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「リズと青い鳥(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
545
棚に入れた
2278
ランキング
214
★★★★★ 4.1 (545)
物語
4.0
作画
4.3
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

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リズと青い鳥の感想・評価はどうでしたか?

ネタバレ

をれ、 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

含蓄と映像美が素晴らしい芸術作品。

公式サイト;
https://liz-bluebird.com

今さらながらアマプラで視聴しました。

まずは、全編に絶え間なく流れる感の調べが美しいです。感情に直接作用してくるかのように感じます。ワタシは本質的にクラシックを理解できない種類の存在ですが、音だけでも素晴らしく感じ、演奏が目の前で行われ、演奏者の間に立っているかのような錯覚さえも覚えます。モニタヘッドホンで聴きましたが、ステレオ感や響きや減衰加減が最高レベルだからだとおもます。京アニ作品はこういうのが多いです。
 そして、動画の方ですが、これもまたワタシは動画音痴なので、よくわからないのですが、全体的に優しいパステル・トーン、時々は色や形を抑えることで、印象にこれもまた直接作用してくるような感じを受けました。画面をずっと眺めていたくなり、自分が情景の中にいるかような感覚さえ感じることもありました。
 お話、これはワタシでは、少なくともあと2・3回観ないと、あるいは観てもw完璧に把握することは困難だと思いますが、2人の出会いと別れ、別れあるいは新天地への出発を妨げるのは誰で何故なのかそう言ったことがキーになっているよう感じました。なお、お話の解釈や解説は識者の方にお任せwすることにします。
 本作品は、例えお話の中身を理解できない程度に未成熟であったとしても、成長とともにやがて気付くでしょうから、本作の場面イメージを記憶に留めておくことができるならば、問題なく楽しめる筈です。それは視聴時点のその時ではなく暫く経ってからです。そして、分かったと感じた時に物語の意味を自分の人生に活かせることがあると思います。

投稿 : 2024/04/17
閲覧 : 26
サンキュー:

5

lumy さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

山田監督の本領発揮。

TVシリーズは1期・2期ともに視聴済み。
公開劇場が少なく、レディプレイヤーワンで映画欲が
すっかり満たされていたので、当初観る予定はなかった
のですが、みなさんのレビューが高評価だったので、
往復4時間かけて観に行きましたw

これは・・・4時間かける価値がある映画ですね。
みなさんがおっしゃる通り、この映画は「動」ではなく
「静」なので、フルスクリーンで観なければいけない
というわけではありませんが、
あにこれユーザーの皆さんには、ぜひこのレビュー祭りに
参加してほしい作品ですw

とにかく、作品全体の演出やセリフの美しさは、
これまでの山田尚子監督の集大成と言っても過言ではないです。
2時間という枠の中で1つの作品を作るというのは、
TVシリーズにはない苦労があるかと思いますが、
山田監督はこの制限を非常にうまく利用する監督だと思います。
視聴の途中で、なんとなく話のオチは見えてしまうのですが、
その着地の仕方が、本当にスムーズで無理がなかったです。

なお、ユーフォのTVシリーズからかなりキャラデザが
変わっていますが、私は本作の演出やストーリーを考えると
英断であったと思います。
頭身が伸びただけでなく、スカートの丈も伸びていますが、
最近のアニメはみんな丈が短いので、ある意味斬新でした。


2024.4上方修正
Eテレで放送してくれたので、劇場視聴から久しぶりに観ました。
前回の☆が4.0だったのですが、
誓いのフィナーレで演奏シーンを観た後ということもあって、
大幅に上方修正しました。

本作は、ユーフォなんだけど、
ユーフォじゃない作品として観た方が良い気がしました。
たぶんTVシリーズ観てなくても理解できる作品です。

本作の二人は、高校生なんだけど高校生じゃない、
少し大人びた関係にあると思いました。
だから、TVシリーズのような青春ものではありませんが、
本作の二人がもつ感情は、すごく響くものがあって、
こんなに洗練された作品だったのかと改めて気づかされました。

劇場公開時のレビューで、スカートの丈なんて書いている場合じゃ
ありませんでしたw

投稿 : 2024/04/07
閲覧 : 410
サンキュー:

63

いんゃん さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

雰囲気が好き

山田尚子監督のプロフィールを見たら、
パラジャーノフ監督作品が好きと書いてあって、
嬉しい〜と思いました。

だからこそ、ストーリーがどうのと言うより、
雰囲気を楽しめる作品を作って下さったのだな、と。

ストーリーよりも、視覚的な面白さや、雰囲気重視の作品が
もっともっと増えると良いなと思います。

投稿 : 2024/03/02
閲覧 : 36
サンキュー:

3

U-yan さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

スピンオフです。

2期でスポットの当たった「のぞみちゃんとみぞれちゃん(久美子の1コ上メンバー)」を中心に描いたスピンオフです。キャラデザ変更ありです。相変わらず爽やかです。
時系列では久美子2年生前半で劇場版誓いのフィナーレの前になるのかな?
本編視聴者なら観るべきですね。

投稿 : 2024/02/28
閲覧 : 50
サンキュー:

5

たくと さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

「響け!ユーフォニアム」のスピンオフだし観とこ、位のノリだったんだけど、すごい良かったです

「響け!ユーフォニアム」のスピンオフだし観とこ、位のノリだったんだけど、すごい良かったです

ユーフォ本編にも、部内オーディション課題曲だった リズと青い鳥 の、原作物語にも二人の関係がクロスオーバーして・・・と思ってたら、だんだん「あ、これって!」と思い出す自分がいた

響け!ユーフォニアム本編観てなくても大丈夫、
だけど、逆にもう一回見直したくなるくらい、切ない物語でした

投稿 : 2024/02/18
閲覧 : 61
サンキュー:

3

ネタバレ

タイラーオースティン さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

観る者の心に強く刺さる静かな作品

タイトルだけでは初見の人は響けユーフォニアムの関連作と気づきにくい作品ながら、本作単体でも充分楽しめるほど高い完成度を誇った映画となっております。

冒頭でのリズと青い鳥の世界で引き込まれるものがある一方で、みぞれと希美の物語は最初から静寂に満ちたもので、まるで口数の少ないみぞれを表現しているかのような雰囲気。一応、希美も主人公格なんだけれど、全体的にほぼみぞれ視点で進められていた気がする。

仲の良い二人なんだけど、すれ違いが起こり、山場だったのは終盤の音楽室でのリズと青い鳥の演奏シーン。それまで抑えめだったみぞれが本気を出した事により、部員達から賞賛され、その後の希美とみぞれの二人のやりとりは一歩間違えれば、それまでの関係が壊れてしまいそうな重苦しさがありながらも、みぞれの希美に対する想いが語られるくだりで張り詰めた緊張感が一気に感動に変わるという今まで経験したことのない感覚を味わえました。

また、ラストでそれまであまり笑わなかったみぞれが一瞬微笑むシーンは派手さこそないものの、個人的に強いインパクトを残しました。間違いなく秀作です。

投稿 : 2024/01/19
閲覧 : 57
サンキュー:

11

challia さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ユーフォニアムシリーズの中ではこれが一番好き

響け!ユーフォニアムは見ないのですが、この作品だけは好きです。なぜなんだろう・・・?この二人が本編に登場していれば、「響け!ユーフォニアム」もみていたと思います(背景の脇役でしか登場しない)。

脇役なのにこの才能。主役級はもっとすごい才能という事を表現したいがための脇役の映画なのかなぁと思いました

投稿 : 2024/01/18
閲覧 : 55
サンキュー:

2

フェイルン さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

『響け!ユーフォニアム』の続編でありスピンオフであり百合

『響け!ユーフォニアム』の続編でありスピンオフなのだが、恐らく単体で観てもそれなりに分かるように出来ている。

吹奏楽部でオーボエを担当する鎧塚みぞれと、フルート担当する傘木希美がメインの話になっている。
この2人の百合作品と言ってしまうのは簡単だが、プラトニックな部分を繊細な作画や微妙な音の違いで作られている良作。

Blu-rayでのオーディオコメンタリーは聞き応え有るとの事。

投稿 : 2024/01/02
閲覧 : 269
サンキュー:

11

あと さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

美しくも切ない2人の少女の世界。

女子高生の揺れ動く感情。2人のすれ違いと違和感のある生々しい描写。細いタッチで本編とは異なるキャラデザで一層世界観を作りあげている。上映当時は可愛くないなあなんて思ってたのがバカらしくなるほど素晴らしい映画で余韻に浸って倒れてました。
この映画が2人の距離感を描くという丸っきり舞台装置なんですよね。学校もキャラもセリフも音楽も全部。濃厚な90分。京アニの繊細な作画や演出もとても引き込まれます。自然でリアルだけど、アニメでしか表現出来ない関係性がある。

投稿 : 2024/01/02
閲覧 : 56
サンキュー:

3

既読です。 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

2021年11月ユーフォ聖地巡礼後、31日~3日Eテレ11:05放映!!

2023年12月

今原作を再再々読しているのですが
希美の心情の吐露が全て言葉で
表現されているので
読んでいて顔が引きつりそうになるくらい
エグイです。すんごい引きます。
なのに、会話を控えめにして色と描写だけで
全てを語るこのアニメは・・・神です!!

ところで原作 
希美はみぞれを音大に送り出すよような言葉
言ってないですよね?
みぞれが勝手に希美の選択を受け入れたってだけで。
リズが願わないと、話が成立しないのでは?
なので、新山先生の解釈が腑に落ちる件が
何度観てもしっくりこないんですよねえ。

う~~~ん、もう一度テレビで確認しよう。


帰りの新幹線車中で「誓いのフィナーレ」
観賞後続けて車中で鑑賞。

大好きのハグのシーンで
奏だけ背を向けていたシーン発見!
やっぱ、スゴイな。

みぞれのピュアな愛着よりも
希美のあざとさがメインなのかな?
新山先生に声を掛けられたのはみぞれ。
追従に気を良くしていた希美の
あざとく振る舞えなくなった姿が
とても心に響く作品です。

それを色と構図と仕草で
存分に仕立て上げた吉田先生と
山田先生には平伏です!


あ、ちなみに聖地は敷地内のみです。


2019年6月1日 

2月に観て以来激ハマりして
繰り返して視聴すること数十回。

内容に関しては皆様のレビュー通りです!
熱いレビューを書かせるほどの作品です!

背景、色使い、動き、性格分析等々
皆さん実に細かく分析されていますね。

私はこの作品に衝撃を受け

遅ればせながら

「響け!ユーフォニアム」なるものを知り

アニメ全話を観て

(何度も何度も何度も何度も)

「誓いのフィナーレ」も4回観て

とうとう原作ノベル全巻発注をかけました。

山田尚子先生
吉田玲子先生
武田綾乃先生
京都アニメーション様様様様です!!

投稿 : 2023/12/16
閲覧 : 359
サンキュー:

25

ネタバレ

hrrgr さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ずっとずっと、一緒だと思っていた。

京アニが手掛けるユーフォシリーズのスピンオフ作品で希美とみぞれの二人の関係性に焦点を当てた映画。ユーフォの主人公である久美子は殆ど登場せず雰囲気もガラッと変わっている為、好き嫌いが分かれやすい作品かも。
まず音響のこだわりが尋常じゃないほど素晴らしく、足音や息遣いなど繊細な部分まで表現されていて、その空間に居るのかと一瞬錯覚しそうになる。
今作ではコンクールなど劇的なシーンはなく、話も大半が校舎の中で描かれている為、スケール感が小さく感じるかもしれない。だけど、この閉塞感こそがリズと青い鳥の魅力だと個人的には思ってる。
ユーフォと比較して演奏描写が減った分、心情描写はより繊細に描かれており、何気ない仕草や些細な感情変化など周回して気付いた部分も多い。
{netabare} みぞれと希美の関係性はユーフォ2の時から描かれてきたが、二人の間のわだかまりが完全に解消された訳ではなく、若干モヤモヤ感が残っていたが、今作でそのモヤモヤ感を払拭できたように感じた。冒頭ではリズはみぞれ、青い鳥は希美の事を指していると思っていたのが、中盤で立場が逆転していく流れは秀逸。そしてクライマックスの演奏シーン、大好きハグのシーンは感情移入しすぎて軽く脳がオーバーヒートしそうになった。 {/netabare}

投稿 : 2023/11/11
閲覧 : 49
サンキュー:

4

ネタバレ

カール さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

美しくも残酷な物語

原作未読。それ以外は視聴済み。

汗と涙の感動ストーリー。
それが響けユーフォニアム!!
だったのに、
今回はそういった要素は一切なし。

「そんなんエエから話ししようか」
と、担任から進路指導室に呼ばれ、
静かに真綿で首を絞められるような、
そんなお話。

陰キャのみぞれちゃんと、
陽キャの希美ちゃんは大の仲良し。

吹奏楽の切っ掛けをくれた希美に、
みぞれはただならぬ想いを寄せている。
一方の希美は、
そんな過去は意に介さず軽やかな感じ。

さて作中では、
「リズと青い鳥」という、
創作のおとぎ話が、
この二人の少女と重ねて語られます。

おとぎ話の結末は、
二人が離れ離れになる悲しいお話ですが、
それでもハッピーエンドを願う希美は、
悲劇の結末に台詞を付け足す。

「会いたくなれば、
また会いに来ればいい」

おとぎ話の青い鳥はリズに問います。
「冬になるとリズはどこに行くの?」
リズは答える。
「どこへも行かない」

お互いにキョトンとする。
「何で?」

青い鳥は渡り鳥。
越冬しなければ死んでしまいます。
にも関わらずリズは、
「ここにいる」と言うだけ。

二人が進むべき世界は明らかに違う。
二人は一緒にはいられない。

やがてリズはその事実を受け入れ、
青い鳥と決別する。

希美はずっと、
青い鳥の視点で世界を見ていた。
翼を羽ばたかせ、
自由の空を飛び回るのは自分だと。

しかし希美は、
耐え難い真実を目の当たりにする。
自分には才能がない。
遠くの鳥をただ見上げる凡人だと自覚する。

更に、
希美に才能を見せつけたみぞれは、
無意識に彼女にとどめを刺す。

大好きのハグ。
みぞれは関係を繋ぎ止めようと、
思いつく限りの大好きを希美にぶつけるが、
その大好きに対し希美はたった一言、

「みぞれのオーボエが好き」

しばし沈黙の後、
大好きのハグは解かれる。
希美が才能だと信じていたフルートは、
みぞれの大好きには無かった。

リズは、
自分の存在が青い鳥の足枷だと気付き、
別れを決意する。

希美は改めて、
自分のフルートが、
みぞれの足枷だったことに気付かされる。

みぞれにとっては成長物語だが、
希美にとっては絶念の物語。
最後まで明るく振る舞ってはいるが、
やはり希美にとってはBAD END。

冬が近づくにつれ、
進路が明確になるにつれ、
互いが進むステージが違うことを痛感する。

「会いたくなれば、
また会いに来ればいい」

学生時代はみんなそう思う。
でも卒業した途端、
新生活が始まった途端、
疎遠になっていくのが世の常。

若者が辿る、
かくもほろ苦い残酷な物語。

しかし最も残酷なのは、
多くの女子部員が参加したにも関わらず、
プールでの水着シーンが無いことである。


ありがとうございました。

投稿 : 2023/07/26
閲覧 : 133
サンキュー:

5

Dave さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

文学的な、響けユーフォニアム

1.「動」と「静」
劇場版「誓いのフィナーレ」(久美子2年生編)の裏側で、ひっそりと、しかし着実に変化していった2人の少女の物語。作中作である「リズと青い鳥」の物語になぞらえた少女たちの心の成長と関係の変化を、女性監督ならではの繊細で私的なタッチで美しく描いています。響けユーフォニアムが感動や躍動の「動」的な作品であるのに対し、こちらのスピンオフは見落としてしまいそうになる思春期の心の機微や言葉にできない内的な葛藤を、極力セリフではなく【情景】と【音楽】で静かに語りかけてくる「静」的な作品という印象を受けました。

2,作画
響けユーフォニアムと声優は同じながら作画のタッチがかなり異なるので、最初の5~10分くらいは少し抵抗を感じました。まるでいつもとは違った眼鏡をかけたような、そんな感覚です。声も舞台も同じなのに、アニメらしいはっきりとした輪郭ではなくどことなく輪郭のぼやけたようなキャラデザで、これまで響けユーフォニアムに思い入れが強ければ強いほど脳に混乱をきたしますが、間もなく物語に引き込まれて気にならなくなりました。

背景はとことん美しいです。ただ美しいだけではなく、まるで絵画のように情景がセリフの代わりに語りかけてきます。そうですよね、京都アニメーションの作品ですからね。ほんのわずかなカットにもちゃんと意味を込めていて、ああこれが世界のアニメをけん引するスタジオの作品だなと妙に納得しました。

3.音楽
響けユーフォニアムも演奏が素晴らしいのですが、セリフや動きの少ない本作では、より聴覚が鋭敏になります。BGMとしての吹奏楽、主人公たちが奏でるハーモニー、他の団員たちの合奏、どれも胸に染みます。オーボエの音、本当に美しいですね。

4.ストーリー
そして最後にストーリーですが、さすが女性作家&女性監督による作品だなと。女の子から女性に成長する、最後のステージ。アイデンティティは、誰かと同じであることではない。いつも一緒にいた友達と、いつまでもは一緒にいられない現実。独占したいけど、相手には相手の人生があって、可能性があって。そしてそれを認めて変化を受け入れなければ、自分もあいても羽ばたけない。すこし悲しいけど、より広い世界へ踏み出すには、失うことも受け入れなければならない。飛び立つしか、ない。

この作品を見た後で、もう一度劇場版「誓いのフィナーレ」が見たくなりました。あの合奏には、いろんな色の糸が紡がれているんですね。

P.S. 私の大好きな作品「宇宙よりも遠い場所」のめぐみちゃんとキマリの関係を思い出しました。こちらもあちらも、真剣な少女たちに幸あれ。

投稿 : 2023/07/22
閲覧 : 142
サンキュー:

12

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

京アニが駄目になったと感じた作品。

 京アニの例の事件の7月18日に合わせて何かをレビューしたかったんですが、少々遅れて7月20日です。残された家族、関係者の方の想いは部外者からは計り知れませんが、アニメファンとして追悼の意を捧げたいと思います。

 そのレビューにふさわしい作品が見つかったかなあという気がします。ただ、残念ながらそれとは別の意味での追悼にもなります。本作はまさに京アニと決別するにふさわしい作品な気がします。

 この作品は私が嫌いになった京アニの象徴だということです。この作品2018年と事件の前年ですから事件が映画の制作には関係ないですよね。

 人気が出たコンテンツを骨までしゃぶるという姿勢は、企業である以上しかたないのかもしれませんが、しかし「響け!ユーフォニアム」は2期ですら、過剰な演出とお涙頂戴のオンパレードで感動ポルノ化したのに、更にその2期で語った裏の情報をアニメにする姿勢が理解できません。

 作品は誰のものか?権利的にはもちろん作者であり版権を持っているところなんでしょう。が、本来作品というのは公開した瞬間から視聴者のものになります。
 よほど意図するか、精度が高いクリエータじゃなければ、作者の思惑から外れた意味内容に作品は変容します。それが読書や映画そしてアニメの面白さだと思います。また、人によって解釈がブレて、その変容が生じる余地を残せるのが、優れたクリエータだとも思います。

 ここは例ですが「私はこういうつもりで作った、実はこうでした、その解釈は間違っている」とSNS等で発信するクリエータは最低だと私は思っています。
 国語の「このときの主役の気持ちを書きなさい」という問題の正解に対して、作者が「俺はそういうつもりじゃなかった」という話があります。それはまともに解釈したらそう取れるのだから、作者の思惑とのズレは力量の不足だし、その解釈で作品が評価されているのだから、作品の評価が過大評価ということに気が付くべきです。ですから、この場合は解釈が正解というのが私の持論です。

 つまり、視聴者側には作品を独自に解釈した上での感動があるわけです。
 続編を作ると言うのはこのSNSの発信や作者の解説以上に視聴者が感動した作品の意味性を固定することになります。よほど慎重につくらないと前作を矮小化し、下手をすると殺してしまうことになります。ましてスピンオフというのは、元の作品の感動をシラケさせるものです。

 宮崎駿監督や新海誠監督が続編を嫌がるのはこれを分かっているからだと思います。逆に続編をつくらないアニメ監督は信頼がおける気がします(まあ、この2人は自作解説をするのでそれはそれで下品ですけどね)。

 つまり、視聴者は物語を見て、キャラの内面を理解し、行間を読み、考察して、感動して、作品の前後左右つまり過去と未来と裏側を想像します。それが視聴するという行為です。

 しかも、それを「いい話、感動する話、文学的な話」っぽく「技術で作る」「音楽をかます」のは特にやめて欲しい。つまり、いままで京アニの良いところであったはずの、優れた部分がすべて反転してしまったという風に私は感じています。この作品はその象徴です。

 そう…本作は、クリエータ側に言いたい表現したい事があって、この作品を作りました!に見えないです。だって、こんなことは2期を作ったらそのあとのヒロイン2人は、視聴者に委ねて感じさせる部分じゃないですか?非常に馬鹿にされた気分です。

 おそらく作品に魂がないので、この作品には引っ掛かりがなく、泣いておしまい、じゃないでしょうか?エモいだけエモいので、逆に薄っぺらく感じてしまい、虚無感すら感じます。
 何年後かに再視聴したくなる可能性は皆無だと思います。つまり「泣くための装置」であり、京アニが「泣くための装置メーカー」になった気がします。


 それがヴァイオレットエヴァ―ガーデンの劇場版という蛇足も蛇足、なぜこんなことを?という姿勢につながったんだと思います。

 本作の、絵本の部分のアニメは大したものです。ですが、その含意の薄っぺらさがにじみ出てきています。本作は正直、作品としては評価に値しないと思っています。

 ということで、京アニのこの姿勢。ぎりぎりの分水嶺がヴァイオレットエヴァ―ガーデンかなあと思いますが、この作品も言いたい事はいっぱいありました。ユーフォ2期、けいおん2期、メイドラゴン2期、ハルヒ2期(はちょっと違うか)もこの傾向が顕著で私は好きではありません。

 立て直すためには、京アニは2期以降をつくるな、劇場版をつくるな、スピンオフを作るなとしか言いようがありません。

 評価難しいのでオール3にしておきます。

投稿 : 2023/07/21
閲覧 : 591
サンキュー:

10

白毛和牛 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

みぞれと希美が主人公のスピンオフ作品

何だかキャラデザを初めに作中の雰囲気とかも本編と比べると随分と印象が変わったけど、
ただ内容としてはみぞれと希美の2人の関係性を描いたストーリーが非常に面白かったのと、
そして相変わらず京アニらしい映像美を堪能させてくれた所も素晴らしかったです。

【評価】

88点・2A級

投稿 : 2023/07/08
閲覧 : 65
サンキュー:

2

nyamu さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

傑作だった

ユーフォニアムの方は未視聴。

まったく前知識がないまま見始めて、スタッフが表示されて初めて名前だけは聞いたことがある「響け!ユーフォニアム」という作品関連だと気づく。

階段で誰かを待つ女の子。他の人が来ても特に興味を示さないけれど、その子が来れば軽やかな音楽が流れだす。
人物関連がわからなければ止めて、本編を見てからで良いかと思っていたけどそんな心配は杞憂だった。

前を歩く女の子とその後を追うように歩く女の子。大してセリフがなくてもそれだけで二人の関係性は分かる。歩き方や靴箱から靴を出して履くしぐさまで丁寧に描写されていて、それぞれがどういう人物なのかまでわかるように表現されている。

画面に映るのは後ろの子が見ている景色。前の子の後ろ姿。足元と、影と、揺れる髪の毛。その子のことが大好きで大好きで大切なんだろうと分かる。

最初こそセリフが少なくてもどかしさを感じるものの、タイトルが表示される頃には引き込まれていた。


ひとりぼっちで暮らしていたリズの元にやってきた青い鳥。二人はお互いに必要としていたけれどいつしかリズは自分が青い鳥を閉じ込めていることに気づき青い鳥を解き放つという童話に重ねて、みぞれと希美の二人の物語が描かれる。

後ろ姿だったり、足の動きだったり手の動きだったり。表情が見えなくてもセリフがなくても、繊細に丁寧に描かれている全てのカットで言葉にはならない何かを感じずにはいられない。俯瞰ではなくみぞれや希美の視界が多くのカットで使われているので必然彼女たちの心情にシンクロしやすくなる。セリフではなく映像で表現されているから画面から目を離せない。セリフが本心かどうか、本心だったとしてもほかの感情はないかは自分で読み取るしかない。

さすが原作、監督、脚本が女性で占められているだけあって、中学生~高校生の女の子同士の関係性がよく表現されていると思う。中学生ほどあからさまではないけれど、まだ残っている大人になり切る前の純粋さ、ひたむきさ、危うさ、狭さ、脆さ。そして自覚していて隠したい、自分の狡さ、独占欲、羨望、嫉妬。
言えない言葉、言わない言葉、あえて言った言葉。

二人の関係が主題だけれども、周りにはそれぞれに慕ってくれる下級生だったり近くで見守る同級生や大人がいるのが世界が閉じていなくて素敵だ。

写実的ながら淡い色彩の背景と細い線で描かれたキャラはいわゆるアニメっぽくはあまりない。それでいて、これはアニメでしか表現できない繊細なものだろうと思う。

登校のシーンで始まり、下校のシーンで終わる。物語が終わって二人の関係性に変化があったことがわかる。
喪失と挫折と葛藤と成長の物語。

結局、どちらがリズでどちらが青い鳥だったのか。セリフでは彼女たちの解釈があったが実際のところはどうだろう。自分は二人共がリズであり青い鳥であったように思う。解釈は人それぞれだしそういうのも心地良い。

全くつまらないと思う人もかなりいそうな気がするし、相当に人を選ぶ作品だと思う。

けれどもこれは傑作のひとつと言っていい作品だと思う。

本編のアニメも見たいし原作も読んでみたいと思った。

投稿 : 2023/07/07
閲覧 : 136
サンキュー:

15

ネタバレ

まにわに さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

類型:ブラ1

 
{netabare}「のだめ」で言うと、千秋のブラームスで、希美はのだめになれなかった、が初見の感想。
童話だけ見ると、どっちがどっちかわからないというのがあって、この感想だと、劇中劇がどちらかわからなくするようにしか機能していない、という非常につまらない結論になってしまうのが、どうにも引っかかって。これなら静止画ベースでいいわけで。

あらためてどっちがどっちか注意して見ていくと、みぞれがリズだとみぞれが思っているのは早い段階で明示されているが、希美は何も考えてないとさえ思うほど曖昧にされたまま、決定的なシーンでも明言されることはない。
諸々考え合わせて結論だけ言うと、どちらも青い鳥ということになるのだが。そもそも童話は母子関係を表していると考えるのが自然で、高校の部活に巣立ち間近の子供しかいないのは至極当たり前のこと。
すなわち、劇中劇も同年代の子供の起用以外の選択肢がなく、この有り様なのではないか。どっちがどっちか(子供か模擬母か)わからないのも重要、という意味ではよくできているとも言える。

jointについて。この物語を言い表していると考えると、そうは思えないし、手抜き。が、本編と切り離したという意味なら、気にならない。{/netabare}

投稿 : 2023/06/30
閲覧 : 70
サンキュー:

1

ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

良質の日本映画を見たような余韻を感じる傑作(追記しました)

[2023.5.7追記]
今回のGWを使って、やっとユーフォニアムシリーズのほぼすべてを見ることができました。
ユーフォの世界観・人物相関など理解できた上で、あらためて「リズと青い鳥」を視聴しました。
予想はしていたのですが、作品への理解の深さが段違いに違いました!

そのうえであらためて感じたのは、この作品はやはりまぎれもない傑作だということです。
より理解できた今のほうがさらにその思いが強くなりました。

リズと青い鳥という曲を演奏するというモチーフを柱として、絵本で語られるリズと青い鳥の関係とあの年頃の女の子の関係、第三楽章でのフルートとオーボエの合奏パートでの演奏で気持ちを表わしたり。

ユーフォニアム本編もそうでしたけど、音へのこだわりがこの作品も凄くて、オープニングの足元を映しながらの希美が来た瞬間の軽やかな音楽と二人の歩き方で表現される個性と感情。

もうその時点で再びこの作品の世界にどっぷりと漬かってしまうわたし。

後半、伸び伸びと力強く大空にはばたく青い鳥のようにオーボエを吹くみぞれと涙を流す希美のシーンは前回見た以上に私の胸に強く届きました。

オープニングと同じ軽やかな曲が再び流れ、希美は参考書を、みぞれは楽譜を開いて

disjointからjointへ

二人はそれぞれの道を歩みながら、これからも友達で居続けるんだと思います。


[初回感想]
響け!ユーフォニアムを全然見てなくて、この作品もスピンオフ作品だから見ても楽しめないだろうなと思って、気になってたけどずっとみてませんでした。

でも、見てなくても問題ないって友人に背中を押され、本編見ないでいきなりこの作品って変わってるかもだけど見てみることにしました。

冒頭、待つひとが来た瞬間、軽やかな音楽が奏でられる演出、そして足元多めのアングル。

歩き方で希美とみぞれの性格を表現してるところも面白いです。

二人以外の人物も足元で感情を表現していたり。

なんだろこの空気感・・アニメなんだけど(実写の)日本映画を見てるような感じがとてもします。

「リズと青い鳥」という絵本のお話をモチーフにした曲を練習する二人。

リズと青い鳥のお話パートは綺麗な水彩画みたいに描かれた世界で、こちらはまさに絵本の世界って感じ。

日本映画のような、絵本のような、それぞれが交互に描かれるのも面白いですね。

希美のフルートが光を反射してみぞれの胸に当たり、それに気づいて笑いあう二人。
みぞれの気持ちにあわせて奏でられる音楽。。ここ何気に好きなシーンかも。

第3楽章。合わないフルートとオーボエ。
先生に熱心に指導されるみぞれを見つめる希美。

二人はリズと青い鳥の物語を思い浮かべます。
リズの、青い鳥の幸せを思いながら。

終盤の演奏シーン、すごく細かいところまで表現されてて凄いですね♬

伸び伸びと吹くみぞれの演奏を聴いて泣く希美。

リズと青い鳥。
結局二人はどっちだったんだろう。
どっちというよりも、お互いがリズで青い鳥だったのかな。

冒頭のdisjointがjointに変わり、物語はいったん幕を閉じます。

見終わって。
とても質の高い、素敵な作品を見た満足感でいっぱいになりました!
うん。確かにユーフォニアム本編を全く見てなくても問題なく見れる作品だと思いました♪

同じ京都アニメーションのヴァイオレットもすごく良い作品でとても大好きですけど、例えば国際映画祭とかに2つの作品が出品されたとして、どちらか1つを選ぶとなった場合、なんとなく審査員はリズと青い鳥を選ぶような気がします。

水槽で泳いでるちびフグ可愛かった♡飼いたい。。

投稿 : 2023/05/07
閲覧 : 735
サンキュー:

57

ネタバレ

ガムンダ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

考察厨ホイホイ

タイトルではわかりませんが吹奏楽部スポ根アニメ「響けユーフォニアム」のスピンオフ映画となっております。
2期でひと悶着かましたノゾミゾ先輩コンビの物語。
時系列的には2期の後ですね。
クミコはモブに回ってます。

序盤から文学テイスト満載で本編とは随分雰囲気が違います。
キャラデザやや人間寄りに修正されてます。

語るのに台詞ではなく演出を多用しまくりますが、この大仰な演出にストーリーが負けてます。
演出にヤられて真面目に論評しそうになりますが、これはそんな大したストーリーのものではありません。

思春期青年期の共依存とそこからの脱却と成長によるカタルシス、と言うネタはもう100万回くらいやったヤツで、例えば「安達としまむら」を全力で作るとこうなる、みたいなアニメ映画です。

葛藤と成長を描く青春物語なんですが、肝心の「何故成長したのか」の部分がまるで説得力が無いのです。
まずコンクールで演奏する自由曲のモチーフとなったとされる、劇中劇ならぬ劇中絵本の存在ですがこれからしてノベライズされたり楽曲を当てられたりする様な名作とは思えないんですよね。

{netabare}木の実ひらって帰ってきたらある日突然「あなたは行かなきゃならない」って…
何故リズはそう思うに至ったのか。 ~ {/netabare}

そこに至る出来事こそが物語のコアの筈ではないのかと思う訳です。

同じことがこの作品全体にも言える事でして、そこを端折って演出しまくっても薄っぺらいだけになります。

安易に人死なせてお涙頂戴と言うのも感心しませんが、
何も失う事無く「ハイ成長しましたー目出度し」ってのも観てる方はシラけます。
このプロットでガチ感動出来るヤツは他に幾らでもあります。

「響けユーフォ」のスピンオフて事でだいぶ評価ブーストかかってる気がします。
ここは一つ製作側の意図に乗っかって
響けユーフォスピンオフ 言外の演出何個わかったかなー?ゲ~~ム
として楽しむが正解でしょう。


私的にはこの手法を用いるならそれ相応の中身が無いと、って思います。
{netabare} ラストでリドるのも「はいはいッ」って感じでした(^^; {/netabare}

投稿 : 2023/04/27
閲覧 : 159
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5

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RFC さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

本編の1年後 Ob.みぞれとFl.希美の心情にフォーカスを当てたスピンオフ

原作未読。
ユーフォ大ファンとしては視聴は必至でした。

【作品概要】
 ユーフォ1,2の1年後の物語。
 本編の主人公はユーフォの黄前久美子でしたが、
 今作は2の前半で登場した
 Ob.鎧塚みぞれ と Fl.傘木希美に
 フォーカスを当てた作品です。

【作品に対する感想】
 ユーフォ本編が熱い青春物語だったのに対し、
 今作は二人の心情描写に特化した作品で、
 かなり静かにトーンを落として描かれています。
 コンクールの結果とか、外界の事は描かれていません。

 コンクールの自由曲「リズと青い鳥」の物語に
 かぶってしまう二人の関係。
 曲を完成させていく過程でみぞれの成長を描いています。
 みぞれが精神的にあまりに自立できていないところに
 さすがにイラッとしました。
 最後はスタートラインに立ったものの、前半のイライラが
 解消し切れずいまいち感動できなかったです。
 
 音楽に関してはさすがで、言うことないです。

 本編ユーフォのような熱血アニメを期待している人は
 拍子抜けかもしれません。
 ただ、吹奏楽部を織りなす物語は常に熱いものだけとは
 限りませんので、こういう物語もありましたという点では
 リアリティがあると思います。

 
1)物語
 童話と二人の関係を関連付けて進めていくというのは
 なかなか面白かったです。
  
 みぞれの世界の全てである希美を手放す意味が分からない。
 彼女の考え方(希美の存在がすべて)なら仕方ないでしょう。
 新山先生とそれを一つずつ解きほどいていき、みぞれが依存から
 一歩を踏み出したところは良かったと思います。
 
 ただ、ちょっと疑問があります。
 童話と現実の関連について。
 一人のリズ 
  ⇒ 孤独なみぞれ
 
 リズのもとにやってきた青い鳥 
  ⇒ みぞれを吹奏楽に誘った希美

 孤独を満たされ幸せなリズ 
  ⇒ 希美の存在が全てとなり安心できるみぞれ

 に対して最後、
 「翼の枷になっていたと気付いたリズが青い鳥を解き放つ」
 というのは逆の立場になっていて、
 「翼を持つみぞれ(=音大に行けるほどの力を持つみぞれ)の
 ソロの掛け合いの枷になっていたのは希美」でした。
 さらに言うとみぞれが翼を持ちながら解き放たれて
 なかったのは希美を依存した自分自身が原因であり、
 希美がみぞれに枷をかけたわけではありません。

 ということで、いまいちリズと青い鳥をなぞらえた展開から
 外れてたなと感じているのですが、
 このあたりうまく噛み砕けなかったので、
 ご意見頂けたら嬉しいです。


2)作画
 リズと青い鳥の絵本の絵とリアルの方と描き分けられてました。
 絵本の方は足が異様に長く描かれてあるのがやや気になりました。


3)声優
 全体的にかなりトーンを落として話していたので、
 作品全体的に暗い雰囲気になってしまいました。

 童話の方はあえて棒読みな感じにして
 昔のアニメっぽい雰囲気にしてたのかと思います。

4)音楽
 吹奏楽の曲が非常に多かった印象です。
 おそらく「リズと青い鳥」の一部を
 シーンに応じて使っているのではと想像しています。

5)キャラ
 ①鎧塚みぞれ
  「またウジウジ引きこもりかよ」が最初の感想でした。
  去年の関西大会でのあの生き生きしたみぞれは
  どこへ行った!?
  
  ただよく思い出したら、みぞれが本来の演奏を
  取り戻したのは希美との間の誤解が解け、希美の為に
  演奏することを肯定できるようになったから
  だったんですよね。
  最後のコンクール、そして卒業…大切な希美と離れる
  刻が迫っている事が彼女を追いこんでるんですね。
  
  2のレビューでも描きましたが、「自分の為に」と
  思えるようには、1年経っても
  なっていなかったということでした。

  みぞれの希美への依存はまあ酷いレベルで{netabare}
  希美の後をついて回ったり、希美が音大に行こうかなと言えば
  自分も行くと言ったり…。{/netabare}自分の意思は無いんかいっ!って。

  自分のことで手いっぱいなものだから後輩に
  気を使わせたり泣かせたり。
  中学の時は後輩の指導とかどうしてたんだろうか?

 ②傘木希美
  1年経ってちょっとパワーが弱くなったかなという気がします。
  あすかに猛反対されてもめげなかったバイタリティーが
  感じられません。

  彼女は進路を音大から普通の大学に変更した件で、
  リボンちゃんから咎められますが、
  あれはちょっと不条理かなと。
  進路なんて自分で選ぶべきで、人が変わったから自分も…
  なんてありえないからです。
  

6)印象深いシーン
{netabare}
 ①高坂麗奈 みぞれに苦言を呈す
  麗奈の成長が凄く感じ取れます。
  1年前の麗奈なら突き放すような言い方しかできず、
  部内のぎくしゃくの間接要因になってたと思います。
  でも今回は自分の想いを述べつつ、ちゃんと後輩としての
  立場を考えながら言葉を選んでいたと思います。

 ②麗奈&久美子 信頼の掛け合い
  この二人の信頼を絶対的なものと示していたと思う
  このシーン。
  おそらくみぞれと希美に目を覚ましてくれという
  メッセージを乗せていたのではないかと想像します。

  こんなことまで後輩にさせるな!
  希美とみぞれは反省しなさい!

  ただ他のパートの演奏なんかしてたら
  「自分のパートをもっと昇華させろ」と
  めちゃくちゃ怒られるとは思いますが…。
  まあそれはそれで。

 ③新山先生 希美に対して「え?あなたも?」といった反応
  これ、リアリティの面でいいシーンだなと。
  全国レベルの吹奏楽部でも音大というハードルが
  どれだけ高いかを示しています。

  部内の1学年で2,3人ってところじゃないでしょうか。
  もちろん部のレベルによると思いますが。
  希美も部の中では上位の実力者でしょうが、
  高い金をかけて音大に行ってさらに
  プロとして生きていくのがどれだけ狭い門か…
  という話です。
  2年でも音大行きとなると麗奈くらいかなと。
  甲子園出場者の中からドラフトに名前が挙がるのが何人かを
  イメージして頂ければなんとなくわかるかも。

 ④希美と違う方に歩いていくみぞれ
  みぞれがやっと自分の意思で歩き始めたと象徴するシーン。
  ただ、「やっとですか」…という気はしました。
 
 
{/netabare} 

7)原作読破、誓いのフィナーレ視聴後(2020/3/29追記)
 原作読破・誓いのフィナーレ視聴後、リズを再視聴しました。

 リズと青い鳥を含む久美子が2年生の頃の期間は
 原作の「波乱の第二楽章 前編・後編」
 にあたります。
 2冊でリズと青い鳥・誓いのフィナーレが並行して進む
 感じですね。

 原作読破+誓いのフィナーレを視聴して感じたこと。
 ➀私のような脳筋にはリズ単品の視聴では拾いきれない
  繊細な心の機微がちゃんと作画されていた。

  原作のテキストを読んだうえで視聴するとほんのちょっとの
  口元や眉の作画で実は表現されていたことが解ります。
  {netabare}
  リズ単品で希美に黒い感情があったこと読み取れました?
  希美は多少ドライなところがあるとはいえ、
  そこまでみぞれを嫉妬の対象にしているとは
  思えませんでした。
  {/netabare}

 ➁恐らくこの北宇治高校吹奏楽部は鎧塚みぞれの視界を通しての
  描写だったのかなと感じました。

  ゆえに、本編のような熱量がない。
  物語が進む中、ずーっと音楽が鳴りっぱなしということが
  多いんですよね。
  音楽の上を人が歩いている。そんな印象を受けました。  
  これがみぞれから見た北宇治高校吹奏楽部の
  心象風景なんでしょう。

 
 原作を読むことで、情報不足も補えました。 
 読んでよかったと思います。
 全体的に原作のほうが生々しいです。
 その分リアリティがあります。
 みんなきれいごとだけじゃありません。
 打算もあるし、下心もあるし、嫉妬などの黒い感情もあります。

 そんな中で特に印象深かったのが、覚醒したみぞれの初3楽章。
 劇場版の映像はあくまでみぞれの心象風景だったのでしょう。
 ずいぶんマイルドで「すごくよくなりました」
 「よかったです」程度の表現でした。
 しかしすべての感情を生々しく乗せたみぞれのOb.は{netabare}
 滝・橋本先生をも「どうすんだよこれ」と唸らせるほど
 であり、希美の自尊心を木っ端みじんに叩き壊すほどの
 破壊力がありました。
 これにより希美のFl.は
 「私が前に出る」から「みぞれを支える」に変わり、
 みぞれのOb.は自由に羽ばたけるようになったと…。
 
 あー、みぞれの高校生活の真の完結として
 アンサンブルコンテストでのワンカット
 どっかで見れないかなー。
 というか、リズの最後に入れてほしかったなー。
 {/netabare}  

 生々しい真の姿を見たい方は原作おすすめです。
 そして限られた時間で目いっぱい詰め込もうとした
 京アニさんの努力がさらに感じられるかと思います。

投稿 : 2023/03/27
閲覧 : 473
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43

カミタマン さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5
物語 : 2.5 作画 : 2.5 声優 : 2.5 音楽 : 2.5 キャラ : 2.5 状態:観終わった

仮想ライバルはCLAMP?

2023/0/26 初投稿

絵は綺麗
流石,京アニ劇場版!!って感じです。
ただ,リズパートの等身が極端過ぎではないでしょうか?
コードギアスよりすごいかも?
「ノゾ・ミゾ」パートもややナイスバディー化しているように感じます。TVシリーズの方がリアルJK的なスタイル。本作はファッションモデルとセクシー女優を足して2で割ったようなスタイルに感じます。(気のせいかもw)

ストーリーは「ノゾ・ミゾ」を好きかどうかに左右されそうな気もします。
自分はテレビシリーズの「ノゾ・ミゾ」のエピソードも率直に言って苦手だったので,本作もやっぱり苦手でした。ミゾレの心情がよくわからない場面で言い知れぬ不安を感じたのは自分だけでしょうか?起こるはずもない破局的展開におびえ,正体不明の緊張感になぜか怯えていた自分でしたw(変ですよねw^^;)

「ユーフォ」シリーズ続編作製の後押しになるとしたら視聴した価値はあったのかと思います。

これかなり重要かも!!

投稿 : 2023/03/26
閲覧 : 245
サンキュー:

20

とろろ418 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

晴天に響くハーモニー

【魅力的に思った点】
・題材と物語の調和が取れている
・描写が美しく、キャラの内面までしっかり表現されている
・単一の物語としては完成度が高い

【残念に思った点】
・番外編であること
・作画が本編と異なる

【総評】
・90点
  単一の作品としては素晴らしく、100点付けてもいいくらいだったと思います。
  物語自体の構成が秀逸でありながら部活や学校生活の流れを崩すこともなく、ちゃんとその一環として機能していましたし、描写に関しても無駄な台詞を配置せずにキャラの表情や仕草を中心にとても美しく表現されていました。
  唯一と言っていいくらい残念なのは、この作品が番外編であることですね。
  当然経緯を知るためには本編を見る必要がありますが、本作の主役の一人である希美がお世辞にもいい扱いされてるとは言えず。なので変な見方をしないためにはこちらを先に見たほうがいいと思うんですが、それだと経緯が分からず物語に集中できない可能性が。と、不要なジレンマが生まれてます。
  他にも本編と並行してる都合で、見たいシーンがそっちに取られちゃってたり、差別化のためか作画が微妙な感じになってたりなど結構割を食ってる印象でした。
  まあ声を大にして言ってしまうと反感食らうんでしょうけど、個人的には本編よりも断然こちらのほうを推したいですね。

【こんな人におすすめ】
・完成度の高い作品が見たい人
・儚くも美しい物語が好きな人
・本編と気持ちを区切って見られる人

投稿 : 2023/02/15
閲覧 : 82
サンキュー:

7

御宅 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

"音"だけで生み出す感情の物語

山田尚子監督が誇る傑作です。1つ1つの瞬間があまりにも繊細すぎる上、唾を飲むのにも一苦労要する作品となっており、私自身何度も死にかけました。先に音楽を作ってから作画を起こすという異例の制作をしており、"感情"というものを音楽で作っています。そして、Homecomings手掛ける主題歌『Songbirds』の歌詞にも注目していただければと思います。『響け!ユーフォニアム』シリーズのスピンオフ作品ではありますが、全く知らない方でも楽しめる作品です。

投稿 : 2023/01/15
閲覧 : 345
サンキュー:

17

ネタバレ

U さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

C. ネタバレ注意 – disjoint から joint へ

2018年
武田綾乃の小説  
制作:京都アニメーション キャラデザ:西屋太志

高校吹奏楽部が舞台の友情、青春、成長物語 のスピンオフ作品


<メモ>
監督とキャラデザを変えて描かれたスピンオフ。 
本編とは違う山田尚子らしいキャラデザと演出ですね。

人気作なので楽しみにしていましたが、私は本編の方が好きです。

希美が自分より劣る(と思っている)みぞれに声をかけて側においてマウンティングしつつ優しい私を演出していたのに
下だったはずの みぞれの方が演奏に関しては上だと知った時、
悲しいとか悔しいとかではなく怒りの感情が出てくるのが実に女子っぽい。
1年時、先輩ともめて部活をやめた希美が相談も報告もしなかったのは
みぞれをその程度にしかみていなかったって事。

入学早々に天使のような葉月とみどりに出会えた久美子は幸運だったと再認識しました。

一人ぼっちのリズがみぞれかと思ったけど、どこまでも飛んでいけるのに留まることを選ぼうとする青い鳥がみぞれなんですね。
みぞれは希美に執着しなくても、心配してくれる優子や仲良くなりたいと望んでいる剣崎がいる事に気づいて。

鳥かごの蓋を開けた希美はみぞれと親友になれたようにみえたけど、
最後の2人で何を食べるか話ながらの仲良し風下校シーン。
前を歩く希美が振り返り、みぞれの驚く顔で終わりました。
振り返った希美はどんな表情だったでしょうか?
笑顔だったら驚かないですよね。


<主要登場人物>
・鎧塚みぞれ:種崎敦美
・傘木希美:東山奈緒

・剣崎梨々花:杉浦しおり

・リズ/青い鳥:本田望結


<ストーリー>
大会の自由曲に「リズと青い鳥」を選んだ北宇治高校吹奏楽部。
オーボエ担当の鎧塚みぞれとフルート担当の傘木希美の掛け合いが大事な曲なのだがうまくいかない。

みぞれは後輩の高坂麗奈に「ブレーキをかけ窮屈に聞こえる、本気の音が聞きたい」と云われてしまうが
1年の時自分の前からいなくなった希美を気にしすぎて実力が出せていないようだ。

2人は童話の「リズと青い鳥」のようにそれぞれの人生を歩みだせるのか?


23.1.13

投稿 : 2023/01/15
閲覧 : 129
サンキュー:

8

もさもさ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

私、気になります

この作品、本当に細部まで丁寧で大好きなんですが、どうしても気になってしまった点が一つ。

みぞれの聞きわけが良すぎというか切り替えが早すぎる。

絵本や小説がそういう解釈できるからって、それをすぐさま現実に当てはめて、のぞみに対する態度が変わるものでしょうか。

みぞれの性格とか想いとか考えると、もう少し葛藤とか動機づけがほしかった。

そこがクリアできてれば完璧な出来栄えだったと思う。

投稿 : 2022/12/26
閲覧 : 83
サンキュー:

3

ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

あの子は青い鳥

山田尚子監督作品、脚本吉田玲子。

群像劇としてのユーフォニアムから、
思春期の少女2人の機微な心情に焦点を当て、
より先鋭化した形で描写され提示される、
あまりにも美しく儚い旅立ちの物語。

足音の効果音が印象的に導入され、
2人の未来を象徴するかのように、
違う歩幅で、リズムで共に歩いて行く。
{netabare}ここでは大きな物語は、徹底的に排除され、
日々の練習風景と少女の心情のみが反復される。{/netabare}
少女たちの所作の1つ1つがあまりにも美しく、
その機敏な運動の中に、身体の美を見ました。

内向的なみぞれと明るく社交的な希美。
{netabare}童話「リズと青い鳥」が詩的に象徴するように、
それぞれの現状と未来に不安を覚え始める。
微妙な距離を生む対比された2人の感情、
上手くかみ合わないオーボエとフルート。{/netabare}
小さな青い鳥の幸せとは何でしょう。
ここにあるのは少なからず誰もが通過する、
イニシエーションではないでしょうか。

少女の美しさと儚さの一瞬を切り取り、
残酷さまでもドキュメントした記念碑的作品。
それでも前途ある未来を輝き解き放って欲しい。

私の大切な宝物となりました。

投稿 : 2022/10/12
閲覧 : 1388
サンキュー:

125

なご さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

全てが繊細

キャラデザインが違うので微妙かなと思ったが、
作画、音楽、演出最高でした。

本編ほどの派手さはないが、
ひとつひとつが繊細で
言葉では言い表わせない美しい作品です。

とにかく京アニ最高です。

投稿 : 2022/10/06
閲覧 : 128
サンキュー:

11

ネタバレ

馬車屋 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

素晴らしい‼

主人公のみぞれはこれから才能を開花させ、広い世界に出て行ったとしても、きっと親友と言える人は希美だけなんだろうな、
ヒロインの希美はこれからもたくさんの人に関わっていくだろうけど、高校時代の友人として一番に思い出すのはきっとみぞれなんだろうな、
たとえ高校卒業後に疎遠になったとしても。
そういう感動がしっとりと押し寄せるような作品だった。

本作は劇的な事がほとんど起こらない。だからこそ、脇役との会話、視線の動き、足音、髪を弄る手つき、細かな表現全てが大きな意味をもっている。ともすれば冗長にも成り得るそれらを、圧倒的な作画と巧みな演出で、神秘的で美しいとすら感じる一幕に仕上げている。
主人公のみぞれは多くを語らない。ヒロインの希美も主人公に対しては素直ではいられず、大切なことはほとんど言わない。だから二人はすれ違う。観ているこっちは、これはどういう意味だったのだろうと、観るたびに気になるところが生まれ何度も観たくなる。
そんな二人がいかにして、多くの人にとって些細な、しかし当人たちにしてみれば余りに大きい、才能、進路、嫉妬、独占欲等々の数多の障壁を乗り越え、そしてどのような未来へ舵をきるのか。
本来なら言葉にしようもない、あまりに刹那の微かな感情の機微を、本作は克明に、美しく切り出している。圧巻の一言である。
 
{netabare}そして本作の所謂山場は、相手に直接言葉にして伝えることを避け続けた二人が遂に向かい合うあの場面だろう。

希美にしてみれば、私が誘って、私より音楽が好きというわけでもないのに、なのに私より上手くて、私よりも才能ある『アイツ』に「ずるい」と直接伝えることがどれだけの苦みを伴うことであったろう。
しかし、みぞれが希美の言葉を受けて音大へ進学を決心するのと同様に、希美もまた、最後まで「希美のフルートが好き。」と言わなかったのぞみの『大好きのハグ』をうけて一般大進学への、(何よりも好きだった音楽の道を諦めるという)決心を固めるのである。
二人は最後まで互いを完全に理解したとは言えない。希美は結局本心を全てさらけ出したわけではない。
しかし、お互いがお互いにとって無二の、一番の友人であることは、これを以て揺るぎないものになっただろう。それこそが何よりも美しく、尊いものである。{/netabare}

繰り返しになるが、劇的な恋愛も事件もない。誰もが濃度の差こそあれ経験したであろう一幕を、無駄の一切ない澄み切った描写で浮かび上がらせ、劇的なものにまで昇華させた本作は、なかなか替えのききがたいものであろう。
loveではなくlike。恋愛感情ではなく友情。しかし不純物を慎重に丁寧に抜いていったそれは、観ている我々に寒気まで感じさせるような美しさと感動を与えてくれる。

敢えて『響け!ユーフォニアム』シリーズと本作との比較を許すのなら、
前者は早期に完成された『くみれい』による、熱血で躍動感ある、荒々しくも爽快な話である。
対して後者は、まだ未完成な『のぞみぞ』が、(できれば避けたかっただろうが、)互いを直視し、現実と折り合いを付けながらも前を向く、何処までも清らかで美しく、そして一歩間違っていたなら、観るに堪えない大変醜いものにもなりうる、そんな奇跡の平衡の上に成り立った人情ものだろう。
そのため、ユーフォシリーズとは主題も作りも根底から異なっているし、ユーフォシリーズ主人公を通してみた『のぞみぞ』観はむしろ邪魔にもなりうる。
しかし、『響け!ユーフォニアム』シリーズによる予備知識を念頭に置いて観ようと観まいと、百合ものだという枠組みで観ようと観まいと、本作は十分楽しめるだろう。幾通りでも楽しめる本作はやはり良作である。

投稿 : 2022/09/25
閲覧 : 107
サンキュー:

5

うぐいす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

話の根っこはTVアニメと被るので単体で見てどうかだが、、、

題名と同じ絵本に添って進むお話。

ノゾミがミゾレに一年生の時に傷つけた事を三年生でもやるってのがストーリーの根本にあるのだが、あまりにもノゾミが哀れキャラすぎる。それでいて「ハッピーエンドが良いよね」とか言わせるのは趣味悪いと思ったりする。

TVアニメ版から見てるとキャラ絵にがっかりするかも。
アニメ絵より絵本絵に近い。ミゾレの可愛さは激減してるし黄前ちゃんの髪型が変わりすぎてて別キャラみたい。
「みなみけ」と「みなみけおかわり」ぐらい違う。
気持ち良く終わらないところも好きじゃない。

投稿 : 2022/06/12
閲覧 : 181
サンキュー:

1

ネタバレ

マーティ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

自由の青い翼

 全90分。「響け!ユーフォニアム」のスピンオフ。

 今さら気づきましたが、今作は2018年公開、そして「誓いのフィナーレ」は2019年公開だと今更ながら気づきました(^_^;)先に誓いのフィナーレの方を見ちゃいました。でも特に問題なかったです。

 うおお、なんだこれは・・・!これはスゴい・・・!好みドストライクでした。でも何が良かったのかうまく語れない。。

 まず驚いたのは作風の変化。本編はキラキラしてて、女の子が健康的でムチムチに描かれていたのに対し、今回は色相は暗め、女の子はほっそりと描かれているというね。
 他のかたの感想のどこかに書いてあったんですけど、本編は久美子視点、今回はみぞれ視点とのこと。それを見て、なるほどと納得でした。

 みぞれと希美の関係やお互いの心情については、僕も何と言ったら良いのか、いまいち整理しきれてませんね。もう一回見ないとわからないこともあると思うので。
 みぞれはどこまでも羽ばたいていける存在。しかしそれを縛り付けていたのは希美。まさに今回出てきた童話のような、嬉しくもちょっぴり切ない、そんな話でした。

 最後は二人で一緒に下校。お互い笑いあってたんだけど、不思議と切なさもあるような。。二人ともこれからも親友でいてほしいですね。

 いまいちまとまってないですが^^;
 これにて感想を終わります。ここまで読んでくださりありがとうございました。

投稿 : 2022/06/04
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リズと青い鳥のストーリー・あらすじ

北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当している鎧塚みぞれと、フルートを担当している傘木希美。

高校三年生、二人の最後のコンクール。
その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「なんだかこの曲、わたしたちみたい」

屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。

親友のはずの二人。
しかしオーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。(アニメ映画『リズと青い鳥』のwikipedia・公式サイト等参照)

ティザー映像・PVも公開中!

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2018年4月21日
制作会社
京都アニメーション

声優・キャラクター

種﨑敦美、東山奈央、藤村鼓乃美、山岡ゆり、杉浦しおり、黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、桑島法子、中村悠一、櫻井孝宏

スタッフ

原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)、監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、キャラクターデザイン:西屋太志、美術監督:篠原睦雄、色彩設計:石田奈央美、楽器設定:髙橋博行、撮影監督:髙尾一也、3D監督:梅津哲郎、音響監督:鶴岡陽太、音楽:牛尾憲輔、音楽制作:ランティス、音楽制作協力:洗足学園音楽大学、吹奏楽監修:大和田雅洋

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