2023年夏(7月~9月)に放送されたアニメ映画一覧 13

あにこれの全ユーザーが2023年夏(7月~9月)に放送されたアニメ映画を評価したーデータを元にランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2023年10月01日の時点で一番の2023年夏(7月~9月)に放送されたアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

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年代別アニメ一覧

79.2 1 2023年夏(7月~9月)アニメランキング1位
特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~(アニメ映画)

2023年8月4日
★★★★★ 4.3 (50)
204人が棚に入れました
新部長・久美子を待っていたのは、
アンサンブルコンテスト――通称“アンコン”に出場する
代表チームを決める校内予選だった。

無事に予選を迎えられるように頑張る久美子だが、
なにせ大人数の吹奏楽部、問題は尽きないようで……。

様々な相談に乗りながら、部長として忙しい日々を送っていた。

部員たちがチームを決めていくなか、肝心な久美子自身はというと、
所属するチームすら決まっていなくて──。
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

春が待ち遠しくなりました

長い間、待った甲斐がありました。
58分の短い時間ですが、起承転結がしっかりしており、楽しんで鑑賞することができました。

主人公の黄前久美子(おうまえくみこ)はいつも謝ってばかりで、部長としての威厳がありません。
どちらかというと、ドラムメジャーの高坂麗奈(こうさかれいな)のほうがてきぱきとしており、威厳があります。

でも、久美子がいるとみんなは安心します。
きっと久美子はみんなの心の窓を開けるのが上手なのでしょうね。


この特別編では、部内で行われるアンサンブルコンテストが描かれています。
気の合う人達と一緒にチームを作り発表し、見事部内の投票で1位になったチームは代表として本大会に出場でできるのです。

久美子は、いつも巻き込まれキャラです。
今回は、麗奈が集めたチームに久美子も呼ばれて一緒に練習することで問題に巻き込まれます。

麗奈は、いつも一生懸命です。自分にも厳しいですが、一緒に演奏する人たちにも厳しい。
部内で最も演奏が上手な麗奈に厳しく指摘されると、それが的を射ているだけに、皆は委縮します。音楽が楽しめなくなります。
{netabare} でも、久美子の指導のおかげで、パーカッションの釜屋つばめ(かまやつばめ)は、見違えるようにのびのびと演奏ができるようになりました。{/netabare}

今回は麗奈の指導の仕方と久美子の指導の仕方の違いがしっかりと描かれており、久美子の指導方法が良いような印象を受けます。
でも、それは、麗奈がしっかり指摘してくれたからこそ、久美子の助言が功を奏したのだと私は思います。
やはり、久美子と麗奈は、お互い助け合い高め合う親友ですね。


ちなみに、今回は3年生も登場します。
吉川 優子(よしかわ ゆうこ)と中川 夏紀(なかがわ なつき)は、相変わらずケンカするほど仲が良いですね。
そして、鎧塚 みぞれ(よろいづか みぞれ)は、いつも少ししか話しませんが、なかなか奥が深いことを話してくれました。


そして最後は…、春が待ち遠しくなりました。
{netabare} 田中あすか先輩の持ち物と同じ銀色のユーフォ…。その演奏者は誰でしょうか?{/netabare}

投稿 : 2023/09/30
♥ : 27
ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

3年生編への期待値を上げてくれた短編

8月4日初日に見てきました♬

OPは演奏から始まって、ユーフォが戻ってきたぁ!!って気持ちが上がるわたし。
いい曲だなーと思って調べたらT-SQUAREのOMENS OF LOVEだそうです。
ちなみに私の好きなTakarajimaという曲もT-SQUAREでした。

3年生が引退し、久美子が部長になってからの初めての大会、アンサンブル・コンテスト。
いつもの吹奏楽コンクールと違って、指揮者なし、編成も3~8人の少人数で演奏するみたいで。

好きな子たちで編成を組むんだけど、すんなり決まったり決まらなかったり・・
そういう苦労もあるかもだけど、少人数編成ってことは今まであまり目立たなかった子にもチャンスがあるってことで。
そういうところが面白いなって思いました。

久美子が部長としてアタフタしながらも頑張ってみんなをまとめてる姿も良かった。
{netabare}みぞれが久美子に言ってた「窓を開けるのがうまい」って心の窓のことかなって。
同じ編成チームになったマリンバ担当の釜屋つばめさん。
自信が持てなかった彼女が久美子と一緒に練習しながら少しずつ自信を持てるようになっていって、重いマリンバを2人で運ぶシーンがすごく良くて、最後いつのまにか釜屋さんが1人でマリンバを運んでいたのが印象的でした。{/netabare}

あと嬉しかったのは{netabare}葉月の演奏が上手くなったと評価されてたところ。
3年生編でレギュラーになってたら嬉しくてちょっと泣いちゃうかもです。。{/netabare}

唯一残念だったのが、{netabare}アンコンの演奏シーンがちょっとしかなかったこと。
これは尺の関係で仕方ないですけど、久美子たちのチームの演奏、マリンバも含めて聞きたかった。。{/netabare}

60分の短編でしたが、とにかく見てて作品の雰囲気、キャラたち、音楽などなど間違いなく私が感動したユーフォが帰ってきたんだって思うことができました。
久美子の、次の音楽が始まるのです。の決めゼリフも聞けたし。

エンドロール後にちょっと嬉しいお知らせもありました。
来年春がとても楽しみです♡

最後に入場者特典について・・
ヴァイオレット劇場版を見に行った時に特典の小冊子が在庫切れでもらえなかったんですけど今回は無事GET👌
3種類の書下ろし短編小説がランダムで貰えるんだけど、私のは久美子&麗奈のでした。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 22
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

先輩の想いを受け継ぐアンコン編

久美子2年生時、冬の短編エピソード(購読済)の中編OVA化作品。劇場にて鑑賞。

【物語 3.5点】
北宇治高校吹奏楽部の新部長に就任した久美子の初仕事。

アンサンブルコンテストとは小編成による演奏を競う大会。
勝ち抜けば府大会から地方、全国へと進むが、
代表して出られるのは各校一編成なので、北宇治では各々組んだチーム同士で部内オーディションを行うことに。

メンバー分けや、タイトな練習スケジュールに関する諸々。
それなりの地雷原であり、久美子部長の胆力を試すにはうってつけの初舞台。


アンコンについて本作では触れられない原作シリーズ(主に「第二楽章 後編 第四章」)の要素から補足すると。
北宇治のアンコン参加は、先代・優子部長の意志によるもの。
夏の全国吹奏楽コンクール終了後、3年生が引退してから新入生が入るまでの間の音の厚みの低落を補うため。
何より{netabare} 男子校のパワフルな演奏等の後塵を拝した関西大会の雪辱{/netabare} のため。
冬にも何か目標を設定し、部のレベルとモチベーションの底上げを狙った施策。

ついでに言うと、原作にて優子たちは幹部就任当初から次期部長人事の布石として久美子を新入生教育担当に参加させたり、
“黄前相談所”を部内に吹聴したりと暗躍。
(1年生の基礎練習を見続けて来た久美子だからこその“気づき”が、本作でも描写されているのが嬉しいです)

さらに優子らは部長が何でも抱え過ぎたとの反省の元、
部長、副部長に加えて演奏指導等を担当するドラムメジャーの役職を新設し、
麗奈を“入閣”させバックアップ体制を整備。

私にとってアンコン編は優子部長の置き土産を味わうエピソード。
アニメでは描かれませんが、“優子政権”はシリーズ三代の中で一番有能だったと私は確信しています。


多少トラブルはありますが、本作は久美子2年生編と3年生編をつなぐ物語ということで、まだウォームアップといった雰囲気。

ですが、正しいが部員を追い詰めてしまうドラムメジャー・麗奈。
優しいが優柔不断で舐められかねない部長・久美子。

久美子3年生編の原作既読組から見ると、来春予定の3期に向けて、
導火線付きの伏線が着々と張られているようで、早くも胃が痛いですw


【作画 4.0点】
アニメーション制作・京都アニメーション

例の放火事件に関しては同スタジオも取材メディアも触れない方針。
ですが、私はここに言及しないと書けないので、恐縮ですが敢えて踏み込ませて頂きます。

多くの貴重な人材が失われた同事件。
『ユーフォ』に関しては、キャラクターデザインで総作画監督も務めてきた池田 晶子氏。
楽器設定で職人芸と言うべき描写で演奏シーンを支えてきた高橋 博行氏。
特に、このご両人の喪失が大きく、訃報を知った時には、
私も、屋台骨をへし折られて、シリーズ再開の目処など立つのだろうか?と途方に暮れたものです。
前作から4年という月日も再建の苦難を物語っています。

本作ではクレジットにキャラデザ・池田 晶子氏、楽器設定・高橋 博行氏と故人の名を残した上で、
総作画監督に池田 和美氏(Key原作アニメ、『中二病』シリーズなど)
楽器作画監督に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』にて高橋氏と共に細密な小物設定を担当した太田 稔氏を据え、
旧来の作風継承によるシリーズ存続を目指した模様。


これを踏まえて本作の作画。
課題が浮き彫りになるかもと懸念していましたが、
劇場版クオリティとしては最上級とは言えないまでも、OVAとしては及第点以上。
思った以上に高水準にまとめて来た印象。

楽器描写の方は、金管楽器の光沢含めて奮闘。
今回は特に木製鍵盤楽器マリンバにこだわりを感じました。
内部構造まで見せてみたり、移動、運搬の様子を描き込んだり。
私は見ていてマリンバがだんだん巨大宇宙戦艦に思えてきましたw
こうして一つの複雑な構造物を描き切った自信と経験。
確実に3期における大編成の合奏シーンに繋がると思います。

キャラデザに関しては、今回はまだ久美子2年時なので池田 晶子氏が残した既存キャラの設定を踏襲すればよく、
アンコン編は作画班にとっても丁度よい叩き台になったと思われます。

ただ、これが3年生編になると、新1年生も入部して来て、新規デザインを大量に用意しなければなりません。
今回は身体の一部だけ垣間見せた例の新キャラと合わせて、どう整合性を保って行くのか。
これから真価が問われるのだと思います。


【キャラ 4.5点】
エピソードの重要キャラとして二年パーカッションの釜屋つばめをピックアップ。
マリンバに苦闘する姿を通じて、あくまで音楽アニメとして愚直に行くとのシリーズのアイデンティティを再提示。
“釜屋”の名は3期でも重要になるので覚えておいて損はありません。

また“くみれい”が予想以上に高糖度と言いましょうか高粘度と言いましょうかw
“焦らしプレイ?”も絡めてぶっ込んで来るので、久美子&麗奈推しの方は衝撃に備えましょう。

その他、{netabare} 梨々花のあざと可愛さも増量された奏&梨々花。
ついにコンバス二重奏を披露した緑&求の余人の立ち入れない師弟関係。
相変わらず喧嘩している優子&夏紀{/netabare} など、カップリングの絆はより一層強固に。


葉月、緑輝と“北宇治カルテット”の他の二人の出番が多かったのも嬉しい要素。
{netabare} 「部長は謝りすぎるな」{/netabare} との緑の助言。
“閣外協力”なのがもったいない卓越した人間観察眼です。


引退した3年生もまだ卒業前ということで“南中カルテット”も健在。
それにしても{netabare} 「窓を開けるのが上手い久美子」{/netabare}
みぞれ先輩の視点は独特かつ的確です。


【声優 4.5点】
主演・久美子役の黒沢 ともよさん。
新部長として空回る様を絶妙な塩梅で表現する流石の演技。
そんな妙演に釣られた?麗奈役の安済 知佳さんも安心して、
外面は厳しい、久美子たちの前だけで可愛い所を見せる麗奈のままでいられます。

個人的に一番ツボだったのが、{netabare} 滝先生と親しげに雑談する久美子が、鋭く突き刺さる麗奈の視線を感じて「見るな」とモノローグ連呼する、ともよさんの平坦な演技w{/netabare}


その他のキャスト陣も継続。
不倫騒動で降板作品もあった滝昇役の櫻井 孝宏さんも続投。

同じく不倫騒動で降板が相次いだ鈴木 達央さんを起用し続けた『Free!』の時もそうですが、
プライベートで問題を起こそうが、裏で誰かを泣かせようが、演技には関係ない。
そう言わんばかりに、ゴシップなど意に介さずキャスティングし続ける京アニのある意味冷徹なこの姿勢。
私は断固支持します。


【音楽 4.0点】
定期的に吹奏楽の定番曲を起用して吹部アニメの矜持を示す本シリーズ。
今回はOPの「オーメンズ・オブ・ラブ」で疾走するメロディの高揚感と共に『ユーフォ』の帰還を宣言。

オリジナル吹奏楽曲「フロントライン~青春の輝き~」は、
焦点となるマリンバの課題を鑑賞者とも共有しやすい。
息を合わせて刻まれる木琴とチューバの成長を噛み締めながら味わいたい一曲。

ED主題歌はTRUE「アンサンブル」
アカペラから歌い出し、どんどん重なって行くブラスバンドにも押し負けない。
変わらぬ声量を生かした堂々たるバラード。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 21

78.4 2 2023年夏(7月~9月)アニメランキング2位
SAND LАND(アニメ映画)

2023年8月18日
★★★★★ 4.3 (22)
32人が棚に入れました
水のない砂漠で幻の泉を求めて旅に出た、悪魔の王子ベルゼブブ、魔物のシーフ、人間の保安官ラオのトリオを描いた鳥山明の同名漫画を映画化。
『COCOLORS(コカラス)』の横嶋俊久がメガホンをとり、サンライズ、神風動画、ANIMAの3社が手を組み制作を担当した。
主人公のベルゼブブの声を「小林さんちのメイドラゴン」の田村睦心、ラオの声を「PSYCHO-PASS サイコパス」の山路和弘、シーフの声を「ONE PIECE」のチョーが務める。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ちょいワル&パンツァー

人と魔物が併存する砂漠の世界。
水不足に喘ぐ窮状打破のため、老人保安官・ラオが幻の水源を求めて、
魔物の王子・ベルゼブブとお目付け役・シーフと共に旅に出る。
鳥山 明氏の原作コミック(全1巻未読)の劇場アニメ化作品。

【物語 4.0点】
単純明快。だが深い。

水源を独占する国王軍が{netabare} 飛行機と船も禁止している{/netabare} という時点で、
大体真相は先読みできる。
児童でも楽しめる勧善懲悪のシナリオ。

それでいて、大人が観ても考えさせられる要素もある。
一部の人間だけが情報や資源の供給を操作して富を独占する世界のクソゲー感には心当たりがありますし。

同族で殺し合うのは人間だけ。
戦争やら自然破壊やらを繰り返して自らの首を締めていく人類。
人間たちは魔物をスケープゴートにして罪を正当化して来たが、
これではどちらが悪魔か分からない。
ベルゼブブ王子「悪魔よりワルだなんてゆるされるとおもうか?」との決め台詞は言い得て妙。
この作品の土台となる哲学の上で自身の罪について葛藤する元兵士とか。

かと言って、ディストピアで陰鬱になり過ぎることもなく。
基本線は老人と魔物の珍道中を軸にした、
メカありバトルありの痛快冒険活劇ロードムービーで後味はさわやか。


総じて気楽に挑めるエンタメ作。
ただし作中登場したスライムみたいに溶解しそうになる酷暑が続く今夏の日本。
砂漠の熱戦は納涼には向かないのが難点と言えば難点w


【作画 4.0点】
アニメーション制作・サンライズ、神風動画、ANIMA
加えて配給は東宝と旧来の鳥山 明氏原作アニメとは異なるライン。

ゲーム版『ドラゴンボール』を数多く手掛けてきたバンダイナムコの企画・制作の元、
神風、ANIMAとゲーム業界でトゥーンレンダリングを駆使して来た実績もあるチームも巻き込んで構築されたCG志向の強いアニメーション。

原作者執筆の主たる動機の一つとなった戦車など、メカの再現性は上々。
戦車の他、飛行船や空中母艦も登場してワクワクさせてくれますが、
私は主人公たちが乗り回した戦車・104号車に一番興奮しました。
胴長のボディの覗き穴から老保安官やら魔物やらがデカい顔出しながら、
突進していく様が絵になります。

レーダーを駆使する敵戦車部隊に対して、
104号車がベルゼブブ驚異の視力や聴力などで対抗していく戦車バトルも独特かつ本格的。
これは4Dで体感したかったと私は後悔していますw


【キャラ 4.0点】
老人保安官ラオが出会う悪魔の王子・ベルゼブブ。
表層はチョロそうなピンク肌のガキンチョ。
普段はお付きのシーフと次は自分に車を運転させろと揉める童心が可愛らしい。
にも関わらず名のある荒くれ者たちがベルゼブブの名を耳にするだけで恐れおののく定番コメディパターン。
だがピンチになる程ブチ切れて恐ろしい底力を発揮。
キーーンって感じで脚力も人知を越えている。
ベルゼブブは鳥山ワールドのキャラ作りの集大成であり色々混ざっているとも言えます。

ラオと因縁を持つボスキャラ・ゼウ大将軍など、じっちゃんが元気なのも
原作者の趣味が全開になってる感。
反動で?亀仙人がぱふぱふしたがりそうな美女は雑誌写真にある{netabare} ラオの奥さん{/netabare} くらい。
あとは魔物と炎天下の砂漠で何故か海パン姿で襲撃してくるスイマーズなど、
暑苦しい男どもしかいません。


【声優 4.0点】
ベルゼブブ役・田村 睦心さん、保安官ラオ役・山路 和弘さん、シーフ役・チョーさん。
キャスト陣は経験豊富な声優、俳優陣で固め盤石。
人生の苦味を噛みしめる山路さんの演技にはいぶし銀の渋さを感じました。

そんな中ベテラン・大塚 明夫さんがベルゼブブの父王・サタン役で悲願の?鳥山 明氏原作アニメ初出演。
威厳のある声で「ゲームは1日1時間まで」と釘を刺されたらワルでも従わざるを得ませんw


【音楽 4.0点】
劇伴担当は菅野 祐悟氏。
ディストピアを深刻化させるハードな楽曲にも定評がある同氏ですが、
本作ではとぼけた木琴も交えたコメディ曲なども提供し曲調もまた明るい。

ED主題歌はimase「ユートピア」
こちらも厳しい砂漠世界の締めくくりにしてはノリが軽すぎるのでは?と思うほど明るいナンバー。
テーマやシナリオの熱量を反映してというより、終わったので肩の力を抜かせるタイプの主題歌。

音響監督には岩浪 美和氏。
『ガルパン』の砲撃音も調整してきた同氏ならば戦車戦も万全です。
ここもスタッフ名見てDolby Atmosとかで体感すれば良かったと後悔した部分ですw

投稿 : 2023/09/30
♥ : 16

xwTza00790 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

こういう作品が増えてほしい

分かりやすい、万人が見れる、よく動く、視点がワンパターンじゃない、作者の色が出ている、意外性がある、起伏が激しい、いらない間はいれない

よくできた作品です。90点です。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 2

76.9 3 2023年夏(7月~9月)アニメランキング3位
青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない(アニメ映画)

2023年6月23日
★★★★★ 4.1 (45)
234人が棚に入れました
高校二年生の三学期を迎えた梓川咲太。
三年生の先輩であり恋人の桜島麻衣と、峰ヶ原高校で一緒に過ごせる学生生活も残り僅かとなった。
そんななか、長年おうち大好きだった妹の花楓は、誰にも明かしたことのない胸の内を咲太に打ち明ける。
「お兄ちゃんが行ってる高校に行きたい」
それは花楓にとって大きな決意。
極めて難しい選択と知りながらも、咲太は優しく花楓の背中を押すことを決める。
『かえで』から『花楓』へ託された想い。
二人で踏み出す未来への物語。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

自己同一性を取り戻すための花楓のお受験

引き続き原作未読で劇場鑑賞。

【物語 4.0点】
ゆったり。

元々60分の短尺予定の所、最終的に73分に。
前作『ゆめみる~』は90分弱に要素を厳選して押し込み、
私など刺さる人にはカタルシスをもたらす傑作に。

一方、本作はジックリと妹・花楓の進路を見守る感じ。
前作みたいに集中力を上げて急展開に付いていこうとイレ込むと、
思わぬスローペースに面喰らうかもしれません。

花楓の“思春期症候群”は{netabare} 2年間入れ替わった別人格のかえでに記憶を取って代わられる。
その背景にはイジメからの不登校という高ストレスがあった。{/netabare}
花楓は未だ他者からの視線に過剰反応する症状を引きずっている。
その上、欠損した過去の記憶の空白とも折り合いを付けようと苦慮している。

そんな花楓が懸命に人生を選択し高校受験に挑んでいる姿を見たら、
私はテンポはゆっくりで良いからとしか言い様がありません。


偏差値や内申点の厳しさを度返ししてでも、兄・咲太や“みんな”と同じ公立高か?
妥協して花楓の学力レベルに合った、内申点評価の少ない私立か?
“普通”の学校での人間関係が花楓にとって苦痛ならば、通信制などの選択肢もある?

特に通信制については“ちゃんとしていない”イメージ払拭のため、
説明会に留まらず、当事者の生の声を聞きに行くという展開を挟むことで、
花楓自身は本当はどうしたいのか?熟慮を深める。
過去の自分とのポジティブな折り合いの付け方について示唆を与えた“取材”には、
普遍的なメッセージ性がありました。


一点“リアリティの無さ”に好感したのが、子供の進路にお金の話を持ち込まなかった事。
親の経済的負担という“ノイズ”を挟まなかったことで、
焦点を、花楓の心の問題に絞れていたと思います。
(不純な私は、あれだけサポート充実した通信制高校は、お値段も中々なんだろうなとの雑念に囚われていましたがw)

兄・咲太もまた冒頭から{netabare} ランドセル背負ったロリ麻衣先輩が見える{/netabare} という症状に見舞われ、
冬公開の次作への伏線に。

咲太の問題には家庭事情も絡んでいると思われますが、
少なくとも妹の学費の心配をおくびにも出さなかったあの親父さんは、
良い父親だと感じたので、咲太の行く末も私はあまり悲観していません。


【作画 4.0点】
アニメーション制作はTVアニメ版以来のCloverWorks。

繊細な表情描写で花楓の心の揺れ動きを捉える。
それ以上に私の脳裏に焼き付いたのは咲太。
特に{netabare} 保健室にて妹を見舞う際に話しかけられた先生に見せた鬼の形相。
それを見た先生の、深入りして刺激しないようにとの神妙な面持ちw{/netabare}

尺に余裕もあったので、物思いに耽るシーンも多々あった本作。
江の島を始め、至る所にたそがれることができる海岸が点在する藤沢市周辺。
パワーありすぎです。

目をみはったのが、のどか所属のアイドルグループ・スイートバレットのライブシーン。
咲太が花楓の視野を広げる話の取っ掛かりに使われたライブですが、
手描き重視で結構力が入っていて、この場面だけは妹の話そっちのけで身を乗り出しそうになりましたw


【キャラ 4.5点】
咲太は相変わらず“絶口調”
年上のお姉さんに対しても減らず口は叩くものの、
ギリギリ怒りを買わずに、君面白いこと言うねという感じで可愛がられる、絶妙な塩梅で毒を入れてくるw
今年、映画館で一番笑いましたw

咲太とヒロインズの掛け合いを眺めていて思ったのは、
やはりユーモアを交えるだけの余裕のある男はモテるなと。

私も大概、ハレーム主人公の爆発やブタ箱行きを願ったりするしょーもない男ですがw
そのクセ、いざ美少女を眼前にして刺激的なトークができるかというと全く自信がありません。
私だったら、古賀ちゃんと同じ職場というだけで平常心を無くしちゃいますしw

因みにMOREDEBAN気味な古賀も含めて各ヒロインズにも、
当初予定から伸びた尺を使って出番は確保されています。

そんな咲太が、妹の窮地となると、余裕も自分もかなぐり捨てて飛んでいく。
次作に向けて咲太のかっこ良さを再認識させられました。


その他、スクールカウンセラーのお姉さんや、通信制に在学する子の母親など、
脇の大人たちも進学について多角的に捉える好材料となる。


【声優 4.5点】
花楓役の久保 ユリカさん。
思えばラブライバーにタスケを求めていた時から、
高音に感情を込めるボイスには光る物がありましたが、
本作ではその特性が遺憾なく発揮されていました。


咲太役の石川 界人さん&麻衣先輩役の瀬戸 麻沙美さん。
麻衣に毒づきつつ、最高に可愛い彼女だと高々と持ち上げる。
怯まず“口撃”する麻衣さん。
スパイシーなのろけトークで余人が立ち入れない聖域(サンクチュアリ)を構築。

お二人の掛け合い演技があまりにも円熟し過ぎていたせいか、
スタッフから「老夫婦みたいになってるからもう少し若さが欲しいな」と注文される笑撃エピソードもw

麻衣は花楓を物心両面で支える絡みも多く、
瀬戸さんの演技からは早くも頼れる“義姉”の風味が醸し出されていました。


今回、出番が多かったのが{netabare} スイートバレットのセンター広川卯月役の雨宮 天さん。
通信制を知る先輩として、花楓に人生経験を伝える重要な役回り。
正直、自称パンツはかないアイドル役に何で天ちゃん?と訝しんでいた私ですが、
本作のための起用なら納得です。{/netabare}


【音楽 4.0点】
劇伴担当はTV版以来のfox capture plan
前作劇場版からのフィルムスコアリングを継続し心情に寄り添う。
今回は音楽も作品リズムに合わせた穏やかなピアノ曲等が目立った印象。
ですがここぞの場面では、険しい音で揺さぶって来ます。

ED主題歌はお馴染みの「不可思議のカルテ」
歌唱は{netabare} 梓川かえで&梓川花楓のデュエットで未来へ向けてアイデンティティが確立。{/netabare}

投稿 : 2023/09/30
♥ : 20

ninin さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

青春ブタ野郎は妹のサポートをする

上映時間 1時間13分

テレビアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』劇場版『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』視聴済

主人公の梓川 咲太の妹、梓川 かえでをメインにしたお話しです。高校受験を控えている梓川 かえでちゃんが、どういった進路に進むのかを焦点に当てています。

いつものメンバーも勢揃い、過去のことから思い悩んでいるかえでちゃんを全員でサポートします。

最後はやはり兄の咲太が頑張っていましたね。

劇場版としては物足りない感じはしましたが、感動させていただきました。

2024冬に公開予定の「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」も楽しみです。(今回の本編でもちょっと出て来ました)

主題歌はテレビ版のEDで、歌っているのは梓川 かえで役の久保ユリカさんでした。劇場で聴くと心に響く歌声でしたね。

最後に、今回はオリジナルのポップコーンとジュースを買いましたが、ジュースはなんとも言えない感じでしたw

投稿 : 2023/09/30
♥ : 16

lumy さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

劇場でちゃんと観ました。

原作未読、テレビ版・劇場版1作目視聴済み。

劇場版1作目は、映画館で観なくて後悔したので、
本作はどんな酷評レビューがあっても
観に行こうと思っていました。

事前に上映時間が短いのが少し気になっていましたが、
青ブタファンなら、続編を制作してくれただけで十分で、
結局時間は全く気になりませんでした。

むしろ、話は冗長にならずに済むし、
作画のクオリティは高く、表情も繊細だし、
不可思議のカルテが素晴らしい高音質で聴けたし、
何も言い残すことはありません。

それにしても、咲太はホントいいやつですね。
青ブタは女性キャラがもちろん魅力的ですが、
咲太という人物は、数ある作品の主人公の中でも
自分もこうありたいと憧れてしまういいやつです。
本作は、そんな咲太が家族である楓のために
頑張るお話なので、そりゃいい話になるに決まっています。

劇場版3作品目、心待ちにしています。

※すごくどうでもいいのですが、映画を観ているときに
 黒い点がスクリーンの上を行ったり来たりして、
 どうやら虫が映り込んでいたようです。
 (最初、自分がいきなり飛蚊症になったのかと思いましたw)
 お詫びに劇場から、本作をもう一度見れる特典をもらえたので、
 書きおろし色紙が(ダブらなければ)もう一枚手に入りそうですw

投稿 : 2023/09/30
♥ : 13

73.2 4 2023年夏(7月~9月)アニメランキング4位
アリスとテレスのまぼろし工場(アニメ映画)

2023年9月15日
★★★★☆ 4.0 (32)
68人が棚に入れました
変化を禁じられた町で暮らす少年少女の恋する衝動が世界を壊す様を描いた長編アニメーション。原作となる同名小説を、監督を務める『さよならの朝に約束の花をかざろう』の岡田麿里が書き下ろし、「進撃の巨人」のMAPPAとタッグを組んだ。主人公の正宗を「呪術廻戦」の榎木淳弥、謎めく同級生の睦実を「鬼滅の刃」の上田麗奈、謎の少女、五実を「サマータイムレンダ」の久野美咲が担当する。

シボ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

むき出しの叫び声が心を揺さぶります。

公開二日目に中学生の娘と劇場に足を運びました。

岡田麿里作品ってことで期待高めでの視聴でしたけど、
キャラのむき出しの感情がぶつかる様に圧倒されました。

序盤、この不思議な世界での物語がいまいち理解しづらいって
所はありますけど、なんか抑圧された世界、感情が爆発したように
展開していく中盤以降は心が何度となく揺さぶられました。

やや距離間、生々しさが好き嫌いはあるかと思いますけど
等身大な若者たちは思春期爆発のキャラに感情移入出来るでしょうし
自分のような親世代も色々な方面から迫るものがあると思います。

なんかネタバレしちゃいそうなので、この辺で。

音楽は
EDの中島みゆき「心音」が、この独特な世界観の余韻に
たっぷりと浸らせてくれました。
「未来へ~~ 未来へ~~ 未来へ~~~
君だけで行け~~♪」
聴きごたえありすぎる歌声が頭の中をループしつつ
娘と終わった後しばらく席を立つことなくまったりとした
時間を過ごさせてもらいました。

台本に感銘を受けて丁寧に作り上げられたその楽曲、歌詞に
改めて中島みゆきって凄いんだな~って思いました。

面白かったら買おうと思ってたパンプレット。
・・もちろん買いました!
五実役は久野美咲さんにあて書きされたって話には、あのどうして
良いか分からない全身での叫びが印象的だったので納得でした。
綺麗にまとめられた冊子は
全体的に美しくて芸術的な作画カット満載で満足度高いです。

公開2日目にしては思った以上に劇場は空いてました。
岡田麿里監督(自分もここ数年で知ったニワカです)
とは言っても
ジブリや新海監督のようなメジャーではなく地味目な作品って
位置付けってこともあるのでしょうからしょうがないのかも
しれませんね。
ただ自分的には改めて岡田麿里好きだなって思えたし
満足度の高い作品でした。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 15
ネタバレ

ガタリリス さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

地方衰退と工場萌え

映画館にて視聴してきました。
タイトルにある「アリスとテレス」に関しては1ミリも関連がなかったと思うが、どういう意味なのだろうか?w 単に私の認識不足かな。

序盤は衰退著しい地方都市のどんよりとした世界観と、どっしりと佇む巨大な工場が印象深いです。
ここから”空間に亀裂”が入り、パラレルワールド的な話が入って来ます。
本作の舞台は死後の世界という話もあったが、結局の所これも意味が良く分からなかったな。
五実が実は{netabare} 正宗と睦実の間の子供で現実世界(未来){/netabare}からやって来たという話と矛盾するしね。

主人公は中性的な見た目の菊入正宗。
が、内面はとっても男らしい感じがします。
ヒロインの佐上睦実も強気な女の子。
そして、謎の少女・五実はワイルドな野生児といった印象ですね。
本作は主要登場人物が個性豊かで良かったと思いました。
その他、準主要人物の恋模様や、工場関連の登場人物など、この辺は上手く描けていたように感じました。

また、作画も綺麗で特に風景描写が気合入ってたように感じました。
工場内の雑然とした雰囲気などはゲームの『ラスト・オブ・アス』を思わせるような退廃的な独特の空気感が漂ってましたね。

問題はストーリーで、ここが個人的にイマイチな感じがしましたね。
もっと具体的に言うと「悪くはないが、もう一押しの何かが足りない」感じですね。
この”何か”が上手く言語化できないのですが、岡田麿里さんの劇場映画を見ると毎回似たような感想になるんですよね(´・ω・`)

で、肝心のストーリーですが、全体的にどんよりとした雰囲気が漂います。
衰退した地方都市が舞台で、その中にある巨大な工場が大きな存在感を見せています。
この作品の物語には大きく2つの軸があって「主要登場人物の恋愛模様」と「工場を主体とした世界崩壊SFストーリー」ですね。
恋愛とSFが同時並行で進んで行くような物語です。
で、この両方を繋いでいるのが謎の野生児・五実ですね。

本作の世界では空間に亀裂が生じるのですが、その原因はこの世界の住人の”感情の変化”だそうです。
なので世界崩壊を食い止めるためには”変化を拒み”現状を維持することを至上命題としているみたいです。
でも、衰退しきった町にしがみつきたいと思う者の方が少ないらしく、途中から開き直って、みんな好き勝手行動してましたw
つまり、本作のキーは”感情の変化”であり、その爆発によって世界に亀裂が生じたり世界から消去されたりする訳ですね。

問題はこの”感情の変化の描き方”なのですが、これが通俗的過ぎる感じが否めないですね。
「感情の変化=恋愛」みたいな安易な方程式を当て嵌めてるような気がします。
ここをもう少し深堀りして欲しいというか、世界崩壊するくらいインパクトのある理由が欲しい所でした。
上記で書いたイマイチな理由は、あえて言語化するとこういう事なのかなと思いました。
舞台設定や背景描写などは申し分ないと思うので、あとは深みのある内容と説得力のある理由があればパーフェクトだったと思います。

色々と苦言を言う形になってしまいましたが、完成度は非常に高い作品ですので、今後の期待を込めて本作の感想を〆たいと思います。

追記)
本作の裏テーマに「近親相姦とその克服」がある事が分かりました!
五実が正宗を舐めるシーンとか妙に生々しいなと思ってたが、そういう事だったんですねw
私の視聴スタイルとしては事前情報をなるべく入手せずに見るようしてるので、初見での先入観なしの感想を重視してるのですが、これが完全に裏目に出た感じですね。
表のテーマの他に水面下にあるメッセージなどは初見では気付き辛いので、他の方の考察なんかを読んで一度咀嚼してから感想を書いた方が良いかもですね。

上記で書いた五実が正宗を舐めるシーンとか(その後、睦実がブチ切れる)、睦実の「正宗だけは渡さない」とか、今思えば母子間の争いを象徴してるように思えます。
言われて見れば納得と言う感じで、映画館でぼんやり見てる時は気付かなかったですね。
しかし、表面意識では気付かなくても潜在意識では気付いていたらしく、なんとなくぼんやりですが認識していたような気がします。

まあ、これを知ったからと言って作品に対する評価は1ミリも変わらないですが、自戒の意味を込めてあえてこういう事を書き込んで見ました。

以上、拙い感想でした(・ω・)ノ

投稿 : 2023/09/30
♥ : 14

lumy さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

ブラックな岡田磨里(濃厚)

原作小説は未読です。
岡田磨里作品はそれなりに見ていて、
一番高評価なのは、さよ朝の☆4.2でした。

さて、またすごいものをぶっこんできましたねw
これは評価が恐ろしく分かれる作品です。

テイストは、さよ朝やあの花みたいにホワイト(分かりやすい)
作風じゃなくて、凪のあすからやオルフェンズみたいに
ブラック(ドロドロ)の作風です。

なので、アニメを普通に見る程度の層には、
全く響かないでしょう。
さよ朝のレビューでも書いたのですが、ホワイトな磨里作品に
なるためには、P.A.WORKSやA-1Picturesみたいな大衆向けの
制作会社が必要です。

しかし、今回はMAPPAなので、ホワイトは期待できません。
むしろ、ゴリゴリのブラックですw

視聴中は、それはもうジェットコースターのようでした。
常に状況把握する感じです。
すずめの戸締りも近い感覚がありましたが、
こちらの方がさらに情報量が多く、
視聴の体感時間はあっという間でした。

でも、なんかところどころに印象に残るんですよね。
「ん?ちょっと待て、今どうなってる?」
「でも、すごい映像、演出、演技だ・・・」
みたいな感じですねw

SF的な設定はしっくりこないところもありますが、
そこはあまり考えない方がいいような気がしました。
こうして時間を置いて落ち着くと、
本作のヒロインはかなり(いろんな意味で)可愛いかもしれません。

しかしまあ、作品の印象の大部分は、
久野さんの演技に持っていかれましたね。
確かにあの役は、久野さんしかできない。
他の作品の演技もすごいですが、
本作の演技はずば抜けてると思います。

さて、ホワイトな磨里作品の筆頭である
幸腹グラフティでも見て、お口直しでもするか・・・w

投稿 : 2023/09/30
♥ : 12

68.0 5 2023年夏(7月~9月)アニメランキング5位
君たちはどう生きるか(アニメ映画)

2023年7月14日
★★★★☆ 3.6 (29)
113人が棚に入れました
宮崎駿監督が「風立ちぬ」以来10年ぶりに手がける長編アニメーション作品。
宮崎監督が原作・脚本も務めたオリジナルストーリーとなり、タイトルは、宮崎監督が少年時代に読み、感動したという吉野源三郎の著書「君たちはどう生きるか」から借りたものとなっている。
ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

宮崎駿氏の天命、ジブリからの報奨。

冒頭、久しぶりのトトロの絵に時代を感じました。
心なし、佇まいもしゃんとなる自分が少し可笑しかったです。

10年ぶりを噛みしめるのは、捉えどころのない官能感です。
120分の長座ですが、満喫も堪能も一期一会と欲張りました。

~  ~  ~

官能というと、何やら妖しげです。

言うなら根源的な生命の営みにブルルッと震えたり、奇遇な縁にカヘヘッと歓ぶとか。

五感の昂ぶりに浮き沈みする疼きだったり。
甘やかな陶酔感、色さえ失う極致感とかかしら。

宮崎氏のペンタッチは、逞しい想像力、類を見ない表現性を描く。
彼の絵コンテは、ファンタジーの王道に花と宝石をちりばめる。

2013年9月、氏は引退宣言をします。
でも、アニマを形にせずにはいられない職人でもあります。

10年もの筆まめ。
ついに日の目に適うクオリティーを仕上げたということでしょう。

その集大成です。
一見の価値、一考の余地が十二分にあります。

~  ~  ~

さて、感想です。

「アニメーションにはアニメーションで返したい。」
そう声に出るほどに当てられました。

羨望に応えるのは、底なしの想像へのアプローチ。
憧憬に見てとれるのは、底ぬけの創作へのトリビュート。

ここまで求めてこれた。
ここから始めていければ。

その非凡さで、地球儀を回していく。
のぼる太陽に刮目し、しずかに目尻を細めるのです。

~  ~  ~

驚いたのは、時空の縛りに囚われないクリエイターとしての気迫と、一期一会にまみえる商才とのイニシアチブコンフリクトが見られたこと。

端的に申し上げれば、10年余の時計の巡りに問いかける宮崎氏のリアリズムに対して、なんの手間もかけない告知と番宣に工夫を入れた鈴木氏のスピリットの衝突です。

この話題性は盛り上がりました。
衆口一致の第一歩は、うまく踏み出しているようです。

とは言え、正直なところ、お二人の歩調に合わせるのは、かなりの骨折りでした。
でも、バトンワークの妙は、胸に沁みる幸いにもなりました。

~  ~  ~

ストーリーを追うのなら、参考に足る本がいくつかあります。
ただ、私はそれらを読んでいないので、あからさまな情報弱者です。

君たちはどう生きるか?
この問いかけは、わたしは何のために生まれ、何を成し遂げるのか?に反射されます。

ナウシカ、シータ。
あなたたちは、どんな風に乗っていた?

さつき、千尋、雫。
あなたたちの瞳には、何が映っていた?

生と死、光と影。
大人と子ども、個人と社会。

その構造にうかがえるビジョンは、内心に矛盾を満たし、外界との衝突は否めません。
もしも、前後左右を見回すのなら、大地に居場所を定め、風に帆を立てねばなりません。

目にそびえ立つ障壁を、どう乗り越えるか。
耳をざわめかせる喧噪と、どう折り合うのか。

主人公たちの気構えに心を寄せれば、愛を打つ試金石に自分を重ねる旅でした。

~  ~  ~

主人公の少年・牧眞人は、宮崎駿氏の生き方をトレースしているようでもあるし、高畑勲氏の生きざまを映しているようにも感じます。

だから、既存の作品を手元に引き寄せながら、一つひとつの演出を論じるもよいでしょう。
あるいは、新境地と割り切って、いわく言い難い思惑やもと酔いしれるスタンスも良きです。

お二人が、畑を深くたがやし、丹念に水を蒔き、たわわに実らせてきた果実の結晶です。
次代につなぐリュックに詰め込んで、さぁ君たちの番だとエールを送っているようです。

~  ~  ~

鳥たちは不思議な存在です。

クリエイティビティに躍動し、自己と集団とを主張し、生きるために蜜を求め、華やかな社交場や煌びやかな勲を欲しています。

閉じられた門を開こうとし、高い空へと羽ばたこうともし、逸る気持ちにそれぞれのオープニングを飾ろうとしています。

その塔は形を失せ、力を失ってしまいますが、それでもジブリのマジックを存分に受け取れとばかりのオーラを放ち続けるのでしょう。

鳥たちの羅針盤になり、置き土産となり、止まり木ともなるのならという祈りが潜ませてあるように感じます。



~  ~  ~

過去に省み、未来を鑑み、さて、今日のわたしはどのように過ごしていきましょうか。

斬新なインスピレーションにハミングを楽しんだり、軽やかなミームに囲まれて暮らしを彩ったり。


生きろ。
生きねば。
生きていく。


素晴らしいアニメーションには、素晴らしいアニメーションでお返しをしてほしい。

今は、ただそう願うばかりです。



おまけ
{netabare}
パンフレットを販売初日に買い求めました。

一読して・・・? 再読して・・・?? 

再々読して・・・???

アニメ本体にも勝る衝撃!!!


絵コンテから始まるという宮崎氏の原石なのか
マーケティングにかけるジブリの新境地なのか。

とにかく何かものすごい秘密を覗き見たようで、思わずのけぞりました。


今では、その報奨にすっかり畏まっています。
{/netabare}

投稿 : 2023/09/30
♥ : 14
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

考察は無力。エロスとタナトスについて感じればいいと思います。

 この作品、ネタバレ禁止、イメージ禁止でしたが、これは戦略というより苦肉の策でしょう。だって、紹介の仕様がないですこんな話。別に悪いというわけでは無いです。まあ、どういう意味かは見た人ならわかると思います。

 1回しか見てないです。それで思ったのはこの作品の考察はすべて役に立たないと思った方がいいです。解答を欲しがっては駄目です。自分で考えるから意味が出ると感じました。なので、これから書くのはたわごとだと思って下さい。

 さて、本作の1つ目にして最大のひっかかりポイントは、ここまで露骨なプライベートなストーリーが映画作品として許されるかどうかという問題です。
 少年が疎開する、父親が飛行機工場を経営しているというのは宮崎駿の子供時代そのままでであることから彼を投影している作品というのはわかります。

 が、あまりにも露骨に散りばめられたジブリ作品要素が沢山あります。王蟲の風防から始まって、トトロの森のトンネル、もののけのコダマ、ナウシカの菌糸、紅の豚の飛行機(船)の列とか庭園のガゼボ、最後の方のカリオストロなどです。多分全作品分あるのでしょう。それはデータベース的な楽しみとして私は嫌いですけどいいとします。が、 {netabare}13の積み木は駄目{/netabare}でしょう。自分の業績をたたえているだけ。本物は俺の作品しかない、と言っているように見えます。

 これは私小説ですらない何かなのではないか?と思ってしまいます。私小説は体験をそのまま描くにしても、少なくとも作品世界の登場人物として描く必要があると思うのです。
 が、本作のこの部分、過去作を連想させる要素は、ジブリ作品を見ていること、宮崎駿という人間を知っていることを強要しているように感じました。もし本作を視聴するのに、外面的な宮崎駿像を知っていないと読み取れないものがあるとすれば、まともな映画作品ではないと思います。
 本人が私小説と言っているわけではないですが、じゃあ、この部分について我々は何を見せられているんだ?という話です。

 これが「宮崎駿物語」とかいう題名で、露骨にそういう話だよと言われているなら分かりますが、本当にこれが劇場用アニメとして許されるのか?という疑問がわきました。

 そして、鳥ですね。どういう文脈でつかわれているか、というと、やはり目だと思います。なにを考えているかわからない不気味な目です。インコが顕著でしたが、インコ=大衆あるいはインコ=ジブリ社員とも見えました。あの塔はどう考えてもジブリを表現していると思います。

 本が沢山あった意味は何かです。ジブリがアーカイブ化したということでしょうか。アオサギは鈴木敏夫氏にしか見えません。少年と最後の老人は両方とも宮崎駿かなあと思いました。


 2つ目。継母と実母の描き方です。これはすごかったですね。テーマとしてはこちらの方が優れていましたが、これが宮崎駿の内面なのかは分かりません。
 冒頭の主人公が寝てしまったときの継母が見せた表情はぞっとしました。あの和洋折衷の屋敷の不思議な感じと描写の美しさ。7人の小人=老婆=妖精のようなイメージ。すべてが高レベルでした。

 夜の自分の知らない両親の顔。妊娠や寝顔や作りものの肉体など、継母から感じるエロスはものすごかったです。手塚のケモナーに対応するのは宮崎氏はロリコンだと思ってましたが、継母=近親相姦的な想いもあったのでしょうか?
 実母と同行した老婆についてです。{netabare}あの老婆が若返った姿などもひどくパワフルな描写でした。あのよぼよぼの老婆の昔を知る意味。実母についてはエロスというより、実母にも若くて可愛い時期があったという、人間の時間経過の不思議な感覚が良く描けていました。その母と胎盤のアナロジーである石室に入るのはエロいですけど。つまり、人間の生まれてから死ぬまでについて、特に家族の年齢について感じる不思議さ、エロさがイメージされました。{/netabare}

 この点をしっかり描けていたので、私小説的な不満が気にならなくなるわけではないですが、ここはさすがジブリという描写でした。もちろん冒頭の火災のシーンはすごかったですが、ちょっと風立ちぬの震災のシーンの焼き直しに感じました。


 3つめ。エロスとタナトス。海のイメージと弱肉強食的な生命の循環、昇天=成仏=生まれ変わりのイメージ。魚の解体と内臓。巨石の墓、地下世界という黄泉的な映像。船は言語的には女性のイメージでもあります。弱ったペリカンに対する視点の切り替えなども印象的でした。
 
 一つ一つの意味性を考察するより、こういったエロスとタナトスを象徴するイメージが見事に描かれていました。これは良かったですね。恐らく神話とか美術作品などから引用したと思われる映像が沢山ありました。私は全部ひろいきれませんでしたが、ここで見せた生死観は素晴らしかったです。

 不思議の国のアリスのようなワンダーランド的な冒険譚と、あの世を旅する神話のようなイメージが見事に融合していました。


 で、最後にタイトルですけど、これはまあ訳わからないですね。別に解説も聞く必要もないです。「君たちはどう生きるか」と宮崎駿が問いかけられて、ジブリを作る=映画に人生を捧げてきた。それが自分にとっての真実だったという話かな、と思っています。正解じゃなくて全然かまいません。

 多分もう1回見れば、それっぽい事を沢山かけると思いますが、やっぱり1回に留めて、上の2番目と3番目のポイントを感じてモヤモヤするのが大事かなと思います。ただ、うーん。もう1回…迷いどころですねえ…

 しかし、この作品は考察すればするほど意味性が出てきてしまい、その分作品を見た意味が希薄になる気がします。

 ただ、そうか。レビューを書いてて気が付きましたが「君たちはどう生きるか」は、「君たちは」ですから人から答えを貰うんじゃなくて自分の体験や感性で考えろ、かもしれません。つまり、宮崎駿氏としては「どう生きるか」は自分で考え続ける事だから、この作品がどういう作品かはそれぞれが感じてくださいという意味かもしれません。
 つまり「どう生きるか」とは考察で教えてもらうな=視点や解答を外部に求めるな、ということかもしれません。

 うん。やっぱり宮崎氏の生い立ちや経歴・家族なんかを分解したり、アニメーターとしての影響とか、過去作その他がどこに反映しているかを見つけても、意味はなさそうです。逆にそれらは反映しているでしょうがそれは宮崎氏の「サイン」でしかない気がします。私小説と取られて仕方がないとは思いますが。

 作画はものすごいですけど、そっちの印象よりストーリーというか視点の切り替えが早いので、そちらに気を取られてどこが凄いのかははっきり覚えていません。

 なお、2週間以上前に見てすぐに書いた他の映画サイトのレビューにはかなり低い点数つけました。が、こうやって時間がたってから考えると印象も変わるし不思議な余韻があるので、文学的な味わいでは優れていたと思います。

 ただ、総合点は2点で十分と思えば、それも正しい気もします。




 

投稿 : 2023/09/30
♥ : 13
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

流石にこれで最後だと思った宮崎駿監督の集大成

(※内容は先日某所で投稿した内容とほぼ同じになります)

私は、あらすじ程度は踏まえないと何も語れないでしょ?との方針の元、
“ネタバレなし”レビューを核心部分はタグで隠した上で投稿しています。

ですが本作は、あらすじはおろか、キャストや、ジャンル等、公開前に事前情報がほとんど伏せられた作品なので、
本レビューは全面的にタグで隠させて頂きます。


レビュー前に、劇場鑑賞した雑感だけ

面白いの?……良作。劇場鑑賞するだけの価値は十分あったと思います。特に作画、音響面。

傑作なの?……自分の中では良作止まり。2023年マイベストアニメ映画も今後、良作公開が続けば本作はベスト10に入れるか微妙な位。
マイベストジブリ映画という観点でも、ほぼ良作以上しかないジブリ作品の中では本作は下位グループ。

オススメなの?……宮崎 駿監督作品が好きならオススメ。が、“国民的アニメ映画”になり得るかは不透明。近作の『ポニョ』や『風立ちぬ』から何かを感じられる方じゃないと厳しいかと。

ここまで事前情報隠した意味あるの?……ある。事前公開設定で苦手かもと“ゼロ話切り”する風潮下では、ジャンルどうなるのか?というワクワク感も貴重なエンタメ体験ではないかと。


以下レビュー。
{netabare}
【物語 4.0点】
一応のジャンルは異世界転生物。神隠し物。
生きづらさを抱える少年・眞人(まひと)が冒険を経て、現世で生きる糧を得る典型的なジュブナイル。

『千と千尋~』ではこっちの世界の場面など数分でしたが、
本作では現世に当たる戦時中の日本での悶々とした少年の葛藤の描写にも多くの尺が取られ、
現実世界で数多く張られた伏線が、ファンタジー世界の動向を左右する際に回収されるプロット構造。
現世と異世界を行き来するカットもあります。

疎開先のお屋敷での淡々とした日常描写が続き退屈する可能性もありますが、
公開前にジャンルなどの基本情報も伏せたことで、どこでファンタジーに転換するのか?
という期待が鑑賞の集中力の源になった面も大いにあり、
その点では「情報がないことがエンタテイメントになる」との鈴木プロデューサーの目論見は外れてはいないと感じました。

事前公開ビジュアルをアオサギに絞ったのも上策。
あの鳥人間?は何者?と誰もが気にしているアオサギに、
ファンタジーへの予兆を集中させるプロデューサーと監督のタッグによる誘導も機能していました。


現実とファンタジーにまたがる世界観には、過去作を思わせる要素も詰っており、
これまでの宮崎駿監督作品の中でも一際、集大成感がある作品でもありました。

ただ、私は嬉しさより、これで本当に最後になるのだろうなとの寂しさの方が上回りました。
作品メッセージも私には、要は本の世界やファンタジーにこもってないで、
現実世界でちゃんと生きなきゃダメだよという既視の説教の再生産にも感じました。

次世代の作り手たちが発信してきた内容と同様のテーマを、
企画段階で同時期に構想しても、6年以上の制作期間を費やす内に、トレンドからは乗り遅れた感。

新しい作品を生み出す役割は、次世代に託されたのだなと思いました。


この種のジュブナイルやテーマが好物であるはずの私が、
鑑賞後モヤモヤしてしまった心理を自己分析すると大体こんな感じでしょうか?

ま、正直、『ポニョ』を越える考察難度に私の頭が付いていけなかったという説が有力
なんですけどねw


【作画 5.0点】
IMAXレーザーにて劇場鑑賞。

作画は手描き重視。
CGはおびただしい数の鳥の大群の処理など補助的に用いられる程度。
(アオサギだけじゃなく、ペリカン、インコと鳥超特盛りですwヒッチコック級のトラウマですw)

日常のちょっとした場面での人体の動きへの宮崎 駿監督の飽くなき探究心は健在。
精密に設計した機械や建物を構築しては壊す趣味も相変わらず。
今回は(※核心的ネタバレ){netabare} 「下の世界」を丸ごと{/netabare} 壊してしまったので、スケール面では過去最大ですね。
これを実現するため背景にまで作画を入れる人員や労力は厭いません。
(原画陣に米林 宏昌監督らが入ってるってどんだけ戦力豪華なのかとw)

ジブリが内部保持し続けた大量の手描きマンパワーは、
近年の新海誠監督作品など、作画カロリー大量消費プロジェクトを回す支援部隊としても重宝してきましたが、
宮崎 駿&高畑 勲両監督がアニメを作るため設立したスタジオジブリが役割を終えた後、
この人的資源を今後も継承活用するのか、新たな技術等で代替するのか、
次代のアニメ業界の割と大きな焦点です。


【キャラ 4.0点】
主人公少年・眞人(まひと)
良家のボンボンですが、怪鳥?を狙撃するため弓矢を自作したり、
女を助けるため弦をつたって壁面をよじ登ったりと、
アシタカ、パズー級の逞しさも垣間見せる少年。

ただメンタル面は梅雨入り真っ只中。
眞人は実母・久子を空襲で亡くした過去を消化しきれず、
新たに義母となる久子の妹・ナツコとも折り合いが付かない。

時は喰えるか、生きられるかの戦時中。
相対的に贅沢なお坊っちゃまの悩みを抱えて、
自分だけ苦しいみたいな面をぶら下げて國民学校に登校しても上手くいくはずもなく。

義母や学校から逃避するように、眞人は、
{netabare} 同学との喧嘩で負った傷の上に、自ら石で側頭部を殴りつけ大怪我をする{/netabare}
という悪意ある自演により部屋と自分の心の扉を閉ざそうとする。

眞人の自己嫌悪の原因にもなっている自身の悪意や嘘。
もはや眞人の傷心に寄り添えるのは実母が遺した『君たちはどう生きるか』などの本の世界くらいしかないのか?

現世と乖離しつつある眞人の心理状態は、
{netabare} かつて本の世界に吸い込まれるように「下の世界」に誘われ、
今は「下の世界」の調律者となっている大叔父様にとっては、
「下の世界」の役割を託せる逸材に映る。{/netabare}

主人公を始め、現実とファンタジーを橋渡す人物像は練り込まれています。


{netabare} 「上の世界」では女中の老婆陣の一人、「下の世界」では命の源“わらわら”を世話する逞しい女性である、{/netabare}
キリコなど、女性や老人が元気なのも如何にも宮崎 駿監督作品。


【声優 3.5点】
主人公・眞人役で初主演を務める18歳の若手俳優・山時 聡真さんを始め、
キャスト陣は俳優・タレント・歌手・モデルで固める。

集大成として、木村 拓哉さんを特別出演させるなど、過去作のキャストの名も見られますが、
過去のジブリ出演声優も含めて、アニメ声優をメインから外す近年の方針は徹底して変わらず。

出演タレントのTV番組での宣伝など、事前の話題作りをやらなかった本作でこのキャスティング。
晩年の宮崎 駿監督の声優軽視を越えた声優無視の意図が私にはサッパリ分かりません。

この辺りを少し追記すると、
宮崎駿監督自身は木村 拓哉さんの演技を純粋に必要として起用したのでしょうが、
私には過去作のキャストも起用して大団円の流れだと思ったのに、
声優はあくまで外すなんて、キムタク出すなら田中 真弓さんや高山 みなみさんも出せよムキー!となった感じ。
独りよがりな要望でしたね。スンマセン。

ただ、例えばナウシカ役の島本 須美さんにナツコを演じさせたら、
俗世は汚れているけど、私は汚れた世界で生きていくといった感じで、
コミック版『ナウシカ』とシンクロして粋なキャスティングになったのでは?
と欲が出たりします。



主演の山時さんなど発声は卒がなかった印象。
怪鳥?アオサギ役を怪演した菅田 将暉さんの濁声には独特の味わいがありました。

ただ炎の魔法少女・ヒミちゃんには歌手・あいみょんではなく、
“ちゃんとした声優”で萌えたかったですw


【音楽 4.5点】
劇伴担当は久石 譲氏が定番のピアノとストリングスを提供。

ですが「下の世界」へ旅立つ前の日常シーン等ではBGMは多用せず、
時に無音の中で、異音を鳴らして、ファンタジー世界へ誘う違和感を演出。
IMAXの恩恵は、作画だけでなく音響、特に効果音の面で強く実感しました。


ED主題歌は米津 玄師さんの「地球儀」
4年前にスタッフ側から打診され、監督からコンテを渡されて練り上げたバラード。
節々に、作品を捉えたワードは感じましたが、
何分、事前情報が少なすぎたので、私は作品も本曲もまだ咀嚼し切れていません。{/netabare}

投稿 : 2023/09/30
♥ : 11

計測不能 6 2023年夏(7月~9月)アニメランキング6位
劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)(アニメ映画)

2023年9月8日
★★★★☆ 3.9 (8)
19人が棚に入れました
女好きの始末屋“シティーハンター”、冴羽獠の活躍を描いた、北条司の漫画「シティーハンター」の劇場版アニメーション。冴羽獠役の神谷明、槇村香役の伊倉一恵をはじめとするオリジナルキャストが各キャラクターの声を担当し、依頼人アンジーを「鬼滅の刃」の沢城みゆき、獠の過去を知る海原神をブラッド・ピットの吹替えを多く担当する堀内賢雄が演じる。

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

テレビのシティーハンターの魅力を継承した映画でした

週刊少年ジャンプに連載されていたシティーハンターを知っている私には、昔を思い出す懐かしい内容でした。

冒頭、いきなりキャッツアイの歌が流れてきたのには驚かされました。
若い人たちはキャッツアイの歌など知らないでしょうね。

そして冴羽獠のもっこりパワーは、令和の時代になっても衰えることはありません。おそらく今のテレビ放映であれば、放送禁止になるでしょうね。
そして相棒の香の100トンハンマーも健在でした。

映画の半分は、獠と香とのお笑いです。昔と全く変わっていません。

獠と香は恋人どおしではないが、二人の間には誰も入れない。
これは海坊主さんの名言だと思います。
本当に二人の間には海よりも深い信頼関係がありますね。

物語は、美人の依頼人が持ち込んだ「エンジェルダスト」と呼ばれる薬(覚せい剤の一種)をめぐるトラブルに獠たちが巻き込まれます。
エンジェルダストを注入された者は痛みを感じず超人的な身体能力となるため、獠が苦戦します。

シティーハンターの魅力は、獠のおバカなところと、シリアスな戦闘シーン、そして心温まる獠の優しさ。今回の映画も、この魅力を継承していました。

そして、エンディングの「Get Wild」。激しさと温かさを兼ね備えた、まさにシティーハンターの魅力を感じさせる名曲です。

ところで、
シリアスな部分になると、獠の声優である神谷明さんの声の衰えを感じてしまいました。
神谷明さんは1946年の9月生まれなので、ちょうど77歳のようです。
この年で主役が演じられるのは凄いですね。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 10
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

冴羽獠の過去に決着を付ける最終章の幕開け

引き続き原作ほぼ未読で劇場鑑賞。

【物語 3.5点】
殺人マシーンとして訓練された冴羽獠の過去と宿命に決着を付ける“最終章”
“最強の敵と最後の戦いへ―――”とのキャッチコピーで煽って来ますが、
本作で描かれるのはラストバトルに向かう前の序章。The Final Chapter Begins.

裏社会の暗殺者たちが辿る悲劇のケーススタディの復習から、
主人公のシティーハンター・獠と、コミック版でクライマックスを飾ったという冴羽獠の名付け親・海原神との対立構図の主軸が確立されるまでの“おれたたエンド”


『シティーハンター』復活お祭り映画だった前作よりもシリアス色の強いシナリオ。
ですが特に前半は冒頭から{netabare} 『キャッツアイ』と共闘する獠&海坊主の変態怪盗コスチュームで笑いを取るw{/netabare} などコラボ要素も交えたコミカルなノリは確保。

獠も相変わらず、何でもハラスメントと自粛する令和の空気など気にも留めず、
“もっこり”と美女にすり寄ってナンパしたり、{netabare} 大人しく自宅待機と見せかけてマッチングアプリで美女を物色{/netabare} する令和仕様の“もっこり”探求で、香の重量ハンマーで制裁を受けるお約束を、
「何十年同じこと繰り返しとんじゃい」(by香)って感じで繰り広げますw

そんなおふざけムードで鼻の下を伸ばしながらも、
自らを追いかけてきた過去の宿命の気配を察知する、獠の洞察の鋭さは健在。
エロと見せかけて伏線を張る獠のキャラに慣れ親しんだ方なら、ストーリーも捉えやすく、
94分の適尺で、コメディとシリアスのジェットコースターを満喫できると思います。


【作画 4.0点】
アニメーション制作は引き続きサンライズ。

加えて本作ではアンサー・スタジオを共同制作に迎える。
シティーハンターの拠点・新宿だけでなく{netabare} お台場、川崎{/netabare} と広く関東を舞台にしたアクション・シーン。
東京の描き込みに定評のある新海誠監督作品などにも参加してきた同スタジオが、緻密なロケーションに基づいた映像で支える陣容。

クライマックスのバトルなどは人造人間同士の対決か?ってくらい派手。
加えて{netabare} 香のノーコン・ロケットランチャーの結果オーライ攻撃{/netabare} による器物損壊も甚大でw
作画カロリーを大量消費しますが、作画班は対応。

コメディパートでも、獠の“もっこり”を阻止するための香による室内トラップも一層複雑化し、
ここでも作画カロリーを無駄に大量消費w

香の制裁ハンマーには引き続き鑑賞者へのメッセージが刻印され、続編公開を祝福。
さらには、まだまだ続編いけるなどとも豪語し、香同様、スタッフ陣も意気軒昂で何よりです。


【キャラ 4.0点】
シティーハンターに愛猫の捜索を依頼する謎の美女・アンジー。
彼女を執拗に付け狙う男ピラルクーとエスパーダ。
{netabare} かつて海原神が指揮する同じ暗殺者集団に属したトリオが戦士の悲哀を体現し、{/netabare}
冴羽獠VS海原神の最終決戦の舞台を整える布石となる。

終始“もっこり”の意味を誤解したままだったアンジーというのも、
ふざけているようで、裏社会に関わった人間が知らない表世界の明るさを示唆する良好なスパイスでした。

冴羽獠の過去となれば、やはり回想で登場するのが槇村秀幸。
彼のエピソードくらいはおさらいしておくと最終章にも入りやすいかもしれません。


刑事サイドでは野上冴子との関係で公安三課・下山田が、
冴子がガンを飛ばしたくなる視野の狭さ、小物感で、
警察組織だけじゃ治安は守り切れないとのシティーハンター必要論を補強w


コラボ要素では引き続き絡んで来る『キャッツアイ』の3人だけでなく
(※核心的ネタバレ?){netabare} ルパン三世やお台場のユニコーンガンダム(バナージ・リンクス){/netabare} など、
意外なゲストでハードな中でも小ネタを提供。


【声優 4.0点】
ゲストヒロイン・アンジー役には沢城 みゆきさん。
宿命を背負ったクールビューティー(若干ポンコツw)を演じさせるにはうってつけの配役。
みゆきちの熱演が本作のMVPと言っても過言じゃありません。

敵組織のピラルクー役・関 智一さん、エスパーダ役・木村 昴さん。
そして彼らの首魁・海原 神役にはベテラン・堀内 賢雄さんと、
シティーハンターと対峙するのに申し分のない陣容。


メインキャスト陣は、冴羽獠役の神谷明さんは76歳とは思えない程、元気で、“もっこり”ですが、
膝の手術明けのヒロイン・槇村香役の伊倉 一恵さんなど、
そろそろ声を張るのは苦しいか?と思われる場面も散見。

私見では、この最終章が終わっても『シティーハンター』は続くと思っていますが、
オリジナルキャストがメインで演じるのは最終章が最後なのではとも感じています。

なので最終章が二部作になるのか三部作になるのか?私は三部作ではと推測していますが。
メインキャスト陣が無事揃って大団円で“卒業”を迎えるためにも、
この最終章は3年くらいで決着を付けて欲しいです。


【音楽 4.0点】
劇伴は岩崎 琢氏が続投。
シンセの重低音を駆使した得意のアレンジでハードなバトルを好アシスト。
一方、獠のナンパを香が制裁する一連のコメディパターンでは、
サンバのリズムに“もっこり”ボイスをアレンジする遊び心で魅せるw

最近では『シン・仮面ライダー』劇伴で改造人間の悲哀を表現したりと
宿命に立ち向かう戦士に寄り添ってこその同氏の楽曲だと思いますので、
今後の最終章も岩崎氏の完投で是非お願い致します。


主題歌・挿入歌は前作以上のTM NETWORK祭り。
OPから新曲「Whatever Comes」を書き下ろして新宿の街をスタイリッシュに疾走するOP映像で惹き付け、
本編中でも6月リリースされた9年ぶりのニューアルバムの楽曲群を次々に挿入。
さらにはクライマックスにゲストヒロインを象徴した「Angie」を投入。
来年のTMNデビュー40周年に向けて『シティーハンター』を活動の中核に位置付ける熱の入れよう。

TMNのサウンド自体は、EDM、トランスなどの最新トレンドにも向き合い、今なお通用する鮮度は保ってはいますが、
2013年に大病を乗り越えたボーカル・宇都宮 隆さんには往時のパワーは望めず、
小室 哲哉氏は私生活で破綻を重ね、何時グループが潰えてもおかしくない状況。

そういう意味でも私は最終章の早期完結を願っています。
恒例のED「Get Wild」による抜群の引き。
私はシナリオ他いろいろな意味で重苦しい余韻が残りました。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 9

計測不能 6 2023年夏(7月~9月)アニメランキング6位
劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」《後編》(アニメ映画)

2023年6月30日
★★★★★ 4.6 (4)
15人が棚に入れました
武内直子の人気コミックをテレビアニメ化し世界的人気を博した「美少女戦士セーラームーン」シリーズの劇場版で、原作の第5期にあたる「シャドウ・ギャラクティカ編」を映画化した前後編2部作の後編。
銀河征服をもくろむシャドウ・ギャラクティカとの戦いに身を投じたセーラームーン。破壊の戦士セーラーギャラクシアはセーラームーンから仲間たちを次々と奪い、彼女を追い詰めていく。孤独に打ちのめされそうになりながらも、愛する人や仲間たちのため、セーラームーンは銀河の運命を左右する最終決戦に挑む。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

ビヨンド・ザ・セーラー・ギャラクシー

【物語 3.5点】
前編で決戦に至るまでの経緯をギュウギュウ詰めにして、後編ではラストバトル。
ボスとヒロインの矜持をぶつけ合う論戦も含めてジックリ描く。
前作『~Eternal』と同様の全体構成。

今回のセーラームーンとセーラーギャラクシアの最終舌戦は、
宇宙の成り立ちのレベルからセーラー戦士の宿命を説き明かす。
{netabare} 星が生まれた時、光が生じるからこそ闇が生まれる。
星を守護するセーラー戦士と光に引き寄せられる悪は表裏一体。
よって星々とセーラー戦士が生まれる限り、戦いは終わらない。
永劫の輪廻転生の中で重要なのはクリスタル。器の肉体が経験する刹那の人生などに大した意味などない。{/netabare}
その上で尚、現世に生きる女の子の青春の価値を抗弁する。
時空を越えた特大スケールの大説教合戦。

瞬きする間もなく倒れていくセーラー戦士など、
やはり尺は窮屈な感じはしますが、
壮大な宇宙観をまとめ上げた手腕には見るべき点があります。


【作画 3.5点】
変身&必殺技の“バンク”再現にも多くの労力が割かれた集大成。
『~Crystal』1期序盤のセーラームーン変身バンクでは、
少女漫画風タッチとCGが目立ち、
90年代アニメ版とは違う作風で行くんだという主張が相容れず、
私の脱落の一因となりました。

結局、本シリーズも回り回って、90年代風の再現に戻って来た感。
劇場で堪能できた嬉しさ半分。これを最初からやっていればとの悔恨半分。

限られた尺で宇宙の真理を表現すべく作画も奮闘。
掴み難いイメージを理解する一助になりました。

それにしてもスターライツやギャラクシアのヘソ出しスタイル。
最後は{netabare} ネグリジェ姿のセーラー戦士たちで大団円。{/netabare}
悟りに近づくに連れ、薄着、肌色率が上昇していくのは何故なのでしょうw
劇場で平然とヒロイン変身シーンを堪能していた私も少し羞恥を覚えましたw


【キャラ 4.0点】
ほぼラストバトルのみを描いた後編。
登場キャラもほぼ全員セーラー戦士ですが、その数は膨大。
星の数だけ守護戦士が生まれる宇宙観を物量で思い知らせる。


ラスボス・セーラーギャラクシアは、“クズ星”の戦士として傷を重ねた上、
{netabare} 真ボス・カオス{/netabare} に明かされた宇宙の真実への絶望から凶行を重ねる。
ギャラクシア自身がセーラームーンに救済を求めていた?
勧善懲悪とは異なる余韻をもたらす。


戦士たちの百花繚乱の中、私の心に残っているのが、月野うさぎの母・育子。
セーラー戦士の事情を知らないはずの母が、最終決戦に挑む娘の背中を見て、もう戻って来ないかもと予感するカット。
何でもお見通しな母親。宇宙に勝る真理なのかもしれません。


【声優 4.5点】
主演・三石 琴乃さん。
この春出た、自身の声優人生を回顧した自伝的エッセイ『ことのは』を購読。
その中で繰り返し語られるのは、昔は今続けている事が意味があるのか分からなかったが、とにかく努力は続けた。
後になって、あの時苦しんで身に付けたことが役に立ったという人生訓。

セーラームーンの一人称視点が強調された本作。
月野うさぎも、仲間が次々に倒れ、孤独の中で自身の正義を見失いかけるピンチが続く。
暗中模索の中で、何度も立ち上がり戦い抜くムーンの姿を見ていたら、
まるで中の人の声優人生と重なっているように感じて胸を打たれてしまいまして。

本シリーズも周りのセーラー戦士役は実績を重ねた中堅、若手に変更して、
主役だけは三石さんのままで行くというキャスティングが無理があると物議を醸しましたし、私も疑問でした。

でも最後に主演声優に感動できたのだから終い良ければこれで良しだったのかなと。

“国民的美少女戦士アニメ”主演という成功にも慢心せず、
舞台・ドラマにも挑戦し芸を磨き続けて来た三石さん。
来年の大河ドラマ『光る君へ』では藤原道長の母・時姫役での出演も決定。
京の伏魔殿でどんな華を咲かせるのか?楽しみな大河がますます楽しみになります。


意外なキャストだったのがセーラーコスモス役。
一人だけ、たどたどしいアフレコだなと訝しんでいたら{netabare} 北川 景子さんでした。
実写ドラマ版のセーラーマーズ役がデビュー作の女優がムーンの遠い未来の姿を演じる。{/netabare}

作画と合わせてキャスティングにも本シリーズだけでなく、
メディアミックス全体を総括しようとの意志が滲み出ています。


【音楽 4.0点】
OP主題歌は「セーラースターソング」
TVアニメ版『~セーラースターズ』OPを、
セーラー火球役・水樹 奈々さんがスターライツ声優陣を従え、こぶしを利かせてカバー。
奈々さん起用の真価を発揮。

ED主題歌は前編から続投のDaoko「月の花」ほか数曲のメドレーで、
『セーラームーン』コンテンツの集大成を飾る。

エンドロール後の締めくくりには、価値観が移り変わろうとも、
これが自分が描いて来た女の子の幸せだとの作者の意地も感じました。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 6

計測不能 6 2023年夏(7月~9月)アニメランキング6位
しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司~(アニメ映画)

2023年8月4日
★★★★☆ 4.0 (4)
15人が棚に入れました
春日部市に住む幼稚園児、野原しんのすけの日常や冒険を描いた臼井儀人による漫画「クレヨンしんちゃん」のシリーズ初となる3DCGアニメーション。『バクマン。』の大根仁が監督と脚本を担当し、『STAND BY MEドラえもん』の白組がアニメーションを手掛けた。『流浪の月』の松坂桃李をはじめ、「鬼滅の刃」の鬼頭明里、お笑いコンビの空気階段がゲスト声優として出演する。

計測不能 6 2023年夏(7月~9月)アニメランキング6位
マイ・エレメント(アニメ映画)

2023年8月4日
★★★★☆ 4.0 (5)
14人が棚に入れました
火・水・土・風といったエレメント(元素)たちが暮らす世界を舞台に、正反対の性質を持つ2人の出会いを描いたディズニー&ピクサーの長編アニメ。
『アーロと少年』のピーター・ソーンがメガホンをとり、火のエレメントで少し短気なエンバーの声を『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』のリーア・ルイス、水のエレメントで流れに身を任せるタイプのウェイドの声を『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のマムドゥ・アチーが務める。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

多様性の面倒臭さと可能性を描き切ったピクサーの力作

【物語 4.5点】
多様性を描いた本作。

監督のピーター・ソーン氏は韓国系。
韓国人と結婚して欲しいとの家族の要望に反して、
イタリア系女性と結婚したという過去を持つ。

本作でも監督自身の人生が反映されており、
それだけならマイノリティ経験者等以外は共感できない視野の狭い作品となります。
が、本作の非凡な所は、マイノリティが多エレメント(民族)都市であるエレメント・シティの中で、エ0レメント間に溝ができていく歴史と過程を、客観的に描写できている所。

水、土、風の順で移住してきたこの街は、先住したエレメントたちが暮らしやすいよう、社会インフラが特化。
都市構造は極めて複雑で、多大なコストがかかるのに、
何で多様なエレメントが共存する必要があるのだろう?と目まいがする程。
そこに最後発でやってきた火のエレメントが割って入るのは中々難しい。
必然、押しやられるように他のエレメントが捨てた街区に住み着き、火の街は半ばスラム化。
先住エレメントたちが取り仕切る行政の目も行き届かない。

マイノリティの側も、マジョリティの側も無自覚のうちに壁を作ってしまう。
特段、差別主義者や分離主義者じゃなくとも、火のエレメントは火だけでまとまって互いにあまり関わらない方が良いよねとなる。
個々人の意識ではどうにもできない歴史、社会構造から来る分断が見事に表現されています。

私はしばしば、一部の無思慮なリベラルが、多様性は今や時代の空気なんだから保守は従えとマウント取っている光景を見て不快な気持ちになりますが、
多エレメント都市の現状と課題について、思慮を重ね忌憚なく表現された本作は、
多様性の押しつけ感がなく傾聴する気になれます。

その上で展開される火のエレメント・エンバーと水のエレメント・ウェイド、禁断の恋物語。

火のエンバーは、家業の雑貨店で接客する中で、しばしば癇癪(かんしゃく)の爆発を起こすため、
深呼吸して怒りをやり過ごすアンガーマネジメントを試みる。
ですが水のウェイドはそれを聞き、癇癪は自分の心の叫びを伝えようとしているんだとアドバイス。
それを聞いた火のエンバーが自身の心の声と向き合うことで、
{netabare} 爆発的な火力を生かしたガラス職人(水エレメントの建造物はガラス製で需要大){/netabare} という思わぬ道が開けていく。

自分のことこそ自分では分からない。
自分の才能は時に視点の異なる他者との出会いにより発見される。

異なるエレメント間で放たれる可能性の“化学反応”
多大なコストを払ってまで多様性を実現するエレメント・シティの面目躍如。

マイノリティじゃなくても、面倒な他者との交流に尻込みしがちな多くの人間の背中を押す、
普遍的なメッセージ性が本作の真価。

シナリオ転換を{netabare} 水エレメントの主要交通手段である運河からの水漏れ{/netabare} ばかりに頼ったのはやや単調に感じたものの、
幅広い層にオススメできる好エピソードだと思います。


【作画 5.0点】
製作・ディズニー&ピクサーによるCGアニメーション

豪華。
目がくらむ程、手間がかかりそうな映像を実感すること自体が、
多様性都市の課題と可能性を示唆する。

水、土、風、火のエレメントにより構築されたキャラクターは、
ゆらめく炎や、光を乱反射する水泡など、常時、莫大なエフェクト量を消費。
例えるなら異世界ファンタジーアニメの大火力魔法レベルの演出を、
常時全カットで施し続けている状態。

並のスタジオなら忌避する高カロリー映像を巨大戦力で実現して押し切った感じ。


土から出た葉は火に触れると燃えてしまうため、火は{netabare} 植物園{/netabare} などの特定施設から“火気厳禁”と締め出される差別を受ける。
水エレメントの潤いを保つため公共交通機関に整備された溢れ出る程の大量の水は、火エレメントにとっては公害でしかない。
エレメント共存の困難性を、終始、魔法みたいな映像美で楽しみながら直感的に理解できてしまうのは見事としか言い様がありません。

属性魔法みたいな分かりやすさに油断した虚を付いたカットが本作の見せ場。
{netabare} 火のエンバーと水のウェイドが初めて触れ合い抱き合うシーン。
水で消される火が結ばれる訳がないと作中エレメントたちも鑑賞者も決め付けていたが、
実は誰も試していなかっただけ。{/netabare}
目から鱗の“化学反応”が心に残りました。


【キャラ 4.0点】
多種族間にまつわる諸々を属性エレメントでデフォルメし記号化したキャラ造形。
従来こうした志向のキャラ作りにおいてはアニマル化が有効かつ良作多数でしたが、
本作のエレメント間交流による“化学反応”は関係性表現という点でアニマルキャラにもない新境地を開拓。


火のエンバーの両親。
本作は父親のバーニーがエレメント・シティに火のコミュニティーを確立する一代記でもある。
人は何にでもなれる!縛られなくたっていい自由だ!と一方的に主張するだけでなく、
火の伝統を娘エンバーに継承したいとの親心もちゃんと汲んでいる点も本作の懐の深い所。

バーニーもまた移住の際、{netabare} 地元の白い目に曝されながら旅立っている。
その寂しさを知った上で見るラストのエンバーと互いに地に伏して認め合う儀礼。
心が温かくなりました。{/netabare}

一方の母親・シンダーは地域によくいる仲人おばさん。
匂いで恋心を感知する恐るべき異能?で恋愛好奇心の火を煽る燃料に。


あとは何度、花を火に燃やされてもアタックし続ける土エレメントの少年クロッドの恋が実ることをお祈り致しております。


【声優 4.0点】
※日本語吹替版を鑑賞。

吹替声優には火のエンバー役・川口 春奈さん、水のウェイド役・玉森 裕太さん(Kis-My-Ft2)をオーディション選出。
すぐにカッカして爆発するエンバーに、ちょっとしたことで号泣するウェイドと、
感情表現も激しい役どころ。
メイン2人からは声優初挑戦とは思えない程のボイス表現を引き出せていたと思います。

この吹替スタッフ陣には、俳優タレントの才能をどうやって発揮させれば棒読みを防げるのか秘訣を是非教えて頂きたいですね。
オーディションの段階から俳優タレントの名前や顔じゃなくてボイス素材を重視していることは、
土の堅物お役人エレメント・ファーン役の伊達 みきおさん(サンドウィッチマン)の意外性でも伺えますし。
また川口 春奈さんが吹替収録後はいつもクタクタだったと証言されている点から、
ディレクションには妥協しない収録風景は想像できます。


【音楽 4.0点】
劇伴担当はトーマス・ニューマン氏。
民族音楽からエレクトロポップまで幅広くアレンジし、エレメントのるつぼを好表現。

同氏も共同制作で参加したED主題歌・ラウブ「Steal The Show」も、
軽快な民族音楽風の打楽器など、上記のアレンジを取り込んで、
エンバーとウェイドの関係を歌った良作ラブソング。

日本版エンドソングとして起用されたのが2009年のヒット曲・Superfly「やさしい気持ちで」
“あなたがいて わたしになる 幸せにはきっと ひとりきりじゃたどり着けない”
別に本作主題歌を狙ったわけじゃないのに、ジャストミートする歌詞。
何気にそこが一番驚いた“化学反応”

投稿 : 2023/09/30
♥ : 8

takato さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

エンタメの骨子が出来て…おらん喃。ピクサーの復活が待たれる。

 好きなDr.マクガイヤー氏が褒めていたので見に行った映画第二弾。Dr.と同じく最近のピクサーはどうも調子悪くてなぁ…(個人的にはソウルフルワールドが最後の傑作)な印象で見に行ってなかったのですが、本作は絶賛されていたので見に行った結果…。


 恋愛が中心だし最近のピクサーはなぁ…という気持ちで気後れしてたのですが、正直言わんこっちゃナイト…でした。Dr.が褒めていた所、具体的には「ズートピア」等から引き継がれている魅力的な世界観や設定を、面白かつ美しいアニメーションで説明的になりすぎず表現する上手さ、韓国系の移民二世という監督の個人的な想いをアニメーションにすることでより普遍的なテーマしているとこは見事!。


 ただ、Dr.も指摘していた最近のピクサーの問題点。ラセターが抜けた後、脚本の練り込みの最後の一押しが足りてないというのが私は本作にも感じてしまってエンタメ力がもう一歩乗り切れねぇ…。


 ピクサーはずっと恋愛を中心に置いた作品はやってこなかったし(あくまで副次的な要素ではあった)、そもそも現代に生きるオタクとしてはもう男女の恋愛を中心にするのは古いというか、もう求心力にイマイチ欠けるような。日本のコンテンツでもライトなノリか、ギャグ中心の作品くらいしか印象に残るものはもはやないし。


 それ以上に本作の問題は、解決すべき問題(マクガフィンだとしても)が微妙…というところ。故に二人が共通のミッションをこなしていく過程で自然と惹かれ合う感が少々弱い…(ズートピアはそこがスムーズだったし、そんなに恋愛を中心に置いてなかった)。


 今までのピクサー作品や、ピクサー合流後のディズニーアニメでは大体強固な解決すべき問題に向かって一直線!な王道の作りだった。途中で実はそれは本当の問題ではなかったみたいなツイストがあったり、大きく打ちのめされてもう辞めるか?ってとこまで追い詰められたりしても基本的には、しっかりとエンタメの骨子が出来ておる喃…だった。


 しかし、本作は悪役もいないし、問題もその解決も弱い…。勿論そこが真の話の中心ではなくマクガフィンなのはわかってるが、最初はやたらポンポンと話が進むなぁ〜と思っていたが、進むにつれてなんか進むべき方向がぼやけてしまって緊密さを欠く脚本になってしまったように思えてならない。マクガフィンだとしても眼前の強固な問題の解決が、同時に真の問題の解決とも重なってこそエモーショナルな喜びを生む。


 シナリオ骨法言うところの「カセ」や「カタキ」が緩いから、エモーショナルな積み重ねや高まりがイマイチ足りてない。故に二人の恋愛も、テーマの部分も真に心に迫って魂を震わせてくれる域にはどうもいけない…。今までのピクサーの傑作がいかに凄かったか改めて思い知らせました。


 あと、小言的な感じですが、4大元素の残りの2つはいらなくね?とか、pvとかで流れてる曲って日本だけの主題歌かい!とか、終盤ああいう台詞を吐かせるなら親世代の成長ももっと描くべきだったんじゃねとか、土下座って韓国にもあるんだっけ?とか色々ありますが、そこはピクサーですから全体的なレベルは決して低くない、普通なら及第点な作品だとは思います(序盤はワクワクした)。ただ、過去のピクサー作品を知ってるこちらとしては、Dr.には悪いけど私は新たな傑作誕生!とは言えないなぁ…。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 3

計測不能 6 2023年夏(7月~9月)アニメランキング6位
映画プリキュアオールスターズF(アニメ映画)

2023年9月15日
★★★★★ 4.2 (4)
10人が棚に入れました
プリキュアたちのドリームチームが結成され、チームごとに異世界を冒険する「プリキュア」シリーズ20周年記念作。ソラが目を覚ますと、そこに広がっていたのはふしぎな世界。その世界から抜け出すため、ソラはゆいやまなつ、プリムたちと遠く彼方に見える城を目指す。

takato さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

わ〜い!久々のプリキュアオールスター映画だぁ!!!→スンッ( ˙-˙ )…。

 いや、悪くないよ悪くない…。プリキュアオールスターといえばこういう感じだよね。うん、わかるわかる。久々の新作映画だし、お客は入ってるし、野暮なことは言いたくない。15周年の「オールスターズメモリーズ」みたいな神作を寄越せなんて言わない。ただ、さぁ…明らかにショボくなってない?特にCG。


お祭りなんだから細かいこと言うな的な、欲の薄い人が満足ならそれはそれで構いません。しかし、私はプリキュアの底力に打たれてきた人間なので、そんな温いことは申せません。


 というわけで、久々のプリキュアオールスターだったんですが、プリキュア映画を大体見てきた自分としては、本作はオールスターの罠とでもいうべき構造から逃れようとは多少したけど、やはり絡め取られてしまったように思えてなりません。「オールスターズメモリーズ」は、そこを乗り越えた上で更に、CGの進化、そして気高いテーマ性まで盛り込んでいるからこそ、私のオールタイムベストアニメ映画なのです。


 オールスターの罠とは大別すると2つ。敵やゲストをどうすんの問題と、オールスターという多数なキャラをどう扱うか?という問題です。短い尺の中でこれらの問題を突破するのは困難。


 今回のための敵とゲストキャラを出すと、只でさえオールスターでキャラが多いという問題。更に、単なる「ための」敵、ご都合主義な舞台装置でしかない敵だとやはり萎える。プリキュアにとって敵は単なる敵でない時こそ、深みと感動があって傑作になる。今回は、その部分は考えてきたと思います。ただ、少々練り込みが甘い…。ゲストと敵キャラをちゃんと絡めるのは良いが、ミデンみたいに敵を超えて色んな象徴として機能するような深みにはもう少し掘り下げが必要だったかな?。


 それ以上に大きかったのは、もう一つの問題。オールスターという多数のキャラをどう処理するか?という問題。これは残念ながら従来のフォーマットに乗っかってしまっただけと言わざるをえない。各プリキュアから選抜したキャラを臨時チーム的に幾つか組ませて、それらが合流するってパターンは何度かすでに試みられている。


 すでにやった手法だから駄目とは言わないが、やはり冗長…。初めまして!のところから、他のプリキュアたちと絡んでイチャイチャしているとこがサービスなのだろうが、只でさえ短い尺の中でその半分くらい占拠しちゃうのは、正直物語の推進力があんまない時間が続いて弱い…。最大のサービスは、単体の物語として最高なものを提供することこそ。


 「オールスターズメモリーズ」みたいに、メインは大胆に最新と初代のみ!というような思い切りの良い判断をしつつ、クライマックスではちゃんと全プリキュアの活躍をかっちり見せる!というような英断が本作も必要だったろう。


 あと、予告の段階でも思ってたし、歴代のオールスターでも思ってたが、わちゃわちゃ大量のキャラを出すと作画が荒れる…。ビジュアルがあんま凄くない…。この点も本作は残念ながら従来通りだったなぁ…。なによりCGが明らかに後退してるような…。「オールスターズメモリーズ」では40%くらいCGだったが、そこが売りになるくらい日本アニメ史上最高峰クラスのやつだった。もしかして、金も技術も先細りしてる…?。どうでもいいが、最後の展開って「エアマスター」と同じじゃね?なんて思ったが、偶然の一致だろうな。


 まぁ、色々指摘しましたが、最初に書いた通り悪い作品じゃないし、来年も新作映画を無事やるみたいだし、めでたいとは思います。ただ、だからといってどんぶり勘定にはできません。悪くないけど及第点くらいかなぁ〜。「オールスターズメモリーズ」を知る前の自分にはもう戻れません…。ちなみに他のプリキュア映画では、スマイルとハピネスチャージなどがオススメです。テレビではキラプリ派です。

投稿 : 2023/09/30
♥ : 3

計測不能 6 2023年夏(7月~9月)アニメランキング6位
アイドルマスター ミリオンライブ! 第2幕(アニメ映画)

2023年9月8日
★★★★★ 4.1 (3)
9人が棚に入れました
バンダイナムコエンターテインメントのメディアミックス作品を原作とするテレビアニメ「アイドルマスター ミリオンライブ!」全12話を、2023年10月の放送開始に先駆けて劇場公開する3部作の第2幕。
自分らしい夢を探す春日未来、子どもの頃からアイドルに憧れてきた最上静香、センスと才能に恵まれた伊吹翼を中心に、芸能事務所「765(ナムコ)プロダクション」に所属する39人のアイドルたちと、その活動拠点である「765プロライブ劇場」の成長を描く。

計測不能 6 2023年夏(7月~9月)アニメランキング6位
カールじいさんのデート(アニメ映画)

2023年8月4日
★★★★☆ 3.4 (1)
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2009年製作「カールじいさんの空飛ぶ家」のスピンオフ短編。
友人の女性と渋々デートに行くことになり緊張気味のカールじいさんと犬のダグの一日を綴る。
ディズニー&ピクサーアニメ「マイ・エレメント」と同時上映。

計測不能 6 2023年夏(7月~9月)アニメランキング6位
忘星のヴァリシア 第一章:劫火(アニメ映画)

2023年7月3日
☆☆☆☆☆ 0.0 (0)
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生命の火が、この星を照らしている
2006年、瀬戸内海に面する四国の海運都市。
 脚の故障で陸上選手の夢を失くした少女、星守明桜(ほしがみあきお)は親友の海添彩希(うみそえあやの)とともに高校に進学。部活や新しい友人たちと出会い、空っぽだった明桜は少しずつかつての自分を取り戻しつつあった。

しかし、ある日彩希が突如姿を消してしまう。 


 この星には、太古より続く戦いがあった。かつて神に与えられた、空の魂を持つ

8体の巨人《星辰機(スターマキナ)》。



『これに乗り、百年に一度現れる《簒奪者》より生命の火を守れ。そして絶やすな』



 その言葉に従い、星辰機に選ばれた乗り手は戦い抜いてきた。


 それから幾星霜。全ての星辰機が斃れてから100年。


 次の100年を繋ぐため建造された人工の巨人《星辰機・デスタニア・レプリカ》の精神燃料として捧げられた彩希の魂に選ばれ、明桜は全ての生命を守る戦いに

巻き込まれていく。


 彩希とともにいるために。彩希へ一歩踏み出すために。そしてもう一度、自分を信じるために。


 運命を奪い奇跡の熱量が爆ぜた時、存在しない9番目の巨人が目覚める。

 其は《ヴァリシア》。冥王の名を冠する白亜の戦士。

――これは、すべての始まり。

​ きっといつか忘れられる、ありふれた星の、私たちの物語だ。
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