2004年秋(10月~12月)に放送されたアニメ映画一覧 9

あにこれの全ユーザーが2004年秋(10月~12月)に放送されたアニメ映画を評価したーデータを元にランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年04月25日の時点で一番の2004年秋(10月~12月)に放送されたアニメ映画は何なのでしょうか?
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年代別アニメ一覧

76.7 1 2004年秋(10月~12月)アニメランキング1位
ハウルの動く城(アニメ映画)

2004年11月20日
★★★★☆ 3.8 (1048)
6604人が棚に入れました
魔法と科学が同時に存在する時代。町の小さな帽子屋で働くソフィーは、自分に自信が持てない内気な18歳。彼女の住む王国では戦争が起きているが、それも遠い世界の話でしかない。しかし、町はずれの荒野に住む荒地の魔女の意地悪により呪いをかけられ、90歳の老婆の姿に変えられてしまう。家を出て荒地を放浪する彼女の前に現れた巨大な動く城。生きるために城の主で魔法使いのハウルに掃除婦として雇われるソフィー。

甘ったれで自信家のハウルに呆れながらも、彼の弟子のマルクルや、荒地からついてきた案山子のカブ、この城を動かしている火の悪魔であるカルシファーと家族のような時間を過ごすソフィー。風変わりなハウルとの生活に驚きながらも心を開いていくが、戦火は確実に彼らへ忍び寄っていた。

声優・キャラクター
倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、伊崎充則、大泉洋、大塚明夫、原田大二郎、加藤治子
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

我を通す!

原作「魔法使いハウルと火の悪魔」は未読。


「荒地の魔女」の呪いで老婆に変えられたソフィー。
彼女は魔法使いハウルの家で、清掃婦として働くことになる。


なんとも支離滅裂なストーリーです。

・ソフィーの冒険記
・ソフィーとハウルの恋物語
・戦争ストーリー

複数のエピソードを切り貼りしたような感じです。
主軸が定まっていません。
山場がどこにあったのかもわかりません。


しかし、そこはさすがジブリマジック。
どこに面白みを見つけたらいいのかわからない脚本を、それなりのエンターテインメントに仕上げています。
映像や効果音など、アニメーションとしての見せ方が上手なんですよね。
ソフィーが時によって少しだけ若返る描写など、さすがジブリという感じです。

配役も言われるほど違和感はありませんでした。
特にハウル役の木村拓哉は、よく合っていたのではないかと思います。
気になる人は気になるだろうけど……。


でも、ちぐはぐな展開はやっぱりひっかかります。
そこで、一貫したテーマ性を自分なりに模索してみました。

「大人の中にある子供心、特にわがままな点」

主人公のソフィーは老婆の姿。
しかし、中身は少女のままで好奇心旺盛。

ハウルはクールで大人っぽい印象。
しかし、幼稚な面を多分に持っています。
{netabare}
特に、髪の毛の色が変わったシーンが印象的です。
それまでのハウルとのギャップに驚いた人は多いのではないでしょうか。
{/netabare}
荒れ地の魔女や国王、サリバンなど、準レギュラーメンバーも同様です。
子供っぽいわがままな態度が目立っています。
「我を通す」という意味では共通していると思います。

これなら戦争というオリジナルの要素にも、ある程度筋が通ると思います。
戦争の原動力は「エゴ」だと思うので。
制作側がこれを意図していたかどうかはわかりません。
しかし、ひととおり見た感じではこの解釈が一番しっくりきました。

恋愛に関しても惚れた腫れたの描写はありませんが、一目ぼれってことにしてしまえばOK。
あとは「わがまま」で目標に向かってまっしぐらです。


まあ、ジブリ作品の中ではよくわからない部類に入ると思います。
伝えたいこともはっきりしません。
それでもアニメーションとしての面白さは持っています。
大ハズレということはないと思います。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 52

大和撫子 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

気品漂う作品

ワクワクするような魔法の世界観がとても良かったです。
劇中に流れる音楽を聴くだけでもこの作品に引き込まれます。
二転三転するストーリーもそれなりに楽しめました。
ハウルの声優に「木村拓哉」さんをキャスティングしたのもこの作品の魅力の一つ。
しかしヒロインのソフィーの声優が「倍賞千恵子」さんなだけに、失礼な発言になってしまいますが少女の頃のソフィーは若々しくなく、恋愛ファンタジー作品のヒロインとしては華が足りない感じを受けました。
ヒロインの声優は二人使っても良かったのでは?

投稿 : 2024/04/20
♥ : 3

kFNFM66461 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

主人公二人の声優さんがダメダメ

ところどころに宮崎駿監督のステキな世界観や言葉があってそれなりに楽しめた。
でも声優さんが・・・。ハウルの声優さんは最悪だった。声を聴いていると「ハウルじゃない。キムタクやん」と現実に引き戻されてしまい、うんざり。声優さんは声優さん自身のキャラクターを登場人物に写してはいけないと思う。まあキムタクさんが悪いのではなく、完全なミスキャストなだけで。
ソフィーも声優さんがひどい。こんなに超難度の役を頑張っておられる倍賞さんが目に浮かぶようで・・・以下略。

主人公二人の声優さんをベテランの職業声優さんにしてくれていたら、作品の出来が随分違ったのではないだろうか。

あと、宮崎駿監督がこの作品を作るとき、「メロドラマを描く」とか言われてたようだが・・・見終わって、宮崎駿監督にはメロドラマは無理なんだな、となんだかしみじみ感じてしまった。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 3

71.7 2 2004年秋(10月~12月)アニメランキング2位
雲のむこう、約束の場所(アニメ映画)

2004年11月20日
★★★★☆ 3.7 (846)
4688人が棚に入れました
日本が津軽海峡を挟んで南北に分割占領された、別の戦後の世界が舞台。
1996年、北海道は「ユニオン」に占領され、「蝦夷」(えぞ)と名前を変えていた。ユニオンは蝦夷に天高くそびえ立つ、謎の「ユニオンの塔」と呼ばれる塔を建設し、その存在はアメリカとユニオンの間に軍事的緊張をもたらしていた。
青森に住む中学3年生の藤沢浩紀と白川拓也は、津軽海峡の向こうにそびえ立つ塔にあこがれ、「ヴェラシーラ(白い翼の意)」と名づけた真っ白な飛行機を自力で組立て、いつかそれに乗って塔まで飛ぶことを夢見ていた。また2人は同級生の沢渡佐由理に恋心を抱いており、飛行機作りに興味を持った彼女にヴェラシーラを見せ、いつの日にか自分たちの作った飛行機で、佐由理を塔まで連れて行くことを約束する。
しかし、突然佐由理は何の連絡も無いまま2人の前から姿を消してしまう。

声優・キャラクター
吉岡秀隆、萩原聖人、南里侑香、石塚運昇、井上和彦、水野理紗

. さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

宇宙も夢を見るのだそうでございます。

本作品は語ります。宇宙も夢を見るのだそうでございます。宇宙の見る夢は様々な可能性を表した別世界。これを並行世界と呼ぶのだそうです。そしてその並行世界を人は無意識の内に夢等の形で見ているのかも知れないと・・・。とてもロマンチックなお話でございますね。


本作品は”新海誠”様の3作目の監督作品でございます。4作目が「秒速5センチメートル」になりますので、1作品前と言う事になります。「秒速5センチメートル」がどなたにでもお勧め出来る作品なのに対し、本作品は残念ながら少々人を選ぶ作品かと思われます。それ故、冒頭にて少しだけお断りをさせていただきたいと存じます。

先ずパッケージ絵の印象に反し、舞台はリアルな現代では無く、仮想世界の物語となっております。但し荒唐無稽なSF世界と言う事ではなく、日本を舞台とした別の世界と言う設定でございます。
ワタクシの物語に対する評価は☆3.5。少々厳しめでございます。これは壮大なストーリーで有るが故に、世界設定に対する説明、登場人物の感情の変化、心情の描写が少々足りていないと感じたからでございます。また全体時間も長すぎました。良い作品ではございますが、中だるみ感を感じてしまった点が大変残念でございます。これら残念な点を見事に克服し、そして”新海誠”様の本当に描きたかった主題を描いた作品が「秒速5センチメートル」では無いかとワタクシは”勝手”に思っております。

ワタクシ個人の意見で大変恐縮ではございますが、この作品における最大の問題点はOPでの回想描写かと思われます。小説に忠実であるが故の描写かと思われますが、正直この描写は小説を読んでいない方には混乱を招く要因でしかございません。よって、これが有る故にエンディングの解釈をあやふやにしてしまう可能性があると思われます。この点、本当に残念でございます。少々辛口な事を申し上げましたが、ワタクシはこの作品が大好きでございます。それ故にこの作品が酷評を受ける機会を少しでも少なくいたしたく、先にお断りをさせていただきました次第でございます。


それでは本題に参りましょう。
2004年の作品でございますが、今でも十分にトップレベルの作画クオリティーを持っております。さすがに次作品である「秒速5センチメートル」には一歩及びませんが、それでも息を呑むほどの突出した背景描写の美しさ。正に芸術の域では無いかと思うほどでございます。
「秒速5センチメートル」でも印象的でしたが、本作でも”駅の描写”、”電車の中の風景描写”、”草原と風の描写”等がとても印象深く、そして幻想的に描かれておりました。又、本作では飛行機が空を舞う描写が特に素敵でした。静寂な空間を滑るように飛ぶ浮遊感・・・。本当にお見事と言うしかございません。美しい風景描写の中で、3人の青年の追い求める夢と揺れ動く心情を背景に見事に重ね合わせ、とてもファンタジックな作品に仕上がっております。音楽も素敵でございますね。要所×2で掛かるBGMは大変作画にマッチしており、雰囲気を盛り上げてくれます。ED曲の『きみのこえ』も大変印象的な曲でございました。


冒頭で宇宙の夢についてお話させていただきましたが、本作では3人の青年達の叶えたい夢と、人が眠りの中で見る夢をかけている様でございます。
主人公の”藤沢 浩紀”様と”ヒロインの”沢渡 佐由理”はお互いが惹かれあい、そしてその思いはいつしか恋心へと変わっていきます。しかし無情にも2人は引き裂かれてしまう。”藤沢 浩紀”様が”沢渡 佐由理”様を思い、心を詰まらせていく描写。正に「秒速5センチメートル」の主人公を彷彿とさせます。

離ればなれになった2人はお互いを眠りの中で夢見続けます。現実世界では逢う事が叶わない2人。でもお互いが探し合い、激しく求め合うことでいつしか2人の夢はシンクロしていくのです・・・。
2人が交わしたあの日の約束。叶えることの出来なかった夢。
主人公は決意をします。一度は破れた夢だけど、一度は果たすことが出来なかった約束だけど。夢を現実にしようと。あの日の約束を叶えようと・・・。


「雲の向こうのあの場所にいこう。あの日交わした約束を果たしにいこう」 物語は大きく動き出します。
どうぞ2人の夢を、2人の恋を・・・応援してあげて下さい。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 20

るすぃー さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7

THE セカイ系でエヴァンゲリオン症候群

●これから見る人へ
まず最初に、君の名は。から入った人は覚悟してくれ。
むしろ、覚悟がなければみなくていいぞ。

2004年という年代を考えると、当時の映像としては頭一つ抜けた美麗なグラフィックだったな!
しかし、2016年という今、さすがに古臭さが否めない。
そして何より残念な、エヴァンゲリオン症候群(エヴァっぽい作品)として完成してしまっている。
正直曲くらいしか、印象に残らない作品だ!
久々に見た私も、あーこれはつまんねーな!と20回ほど心の中で思ってしまったぜ!
ただ、新海誠が2004年にやりたかったこと、それがでている作品だとは思うぜ!
今はもう古臭いが、セカイ系を見たければ、これを見るのもいいかもな!
ただし、おすすめはしない!
おすすめはしないぞ!

投稿 : 2024/04/20
♥ : 1

しょうすけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

新海監督らしい名作系な作品かな(*´∇`*)

正直、序盤はチョット睡魔に襲われましたがw
ファンタジックな感じでとても良かったです^^
絵のコントラストやピント使いはいつも通り写実的というかとてもアニメって感じじゃない凝った芸術的作品ですね^^
キャラはまぁ何ですがw
EDやバイオリン演奏等音楽的には良かったです^^
物語上では1996年の出来事ですが戦後、日本が津軽海峡を挟んで南北に分割占領された、別のパラレルワールドでオーバーテクノロジーな舞台となってます。
チョット難解な点もありイマイチ印象に残らなそうな感はありますが作品的には良かったと思います^^

投稿 : 2024/04/20
♥ : 8

69.9 3 2004年秋(10月~12月)アニメランキング3位
Mr.インクレディブル(アニメ映画)

2004年12月4日
★★★★☆ 3.9 (56)
456人が棚に入れました
「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」「ファイディング・ニモ」など数々のメガ・ヒット作を世に送り出してきたピクサー&ディズニー共同による長編フルCGアニメの第6弾。ピクサー初の人間キャラクターを主人公に据え、引退したスーパー・ヒーローとその愛する家族が世界の命運をかけて立ち上がる姿をユーモラスかつハートフルに描く。監督は「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バード。 かつては世界の危機をいくつも救ってきたスーパー・ヒーローたちだったが、15年前にその桁外れの破壊力が問題視されて以来、スーパー・ヒーローとして活動することを禁じられていた。いまでは正体を隠し一般市民として暮らし、その大きな身体を持て余し気味のMr.インクレディブルもそんな元スーパー・ヒーローの一人。そして彼の愛する妻と3人の子どももスーパー・パワーの持ち主。彼らは普通の生活を送りながらも、それぞれに不満や悩みを抱えていた。一方その頃、巷では元ヒーローたちが次々と行方不明になる不穏な事件が続発していた。そんな中、インクレディブル一家にも陰謀の影が迫っていた…。

声優・キャラクター
クレイグ・T・ネルソン、ホリー・ハンター、サラ・ヴァウエル、スペンサー・フォックス、ジェイソン・リー、サミュエル・L・ジャクソン、ブラッド・バード、ウォーレス・ショーン、エリザベス・ペーニャ
ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

スピーディーで爽快なアクションの実現。そしてエンタメの真髄とは。

2004年公開、ピクサー制作のフルCGアニメーション映画です。
ピクサー長編アニメーション6作目であり、人間が主人公となる初の作品です。

例えばウルトラマンが怪獣をやっつけても
戦闘中に街を破壊して、怪我人も出してしまったという場合、
その損害賠償額を誰に請求するのかというと
ウルトラマンということになってしまうのかもしれません。
今の世の中はスーパーヒーローが活躍するには
あまり窮屈過ぎるということなのでしょうか。
本作の主人公Mr.インクレディブルことボブ・パーもそのような憂れき目にあってしまい、
さらには、政府の政策によってすべてのヒーローは引退に追い込まれてしまいます。
世間には正体を隠すことを余儀なくされた生活を送り15年・・・
ボブ・パーは保険会社に勤務、かつては同じくスーパーヒーローだった妻と
人並み外れたスーパーヒーローの能力を持つ長女と長男、そしてまだ赤ん坊の次男、
一家五人はなんとか普通の生活に馴染もうとしていました。

主人公のボブ・パーはかつての栄光が忘れられず燻っているというのに対して
その妻のヘレン・パーは非常に現実的で今の暮らしの安定に執着しています。
ロマンチストな男とリアリストな女と
この辺りは日本もアメリカも大差ないのかもしれませんねw

やがてこのスーパーヒーロー一家は事件に巻き込まれていくのですが、
家族一丸となって悪と戦うというのは、「劇場版クレヨンしんちゃん」っぽいですね。
日本の家族とアメリカの家族の違いという視点で観てみるのもおもしろいと思いますよ。

本作を観て私が感じたのは「やはり母は強し」ってことですかねw
常に我が子の安全を第一に考え行動する
ヘレン・パーは頼もしいとしか言い様がありませんでした。

さて、私は本作のストーリーについて深く言及していこうとは思ってはいません。
なぜなら、本作は実に単純明快な痛快アクションアニメ映画だからです。
仮にもレビューを書いているレビュアーとしてあまり言いたくない台詞なんですけど、
実際に観てもらった方が早いと思いますw

ただ、このアクションシーンが鮮烈なんですよね。
単純に凄い!爽快感が半端ない!!(まさに小並感)

一応どう凄いのか、その辺りを他のポイントと共に
ネタバレなしで語っていきたいと思います。


「不気味の谷現象」

{netabare}私は最近3DCGアニメーションに関心があり、
ちょこちょこと色々調べたりしているのですが、
その過程で知ったのが「不気味の谷現象」です。

これは元はロボット工学上の概念なのですが、
人間のロボットに対する感情的反応について、
ロボットがその外観や動作において、より人間らしく作られるようになるにつれ、
より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わる。
人間の外観や動作と見分けがつかなくなると再びより強い好感に転じ、
人間と同じような親近感を覚えるようになる(wiki参照)。

この概念はアニメや映画でも用いられています。
3DCGアニメを観て「なんかキャラが気持ち悪い」って思ったことはありませんか?
単純な3DCGのポリゴンキャラなら「なんか人間っぽい!」と好反応を示すも、
徐々に人間に類似していった時にある境目を越えると
「マネキンみたいで気持ち悪い」というような拒絶反応に変わるというのが、
「不気味の谷現象」です。
「近親憎悪」に近い感情的反応だと思います。
私は「あるある!!」ともの凄く納得してしまいましたw

本作では人間が主人公ですが、デフォルメ化されており、
この「不気味の谷現象」を回避しているのですが、
ピクサーも不気味の谷を避ける試みであったと述べているようです。{/netabare}


「アクションシーンについて」

{netabare}本作のアクションシーンは、ヤムチャなら「目で追うのがやっとだ・・」と言うくらい
スピーディー且つ爽快なんですよね。

その素晴らしさについてここでは漫画のアクションシーンを引き合いに出して
語りたいと思います。

漫画のアクションシーンで特に重要なことは、
「誰と誰が」 「どこで」 「どのような」アクションをしているのか
ということになってくると思いますが、
例えば人気が出て安定期に入った作品によく見受けられるのが、
引き伸ばしの為か必要のない無駄なコマがやたらと多いというのがあります。
逆にコマをカットし過ぎても「何をやっているのかよく分からない」という
状況に陥ってしまうわけです。
その場合は何度か読み返してしまったりしますねw

過不足ないコマ割りで、どのような構図を取るのか
これが漫画におけるアクションシーンの肝と言えるでしょう。
そして、これが抜群に優れているのが鳥山明先生の「ドラゴンボール」です。
無駄のない必要最低限のコマ数で読者を迷わせることなく、
さらにコマ数以上のアクションを読者の頭の中で想像できるような構図取りと
言うなれば一切の無駄のない洗練された型と表現できるのかもしれません。

本作はキャラが画面上を縦横無尽に動き回るダイナミックさがあり、
細かいカット割りによって目で追うのがやっとというスピーディーな動きを実現し、
その上、「何をやっているのかなんとか分かる」という
視聴者を置いてけぼりにさせないようなアクションを実現していると思います。

アクションの流れの始点と終点(カットできない箇所)をしっかりと定め、
逆に、カットできるところはカットして作り出された
スピーディー且つ爽快なアクションは、
まさに「ドラゴンボール(漫画)」のような洗練されたアクションだと
思った次第であります。{/netabare}


最後に、とにかく視聴者はただ黙って観ていれば爽快さを感じるというのが本作の、
いや、ピクサー作品の凄さだと思いました。
分かりやすいフラグとなるシーンを提示して自然と次の展開を視聴者に予測させるよう
上手く誘導しているんですよね。
(例えば、岩にひびが入る→落石するだろうと視聴者に予測させるとかです)
だからごちゃごちゃと余計なことを考える必要なんてないんです。
作品に身を委ねてただ観ていればおもしろい。 
この辺は非常にハリウッド的な作りですねw

このような素晴らしいピクサー作品のあにこれにおける知名度の低さは
少し悲しくなってきます。

・単純明快なストーリー(テーマはどちらかと言えば大人向きです)。
・スピーディーで爽快なアクション。
・視聴者はただ観ていれば楽しめるということを実現させるきめ細やかな演出。

他にもキャラクターの魅力なんてことも挙げられますが、
これらは別に本作に限った話でなく、エンターテインメントの基本にして真髄なんです。
あとはそのクオリティをどれだけ高められるかなのですが、
そこに必要なのは、作り手たちの妥協なき姿勢、つまり灼熱の太陽の如き情熱です。
本作の放熱量は凄まじいですよ。そしてその熱に是非触れてみてください。
エンタメ王国アメリカから見習う点はまだまだ多いと強く感じた、ピクサー会心の1作です。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 31

褐色の猪 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ヒロイックファンタジーへの問い掛け

ヒーローは必要か?


ちなみにヒーロー≒ヒロイックファンタジーとするならば

高畑勲氏は監督第一作目「太陽の王子ホルスの大冒険」が(根底ではヒーローを否定してはいるが)唯一のヒロイックファンタジーで以後封印、
宮崎駿氏は「ホルス」後も作製していて「紅の豚」完成時になって漸く「この作品は作るべきでなかった」と後悔したそうですが、、
片渕須直氏は大学在学中既に「ヒーローは必要か」を考察されていて、職赴いてのち自身の作品としてヒロイックファンタジーは手掛けていない(と記憶)

他、アニメーターのみならず多くの小説家、漫画家等も一度は熟考した事があるかもしれません。
そして
この作品はディズニー自身への問い掛けになるのでしょうが、

「居てもいいんじゃない」と締め括るのがディズニーらしい。

まぁ余り気にせず(否定の先となるのは所謂ジュブナイルですから)、
認識ある大人が幼い子供達と一緒に観る娯楽映画として充分充実、
痛快アクションをたっぷり堪能しましょう。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 14
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

これからもどうかスーパーヒーローたちが活躍できる社会であって欲しい。

2004年公開、ピクサー6作目の長編映画は超人的能力を身に付けた一家が主役のヒーロー映画。

しかし社会の異端者でもあるスーパーヒーローの世界観と
何かに付けて訴訟ばかり乱発する、かの国の現実社会との
衝突への着目から入っていく本作は、なかなかに世知辛いムードw


驚異的な対物理防御、怪力が自慢。一家の大黒柱である夫。

四肢がどこまでも伸びたり、膨らんだり。その他、飛行機操縦など多彩なスキルを持つ。伸縮自在な妻。

見えなさ過ぎて自ら自信喪失する程の透過能力や、絶対不可侵のバリア能力を誇る長女。

F1カークラスの超快足が自慢の長男。


表舞台に出れば世界新記録連発も間違いなしの超人一家も、
ヒーロー活動による損害賠償請求の激化からの、
スーパーヒーローを禁止する法律の成立により、
“普通”の家族であることを強いられ燻る日々……。
張り合いがないのか、パパもややメタボ気味w

けれど、やはりヒーローはリミッターなしのフルパワーで悪をとっちめてこそ。
その過程で、ちょっと?被害が出たくらいで、ガミガミとツマラナイことを言うもんじゃありませんw
お堅い現実とぶつかる中で、スーパーヒーローが再誕し、市民権を取り戻していく。
パパを始めとした家族のみんなも自分らしさと威厳を取り戻していく。
夢の再興に嬉しくなる良作CGアニメ映画。


そのCG技術が遺憾なく発揮されているな。と感じるのは、長男の全力疾走シーン。
カッチリと描かれた現実の風景や小物等が、
アニメキャラの干渉を受けることで、あり得ない形にヘコんだり、弾んだり……。
リアルからコミカルゾーンへ突入していく、
古のディズニー以来、連綿と受け継がれて来た米アニメーション作品ならではの躍動感。

それらの表現が、トップスピードに達して、
加速度的にエンターテイメント性が極まっていく。
ピクサーの実力の一端が窺えるワンシーンです。


……おっと、そう言えば、このヒーロー一家には、もう一人、末っ子がいたのでした。
まだ赤ん坊ですけどね……。
ただ、{netabare} 赤ん坊はある種のモンスター。こういう話って大抵、末っ子が一番侮れないもの。
家族の留守中、この子を世話するベビーシッターも決死の覚悟が必要です。
でも大丈夫。モーツァルトでも聴かせて落ち着かせておけば、きっと大人しくなりますよw{/netabare}


ヒーロー一家が現実の壁を突き破り覚醒してからも、
{netabare} 巻き込まれ事故のリスクが伴うマント付コスチュームは断固拒否する {/netabare}など、
シュールなリアリティを決して忘れないw

現代社会にチクリと一刺し二刺しするスパイスも効いている。イカしたヒーロー映画です♪

投稿 : 2024/04/20
♥ : 12

65.3 4 2004年秋(10月~12月)アニメランキング4位
ベルヴィル・ランデブー(アニメ映画)

2004年12月18日
★★★★☆ 3.8 (29)
110人が棚に入れました
イギリスでアニメのキャリアをスタートさせたフランス人アニメーター、シルヴァン・ショメの長編デビュー作。誘拐された孫の救出に奔走する祖母の大冒険を、セリフを極力排し、露悪的にデフォルメされたキャラクターと毒気の利いたストーリーで描いたナンセンス・アニメ。アカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされたほか、NYやLAの批評家協会賞を受賞するなど2003年の映画賞レースを席巻した。また、劇中で三姉妹が歌う主題歌をはじめジャジーな音楽も評判に。 戦後間もないフランス。内気で孤独な孫のシャンピオンを元気づけようとおばあちゃんはいろいろな物を買い与えたが、シャンピオンはどれにも興味を示そうとしなかった。そんなある日、おばあちゃんはシャンピオンが自転車に強い興味を抱いていることを知る。やがて、シャンピオンは一流の自転車選手になるため、おばあちゃんと二人三脚で厳しいトレーニングに励むようになる。そしてついにシャンピオンは自転車レースの頂点“ツール・ド・フランス"に出場するまでに成長した。ところがレースの途中、シャンピオンは何者かによって誘拐されてしまう…。孫の行方を追うおばあちゃんは、愛犬のブルーノを連れ、海を越えてはるばる摩天楼そびえる大都会“ベルヴィル"までやって来る。

とまときんぎょ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

「おばあちゃんに、言ってごらん。」

シルヴァン・ショメ監督。フランスのアニメ作品です。
2003年アカデミー長編アニメ映画賞ノミネート(ニモにまけた)。
多分日本のかわいいアニメ絵に慣れた方からすると、醜悪に映るくらいカリカチュアの効いた絵ではあります。でもね、良いんですよこれ。

おばあちゃんと、多分要領よく周りに溶け込めない感じの、孫のお話。
二人と犬一匹だけで、線路ぎわの傾いたお家に住んでます。言葉少ない孫が求めることはなんだろう。私がしてあげられる事は。ジッと見守り、どうにか手助けしたいおばあちゃん。どうやら、孫は自転車に興味があるらしい。そこから始まる、海をも超える大冒険とは…?!

セリフも少ないので、吹き替えあっても無くてもあまり変わらない。それだけ、動き、歌、音楽、独特の時間の流れ方で伝えて来ます。

背景や小道具の密度がとても高くて、今何が動いたか、誰が意図してそうしたのか?、どこから出た反動か?、ピタゴラ装置のような展開を見逃さずにいると、そこに潜んでいるシニカルな笑いに感服します。そして少し切ない。

飾りのない底辺でも、人しれずとも、たくましく可笑しく大切なもの。

おばあちゃんが孫の自転車トレーニングを手伝うシーンがあるんですが、機転の効いたアナログなリサイクル物を用いての技の数々が面白いので、自転車乗りにもオススメ。
憎めない顔の垂れた愛犬の大活躍もあるので、犬好きにもオススメ。
「ドラえもん」のおばあちゃんとのび太の話に弱い人にもオススメ。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 12
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

不思議な作品。そうとしか言いようがありません。

2002年に作られたフランスのアニメーション作品です。

ひとり寂しくおばあさんの田舎の家に住む男の子。
彼は今を輝くテレビスターにも愛らしい子犬にも興味を示さず、ただただ虚空を見つめます。
おばあさんが何をしても笑わなかった子が自転車にだけははしゃぎました。
笑顔で狭い庭を何周もしました。
それから数年が経ちます。
街は発展し彼らの家は高架橋に押しのけられるように斜めに立つようになりました。
男の子は自転車最大の祭典ツール・ド・フランスに向けておばあさんに支えられながら特訓中でした。
ついに本番当日。男の子は速いわけではありません。
最後尾の方でゆっくりと坂を登って行きます。おばあさんは救護車に乗って後ろから応援します。
しかし救護車が急にパンクしてしまいました。
タイヤを変えようとしたらスペアまでダメになっていました。
不可解です。首を傾げているとニセの救護車がダウンした選手を回収して行ってしまいました。
孫も一緒でした。
彼らは誘拐犯でした。おばあさんは必死に追いかけますが船に乗られ孫は連れてかれてしまいました。
でもおばあさんは諦めません。ボートを借りて丸々と太った犬と一緒に孫を助けに行きます。
さあ、どうなることやら。

大胆にデフォルメされた人物や乗り物や独特のリズム、雰囲気は初めて観る者を圧倒します。
極端に太った人、痩せた人、のっぽやチビ、左右高さの違うサンダルを履くおばあさん、とんでもない高さの船。
挙げればキリがないくらいバランスの悪いさや不均衡なものがたくさん出てきます。
いわゆる存在し得ないもの。
その登場人物たちもおばあさんを除けばいささか気が狂った人たちで充満しています。
不思議な空気感です。おそらくこれにしかないオリジナルなものです。

作中にはほとんど台詞はありません。
状況は登場人物たちを見ていれば分かるように作られていました。
というよりしゃべらせないことが目的だったのかな。
音楽は少ないけれどあります。
作中でもおばあさんは自転車のタイヤを拾ってスポークを叩いて演奏します。
なかなか愉快です。
メインの曲はすごく好きです。何を言ってるかは分かんないけどよく聴いていますw

本作はセリフを省いて作ったことにより映像での表現に頼ることの大きい、まさにアニメーション作品でした。
そうすることでなにか別に表現したかったことがあるような気もします。
しかし、おばあさんの奮闘記としても十分な面白さがあります。
海外の映画なんかではよく老人が主人公になることが割と多いです。日本では少ないですね。
アニメーションで『つみきのいえ』がありますがあれは稀有な例でしょう。
本作ではおばあさんのふてぶしさや表情をほとんど変えないところがひとつの面白さです。
あの小柄な体で何でもやってしまうところがすごいし、可愛さゆえにちょっと笑えました。

なかなか面白い作品ではありました。
つまらないことはないので興味があればぜひ一度。

{netabare}

本作は一体なんだったんだろう?
ただの自転車レースものでもサスペンスものでもなく、なにか別に表現したいことがあるような気がします。
とは上でも書いたけれど、正確に受け取れる自信はありません(笑)


「『終わり』と言っておくれ。」おばあさんはそう言いました。

少年はただひたすら自転車のペダルを漕ぎ続けました。
彼は(おそらく)父と母の写真に写っていた自転車に憧れ乗り始めました。
しかし、それ以外のことは何もしないというか、できません。
かろうじてご飯を食べるくらいで、運動後のマッサージやベッドに行くのさえもおばあさんの手を借りなければなりませんでした。
疲れていたからできないのではなく、ここの場面ではそういった彼の弱さを描いていたのだと僕は思います。
動くのは自転車の上だけ。試合でも練習でもひたすら何も言わずただ漕ぎ続けます。
それがスクリーンに映った世界の中でも彼は漕ぐことを止めません。
現実を永久に彷徨う放浪者です。すでに虚構の住人です。

おばあさんが彼に求めたものは一体何だったのでしょうか。
それは自主性だった思います。自分から何かを発するということ。彼の意志による行動です。
自転車に乗っていても見つめるのは前方であったとしても明確な目標は無く、虚空です。
何も話さず、自分の足で立つこともおろか、なにかに憑りつかれたようにペダルを踏むことだけをします。
今回のツール・ド・フランスでゴールを見ていたのかもしれません。「終わり」と言えたのかもしれません。
しかし、それが失敗したしさらにはマフィアに攫われ、彼はより長い道を走りました。
一騒動に幕が下り、おばあさんが亡くなって、彼は今一度自分の人生を傍観者として眺めます。
自分が自転車に乗りペダルを踏み続け、マフィア連中によりさらに多くのペダルを踏んだ一少年の通過儀礼とも呼べるこの冒険を。
でも、もうすでに終わってしまっていた。
自分がどれだけおばあさんの世話になっていたのか、彼は後になって知ることになります。
命を顧みずに自分を助け出してくれたことはため息がでてしまうほど嬉しい反面、
どうしてあのとき終わりを告げられなかったのだろうと後悔の念があったと思います。
そういう悲しさがあったと思います。

そしてそれらの多くは言葉を省略した映像の中で画面に映る彼らの行動だけでのみ描写されます。
それは不気味ににも寂しさにも捉えられる反面、彼らは誇張され、メタファーを含まれて描かれます。
デフォルメされた彼らの途切れのないジェスチャーの連続によってなされる行動は、場合によってはそれ自体もそうですが、ほとんどがキチガイとしてであり、またそれによって作り出され作品全体に霧のように隈なく広がった空気は「正常に」行動している人達を眩ませています。
誰が狂っていて、誰が正常なのかなんて線引きができない。
皆一様にそれぞれの赴くままに行動しているだけです。懸命です。
表現のひとつとして、このように人間をほとんどすべて行動に投影させたことにより描いた本作の存在はとても奇異でありながら、その分特別な輝きを内在しているようにも見えました。


まあ何にしても不思議な作品です。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

{/netabare}

投稿 : 2024/04/20
♥ : 6

Dkn さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

おばあちゃんは“僕”のヒーロー

あらすじ
【 誘拐された孫を、おばあちゃんが助けに行くお話 】

戦後のフランスで、1人になった孫と暮らすおばあちゃんのお話です。

描写された暮らしは、裕福ではなく、哀愁すら漂います。
けれど、おばあちゃんの行動力が凄まじく、パワフル!!
思わず笑みがこぼれます。カッコイイおばあちゃんです。

冒頭の雰囲気に気圧されず見ていくと
コメディータッチな映画だと気づきますので、是非最後まで見て下さい。



実はこの映画。フランス語をほとんど喋りません。
このまま「トーキー映画」に出来るほどです。

日本のアニメ監督さんが、
“「ろう者」は原作のないアニメは見れない。
アニメを見るなら原作の台詞を頭に入れてから見る。”
自身が作ったアニメの取材でこう聞いたといいます。
真っ先にこの映画が頭に浮かびました。



現在、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーでDVDが発売してます

強烈なデフォルメキャラクターが印象的。
奇才シルヴァン・ジョメが描く『ベルヴィル・ランデブー』

おばあさんの逞しさと洒落たフレンチの魅力をどうぞ。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 7

65.0 5 2004年秋(10月~12月)アニメランキング5位
ポーラー・エクスプレス(アニメ映画)

2004年11月27日
★★★★☆ 3.9 (13)
33人が棚に入れました
クリスマス本の定番として人気を集めるクリス・ヴァン・オールズバーグの名作絵本『急行「北極号」』を映画化したファンタジー・アニメ。クリスマスの夜に北極点行きの謎の汽車に乗った少年が体験する不思議な出来事を幻想的に描く。監督は「フォレスト・ガンプ/一期一会」のロバート・ゼメキス。トム・ハンクスが一人で5役の声を担当。実際の俳優の演技を全方向から捕えてコンピュータに取り込む“パフォーマンス・キャプチャー"という最新技術が用いられ、美しい原画のタッチをそのまま活かした斬新な映像が実現。 クリスマスイブの夜。もうクリスマスなんて信じないと思いながらベッドに入った一人の少年。しかし、真夜中目前の11時55分、少年の耳に地鳴りのような轟音が響く。驚いた少年が窓辺から見たものは、降りしきる雪の中を白い煙を上げながら近づいてくる巨大な蒸気機関車だった。家の前で停まったその機関車に駆け寄っていく少年。車掌は少年に、北極点行きの急行“ポーラー・エクスプレス"と説明し、乗車するようすすめる。目の前の出来事がまるで信じられず逡巡する少年だったが、機関車が動き出すと、ついに意を決して飛び乗るのだった…。

ラ ム ネ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

急行「北極号」

 クリスマスにサンタクロースがトナカイのソリでプレゼントを私たちの家まで届けに来ることを、信じなくなったのはいつでしょうか。親に最初から「そんなものはいない」と言われその日に一万円の紙切れ(子どもにとっては物が欲しいのに)を手渡された人や、「家が仏教なのになぜノエルなんぞ」と言われ何も貰えなかった人もいるでしょうけど。ベッドで徹夜してしまった人や、小学校で「サンタはいる」と言った奴がからかわれたり、そんなことで私たちはサンタを信じなくなっていきます。日本人の親の殆どは子どもに物を買う日、としかあまり思ってないところがあるでしょう。
私は小学生の時でした。私の場合はおそらくとても一般的なものでしょう。いつの間にか、サンタよりも贈り物を欲しがっていたのですから。
「良い子にしていれば、サンタが贈り物を持ってきてくれる」
なんだこれは。大人がこじつけているだけじゃないか、とやがて子どもは気づきます。

サンタの存在を信じなくなった(しかし、どこかで信じていたい)少年。それが「ポーラー・エクスプレス」の主人公です。「ポーラー・エクスプレス」とは、サンタを信じる子ども達が北極にいるというサンタに逢うために乗車する蒸気機関車のこと。あるとき少年は、家の前に車輪の轟音を聞いて雪の積もる外へ出た。そこに停車していた急行・北極号。いつのまにかポケットに入っていた乗車券を車掌に手渡し、少年は汽車に乗った。汽車が走り出すと、家の庭にいる雪だるまの枝の腕が手を振っていた。少年と乗り合わせた子ども達の一夜の冒険が始まった。

 原作は絵本。日本語訳で題名はそのまま「急行、北極号」。幼い時に読んだ記憶がありました。汽車好きだったので、よく読んだものです。トム・ハンクスが車掌の声優をして(トム・ハンクス好きなんです)3DCGアニメーション化したというので、本作の公開されていた当時に劇場まで赴いたのだ。
 はっきり言ってしまえば、人物のデザインは3DCGなので気持は悪い。
 逆に、蒸気機関車の臨場ぶりは惹かれるところだ。
 個人的に車掌のキャラが好きである。好感を持ちやすい人物像だ。
 吹き替え字幕無しでも、英語字幕有りでも、声が悪い意味合いで気になることはない。

元々サンタクロースは、4世紀頃の東ローマ帝国及び小アジアのミラ(古代都市)の司教である教父聖ニコラオスの伝説を起源として誕生した。
「ある日、ニコラオスは、貧しさのあまり三人の娘を嫁がせることのできない家の存在を知った。ニコラオスは真夜中にその家を訪れ、屋根の上にある煙突から金貨を投げ入れる。このとき暖炉には靴下が下げられていたため、金貨は靴下の中に入っていたという。この金貨のおかげで娘の身売りを避けられた」という話だ。ニコラオスをオランダ語でシンタクラースと呼び、アメリカに植民した際にオランダ人がサンタクロースと伝えたらしい。
まさかサンタの語源は異国人の発音違いからだったなんて、といつかの日に惚けていました。

 特に、キリスト圏でなく、宗教をどこか遠ざける無宗教感の漂うこの国で、クリスマスを祝う意義はありませんし、必要ないでしょう。
(オウム真理教などの新興宗教から来た「宗教は変」という固定観念からでしょうか。日本における仏教も、大陸から輸入されて日本的に改造されたものですし((愛を脱し、見返りを求める価値観に変容))、宗教に依って現代社会が成り立って来たのですけれど((民主主義ももとを辿れば旧約聖書っぽいです))、歴史に疎いまさに日本人的ということでしょうか)
 親が子へ贈り物をする機会は、クリスマスのように「皆やっているから」生まれるのでしょうか。
 無条件のプレゼントなら、子どもの記念日にするべきだと私は考えます。例えば、子どもが何かを達成した日、克服した日、とかに。それが慣習化すれば子どもの方も「みんな貰ってるから僕も!」なんて言わないし、自立性が養われていく事に繋がるのだと思います。けれど、「この目標を達成したらコレコレあげます」も可笑しい。それでは子どもが「物を欲しがる為に努力する」ことになります。「子どもは自分の為に何かを努力する」のであり、物の為に努力していては自発性に欠ける要因のひとつです。親の理想も押し付けてはなりません。子どもの課題だからです。ですから、「プレゼントあげるから良い子にしててね」は、子どもと対面しない親の明確な愚行です。
 サンタ物語は世間に広がってしまっています。けれど、「プレゼントが貰えないからサンタを信じない」なんて、何て見返りを求めている言動でしょうか。それでは自立できません。サンタはフィクションであるべきです。子どもの頃からそう教えるべきでしょう。信じる信じないの問題ではないのです。
 子どもの頃の記憶を彷彿とさせて、今ここで怒っています笑

 けれど、やっぱり子どもの頃、サンタをどこかで信じたいという望みがあった。そうすることで身の回りが広域化するような気がするからだ。
 残念ながらサンタはいない。空を橇が翔けてはくれない。「いい子にしていなさい」の逸話でしかないのだ。
 けれど、そんな逸話を踏まえて北極号は語られる。
 少年が汽車に揺られてサンタに会いにいくという物語に、浸ってみようではないか。トム・ハンクスもいることだし、汽車は雪煙の中を北極までいくことだし、鈴の音は鮮明に少年の耳元で鳴り続けるのだから。

2014.5.4書込。
2015/1/27投稿

投稿 : 2024/04/20
♥ : 3

さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

クリスマスの夜に観る

クリスマスの夜に招待された不思議な蒸気機関車。
その車中で繰り広げられるトラブルだったり、列車事態の運行危機にハラハラしながら、北極にあるサンタの国へ進む一夜の壮大な冒険物語。
サンタの国でも一波乱あり、そんな旅の中で少年は純粋な心を取り戻してゆく。

子供向けの物語ではあるものの、設定に惹き込まれる魅力がある。
原作小説まるまる詰め込んだ感じなのか、盛りだくさんな内容で後半になると疲れを感じたが、ドキドキハラハラな展開で退屈さは無かった。

列車での旅事態は銀河鉄道の夜とか銀河鉄道999とか、カバネリとかそんな雰囲気。サンタの国はチャーリーとチョコレート工場のような不思議な世界が味わえる。

作画に関しては、キャラクターデザインが独特なので物語への集中を欠かされた感もあったが、当時の最新技術を投入し、映像作品としてはかなりのクオリティ。

クリスマスに観ると、臨場感で面白さが3割増し。
お気に入りの海外アニメとなった。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 7

タイラーオースティン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

親子で楽しめる作品

これは「アバター」でひとつの完成形をみた「モーション・キャプチャー」という手法を用いた先駆的なフルCG映画だったことに気づいた。人物描写に若干違和感があったが、本作を今の技術で制作すれば、実写とCGアニメが融合した、もっと完成度の高い作品になっていたことだろう。原作の絵本から膨らませたストーリーとのことだが、クリスマス文化の違う日本ではこれまた作品の意図が伝わりにくいのはやむを得ないだろう。最後も単なる夢オチにしないところに、余韻が残るようになっている。クリスマスソングもふんだんに流れ、クリスマス時期に家族で観るには、特に小学校低学年以下の子供と一緒なら純粋に楽しめるのではないかと思う。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 2

62.5 6 2004年秋(10月~12月)アニメランキング6位
岸辺のふたり(アニメ映画)

2004年12月18日
★★★★☆ 3.4 (17)
48人が棚に入れました
2001年のアカデミー賞短編アニメーション賞受賞をはじめ数々の映画賞を獲得した傑作アニメ。幼い時に岸辺からボートで去って行った父を想いその岸辺に立ち続ける娘に訪れる奇跡を、繊細にして哀愁に満ちたタッチで綴る。2003年6月のDVD発売後、日本でも評判を呼び、2004年12月にロードショー公開が実現。 自転車に乗った父親と幼い娘がとある川の岸辺へとやって来る。やがて父親は後ろ髪を引かれる思いでボートに乗り込むと、娘を岸に残したまま行ってしまった。そしてそのまま戻ってくることはなかった。その日以来、娘は雨の日も風の日も、父親の帰りを待って岸辺を訪れ続けた。やがて月日は経ち、娘も少女から大人へと成長していく。四季は繰り返し、娘は恋をし、自分の家族を持つ。それでも娘は岸辺にやって来ては、父の面影に思いを馳せる。娘もいつしかあのときの父の年齢を越え、老女となっていた。そしてある時、彼女に奇跡が起こる。

エミール さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

変わらぬ憶い

マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督作品。
シンプルな線とセピア色の水彩っぽい色調で綴られる8分の短編アニメ。
セリフナレーション不要、アコーディオンとピアノが哀愁を漂わせる。
数々の賞を受賞しているのも納得。


切なく愛おしく流れる時間の中で変わらぬもの。

これ、本当は細かく書きたいのですが
見てもらって自分なりの解釈をしてもらった方がいい作品かもしれない。
この8分に何を思い何を感じるか。
僅か8分に凝縮されている素晴らしさ。
繊細で美しすぎるくらい美しい。


娘さんを育てているお父さんに見て頂きたい作品です。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 28

褐色の猪 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

優れた短編アニメーション作品

2001年 米国アカデミー賞短編アニメーション部門受賞
2001年 英国アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
2002年 広島国際アニメーションフェスティバルグランプリ、観客賞受賞

「話しの話」「霧の中のハリネズミ」等のノルシュテイン作品にも通ずる感の有る紛う方なき名作です。

音響有り、台詞無し。

2016年に封切られた日本・フランス・ベルギー合作のアニメーション映画作品「レッドタートル・ある島の物語」はこの「岸辺のふたり」を観て気に入ったジブリのプロデューサーがマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督に接触したのがきっかけの模様

投稿 : 2024/04/20
♥ : 6

61.0 7 2004年秋(10月~12月)アニメランキング7位
新暗行御史(アニメ映画)

2004年12月4日
★★★★☆ 3.5 (19)
97人が棚に入れました
「月刊サンデーGX」で連載中の人気コミックを日韓共同製作で映画化したアクションファンタジーアニメ。魑魅魍魎が蔓延る世界を舞台に、暗行御史(アメンオサ)と呼ばれる隠密官吏・文秀の戦いとさすらいの旅を描く。

声優・キャラクター
藤原啓治、小林沙苗、宮本充

Anna さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

日韓共同製作ファンタジー!


アジアの雰囲気あふれる、日韓共同製作ファンタジー!
原作は尹仁完・梁慶一で、日本でも珍しい韓国人による連載漫画です。

主人公、文秀(ムンス)は暗行御史という役職についており、かつて自分を裏切った旧友、阿志泰(アジテ)を捜して諸国を旅している。その旅の中で出会う、横暴で理不尽な権力の持ち主を正すため、幽幻兵士(ファントム・ソルジャー)という力を召喚して敵を倒していきます。


作中で歌われるBOAの『Song With No Name~名前のない歌』がとても素敵で、ところどころ切り取られるような風景の作画も美しく印象的です。
音楽もアジア調の物が多く取り入れられ、色彩も日本のアニメ作品とは少し違い見ごたえがあります。また、ムンス役である藤原啓治さんの渋い声が、主人公のワイルドな雰囲気にぴったりはまっています。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 1

tinzei さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

日韓共同作品

原作者は韓国人、なので話も韓国の話。
「新」とついているが別に二作目とかではない、暗行御史とは昔韓国にほんとにあった役職で、それを基に独自の世界観で描いている作品。

ストーリーは暗行御史の主人公が町の問題を解決していく、というもの。
簡単に言ったが内容はもっと複雑である。

一応二部構成になっている、前半は一緒に旅をする女との出会い、後半はゾンビの話。

普通にTVアニメとしてやってもよかったんじゃないかな。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 0

計測不能 8 2004年秋(10月~12月)アニメランキング8位
バウンディン(アニメ映画)

2004年12月4日
★★★★☆ 3.5 (4)
14人が棚に入れました
「Mr.インクレディブル」本編上映前に上映された、ピクサー社の3D短編アニメーション。

計測不能 8 2004年秋(10月~12月)アニメランキング8位
クルテクとズデネック・ミレルの世界(アニメ映画)

2004年10月16日
★★★★☆ 3.4 (2)
6人が棚に入れました
もぐらの主人公クルテクが森の仲間たちと繰り広げる愉快な日常を描いたほのぼのアニメ“クルテク"シリーズで知られるズデネック・ミレル。日本でも2002年の劇場公開以来、多くのファンが生まれた。そんなズデネック・ミレルが手掛けた短編アニメ26作品を3つのプログラムに分けて紹介する特集上映。 “クルテク"シリーズの原作者であり監督でもあるズデネック・ミレルは、ほかにも多くのアニメーションを手掛けている。クルテク同様、本国チェコで愛され続ける名作“コオロギくん"シリーズ、好奇心旺盛な子犬が主人公の“知りたがりワンちゃん"など、いずれも愛らしいキャラクターと素朴なタッチが魅力の心温まる作品ばかり。そんなミレル監督の世界が堪能できる選りすぐりの全26作品を集め、A、B、Cの3プログラムで上映。大人気の“クルテク"シリーズからも本邦劇場未公開の3作品が上映される。
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