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「さよならの朝に約束の花をかざろう(アニメ映画)」

総合得点
88.9
感想・評価
651
棚に入れた
3475
ランキング
93
★★★★★ 4.2 (651)
物語
4.2
作画
4.5
声優
4.2
音楽
4.1
キャラ
4.1

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さよならの朝に約束の花をかざろうの感想・評価はどうでしたか?

ネタバレ

ももたろす さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

悲しいだけが別れじゃない

長寿で老いない種族の女の子が、とある事件で里を離れ、そこで出会った人間の男の子を母親がわりに育てる話。

作品の裏では、血の繋がりや、いわゆるDNAを求めるストーリーが展開されているなか、マキアとエリアルの親子愛が形成されている様子からテーマの訴求が見受けられて良かった。
とある作品{netabare}(プラスティック・メモリーズ){/netabare}のように、世界観の設定から、ある程度オチというものは読めたりするけどこういうのはわかってても弱いタイプなので尚良かったりする。

好きなシーン
①{netabare}メザーテ陥落後、エリアルがマキアを最後に「母さん!!」て叫ぶシーンは涙ものやね… 思春期になったエリアルが思った以上にマキアに対しての当たりがキツくて見てて辛かった…; あれがあったからこそのこのセリフだったからより泣けた
マキアも最初はわからないの一点張りな子だったけど年月を重ねるにかけて母親としての振る舞いが濃く描かれてて良かった{/netabare}
②{netabare}やっぱりラスト、マキアがエリアルの死を看取って外で号泣するシーン 回想やセリフの入り方、声優さんの演技がとても良き。
血が繋がっていないけど、2人の「約束」があることで、親子の形を作っていたとも見れるからこそ、マキアが泣きながら「約束守れなかった」と言いながらたんぽぽの花が空に舞うシーンは完成度が高すぎる…さすがP.A{/netabare}

大満足でした。

投稿 : 2024/04/13
閲覧 : 17
サンキュー:

0

ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

追記。そうか、インターステラーか

24年4月追記

 どうも既視感が強いなあ、何か忘れてるなあ、と思っていました。SF映画のリストを見ていて思い出しました。ラスト場面が「インターステラー」ですね。そういえばインターステラーの最後の場面が本作そのものでした。
 別にだから悪いと言っているわけではなく、含意も若干ズレていますし、多分この作品はSF小説・SF映画からいろいろ題材を持って来て、独自のストーリーを作ってファンタジー風味にしたんだろうなあ、と思いました。こういう作り方ならオマージュもいいんじゃないですかね?


23年9月レビュー

3回目視聴。既視感の正体はアシモフのロボットシリーズとジブリかな?

 スタートですけど、レナトの「ナウシカ」の王蟲との類似性と、トルメキアが谷に攻め込むシーンなどを連想しました。類似性は別にいいんですけど、ジブリからの影響は強く感じました。

 長命のイオルフとレナトです。「以前は長命種は沢山いた」というセリフがありました。つまり「もののけ姫」ですね。同作では「古代の神々から神聖が失われてゆく」プロセスでした。つまり本作においても、イオルフもレナトも人間に関わらなくても結果的に滅びて行くという暗示でしょう。その理由が純血性にあるんだと思います。

 イオルフの10代半ばで見た目が変わらないという設定です。ここばビジュアル的な美少女を描きたいからなのかどうかです。長命であることの意味性は分かりますが「見た目がティーンの少女である」ことの意味性です。もちろんラストシーンのカタルシスの計算もあるのでしょう。
 ここに「モラトリアム」「成長しない現代人」のアナロジーがあるかどうかが深みにつながると思います。子供を産み育てることで大人になる、という物語なのでその点ではいいと思います。
 
 例えば「星界の紋章」シリーズのジントとラフィーヌの関係を初め、それこそ無数にこういう話はあります。アシモフの「ロボット」もののイライジャとグレディアの関係なども同様です。
 そうそう、ヒビオルですけど、このロボットシリーズでダニールにイライジャが語ったのが、まさに人類の歴史を「織物」になぞらえていました。ダニールがこれによりロボット三原則を克服するという重要部分で、その影響はかなり深く感じました。
 そういえば、アシモフの「ロボットシリーズ」は、科学的には圧倒的なスペーサー世界が長命ゆえに人と触れ合わなくなり、いずれ滅びて行くというシリーズですので、本作のそのままです。

 で、この部分が作品を貫くテーマ、冒頭から最後のシーンの「さよなら」です。映画「メッセージ」でもあった、運命論と幸福論です。死別が分かっていても出会い、愛することができるか?ですね。

 この部分、イオルフ設定で「出産の数が減ってきた」という設定があればもっと考えさせる内容だったのに、という気がします。そうなるとエリアルを拾ったときの「母性本能」がもっと生きると思います。
 つまり、社会から赤ん坊がいなくなる、社会で子供を育てようとしなくなるから、個人主義になって行く。適応できない人間が「孤独になる」というマキアの設定に寄り添ってきます。
 また、滅びの原因が純血主義で安寧な生活に慣れてしまったという意味で、日本のアナロジーにもなります。資本主義的な個人主義です。
 もし、人間に攻められなくてもイオルフはいずれ滅ぶというニュアンスが明確に出ていればこのテーマ性が浮き彫りになって分かりやすくなった気がします。もちろん、これは推測ではなくてこの前提は物語の世界観から裏設定として存在すると思います。

 レナトの赤目になってはもちろん王蟲ですが、燃えて死んで行くというのは、憤死ですね。火病と言い換えてもいいかもしれません。自由に生きられなければ滅びて行く。この火病というのはお隣韓国に特有だそうで。もしかしたら、レナト=韓国でイオルフ=日本と考えると辻褄は合います。韓国の方が少子化に苦しんでいますし。

 子どもが母親に恋をし性的な対象になるというのは、発達心理学上極めて自然なことです。そこで父親の不在が大きな意味を持ちます。父にかなわない=母を諦める=女性を外で探す、というのがエディプスコンプレックスの克服です。
 この周辺のシーン。初めての飲酒も含めて軍という共同体がエリアルの成長に果たした役割が描けていました。ここで彼は男になり恋をすることになりました。だから、母の元から去ると言う部分につながります。

 レイリアは無理やり子供を作らせられますが実子です。マキアは子供を拾います。ディサは愛の結果子供を産みます。この3人の母の対比が作品上の骨格ですね。
 なお、レイリアは子供を守るために昔の男を拒絶しますが、ここは母になったことの気持ちの変化もあると思います。母とは共に生きられなくても子供を愛する気持ちに違いはない…けど、男よりも先に成長したレイリアにとっては男はもうどうでもいいのでしょう。そこでは男の未練のみっともなさも描いていました。「秒速5センチメートル」問題です。

 ということで、設定と含意は非常に緻密に繊細に作り込まれていたと思います。が、とにかくテーマが使い古されていて目新しさがないのと、イオルフの見た目がティーン=全員美少女が鼻にいてしまいました。
 上でもいいましたが、イオルフの悲劇性が子供を作らなくなった自業自得の必然だという部分が明確にあって、イオルフ=日本の含意が読み取れれば、子供を産むことの成長がある、逆に言えば、少子化で子供を産まないから成長がないイオルフの子供っぽさという風になったかなあと思います。

 もちろん、制作サイドはそこは意識しているかもしれません。しかしストーリーへの反映が弱く、どこかで見た感じで、下手をすると感動ポルノに見えてしまいます。まあ、尺の問題で母と息子の相互の成長が描き切るために他のテーマは切ったのでしょうけど。

 3回見たのでもうこれで打ち止めにします。可能性は感じる映画ですが、上記のように類似性が多々あってテーマ的には凡庸なこと、感動ポルノ・美少女ものに見えなくはないことがかなりマイナスになっています。

 評価点はやっぱり4はあっていいですね。3回みてもつまらないということはなかったですし、作画技術はやはり素晴らしいと思いました。






 2回目視聴後追記です。運命論と幸福論を母子と言うテーマでかなり上手く描いていると思います。

 子供の成長を見守る母という視点で、エディプスコンプレックスから思春期に達して親離れするところの描写は良かったと思います。悪い仲間からの誘いで飲酒して大人になる。独り立ちして家庭を持つ。嫁姑問題等々です。

 つまり、いろいろ視点はありますが、やっぱり長命の母と短命な息子の避けられない死別=「別れの一族」が主題なんでしょう。タイトルがそもそもそうですし。

 で、ちょっとネタバレにありますが映画「メッセージ」を思い出しました。{netabare}宇宙人の言語を習得した女性が未来を見通せるようになり、子供を産んでもたしか小学生くらいで死んでしまうのがわかっている、という話がありました。
「メッセージ」に限らず似たような話は沢山ありますが「親子で子が先に死ぬ別離」「死と言う運命」を受け入れることが不幸なのか?という課題を正面から扱っている点において共通点を感じます。{/netabare}

 別れの運命はわかってるけど、そこに存在した愛情が本物であれば「別れの一族」であっても、他者と係わることが不幸ではない、ということです。そうなればイオルフという種族の長命種が登場する意味性は出てくる気がします。

 研究として「100日後に死ぬワニ」も見たりしましたが、このテーマはしかし難しいです。難しさの原因はテーマの内容は単純だけど、答えが見いだせないことです。
「運命論」ですねえ。運命を従容と受け入れてその範囲で精いっぱい生きるというのは、当たり前の結論です。「幸福論」もです。短い触れ合いであっても精一杯心を通わせた後の別れは、不幸ではなく幸福だと。

「CLANNAD AFTER」の後半そのものとも言えます。これは間違えると簡単に感動ポルノになる構造です。そこにどれくらい深みを出せるか、です。

 レイリアの存在があるので、構造として「母である」「母になる」という対比がありました。しかも「望まずに」「望んで」も対照的です。結果的に両者とも子への愛情はあるわけですが、その理由の違いが母とは?という事を描こうとしていたと思います。

 それと織物「ヒビオル」です。「日々、織る」から来ていると思いますので、日常=生活=生きるという事。つまり、一生の一日一日とも取れます。その中の時間と出会いが縦糸、横糸という感じで人生のアナロジーなんでしょう。そこにメッセージとして「母さん」と織り込むところが「子を産めば母になるわけではなく、一日一日の積み重ねで母になるのだ」ということでしょう。
(そうそう、イオルフは「不老」「フ、オイル」のアナグラムでしょうね。語感をエルフに寄せたのでしょう)

 こうやって考察していると、なるほどよく考えられたテーマ、メッセージ、物語だなあ、と感心しました。

 ただ、です。やっぱり、ただなあ、と言いたくなります。それは感動、涙が前面に出すぎた作品の作りです。本作は「超平和バスターズ」名義ではないですが、その類似作品を作ろうという意図が気になって冷静に見られません。

 評価としては、上記の様にストーリーは緻密だと思います。思いますが、どうもどこかで見たような話の焼き直し感がぬぐえませんし「お涙頂戴」の意図が露骨すぎます。3.5とします。
 キャラも類型的なところがちょっと気になりますが、配置には無駄がなくよく考えてあるので4とします。
 作画は素晴らしいです。4.5。

 声優・音楽は調整で、3.5を入れます。映画全体悪くないけど、やっぱり意図が気に入らないという意味です。



以下 1回目のレビューです。

感動要素を自己模倣し続けたアニメ業界が生み出した化け物??

 物語の内容は題名と冒頭の数分で分かります。誰と?という部分に意外性はありましたけど。第一印象は「私は何を見せられているのだろう?」という呆然とした無力感でした。

 幾つかの要素です。母になる母になれないという対比、寿命の差による別れ、そして異端のものたちの滅びです。これらが組み合わさってなかなか壮大な壮大な物語を作ったかなと思います。

 ただ、異端であることの意味合いというか何を象徴していたのかが結局読み取れていません。つまり、中心になるイオルフが何かを象徴していたか、物語の根底では何を描きたかったのが読み取れません。

 物語論で感動を作るための仕掛けで終わっている気もします。上にあげた3つはどれも「悲しみ」を作るための「要素」になっている印象があります。演出とキャラデザ、音楽などすべてが泣かしにかかってきています。

 2018年とは思えない「AIR」とか「世界の中心で愛を叫ぶ」的なゼロ年代初頭の手法です。もちろん「あの花」などの要素も入っています。ケータイ小説的な悲惨な要素の押し付けも感じます。

 つまりアニメ界において「受ける感動要素(共感という言い方もできる)」の自己模倣を繰り返し「純化」のプロセスを経て生まれた、奇形というか化け物の様な気もします。
 言い換えると、再帰的に感動要素が独り歩きした結果データベース的に生まれたシミュラクール、つまりオリジナルのない模倣に感じました。

 ですので物語に要素は沢山ありその水準は非常に高いのですが、奥行きがありません。目に見えるストーリーは優れていても、作品の裏にある文脈が見えません。

 批判というより、どう捉えたらいいのか分かりません。第2次世界大戦から始まった現代日本史で生じた現象の社会的なとらえ方から離れて、何に感動するかという要素論、物語論だけで突き詰めた結果のストーリー、作画、演出、音楽の一つの形な気がします。

 例えば最近の新海誠氏の作品は旧来の映画評論で言えば、日本が歩んできた時代性とか私小説的なものバックグラウンドが見えず、日本の評論家の持つ手法は無力になりました。つまり、メジャーな評論家は東日本大震災というパラダイムシフトに対応できていない感じがします。

 それと同じような別の文脈が本作にはあるのかもしれません。ちょっとこの作品のアニメ史的な意味については、少し考えたいところです。実はヴァイオレットエヴァーガーデンの劇場版がなぜ評価が高いのか?が未だに理解できていません。私が古い考えなのか本当に本作やヴァイオ劇場版は浅い話なのか。少し考えてみたいところです。

 作画は素晴らしかったです。キャラデザはいいんですけどそれこそデータベース的最大公約数に見えました。
 一応、以上のような感じで私の感覚だと、意味が不明なので評価せずの意味で作画以外をオール3にしておきます。

 なお、東浩之氏の動物化するポストモダンの真似のような考察にしたのは、氏も震災でアニメの見方が分からなくなったと言っていたと思いますのでその意味も込めてです。


 

投稿 : 2024/04/11
閲覧 : 574
サンキュー:

17

つきひちゃん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

壮大な作り込まれた設定にイマイチの演出

2時間くらいの映画作品

前評判はかなり良かったと思い楽しみに視聴。
すごくすごく良かったんですが盛り上がりに欠けました。

設定といいストーリーといいすごく良かったんですけど不思議と「ふぅーん」って感じで終わりました。
…まぁしっかり泣いてましたが…

戦争に巻き込まれた人間とは違う時間の長さを生きる種族が、殺されている人間のお母さんの腕の中の赤ちゃんを育てていく話です。

人間の人生の儚さと、命を繋ぐ事を考えさせられる作品。
私たちはけっして長くない人生の中で何を成すのか。自分の人生の意味は何なのか。を長い寿命を持つ種族の視点から見ます。

盛り上がりとか引き込まれては弱いとか生意気に言ってはいますが、すごくいいアニメだったと思います。

子供がいる大人に見て欲しいと思った作品。

投稿 : 2024/03/17
閲覧 : 38
サンキュー:

1

ネタバレ

ちゃんけー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

綺麗にまとまってます

評価は5.0が満点で個人的評価です。

{netabare}
ストーリー:3.8点
全体的に話はまとまっておりスラスラと見れました。
長編の一発勝負ということもあるためか、時間の進みが早いのが気になりました。
もう少し掘り下げてのストーリーがあると尚面白かったかと思います。
家族の在り方とは?母親とは?
と考えされられるものでした。

キャラクター:3.5点
可もなく不可もなくです。
ぶっ飛んだ個性的なキャラはいないため、好き嫌いはあまり出ない気がします。

声優:3.2点
好みはあるかと思いますが、特にインパクトはありません。

作画:4.0点
綺麗でした。

音楽:4.0
良かったです。

総評:3.7
のイメージです。
{/netabare}

投稿 : 2024/01/31
閲覧 : 34
サンキュー:

1

BLEU62 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

久々に長編をみたが、良いものを見せてもらいました。

普段はTVアニメ専門ですが、ネトフリでなんとなく視聴してみたら、
最後まで目が離せなくなりました。作画も動きもさすがでした。

投稿 : 2024/01/06
閲覧 : 59
サンキュー:

0

ネタバレ

たわし(爆豪) さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

70年代「少女漫画」+フランス革命期「ロマン主義」

「あの花」や「ここ叫け」でお馴染みの脚本家、岡田麻里による初アニメ監督作品。脚本家がアニメ監督になる例はほとんどありえないが、かなり思い切った判断だと思う。

以降ネタバレ含みますのでご注意頂きたい。


世界観が中世ヨーロッパを下敷きにしたファンタジー世界であり、昨今流行りの「ダークファンタジー」ではなく、どちらかといえばロードオブザリングやゲド戦記寄りの「ハイファンタジー」である。
ファンタジーブームもさる事ながら、流石に脚本歴が長く大御所に近い存在だけあって、プロットやお話全体の構造に一切の破綻がなく、テーマも一貫して通っている。岡田麻里脚本の特徴は所謂少女漫画に多く存在する「群像劇」や「人物の感情とその行動」に趣を置いた「叙情的」な話がほとんどであり、全体的な構造がいかにも女性らしい「感情の揺れ」をセンターに置いて作られている。

ちょうどフランス革命期の「ロマン主義」と言われる一連の小説や絵画の世界観がおそらく根底に有り、中世キリスト教が支配していた理性や禁欲からの脱却、身分や法律を超えた人々の絆や感性の世界観である。例を挙げれば、フランスの代表的な文筆家ヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」があり、本作はそれに70年代少女漫画にあるファンタジーやSF作品にオマージュを捧げている。我々の「近代」からなる民主主義や自由恋愛などの概念が確立した時代であり「モダニズム」の始まりでもある。なので作品のスタンスが非常によく練られているし、登場人物に性格の破綻した人間が存在しない。

代表的なところで言えば萩尾望都の「ポーの一族」や「トーマの心臓」、竹宮恵子の「風と木の詩」や「地球へ」といった作品であり、その片鱗が作品内に漂う空気感になっている。

本作は特にこれから結婚する人や新婚の女性、あるいは「妊婦」や子育て経験のある女性には非常に訴求力が有り、ネタバレになってしまうのであまり書かないが、
10代半ばで外見の成長が止まり、数百年生き続けることから「別れの一族」と呼ばれるイオルフの民の少女であり、本作の主人公「マキア」に感情移入した途端に「母になる」とは「親になる」とは一体どう言うことなのかということに無条件に反応してしまう。それは一昨年前に公開されたSF映画、ドゥニヴィルヌーヴ監督の「メッセージ」と重なるテーマでもある。

初監督とは思えない成熟した世界への視点は、講談社少年マガジンで連載中の大今義時(「聲の形」の原作者)の「不滅のあなたへ」と共通したテーマであり、男性の漫画家やアニメ監督が「デビルマン」に影響受けたのと同様に、少女漫画界では萩尾望都の「ポーの一族」がやはり一線を超えた境地に達しているのだと思う。恐らく次回作は「不滅のあなたへ」になるのではないだろうか?

しかし、理性や合理主義といった「ルネサンス」から脱却した人の感情や個性に感化した「ロマン主義」の最大の欠点は、叙情的なお涙頂戴ものがほとんどになってしまうことだ。これは現代の少女漫画全般に当てはまる傾向でもあるが、本作も例によって主人公がよく感極まって「泣く」シーンが多い。あるいは主人公が育ててる血の繋がらない子供エリアルもよく言えば感情的で情熱的。悪く言えばオーソドックスなタイプである。現在は近代資本主義の原点である「モダニズム」から、虚無感や閉塞感の世界「ポストモダニズム」の時代なので若干の「擦れ」が生じている。

もう少し大人向けに感情を抑え「泣ける」を超えた感動を表現することができたら世紀の傑作と太鼓判をおせたかもしれない。そういう意味では、先ほど話した大今義時原作の「不滅のあなたへ」はちょうど良い素材なので、是非とも挑戦してもらいたい。

投稿 : 2023/09/18
閲覧 : 697
サンキュー:

30

Dave さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

さよならは哀しい。でも、出会わなければよかったなんていうことはない。

「花咲くいろは」好きの私としては岡田磨里さん監督作品と聞いていつかは見たいと思っていたのですが、BSで放送してたのを録画できました。ところが最初は「ながら視」をしてしまって、なんだか世界観にはまれずに…だらだら見続けること2時間、終盤になってやっぱりこれはいいかも?と思い視聴し直してよかったです。きちんと見れば、きちんといい作品だと思います。

端的に言えば、もし家族の一人だけ不老不死だったら?という話ですね。ふつうは子供の成長と共に母も老いて、いつかは衰えて死んでいくわけですが、母だけがエルフでいつまでも少女のままだったら…。

人は誰だって最初はか弱い存在で、未熟ながら成長して、いろんなことを経験しながら大人になって、少しづつ老いてそしていつかこの世を去っていく。太古の時代からいつまでも若くいたい、いつまでも生きていたいと思うのは人間の敵わぬ願望でした。しかし本当にそれは幸せなんだろうか、と脚本家の岡田磨里は問います。確かに死んで別れるのは悲しいことだけれど、伝説の薬やら魔法やらで永く生きられたとしたら、自分だけが取り残されていくという「独りぼっち」をずっと味わうことになるのではないか。

なによりもこの作品で心を打つのは母の愛。流れゆく時間の中で、人も変わるし、それを取り巻く状況も人間関係も変化する。しかし、そこにもし変わらぬものがあったとしたら・・・岡田監督なりの答えがこの作品に描かれています。すごく形は違うけれど、岡田磨里さんが描く作品の根底には恋愛としての愛よりも、こうした家族愛が共通して描かれている気がしますね。

人間が不老不死になることは今のところ不可能ですが、ふとペットと人間の関係を想いました。実は今年、私も2匹の愛猫を立てつづけに亡くしまして。彼女たちが赤ちゃんの頃から育てて18年半、その間に仔猫から成猫、そして老猫へと成長して、最後はすっかり細くなって寿命を全うしました。確かにその間、わたしたち家族も年を取ったし、子どもも生まれましたが、人生の速度が違うということはなかなか残酷なことです。

「大丈夫、ぜったいにわすれないから。」
どんな姿になっても、いつまでも親の愛は変わらない。
血が繋がっていなくても、親子の絆は変わらない。

投稿 : 2023/09/10
閲覧 : 301
サンキュー:

7

ネタバレ

llil さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

大視点的ストーリー

もちろんのこと
メインキャラもいるものの、
そこまで深く背景を作るわけではなく、
大きな視点で進んでいく。

けれど登場人物それぞれの
心情は細かく写り、
物語の奥行、壮大さを感じる。
そして同時に
題材となるキャラ達の立ち位置を
強調させる。

そんな物語の中には、
奇麗な対比表現などの
整った構成がある。

作画は
白(明色)を基調としていて、
柔らかい線とマッチしており
滑らかなアニメーションと
ブレない作画がそれを支える。


この作品には、
ハイライトの行方を
見失う可能性を
抱くこともあった。

投稿 : 2023/06/18
閲覧 : 112
サンキュー:

1

じゅなじゅな さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

別れの一族

深夜に鼻水垂れ流しながら観ました。
別れの一族の意味を終盤で理解し、私は死にました。
明日の朝、目が腫れそうです。

投稿 : 2023/05/14
閲覧 : 150
サンキュー:

3

ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

味わい深い作品です。

岡田麿里さんと言えば、お母さまとの関係性を抜きにしては語れない作家性をお持ちの方です。

本作の題名 "さよならの朝" は、お母さまに向けての言葉でありつつ、ご自身の初監督作品として自立する未来への光明を得たことを感じさせるように思えます。

また、"約束の花をかざろう" は、お母さまとの暮らしの中で織り伏せてきた思いを、手ずから紐解き、また、結い合わせた自らへの祝言だろうかとも感じます。

岡田さんは、本作の演出において、彼女なりの "赦し" をヒビオルのように織り上げようとしたのではないだろうか。
そして、そのための装置として、これほどに美しく、類を見ない濃密な世界観を必要としたのではないだろうか。

そう感じています。


~  ~  ~  ~  ~


どなたにも "母" がいらっしゃいます。

産みの母、育ての母。
代理の母、養護の母。
誇らしくある母、母とも呼べぬ母。

子どもにとっては、悲喜こもごもを織り交ぜるのも、愛憎に塗れるのも、母がいてこその感情なのだろうと思います。


本作では、3人の特異な母が登場します。

里の長老でもあるラシーヌは、人間への愛の儚さを説きます。その教えは彼女なりの経験則で培われたものなのかもしれません。彼女が愛した人は男性なのか女性なのか、あるいは子どものことなのかは想像の域を出ませんが、それもまた岡田さんに存在している歴史の蓋然性なのだろうと思います。

次に、主人公のマキアですが、彼女には生母の記憶がありません。しかも戦禍の中に赤子を養育することを選択します。これは長老ラシーヌの教えに背くものでもありますが、女性性としての一つの生き方の提唱であり、親子の関係性(ここでは養母)に対する岡田さんなりのアプローチでありアンサーでもあるのでしょう。

マキアが多くの方に受け入れられているのは、いわゆる里親という立場性における情の深さや愛の豊かさに強く感じ入るからでしょう。
たとえ血は繋がっていなくても "無償の愛" は紡げるもの、理屈抜きで分かち合えるものとのメッセージでしょう。

ですが、むしろ血を分けた子どもだからこそ、なおのことそんな愛があってほしかった。そういう底意があるようにも感じられます。

マキアは私たちのイメージする "母" たる器をはるかに超える立ち位置にいるキャラクターです。
逆縁の不幸を知りながら、だれとも知れぬ子を養育し、母離れにも耐え、ついに死まで看取るのです。

そんなことは普通は起こり得ません。そんな前提においても、マキアが息子エリアルとつづった日々が、連弾の回想シーンとなってスクリーンに打ちだされたとき、私のそんな矮小なバイアスはいとも容易く消し飛んでしまいました。

マキアの生きざまや行動原則は、本作の根幹をなす重要な問いかけになっています。
イオルフという特殊な設定によって、思春期の娘マキアから見える世界(恋しさ)と、養母マキアからの視点(愛おしさ)という "複眼二重のフレーム" を持ち合わせた演出になっているのです。

このため、これを観る方々は、いずれの立場性においても、また、幾星霜を経ても、それぞれの人生経験に嵌入してきます。
その意味で言うならば、血筋だとか生い立ちとかには関わらず、等しく命の尊厳に深く心を打ってくる普遍的な愛を訴求する作品と言えそうです。


~  ~  ~  ~  ~


そしてもう一人の母がレイリアです。
彼女は恋を知らぬままに敵国メザーテの兵士イゾルによって誘拐され、望まない形でメザーテ王子の子を身籠ります。
その子は娘メドメルと名付けられますが、レイリアはメドメルからは隔絶・幽閉されています。

ここにも岡田さんの母子関係が反映されています。
同じ建屋にいて同じ時間を過ごしながら、どうにも詰め切れない理不尽な壁。
思春期を迎え、自我への思索と女性性の実体感が進むほどに "家族の母性" よりも "自身のセクシャリティー" に生きるお母さまの姿。
岡田さんは複雑な思いをお持ちになられたのではないかと推察しています。

私が最も長く悩まされてきたのは、レイリアとメドメルの別れのシーン。二人の表情と振る舞い、言葉の意味するところでした。
劇場公開の初日に鑑賞して以来、3年の月日の間、悶々とし鬱々としてきたのですが(汗)、先日、ある方のレビューを読ませていただく機会を得て、目から鱗、まるで霧が晴れたかのような知見に至れたのです。

「お母さまはお綺麗な方」。
これは娘メドメルの言葉です。

「お綺麗な方」。生みの母と初めて言葉を交わしながら、情愛の一つも結べないままに生き別れするという今わの言葉としては、どうにも違和感だけが残りました。その意味するところは一体何でしょうか?

表面的には、ひどく場違いでぎこちなく、随分と他人行儀のように感じます。
でも、メドメルの思春期心理を鑑みると、精一杯の背伸びのようでもあり、愛憎への当てつけのようにも、愛着への言い訳のようにも感じられます。

一瞬のシーンではありましたが、私の心には鋭く刺さりましたし胸を深く抉られました。
その意味では、本作の核心の一つであり、岡田さんならではの神髄とも言える演出だったと捉えています。


~  ~  ~  ~  ~


加えて、レイリアの行動です。

彼女は城壁から飛び降りてメドメルの目の前から忽然と姿を消すのですが、着地したのは龍の背中です。そして一気に空を駆け上がり存在自体を遠い世界に消してしまうのです。

レイリアにとっては、その龍はかつては故郷のイオルフに攻め込んできた忌むべき仇敵であり、彼女に足枷をつけることになった憎むべき存在です。ところがレイリアはその龍を頼りにして跨るのです。

その実、龍を手なずけていたのはマキアであり、その龍はマキアとは心を通わせているように描かれていましたので、この逃避行するシーンの二人の心情の対比や、龍との関係性はとても興味深いものがあります。

龍は "男性性" の象徴でしょう。
さらに支配者層の男性性によって "支配される男性性" としての存在でもあります。
さらに死にゆく種族でありながら、なお "張りぼて" として活用される寂しい存在でもあります。

逆説的には、そこまでして武力や権威付けとして絞りつくさんとする "男性性" の浅ましさでもあり、おこがましさでもあるように感じます。

イオルフの種族にも龍と同じ扱いをしているように見えます。
どういうことかと言うと、女性性を支配するのはつまるところ男性性であり、生命を紡ぐ女性性に対する非平和性、非対等性、力に依存する社会構築を人倫の本とする都合よさです。

岡田さんが本作にそこまで込められたかどうかは分かりません。
でも、3人の母とメドメルの言葉と振る舞いには、男性性が見え隠れしています。
それゆえに岡田さんの人生観とか男性観が、それぞれの女性性に投影されているのは間違いないことだと思います。

それに触れるにつけ、わたしの心は、岡田さんの母への思いを超えて、男性性にしずかに震えてしまっています。
今もなお、その感情が一体何なのか、これ以上の言葉にはしがたい思いですし、また、女性性としてどのように担うべきかを模索するばかりです。


~  ~  ~  ~  ~


終わりに、マキアとレイリアの養育者としての立場性の相違についての所感です。

一見では、"養母" と "生母" ですね。

"子育ての辛苦をも歓喜とする無上" と "授乳もおむつ替えも許されない無常" という配置。

"男の子" と "女の子" のジェンダー観への母心の温度差。

"看取りへの責任" の捉え方。(レイリアは描かれてもいませんが。)

そして、イオルフと人間の間にある時差軸への整合性です。
これは、それぞれの母性から見た "愛する者の生と死への態度のとり方" と言いかえてもよさそうですね。

そんなことを羅針盤として、あらためて、岡田さんの作家性に触れてみようかと思っています。

投稿 : 2023/05/03
閲覧 : 358
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25

ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

長命少女と人間息子の母子感動ドラマ。素晴らしい作品だけど、若干共感しづらい

岡田麿里作品のファンタジー映画。
※作品データベース様より転載

【良い点】
P.A.WORKS制作による良作画。ファンタジーで人々が息づく世界を美しく描いている。
特に目新しい世界観ではないが、丁寧な描写で映像的に引き込まれる。
音楽や声優陣も申し分ない高クオリティー。

寿命の差を活かした種族間のドラマ。ラブコメはよく見るが、これを母子関係に置き換えた着眼点の良さ。
本作の特徴は長い時(マキアにとっては短期間、人間にとっては一生分)を俯瞰して一代記を見るような視点。
これは珍しい作風と言え、他作品ならば短命な人間(の視聴者)視点や時間間隔から濃密に葛藤が描かれるケースが多いのに対し、本作はマキアの時間間隔で時がアッという間に流れていく渦中で、主に人間(の愚かな男達)が引き起こした動乱を生き抜く過程で、普遍的なメッセージを込める事に成功している。
(短命な人間視点では)いつまでも少女のままな女性が、人間の男どもが動乱する中でも普遍の在り方をピュアに見せてくれる、これぞ現実には出来ないファンタジーの特権であろう。

その動乱部分も普通に面白い。
身勝手な人間の王国やら、怨念に憑かれた長命種の男など、男達も頑張って生きているのだ…

もう一人の長命種の少女レイリアが、マキアに対するアンチテーゼ的な役回り、血の繋がった親子でも心が通ってなければダメという分かり易いキャラクターとして必要だった。
なのでレイリアが解き放たれて子供ほっぽって去ってしまうのは妥当。

【悪い点】
俯瞰し過ぎていて個別ドラマとしては分かり難い。
マキアの成長やエリアルの葛藤は十分描かれてはいるが、短い尺で一代記が流れていく為か、感情移入の暇があまりない。
マキアの成長は良いのだが、エリアル側の心情の変化や成長が一瞬で流れていって年老いてラスト。
二人の互いに対する想いは俯瞰して見れば尊いのは確実だが、あざとく強烈に互いを思い合っている積み重ねは足りてない。
よってラスト、あんまり泣けなかった。

徹底して女性的な母性重視、対応する男は戦乱ばかりやる愚か者という視点。
長命種の男クリムの描かれ方や末路を見てもそう感じる。
人間ヒロインがエリアルの子出産に、マキアが立ち会うシーンも名場面ではあるが、ここに父親であるエリアルの存在感は無い。
…これは必ずしも悪い点ではないかも知れないが、この視点は男性視聴者的には共感が難しい。

【総合評価】7~6点
大変独創的で普遍性の高い優れた作品…であろう事は(理屈では)分かる。
分かるが、共感できたかと言われれば正直微妙なところ。
岡田麿里氏という優れた女性脚本家が徹底的に女性視点で描いた、男には難しい内容。
評価はとても良いのかも知れないけれど、よく分からん故に「良い」
アニメーションや物語としては素晴らしいので、共感が難しいのを差し引いても良い作品だなぁとは思った。

投稿 : 2023/04/28
閲覧 : 107
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4

ネタバレ

これ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

なんとも切ない

親子愛 をテーマにしている作品になるのかな
寿命が違う血の繋がらない子供を
育てるアニメ
わかってはいるけどお母さんの方が長くいきるために
最後はどうなるかってのはわかるんだけども
それでも悲しく思える

ペットを飼ってる人とかにも通じるものはありそうな気もした

投稿 : 2023/03/06
閲覧 : 91
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3

御宅 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

脚本家・岡田麿里さんによる初監督作品にして最高傑作。

「あの花、とらドラ、花咲くいろは」などを中心とした数々の名作を生んできた脚本家 岡田麿里さんによる初監督作品になります。今まで数々の恋愛作品を生んできましたが、今回は家族愛をテーマにした作品になっています。

歳を取らない種族である主人公を軸に新たな出会い、世界を描く。そしてかつての仲間達のヒビオル(生業)が生む皮肉な争いを描きながら紡いでいく家族愛の作品。

アニメーションを手掛けられるのは、岡田麿里さんと数々のタッグを組んできた制作会社であるP.A.WORKSになります。綺麗な背景やアクションシーンの作画クオリティには相変わらず頭が上がりません。

茅野愛衣さん、入野自由さんを中心とした名実ともに声優界の顔と言ってもいいキャストの皆様によるアフレコも素晴らしかったです。そして主演を務められた石見舞菜香さんですが、物語の年数が進むにつれて、歳を取りにくい種族という設定を上手く活かす素晴らしいアフレコをされていました。

投稿 : 2023/02/24
閲覧 : 294
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4

ネタバレ

やまげん さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

感動作、でも、もやもやも残る

寿命が違う母子の、出会いから一緒の時間を過ごし、そして別れまでを描いたファンタジー作品という感じ。

{netabare}別れの場面は感動的。けど、絵と声優の演技によるところも大きいような。中盤から終盤にかけては特に良かったと思う。

ただ、出会いの部分は雑だった印象。
マキアがエリアルを育てようと決意したのはどうしてなんだろう。というのも、マキアは、エリアルがかわいそうという気持ちとか、自分しかエリアルを助けられないという使命感からエリアルを助けたというよりは、突然ひとりぼっちになってしまった寂しさからエリアルを助けたという感じに見えたから。

しかも、運よくミドと出会ってエリアルを育てることが出来たが、ミドと出会ってなかったらどうなっていたかわからず、あまりにも運任せ、他人任せ。

エリアルが、マキアがどうして自分をこんなに愛してくれるのかわからないと言うシーンがあったが、正直自分も同じことを思った。

終盤、エリアルを育てる決意をした理由が少し語られたが、やっぱりエリアルのためというよりは自分のためというのがメインのような理由だった。たまたま出会った赤ん坊を育てる理由として、それはいいことなのか?

マキアもエリアルも、そのときにお互いを必要としていたというのであれば、外野がどうこういう問題でもないのかもしれないが、↑のもやもやした気持ちは、終盤の感動レベルをいくぶん下げたとは思う。{/netabare}

投稿 : 2022/12/30
閲覧 : 125
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5

ネタバレ

さんの感想・評価

★☆☆☆☆ 1.0
物語 : 1.0 作画 : 1.0 声優 : 1.0 音楽 : 1.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

圧倒的描写不足

本作は物語の中で何十年という歳月を描いている為、駆け足で話が進行しており展開や登場人物の気持ちに着いていけない部分が多々ある
特に気になったのがエリアルが主人公のマキアを守れる強さを手に入れる為に敢えて離れるのだが何故かその後、彼女の元へ戻ることも無く幼馴染と結婚して日常を生きている…何でマキア放置してんの?あの時の志はどこいったの?
次に気になったのはマキアが友人レイリアを敵から助けようとしたのに拒否された展開、既に敵国の王子にレ○プされ子供を身篭っているからとの事だがあのまま城に残っても絶望した未来しか見えんだろ、長く生きてる筈なのになんでそんな事も分からんの?
加えてレイリアの想い人であるクリムが助けに来てくれた時もクリムよりもレ○プされて生まされたメドメルが大事との事でクリムを拒否…なんでなんw
ならメドメルの傍にいる事を決心したのかと思いきや一目見たら飛び降り自殺…なんでなんw
結果的に主人公が助けてくれたけど、まあ結果論だし
あと自分の意思で城に残った癖に途中主人公に自分と同じ辛さを味あわせようとするのも意味分からん
材料は良いのに残念
詰め込みすぎ+エリアルとレイリアという主要キャラに全然共感出来ない、この点が駄作に感じる主な理由
もっとレイリア関連のエピソードカットしてエリアルの心境の変化をしっかり描けば面白くなったかな

結論
細かい事考えない人向け

投稿 : 2022/11/18
閲覧 : 191
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2

k.k さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

優しく悲しい物語

バッドエンドではない
でもハッピーエンドでもない。
見終わった後、心がほっこりすると同時にぽっかり穴が開く。
何とも言えない感じは秒速5cm以来だったかも。
ただ、登場人物からしたら、ハッピーエンドで終わってるとこは大きく違う。
素晴らしい。

投稿 : 2022/09/18
閲覧 : 149
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5

U-yan さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

出会いと別れの泣ける劇場版アニメ。

これはね〜、ちょっと驚きました。観てない方には是非観て欲しい作品ですので、細かい内容には触れませんが、テーマで言えば「家族」「愛」「別れ」これに尽きます。「ちゃんと母親できてたよ」と言ってあげたい!この作品観て泣かない人っているのかなぁ〜って思えるくらいの物語で、世界観も音楽も作画も美しく声優さんも豪華で良かった。

投稿 : 2022/08/29
閲覧 : 152
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5

take_0(ゼロ) さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

遠く時の輪の接するところで また巡り会えたらいいね。

って言いたくなる作品でした。

この作品については、あまり多くを書き込みたくないなぁ。
何か、静かに噛みしめたい感じ・・・。




   なるほど・・・、


               なるほど・・・、



           なるほど・・・。


母親っていうのは、

    辛くて、厳しくって、

          優しくって、強いものですねぇ・・・。




二つの違う時間の中を生きる2組の母子の刹那の交わりと、

世代を超えた物語を紡いだ作品でした。


















そして「愛」という言葉が、

本当に最後の最後に、

ワンシーンだけキャラクタの口からあふれ出る。


それまでも、
愛を感じさせるシーンが多くあるにも関わらず・・・だ。







なんて言うか、観ておいていい作品だと思います。




あえて・・・、あえて言うならば、
序盤のパートがファンタジーが苦手な方なんかは理解するのに苦労したり、拒否反応が出るかもしれません。

しかし、コレがどういう事を言っているか、何を意味しているかが理解できれば、この物語の流れ、何を紡いでいるのかを、しっかりと受け止めることが出来ると思います。


どうぞ、機会を作ってご覧くださいませ。

投稿 : 2022/08/19
閲覧 : 201
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22

pH さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ほんまに素晴らしい

泣きすぎて嗚咽すんぞ。
ピエワで一番良い作品の一つだと思うし、ヴァイオレットエヴァーガーデン、よりもい、あの花、四月は君の嘘、CLANNADなんかと並べて語られるべき名感動作。
ピエワは内容無いーって舐めてかからないほうが良い。この作品だけは本物だから。

投稿 : 2022/08/07
閲覧 : 188
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2

ネタバレ

パンデラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

やや異質な愛の物語

本作品の脚本された岡田さんの「○の花」はいい話でしたが泣きませんでした。しかしこの作品は自然と涙が流れて号泣モノ。
血の繋がりは無く、長寿命の種族と人間の親子愛。はたまた望んで産んだ子でもないがやはり我が子に会いたい一心で生きてきた母の愛。やや異質な親子愛ではあるがファンタジー世界の中で丁寧に描かれており、親子愛の本質が描かれていたと思います。
作画、音楽、声優さんの演技も素晴らしく..終盤の「母さん!」シーンからの怒涛の泣きシーンは画の美しさも合間って泣かずにはいられないでしょ

投稿 : 2022/05/06
閲覧 : 220
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2

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Prospero さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

泣ける作品、必見!

岡田麿里作品の中では、あの花より上だと思う。
美しく切ない作品。

投稿 : 2022/02/23
閲覧 : 172
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4

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pikotan さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

絆の物語

久しぶりに良質なファンタジーに出会えました。こういうファンタジーが観たかったのですよ。
異世界転生してチート能力を得てハーレム形成のような、チープなファンタジーは食傷気味です。

さて、本作は数百年の寿命を持つイオルフという種族と人間の出会いと別れの物語で、世間では泣ける作品として定着しているようです。
マキアが年老いたエリアルに会いに来た最後のシーンなど、私も切なくて泣きそうになりました。
これ以上にないであろう最良な結末だったと思います。

ところで作品全体としては大満足ですが、泣かせに行っているなあと感じることは少々ありました。
物語の分岐点で、登場人物が敢えて過酷なルートを選んでいるような感じがするというか。
自分が第三者として外から見ているから、そう感じるのかもしれませんが。
でも、素晴らしい作品であることは間違いないですね。
個人的にはヴァイオレットエヴァーガーデンほどではないものの、かなり感動した作品となりました。

最後にどうでもいい話。
先日BS12でこの作品が放送されましたが、私はその前日にDVDをレンタルしてきました。
で、返却日まで期間があるしそのうち観ようと思っていたら、翌朝新聞のTV欄を見た妻が「昨日借りたアニメ、きょうBSで放送されるよ」と。私「ええっ!マジで?」
レンタルの際、我が家が加入しているdアニメストアとアマプラで見放題配信になっていないことは確認したのですが、まさかBS12で翌日に放送されるとは…。タイミングの悪い自分にガッカリです。
これからはBS12も要チェックです。それにしてもBS12の日曜アニメ劇場は作品選定のセンスが良いですね。

投稿 : 2021/12/21
閲覧 : 207
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11

ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

いのちを紡ぐ

P.A.WORKS制作、
岡田麿里、監督・脚本作品。

人里離れた土地でヒビオルと呼ばれる布に、
日々の出来事を織り込みながら静かに暮らす。
10代半ばで、外見の成長が止まり、
数百年の寿命を持つイオルフの民の物語。

幻想的な世界でありながら、
緻密な構成と書き込みの密度が高く、
臨場感あふれる世界観に圧倒されます。
見た目はさほど変化せず悠久の時を生きる、
イオルフの少女マキアは運命に翻弄されて行く。

愛すれば、やがて1人になる。
この道はきっと「孤独」に繋がる。
{netabare}肯定されるべき感情がここではそうならない。
死なない身体とはそういうことだろう。
多くの別れを見送って、
それでも時は立ち止まらずに進んで行く。{/netabare}

いのちを繋ぐこと、紡ぐこと、
懸命に生きる人々の呼吸に満ちている。
愛すると言うこと、子を育てること。
{netabare}躊躇いはやがて尊い「生」の肯定へと至る。
生きるということはそれ自体が学ぶことだ。{/netabare}
きっと物語は終わらないだろう。

そうだ、愛して良かったのだ。

投稿 : 2021/12/12
閲覧 : 1302
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86

ネタバレ

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

さよならは別れの言葉じゃなくて

これ絶対泣ける作品。
題名からそう思っていました。
実際泣けましたが、予想の斜め上の号泣でした。

前情報無しって怖い。
視聴を始めてびっくり、異世界の話ではありませんか。
現代日本の悲恋と思っていたのに。

悲しみの種族イオルフ。
長命種だから人と関わると必然的に別れが・・・
それは長老の言葉で明らかです。
外の世界では誰も愛してはいけない。
愛すれば本当の独りに。

この物語の鍵はヒビオルという布です。
縦糸は時間、横糸は人の営み。
それを織り上げることで形ある歴史になる。
人は歴史を作り、また歴史は人を包み込んだり翻弄したり。
その中で、愛に生きることこそが本望だと感じました。

主人公はイオルフ族少女マキアと人族エリアル。
親子関係から次第に変わる心と心。
{netabare}そして、国家存亡を賭けた大きな奔流へ。
時を越えて訪れた別れは避けることはできないけれど。
それは悲しい涙ではありませんでした。
何故ならば、マキアは独りを感じることがなかったから。
二人の生きた証は確実にそこにあったから。{/netabare}

美しい風景と丁寧に描かれる心の動き。
そして、流れるようなストーリー展開。
優しい余韻がいつまでも残る素晴らしい作品でした。

投稿 : 2021/12/12
閲覧 : 358
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24

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

布を編むこと。命を紡ぐこと。

人間ドラマとして考えられる要素がすべて詰まった物語でした。
生と死、恋愛、愛情、母親、親子、子育て・・・、あげればきりがありません。
それが、たった2時間弱のなかに詰め込まれています。
これだけのものをこんな短い時間でまとめきるなんて、すごいの一言。
なんだか、何本ものドラマを観たような気になりました。

主人公たちは、ヒビオルと呼ばれる布を編んで生活をしています。
ヒビオルの縦糸は流れ行く月日、横糸は人のなりわいを表すのだそうです。
「編む」と「紡ぐ」は同じ意味を持つ類義語です。
この物語は、「編む」ことを通じて命を「紡ぐ」こととは何かを教えてくれます。
一人の一生なんて、命を紡いでいく長い流れの中ではほんの一瞬かもしれません。
でもそこには一人一人の壮大な物語があるんだと言うことも教えてくれます。

投稿 : 2021/09/19
閲覧 : 232
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12

ルド さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

無味無臭の演出

ブルーレイで鑑賞しました。
素晴らしい作画と音楽にとても映画映えする物語で最後まで楽しく観れました。
ただ、この物語のどの部分をアニメーションとして描きたかったのか観ていて分かりませんでした。
演出は最初から最後まで安定してましたが、強弱が無くどの部分を最も伝えたかったのか最後まで伝わって来ませんでした。全てが等しく大事だったので全てを均等に伝えたかったのかもしれませんが。。。
おそらく、この物語を小説で読んでも映画と同じ感動と感想になったと思います。
映画と言う映像媒体でしか伝えられない部分を強調して描いて欲しかった。

投稿 : 2021/08/16
閲覧 : 220
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1

ネタバレ

コタロー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

切なさが・・・寂しい気持ちになりました。涙腺が・・・

意図として・・・
不老不死の発想から制作したのか
生命の寿命から発想したのか
生物の寿命の差から発想したのか

人間とは改めて不思議な生物だと感じてしまった。
楽しい作品
嬉しい作品
勇気・元気を貰える作品
鬱作品など

宗教や倫理をも超越している
もちろん正解も不正解もありません。
アニメですから・・・
好きか
嫌いかでは表現しにくいですが

息子や娘が親より先に亡くなることは
あります。
その心境からくる事も忘れては行けない。

生命の神秘と生かされたこの世界で
精一杯生きる
正解の不正解のない。
人としての最低限度のモラルは必要ですが、
今を最高に生きる力を持って
また、アニメの奥深さを知った限りです。

何を書いてんだ・・・・(笑)

投稿 : 2021/08/14
閲覧 : 211
サンキュー:

4

ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

時を越えて君を愛してみた

岡田麿里初監督作品 / 劇場版オリジナルアニメ


ふと映画を観たくなったもので。
『あのはな』地上波再放送中。2019年夏期『荒ぶる季節の乙女どもよ。』でシリーズ構成担当中。新作映画『空の青さを知る人よ』も控えてる。氏の作品の露出が多くなってる最中で手を出してみました。

映画は引き算の作業。TVシリーズと比べ尺の関係で観客に解釈を委ねるものが少なくありません。こちらは想像と妄想の翼をいくらでも広げることができますし、鑑賞にあたってはフラットな視点で楽しむことが肝要かと思います。
とりわけ、「泣ける」「感動した」との評は処し方が難しい。「泣ける」「感動した」は感想を持ちよって共有するのに適していて、鑑賞前の指標とするのはあまり得策ではないと個人的には思ってます。想像と妄想の翼が上手く広がらなくなる恐れがあることが理由です。
なんのことはありません。要はこれまでよく失敗をしてきましたよ!ってことです。ハードル上がりまくってませんか?これw


そして『さよ朝』は劇場版の良いところである “ 説明がうるさくない ”ことを満喫できた作品です。
これからの方は、“めっちゃ綺麗な映像”“物語を邪魔しない劇伴”“キャラに合う声優の選択”。この3点において高いレベルの作品である、を理由に鑑賞の優先順位を上げて良いと思います。


中身はファンタジー。イオルフという長命種族の少女マキア(CV石見舞菜香)とその息子で人間のエリアル(CV入野自由)を中心とした物語です。
親子の愛。愛あるが故の葛藤に心を揺さぶられますが、おそらく監督が描きたかったかもしれない


 “ 時間は有限であるからこその尊さ ”


に説得力を持たせるには齢400年余のファンタジー設定は不可欠でした。ゴリゴリのCG使った実写でも不可能ではありませんが、アニメだからこそ成立し得る傑作といって差し支えないかと思います。

丁寧に親子の感情の揺れを綺麗な映像に落とし込みながら、私達が無為に過ごしているかもしれない“時間”について思いを馳せるところまで踏み込んだ内容となっています。

大切に想う者同士を隔てるもの。それは互いの残された時間の差。


 あなたは先逝く者にどんなことを伝えたいのだろうか?
 あなたは先逝く身としてどんなことを伝えたいのだろうか?
 あなたは残される者として何を自分に留めておくのだろうか?
 あなたは残される者へのどんな想いを胸に抱き旅立つのだろうか?


けっして軽くない題材を扱いながらわりと俯瞰的に捉えた抑えめ演出だったことが意外であり印象に残りました。あの岡田さんがってやつです。


ファンタジー大作。とりわけ実写だとアクロバティックにドラマティックになりがちなわけで、もし『さよ朝』が仰々しい演出全開だったら持ち味がだいぶ削がれてしまったことでしょう。
そんな繊細なバランスの上に成り立った115分。お薦めです。





※以下ネタバレ所感

“ 時間 ”に絞って本編の良かったところ


■機を織る民

{netabare}中島みゆき『糸』。ap bank bandがフェスでカバーしてブレイクしたあまりにも有名なこの曲。映画冒頭で脳裏をよぎった人は私だけではありますまい。
「縦の糸はあなた 横の糸は私」と二人の繋がりを唄い、ハッピーエンドを示唆して閉じる名曲です。
これだけでも深みはあり一本映画ができそうですが、…といってたらホントに2020年に『糸』から着想を得て一本封切られるみたいですw

本作ではさらに

{netabare}「縦糸は流れ行く月日 横糸は人のなりわい」{/netabare}

時間軸の要素を入れて織り成し加減が複雑になります。というより「あなたと私」を見せてさらに「時間と私たち」を見せる仕様。筋が通ります。
長老ラシーヌ(CV沢城みゆき)がメザーテ軍人イゾル(CV杉田智和)に対し「布を織り日々を織る単調な繰り返し」と言ったイオルフの生活はいわば

“縦糸は日々を織る 横糸は布を織る”

とも置き換えられるでしょう。布=人のなりわいです。“ヒビオル(布)”がマキアにとってどれほどの意味を持っていたのか察して余りありますね。
ヒビオルがいろんなとこで暗喩的に使われてました。いいっす。まじいいっす。{/netabare}

そしてよく115分に纏められたなというくらいの壮大さ。



■体感時間の差異

物語のテーマが“流れゆく月日と人のなりわい”だとしたら、その時間と人を描くための主たる要素となったのが“体感時間の差異”でしょう。

{netabare}レイリア(CV茅野愛衣)とクリム(CV梶裕貴)の行き違いなんかがそう。

レイリアの意に反して交わらざるを得なかった人間だ、とのクリムの見立ても間違っていません。同一種族でまた平和なあの頃にと思う彼を責められはしないのです。
レイリアが経験してクリフが経験できなかったこと。それは自分より寿命の短い人間つまり娘メドメル(CV久野美咲)を愛するという体験です。

映画冒頭から劇中の時間はおおむね20年経過してた頃合いでしょうか。イオルフと人間との間には時間の捉え方にずれがあります。
イオルフ、ここではクリムにとっては瞬間であったろう20年間。目の前で最愛の人をさらわれたのはついこの間という感覚のまま、そしておそらくレイリアの心境の変化を理解できぬまま斃れたクリムがただただもの悲しいのでした。
人間のライフサイクルさえ知っていればレイリアへの声のかけ方も違うものになってたでしょう。{/netabare}


{netabare}イオルフのレイリアは人間の子を宿しました。
イオルフのマキアは人間の子を育てました。
人間のディタ(CV日笠陽子)は人間の子を産み育てました。

3つの異なるタイプの母親が登場します。ずっぷり関わったマキア。娘を拠り所に孤独を慰めたレイリア。私たちとおんなじディタ。

異なる体感時間を持ってようが、いくら孤独を恐れようが、母から子への眼差しはとことん暖かいことに普遍性を感じます。
イオルフに感情の起伏がないように見えたのは寿命の長さが関係しているはずですね。時間は限りあるからこそってやつです。{/netabare}



■別れが来るから 情が移るから

{netabare}愛する人を必ず先に見送らなければならない(単身者向け)

我が子を必ず先に見送らなければならない(家族持ち向け)

彼女もいない俺はどうすりゃいいんだー(・。・; ・・・という話ではありません。
出会いがあれば別れがあるわけであります。
そのつらい別れを自分が経験することが確定しているとわかりきってるのに踏み込みますか?踏み込めますか?を突きつけられる作品でもあります。

作品で出された答えは明快です。

 A 踏み込むでしょう!

時間は有限であるからこそ人は一生懸命生きるのだよ、ってね。{/netabare}

{netabare}そのメッセージは明快かつ前向きです。
ハーフのバロウ(CV平田広明)さんの締めが良い!

「(長老は)笑うだろうよ。おまえが苦しいだけじゃない別れを教えてくれたことが嬉しくってな。」{/netabare}





繰り返し観たいと思える作品でした。

 感動したか? 
 泣けたか?

いにしえのドラゴン“レナト”よろしく赤目病に罹ったかのように目を真っ赤にはらしてたかと。
こういった時間という縦軸で魅せる作品に自分はめっぽう弱いのです。






■オマケ
・ヒビオルは高級品に納得

{netabare}エリアルと出会った時に彼を包んだヒビオルを時は流れて看取る時にかけてあげてましたがものすごく耐久性良いですね。{/netabare}


・配役ミス?

杉田さんが出てくると真面目なところもそうでなく見えてしまい残念な気持ちに。沢城さんと掛け合うとさらにその思いを強くしますね~



視聴時期:2019年9月

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2020.03.18
≪配点を修正≫ +0.1



2019.09.15 初稿
2020.03.18 配点修正
2021.08.14 修正

投稿 : 2021/08/14
閲覧 : 1299
サンキュー:

74

ゆp さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 2.5 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

な に こ れ

Twitterで見つけた面白そうなアニメ。
「泣ける」「愛を知れる」等のあからさまに泣かせに来てるスタンスのアニメでしたが当サイトの評価が抜群に高く視聴を決めました。

総評を言ってしまうと「何がしたいのか分からなかった」でした。
音楽や作画、モロ好みの世界観で視聴時間は物凄く短く感じました。どんなベクトルから抉ってくんだろーなーとワクワクしながら映画を見ていました。
そして映画の幕が閉じスタッフロールが流れた瞬間最初に感じたことは「え?もう終わり!?」でした。
ハードルの下を思いっきりくぐっていきました。
元々PVの時点から終わりがぼんやりと分かっている作品でその予想を超えるかどうか期待しながら見ていたんですけどねぇ…予想してた終わり方とドンピシャな場所に着地しました。
最後だけそれっぽくして他に残っている疑問点、問題点は視聴者に丸投げしましたね。
結局主人公のみで自己完結してしまっていて他の人との繋がりなども全く見れない、愛情は全て息子オンリーで少し感情移入もしづらかった。
あと細かい矛盾やツッコミ所も多い、如何にもp.aっぽい作品。
泣きアニメは露骨に泣かせにきすぎて感情移入ができなかったり他の部分が疎かになってしまう、それらの欠点を体現したような作品でした。

投稿 : 2021/08/09
閲覧 : 437
サンキュー:

1

ネタバレ

よ! さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

演出が卑怯。

エンディングのウィアートルという曲をYouTubeで聴き、これ良い曲だねと興味を持ったのがこの作品を見たいと思ったきっかけです。なので、見る前から音楽の評価は星5です(笑)
鑑賞前から感動ものと知らされた上での鑑賞です。
ということで、絶対にどこかでお涙頂戴シーンが来るねと身構えながら観ました。
観終わった感想としては、設定は少し変わっているけど、割とどこにでもありそうな王道的ストーリー。
はっきり言って、公開されている設定から、展開も結末も読めました。
展開が読めるから見る価値が無いのかといえば、そうではない。寧ろこの感動ストーリーは多くの人に観て頂きたい。
物語が進む度に、こんな設定ならこうなるよね、まあこう来たらこうなるよね、まあ思った通りだね、割と普通かなぁ、こんなのどこで感動するんだろうと、我ながら嫌になるほど下衆な分析をしながら観てました。
なのに、物語が終わる頃には何故か涙が溢れる。
歳をとって、涙腺が緩くなってるのは否めないが、終盤の演出がズルい。あれは卑怯。
だが恐らく、そのシーンだけをいきなり見せられても何の感動も無いと思います。
割とありがちでありながら、この物語に説得力をつける上で欠かせない話の数々を記憶に紡いだ上で、この物語の締めとなるあの場面を見ると、もうダメ。
結局こうなるよねと、分かっていても涙が止まらない。
監督さんの演出が良いんでしょうね。監督さんの表現力に私は負けました。完敗です。
そんなお涙頂戴な演出になど負けない人も世の中には大勢居るでしょうが、私は言いたい。
俺は負けて良かったと。寧ろこんな演出に負ける人間であり続けたいと。


この先は、この作品を鑑賞済みの方向けのネタバレです。
{netabare}この作品は、ラストでエリアルが亡くなるシーンに全てが集約されていると思います。
物語の主人公であるマキアが長命種という設定であるから、人間であるエリアルが先に逝ってしまうのは最初から分かりきっています。それは物語の冒頭から呪われた種族という表現で伝えられています。
長命であるが故に、人と関われば親しくなった数だけ悲しみを経験してしまう。
心無い人々は彼らを化け物と呼ぶが、長命の種族である彼らには心があるからこそ、自分が常に残される側に立たされ、幾度となく悲しい思いをさせられる人生は呪われていると感じている。
それを理解出来ない者こそ化け物なのではないのか、という皮肉が込められています。

子育てには良い時もあれば悪い時もある。
可愛い盛りの頃などは特に、生きる為の糧を与えている側である親の方が、子供から多くの力を受け取っている。自分の生きる意味は子供の存在が全てと断言する人も居る。
良いお年頃な時には衝突もあれば分かりあえない時もある。この作品はファンタジーでありながら、人の感性や感覚、あらゆる感情が現実に沿っている。そういった部分から日常に重なる部分が多くあり、展開が読めてしまう。
この作品の凄いところは、そんなふうに物語がベタでバレバレな展開でも、エリアルの逝く場面では見る者の多くが心を強く大きく揺さぶられる所。思い出の数々が激流のように迫るあのシーン。どうにも他人事とは思えない。
マキアは当然堪えきれずに泣く。いつか約束をした、もう泣かないなんて決意など、その約束を結んだ本人であるエリアルを失った瞬間、花びらのように風に吹き飛ばされ、悲しみに覆われる。
この時、マキアの心情を痛いほど知る者が近くに一人居る。
そう、この物語を見てきたあなたです。
彼女がエリアルと積み重ねてきた思い出を知る身としては、もう他人事じゃない。
人の親となった人。
親や兄弟、又は友人や恋人を失ったことのある人。
日々生きる忙しさから、頭からほんの少し離れていたあなた自身の思い出が走馬灯のように脳裏に浮かんだかもしれない。
私は色々と浮かびました。

これは良作。
と、レビューを書いた後に知ったのですが、これを創ったの[あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない]の脚本家さんなんですね。なんだか妙に納得しました。この監督さんは俺の涙腺の天敵やな。
{/netabare}

投稿 : 2021/06/24
閲覧 : 222
サンキュー:

6

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さよならの朝に約束の花をかざろうのストーリー・あらすじ

一人ぼっちが 一人ぼっちと出会った

出会いと別れが紡ぐ永遠の一瞬

少女はその時 愛にふれた

『あの花』『ここさけ』の岡田麿里、初監督作品。(アニメ映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』のwikipedia・公式サイト等参照)

ティザー映像・PVも公開中!

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2018年2月24日
制作会社
ピーエーワークス
主題歌
rionos『ウィアートル』

声優・キャラクター

石見舞菜香、入野自由、茅野愛衣、梶裕貴、沢城みゆき、細谷佳正、佐藤利奈、日笠陽子、久野美咲、杉田智和、平田広明

スタッフ

キャラクター原案:吉田明彦、監督:岡田麿里、副監督:篠原俊哉、キャラクターデザイン&総作画監督:石井百合子、メインアニメーター:井上俊之、コア・ディレクター:平松禎史、美術監督:東地和生、美術設定&コンセプトデザイン:岡田有章、音楽:川井憲次、音響監督:若林和弘

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