に限られるわけなのであります。


そのぶん、見るだけでも楽しめるよう、映像にリキ入ってます。
制作はゼロジ-さんで、
これまで『悪くはないけどクセがあって微妙』なイメ-ジだったんですが、
本作は『健康的できれいなおねいさん』の作画に大成功。
ほとんどのキャラが、姿勢がよく、リッパな谷間をおもちです。

キャラデだけでなく動画さんもがんばってまして、
なめらかな人体曲線やタブりの多い洋服デザインがけっこうあるのに、
動かすべきところはきっちり動かしています。
OP、ル-ル-シ-がジャンプしてくるっと一回転するところなんか、
ちゃんとジャパニメーションしていますもの。

そして、人物作画にリキいれるだけでなく、
畑・森・農作物などもていねいに描き込まれており、
質感や空気感まで表現できていて、世界観が心地よく伝わってきます。

  こんなにいちいちリキいれてたら予算合わないだろ、
  というような心配は、SD演出の多用でカバ-。

  このSD演出、ただ単に枚数稼ぎになっているだけでなく、
  ちゃんとカワイイうえに、メリハリが効き、
  シ-ンに応じた『演出』として立派に成立しているんですよね。

  わりとよく見る枚数稼ぎの手法であり、
  キメツでもしょっちゅうやってたりするわけなんですが、
  あっちは『箸休め』的な扱いなのに、
  こっちは本編進行と連動していて、しかも違和感がありません。
  倉谷涼一監督、本作に限って言えば、かなり有能です。


キャラクターの作り込みも、けっこう繊細にできております。
みんな『きれいなおねいさん』であるだけでなく、
『チ-ト的能力もち』『しっかりした自立心もち』『ウジウジしない』
という共通項をもっているのに、
しっかりと性格付けができていてキャラかぶりがありません。

  とりわけスゴイと思うのは、
  関西弁も廓言葉もにゃんにゃん言葉もボクっ娘もおかしな語尾もなく、
  みんな基本的にきれいな言葉遣いをしているのに、
  個々のキャラが書き分けられ、きちんと立っているところ。
  これ、作家を目指すワカモノたちにぜひ見習って欲しいかも、です。

  それだけでなく、同じキャラが同じ内容の話をするときも、
   「ラスティって呼んでください」
   「ラスティって呼んでね」と、
  相手との位置関係で自然に言葉が変化しているんですよね。
  こういう『キメ言葉にせず会話の自然さをダイジにしてください』という指示、
  脚本家的にはとてもウレしいものなのでありますよ。


キャラに生命を吹き込む役者さんたちも、いい仕事しています。

本作って、難しくとんがったキャラがいない分、ぶっちゃけて言うと
大手事務所に正所属できるレベルの役者さんなら
  『誰でもそれなりにできる』タイプの作品なんですね。
正直、駆け出しの若手や預かりレベルの役者さんをずらりと並べても、
ふつうの視聴者さんなら、良し悪しが判別できないテイストかと。

それだけに、違いを生んだり声の表情をつくったりするのがムズカしい、
手を抜こうと思えばいくらでも抜けるけど、
役者の根性見せたんよ、と思えばかなり難易度が高くなる作品であります。

  で、根性見せてくれたのが、物語序盤メインのお三方。

     下地紫野さん(ルールーシー役)
     洲崎綾さん (ティア役)
     Lynnさん(リア役)

  「わかったわよ」「え? ここにですか?」「皆さん、張り切って働きますよ」
  なんて、個性の出しようがなさそうなセリフにも徹底的にこだわって、
  実に活き活きとした人物像をつくってくれました。

  先行役者がいいお芝居をすると後続が『燃える』のが役者の性質であります。
  その例にもれず、中ほどから出てくる役者さん、
  藤井ゆきよさんや日岡なつみさん、伊藤かな恵さん、岡咲美保さんなどが、
  少ない出番でなんとか自分の爪痕を残してやろうと、
  テンプレふうでありながらも実はすごく細かいお芝居を披露しています。

  おかげさまで、同系統の『なろう系』作品に比べ、
  かなり耳ざわり・聴き心地のよい作品に仕上がっております。実によき。
  (それにしても洲崎綾さん、相変わらずスゴい声してますよね)


音楽は、OP・EDともに、耳に楽しい素敵な曲かと。
とくにOP、
この曲に下地さん・洲崎さんの二人をあてるのは、反則級のキャスティング。
劇中の、葡萄ふみの唄もいい感じ。
劇伴は……ごめん、なんにも耳に残っていません。



というわけで、作り手側はかなり頑張って、
あちこちに強い『こだわり』を見せている本作なのですが、
ショ-ジキ言って、視聴者の琴線に触れそうなところは少なめです。

のんびり農家、というわりにけっこう新展開が多めでせわしなく、
たとえば『のんのんびより』あたりと比べると、
ぜんぜん、まるっきり『のんびり』感が足りませんしおすし(←死語)。

  既述のように、ロリっ子もラッキースケベもなんもなし。
  ついでに言うと、リアル農家につきまとうJAとのしがらみもなし。
  ほんと、あっちこっち流用されているキャッチコピー、
    『なにもない、がある』
  みたく、田舎のやけくそ集客作戦が似合いそうな作品であります。

ただまあ、ムネの谷間と自然とおいしそうなごはんはたくさんあります。
そして最終話、出産前後の村人たちを見ればわかるように、
ヒト(亜人ですが)の本能に基く日々の営みが、ていねいに描かれています。

おすすめ度Aと書きましたが、
それはあくまでも『拙はスキ』という主観まみれの評価でありまして、
決して万人にすすめられるタイプの作品ではありません。
ですが、粗製乱造のおおい『のんびり系』において、
細部まできちんと気を使って作り込まれた『良作』ではあるまいかと。

女性の方が見られても
 『男の子ってホントこういう話、好きよねえ』
なんて感じにはならないと思います(たぶん、ですが)。


  ちなみに、脱サラ・定年退職してあこがれの農村生活を始めたものの、
    思ってたのとチガう、
  なんていろいろご苦労なさっているハナシをよく耳にします。

  まあ、あたりまえですよね。世の中そんなに甘くありません。
  都会には都会の、イナカにはイナカの、
  いろんなしがらみだったりアレだったりがあるのが人の世かと。

  都会であくせく働く方々にとっては、
  こういうかなり非ゲンジツ的なアニメをたまに見たりして、

    農村っていいなあ、自然っていいなあ、

  なんて思ってるのが『ほどよい生き方』なんじゃないのかなあ、
  と、愚考する次第なのであります。ゆめゆめ、
    あいてます、あなたのNOSON♪
  みたいな誘い文句には、カンタンに乗らない方がよろしいかと。

  いやほんと『となしば』というのは、
  言い古されているようでいて、
  いつの時代もけっこう真理だったりするんですよね。

    むかし隣の家で飼ってた豆芝は、ガチで可愛かったんですが。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 20

カミタマン さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ハーレムだけど・・・(汗)

2023/07/03 初投稿

「異世界スローライフ」物を謳っている作品は数多くありますが,概ねスローライフでは無かったりします。

この作品は,割と地道に生活します

トイレを作り
寝る所を作り
畑を作り
水路を作り

やがて家族が増え
もっと家族が増え
仲間が増え
村に成長して

戦闘要素のかなり弱い「転スラ」みたいな感じ


村づくり・国づくり
外交・経済

こう言うのが好きなのです。
そんなわけで,量産型B級臭強めの本作ですが,自分としては高評価です。


あえて,難癖を付けるとしたら・・・

1 「農家」に違和感問題
ずっと,「農家」に違和感を感じながら視聴していました。なんでか自己分析。たぶん自分の中で「農家」って社会の中で主として農業を担当する人と言ったイメージなのです。農家は野菜などを生産し,漁師は魚を捕り,手工業者が道具などを作る感じでしょうか?でも火楽は全部やっちゃいます。農家じゃ無くて自給自足ですよね?後半,外部と交易を行い,やっと社会に農業で貢献するようになりますが,その段階には「農家」というよりは「農村(あるいは小規模な国家?)」レベルの規模に成長していてやはり違和感が・・・

2 ネーミングセンス悪すぎ問題
主人公の名前がひど過ぎ・・・街尾 火楽(まちお ひらく)って(´・ω・`)
文字で見るまで勝手に「拓(ひらく)」というイメージでした。火楽ってぱっと見「火薬(かやく)」にしかみえないw

投稿 : 2024/03/23
♥ : 14

68.1 10 移住アニメランキング10位
GODZILLA 怪獣惑星(アニメ映画)

2017年11月17日
★★★★☆ 3.6 (103)
408人が棚に入れました
監督:静野孔文/瀬下寛之、ストーリー原案・脚本:虚淵玄(ニトロプラス)で制作される。

声優・キャラクター
宮野真守、櫻井孝宏、花澤香菜、杉田智和、梶裕貴、諏訪部順一、小野大輔、三宅健太、堀内賢雄、山路和弘、中井和哉
ネタバレ

ninin さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

シドニア-ゴジラ

約2時間 3部作の1作品目

友人(ゴジラ好き)に誘われて先日観に行きました。

地球に出現したゴジラたち怪獣に占拠され宇宙に逃れた人類が、再び地球を人類ものにするため地球へとゴジラを倒しに行くお話。

シドニアの騎士を製作したポリゴン・ピクチュアズが製作し、宇宙のシーンが多く、キャラたちの服装(宇宙服みたいな)も似た感じがして、観てすぐに「シドニア」っぽい感じがしました。

ゴジラを本格的に観たのは初めてなので、私の観る前のイメージでは都市を破壊して暴れ回るゴジラ、逃げ惑う人々、対処しようする政府という感じでしたが、この作品はそれとはまったく違う感じでしたね。

戦闘シーンは、劇場版ということで音響も作画も迫力満点でした。{netabare}(2番目に出てきたゴジラデカすぎですw){/netabare}

お話は結構サクサクと進んでいましたね。まだまだ謎の多い作品なので、この作品だけを観ても物語の評価はできません。

「シドニアの騎士」が好きな方は観てもいいかも知れませんね。

最後に、次回作も友人と観に行くことになりましたw

投稿 : 2024/03/23
♥ : 21
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

ゴジラで想像してなかった世界観

 アニメのゴジラ、CGでだとは初めてだったです。幼い頃から、ゴジラはよく知っているけど、アニメは今まで想像もしなかったです。ハリウッドのゴジラに近い姿で、ムキムキ筋肉のゴジラだったです。

 今まで見たゴジラどれにも属さない、時代設定立ったです。栄えていた人間社会に突如怪獣たちが出て来て、後にゴジラ登場で人類絶体絶命になる。異星人も助けに来て科学技術進歩したけど、敵わず残った人類は地球から逃げて、20年間新天地を求めて漂流することになるです。
 結局良い星は見つからず、地球に帰ってきたけど2万年経っていて生態系も変わり、ゴジラもまだいるという状況です。
 で、このアニメでは主人公?ハルオを初めとした人々が、ゴジラを倒して地球に帰ろうという話だったです。

 ハルオにとってゴジラは、深い因縁を持っていて、いろいろ調べていて倒す執念を燃やしている所が凄かったです。

 地球に降り立った時、変わり果てた環境やゴジラ以外にも生物がいて、襲撃受けたり大変大変。来た人たちがパニックになりながらも、結局ゴジラを作戦通りに倒さないと、宇宙船にも帰れない状況になるです。

 ゴジラにあって戦うことになるけど、その戦闘シーンが実写のゴジラにもない最新兵器、乗り物に乗った人によるゴジラへの接近戦は非常に白熱し、このアニメの見せ場だったです。犠牲者を出しながらも命を懸けたゴジラ殲滅作戦、成功するのか?は見てのお楽しみです。

 映像と響き渡る爆音、時代というか世界観、今までのゴジラにないもので私は面白かったと思うです。

 最後の方で、とんでもない大どんでん返しがあるのもお楽しみです。このラストは、このアニメらしいといえばらしいのだが・・・・・です。{netabare}最後に出てきた謎の少女?は!何者か?2018年5月上映予定の「GODZILLA 決戦怪獣増殖都市」に続くらしいです。{/netabare}

 

投稿 : 2024/03/23
♥ : 12

ZIN さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

評価がなぜ低い?

つい先日DVDを借りてきて視聴しました。

なぜGODZILLAという名前をつけた?というコメントを多数みかけましたがゴジラが出てくるからでしょうと突っ込みを入れたかったですww

本編に関していえば分かりやすい物語という印象をうけました、3Dアニメーションが苦手なかたでも全然大丈夫だと思います。
庵野秀明監督のシン・ゴジラを観たときにこれ以上のゴジラは出てこないだろうと思っていましたがそれよりも遥かにヤバイ強さでした。
正直な感想を言えば映画館で観たかったなぁ~と思いました。

私は怪獣映画、モンスターパニック系の作品が大好きですがそれよりかはずっとSF寄りの作品です。
SF映画やモンスターパニック系の映画は名作より駄作の方が遥かに多く、途中で見るのを止めるくらい酷いのも多々あります。
そんな映画と比べるのが失礼に思うくらいの良作です。

常々思うのが作品の批評を観ないで、先ずは自分の目で見て確かめた方が良いと思います。
その人がどう感じるのかは三者三様ですが、評論家を気取ってアレもコレもとダメ出しをする方々には正直うんざりします。

全3部構成で「怪獣惑星」、「決戦機動増殖都市」、「星を喰う者」と続きます。まだ観ていない方は先ずその目で確かめてはいかがでしょう(*^^*)

長々と読んで頂きありがとうございました!

投稿 : 2024/03/23
♥ : 1

68.6 11 移住アニメランキング11位
家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ(TVアニメ動画)

1981年冬アニメ
★★★★☆ 3.7 (49)
266人が棚に入れました
世界名作劇場第七作。厳しい無人島のサバイバル生活を、家族揃って楽しげに切り抜けていく物語が人気を呼ぶ。スイスに住むエルンスト医師とその家族は、医者が不足しているという未開の地オーストラリアに出向くことに。しかし旅の途中乗っていた船が沈没。命からがら近くの孤島へ逃げのびた一家はそこで自給自足の暮らしを始める。長女フローネはそんな境遇にもめげず、元気に美しい自然と戯れるが…。

声優・キャラクター
松尾佳子、古谷徹、高坂真琴、平井道子、小林勝彦、小林修
ネタバレ

ユニバーサルスタイル さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

人間として、家族として理想的な在り方。

世界名作劇場シリーズは登場人物が苦境に立たされるものが多いと思いますが、フローネの境遇も中々のものです。


あらすじ
{netabare}
ロビンソン一家は、居住地であったスイスから転勤のため家族総出でオーストラリアに移住することになる。
移住を決める際一悶着あったが、なんとか全員でオーストラリア行の船に乗り込んだ。

しかし一家はその航海の途中で大嵐に巻き込まれ船は座礁してしまう。父エルンストの機転で急ごしらえのイカダを作り一家は船からなんとか脱出。

イカダが偶然たどり着いた陸地はなんと無人島。その日から一家の無人島生活が始まる・・・・・・。
{/netabare}


それまで裕福な暮らしをしていた医者の家族が、一転して無人島でのサバイバルを強いられることになる。過酷な物語です。

今思うと、当時イギリスの植民地であったオーストラリア自体あまり治安の良い場所でなかったと聞いたので、どちらにしろサバイバルなのでは・・・とも思いました(笑)


いきなり無人島に放り出されたことによる絶望や、島で待ち受ける様々な苦難の連続に、一家は打ちのめされます。

しかし、フローネはじめロビンソン一家の人々はお互いに助け合い励まし合い、この苦難に逞しく立ち向かっていくのです。


では、そのロビンソン一家の紹介です。
{netabare}
まず一家の大黒柱であり父親のエルンスト。

彼は世界中どこを探し回っても見つからない位に頼もしい父親です。

医者として彼より腕の立つ人間はいても、彼より精神力が強くこのような過酷な場所で生き抜いていける人間は存在しないでしょう。

彼の判断力と行動力、そして家族を支えぬく家主としての責任感の強さは驚嘆に値します。


次は子供達の支えである母親のアンナ。

最初こそ現実を悲観して頼りないものでしたが、次第に元来持つ芯の強さが表れはじめ肝っ玉母さんとして活躍していきます。

子供達のため・家族のためを思うと無類の強さを発揮する、頼もしい女性だと思います。

気品に満ちた人柄で、どんな環境でも身辺の整理や子供達の教育そして自尊心道徳心を忘れない、大人の鏡です。


そしてしっかり者で一家を助ける長男のフランツ。

母のアンナと同じく最初は挫けそうなほど気弱だった彼は、何度も挫折を繰り返すことで頼もしく成長していきます。

島での生活の中で長男として、また男手としての自覚を持ち一家を支えていきました。

下の姉弟の面倒見もよく、両親に強く信頼されていたことと思います。


主人公であり元気いっぱいに笑顔を振りまく次女のフローネ。

彼女はタイトルでも主題歌でも強調され、あたかも彼女を中心に物語が進むのかと思えば意外とそうでもありません。

彼女の天真爛漫さが一家を絶望の淵から救った、そういう意味での主人公であると言えます。

なんだか美少女じゃないとやたら喧伝されていますが、彼女が常に頭に挿している赤いハイビスカスの花言葉は「繊細な美」。そういった奥ゆかしい美しさを彼女は持っていると思います。


最後に純真無垢な三男のジャック。

彼はまだ幼く他の家族に比べ現実を直視できていない面もあると思いますが、それ故に彼の無邪気な行動は癒しを与えてくれます。

幼いため島での生活への順応も早く、愚図ったりして家族を困らせるようなことも少なかったと思います。

マイペースで時々家族をハッとさせるような行動を見せる彼のこれからの成長が楽しみです。
{/netabare}



こんな一家の生活は、残酷な現実に反して非常に生き生きしています。
ただ毎日を生き抜いていくばかりか、チェスや音楽を楽しみ、島中を探検し、まるで自然と戯れているようです。

だから見ていてとても胸が温かくなります。サバイバルだからといって殺伐とした雰囲気ではなく、常に人情味あふれる優しさに包まれているよう。ある種非日常的な空間での日常を描いた作品といってもいいでしょう。

長男のフランツと長女のフローネの年齢設定が絶妙です。(フランツ:15歳 フローネ:10歳) これフランツとフローネの年齢が逆だともっと複雑になってしまいますね。お年頃の女の子が主人公だと色々大変ですし・・・これで良かったのだと思います。

フローネが些細なことで傷ついてしまったときはフランツが兄らしく落ち着いたフォローを、逆にフランツが繊細さゆえに塞ぎこんでしまったときはフローネが元気一杯励まします。

この二人がとても兄妹らしい関係で微笑ましく、たとえ非情な出来事が起こっても、一家で力を合わせて乗り越えていく強い絆がそこにはあります。


そういった過酷な環境を生きる人間達の強い姿や、今や失われた家族の共同体としての形がこのアニメには息づいていると感じました。



作画、特に人物や小物の作画に関しては今見るには厳しいかもしれません。

対して背景・風景の作画は淡い水彩画のようなタッチで、美しい出来栄えです。
だから人・物における作画の粗を考慮してもこれ以上の低評価は付けられません。


また作中の音楽は主題歌をはじめとして、今なおクオリティの高さを感じられるほど完成されています。
南国系とでも言えばいいのか・・・明るさと静けさが同居した不思議な感じです。アニメのサントラの域を超えた普遍的な音楽だと思えます。

総じて風景画および楽曲の美しさは芸術的とさえ思えるものでした。


そして感じたのは、1話1話の起承転結の展開の巧みさと、登場人物の交わす台詞一つ一つの人情深さ。
特に後者は、制作者が相当に気を使って言葉を選んでいたんだろうと想像できます。世界名作劇場の名に恥じない丁寧さ。
台詞から温かみを感じたことで、聞き入るだけでなんだか心が満たされます。


全50話という尺の長さ、人物作画の粗さ等を許容できる人には是非オススメしたい名作アニメです。




あとは個人的名エピソードのメモです。
{netabare}
まず第12話「おかあさんの活躍」。
ロビンソン一家が住んでいた住処が野犬に襲われ、母のアンナが一晩の間死力を尽くして守り抜くという壮絶な回。

この回は今までの回とは毛色が異なり、本気の恐怖を突き付けてきました。アンナの強さに感服です。


次に第13話「フランツの目」。
フランツが虫が放った毒を目に浴び、危うく失明しかける話。

二週連続で息がつまるような回が続き、こっちまで参ってしまいそうでした。


あと第21話「亀の赤ちゃん」。
ある日浜辺で海亀を見かけたロビンソン一家。その海亀が産卵期であることを知り、産卵の様子を見届ける回。

親子揃って生命が誕生する瞬間を見ることは現実滅多に叶わないと思います。そうした貴重な体験を通じて、親子の絆が深まる感動的なエピソードです。


最も好きな回が第27話「無人島の音楽会」。
父エルンストと母アンナの結婚20周年を子供達が祝福する回。

別荘を作って夫婦を二人きりにしてあげたり、そこでささやかな音楽会を開いてお祝いする子供達の愛は素晴らしいものでした。

そうした子供の成長を喜んで涙する母の姿も感動的でした。


続いて第28話「ジャックの病気」。
ジャックがマラリアのような病気に罹り高熱を出して寝込んでしまう回。

生死をさまようジャックを救うために、家族で必死に助け合う姿に心打たれます。


そして第31話「わたしはのけもの?」。
フローネの11歳の誕生日を祝うために、フローネに内緒でプレゼントを用意するべく奮闘する回。

ちょっとフローネちゃんが可哀想ですが、それだけに最後の真心の籠ったパーティーとプレゼントの感動はひとしお。


ラストにかけた第45話「死なないでロバさん」第46話「ヤギをすてないで」第47話「続ヤギをすてないで」第48話「さようなら無人島」。
島自身と、今まで関わってきた生物への別れを体験する回。

長い生活の中で愛着が湧いてきたものたちへの別れの感情を強く体現した名エピソードの数々。

ここまで見てきた感慨深さもありますが、親しい者との別れの辛さがフローネを通して感じられる、名作と呼ぶにふさわしい幕引きです。(まだちょっと続きますが)
{/netabare}

投稿 : 2024/03/23
♥ : 12

luna さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

50話だから一緒に漂流体験

50話もあります!

こんなに長い作品観るのはじめてだけど
50話必要なお話でした

タイトルにあるように、
家族が漂流生活するお話ですが、
何が起こるかわからない
無人島での長い生活を
一緒に体験できるんです

特に
個性が強いフローネと
ものすごいポジティブなお父さんが
印象的でした

サバイバル色を薄める設定がうまく
家族と動物、そして他人を信じることなどが
テーマになっていて、
一番最初の方にペテン師が出てくるのですが、
このエピソードが終盤に上手くつながってて
少しびっくりです

絵が流石に古く感じたのと
フローネとジャックが安易に銃に触れても
何も言われないシーンに違和感をおばえたけれど

このゆったりとした時間の流れは
いまの12〜24話の作品では味わえない
貴重なものでした

投稿 : 2024/03/23
♥ : 6

66.1 12 移住アニメランキング12位
愛少女ポリアンナ物語(TVアニメ動画)

1986年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (37)
145人が棚に入れました
1986年にフジテレビ系の「世界名作劇場」枠で放映。父親を亡くして孤児となった少女ポリアンナが、貧しさや不幸にも負けず明るく生きていく姿を描く。父親を亡くして一人ぼっちになってしまったポリアンナは、叔母のパレーにひきとられて暮らすことになった。ポリアンナはお得意の“よかったさがし(どんなことが起きても、その中から良かったと思えることを探して明るく振舞うこと)”で、ベルディングズビルの人々を幸福にしていく。しかしある日、思いがけない事故によってポリアンナの足が動かなくなってしまう。原作はエレナ・ホグマン・ポーターの小説で、TVアニメ版は第一部が『少女パレアナ』、第二部が『パレアナの青春』を元に制作されている。

声優・キャラクター
堀江美都子、田中秀幸、野沢雅子、土井美加

REI さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

児童アニメなので素直に観ましょう

児童アニメなので素直に観られる方はとても感動できると思います。
素直に観られれば泣けるところ満載ですよ。
素直に観られない方は合わないと思います。

ポリアンナの素直さがとても魅力的なアニメ

声優さんでは野沢雅子さんがちゃんとした大人の女性の役をやっているアニメは珍しいかもしれません。池田昌子さんも出ているので、お、999とか思っちゃいました(笑)

キャラでは潘恵子さんが声を当てているナンシーがとてもチャーミングです。

ポリアンナ効果という言葉を作ったアニメ

全てのアニメに携わった方に感謝を!

投稿 : 2024/03/23
♥ : 1

66.1 13 移住アニメランキング13位
南の虹のルーシー(TVアニメ動画)

1982年冬アニメ
★★★★☆ 3.7 (23)
103人が棚に入れました
「世界名作劇場」第8弾。まだ未邦訳のオーストラリアの小説をアニメ化したのが特色で、テレビ放映と同時に翻訳が雑誌に同時連載された。新天地の耕作場を求めてオーストラリアに移住したポップル一家。8歳の三女ルーシー・メイを含む7人はこれからの生活に夢を抱くが、待っていたのは入手しかけた耕作地の契約を反故にされるなどの苦難の日々だった。それでも強い絆で支え合う一同だが、ある日、ルーシーが記憶を失ってしまう。

声優・キャラクター
松島みのり、吉田理保子、堀勝之祐、谷育子、玉川砂記子、松田辰也

R子 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ルーシーの『リトル~!』が頭から離れない!

世界名作劇場の一作品。
とってもかわいいアニメだった。

自分の農場を持つことを夢見て一家を引き連れてイギリスからオーストラリアへやってきたアーサー・ポップル。
物語の主人公であるポップル家の三女ルーシーは、慣れない土地で出会う動物たちに興味津々で新しい動物を見ては「飼いたい!」と家族を困らせる。

アニメの最初の数話は特に重大な事件も起こらずに退屈さを感じたが、ストーリーは犬に似た野生の動物「ディンゴ」を見つけたところから動き始める。
「リトル」と名付けられたディンゴの子は、ルーシーの言いつけを良く守ってかしこく成長していく。
この「リトル」とルーシーの絆が、このアニメの見どころの一つである。凶暴で恐れられるディンゴを守ろうとする幼いルーシーが健気で本当にかわいい。ルーシーの声もとてもかわいく、「リトル!」と呼ぶその声が頭から離れない。泣くときのルーシーの涙や、声優さんの演技も光っていて、思わず涙してしまった。

途中、様々な苦難に見舞われるが、家族の深い絆で乗り越えていくところも魅力だ。
世界名作劇場には珍しく、誰かが死んで悲しい涙を流すことがなかった。これからもルーシーの声を聴きたくて観ることがあると思う。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 7

luna さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ルーシーメイの成長と希望の国の物語

物語の初め
希望に満ち溢れた新しい土地に到着した頃
姉ケイトの方が明らかに魅力的で主人公してます

それから
苦難の物語
終盤にかけて
妹ルーシーメイの成長を
心理描写を上手く取り入れて
丁寧に描くことで
いつのまにか主役の交代

そのポイントは
あるふさわしくない場面で
ルーシーメイが思わず
「きれい」
と呟いてしまうシーンではないかと思いました

感性豊かなルーシーは
リアリストのケイトより
自分の置かれた環境に
頭ではなく
心で反応しているみたい

途中で学校のシーンも出てくるのですが
子供向けに作られた教育要素も強そうな作品なのに
学校が全く魅力的に見えない描かれ方をされているのも
印象的でした

後半、ルーシーメイに関して
少しファンタジックな展開があるのですが
決して違和感なく
起こってもおかしくない?って思えるし
きれいで魅力的なエピソードだったと思います

シンプルでかわいいエンディング曲の描写も
作品の雰囲気にとても合っていて
物語が少し重く展開しても
上手く中和してくれるのもよかった

投稿 : 2024/03/23
♥ : 4
ページの先頭へ