「蟲師 続章 特別編「棘のみち」(TVアニメ動画)」

総合得点
67.1
感想・評価
197
棚に入れた
1203
ランキング
2521
★★★★☆ 4.0 (197)
物語
4.0
作画
4.1
声優
3.9
音楽
4.0
キャラ
3.9

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ネタバレ

青陽 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

Mario “Hey,Peach! I’m here to help you.” Peach “Oh! thank you,Mar……Mario?”

この話を観たあとにタイトルのような場面が頭に浮かんだ。

コイン100枚と引き換えに偽りの生命を幾つも身体に植え付け
栗に噛み殺されようとも、ハンマーで殴殺されようとも
踊り狂う炎に焼かれようとも、石塊に押し潰されようとも
その身は朽ちることなく、進み続ける。ひたすらに彼女の元へ向かうため…
家臣の茸たちは慌てふためき嘆くだけの傍観者
殺し殺されの旅路の果て、1人の中年男が姫を助け出したとき
もうそこにかつての陽気な配管工の姿はなかった…



すみません。蟲師好きすぎてどうしてもテンション上がっちゃうんです!
静かな物語だけど、私の感性にどストライクなので
蟲の音がしたり、爺さんが喋ってるだけでとてもワクワクしてしまうのです。
特に今回登場した薬袋家に所縁のある爺さん!
これは重い物語が始まるぞ…!って感じで、すごい良い味出してましたね。
演じられたのは北川米彦さん。
私なんかが生まれるずっとずっと昔から俳優、声優をされている方で
かの有名な青ニプロダクションの創設者のひとりだそうです!!
まさに大御所の中の大御所。
声から伝わってくる迫力が尋常ではない!
いったいどのように歳を重ねたら彼のような渋く力強い声になれるのやら…
いや、初代子泣きじじいを担当してたらしいからシリアスからコミカルまで演技の幅も半端なく広いんだろうなあ…これは星5つですわ

以下はネタバレ注意

{netabare}
今回のキーワード
探幽
禁種の蟲
棘のみち
魂を喰う蟲
薬袋の蟲師
たま
クマド
雰囲気半端ない爺さん
光酒を熱して生成する人工の魂

そして忘れてはならないのが
「棘(おどろ)」その意味は
草木・いばらなどの乱れ茂っていること。また、その場所やそのさま。やぶ。

 今作の場合、乱れ茂っているのは草木だけでなく蟲が乱雑に密集している彼の道のことを指し、また
魂を失っても一族の使命の為に生き続けねばならないクマドの人生を比喩したタイトルでもあるだろう。
いや、彼だけではない。一族の歩んできたみち、これからも歩み続けるみちは果てしなく険しい……


 今までの舞台は雪国だったり、森の中だったり、海辺の漁村だったり
美しく鮮やかな自然が印象的だったが、今回は異質だ。なにせ暗い。ストーリーに比例した暗さだ。
 暗やみに目を凝らしていると、徐々に目が慣れてうっすらと周りが見えてくる。一休さんを含め、経験したことがある人はたくさんいるだろう。
しかし、さらにそれを超えてなお集中して目を凝らし続けていると
だんだん辺りが暗くなって
瞼を閉じているとき以上に暗い視界へ変わっていく。
すぐに意識が分散し明るさが戻ってしまうが、なぜか癖になり
月が出ていない夜 暗い室内で寝る前に何度も試して遊んだ。ちなみに病んではいない。
何度やってもそれは一瞬しか訪れなかったが
本能的な防衛反応だったのかもしれない、と棘のみちを見て思った。
 暗やみは自分も周りの景色も見えなくさせる。それは自他の認識を失い、全てが無に還るような感覚。
故に魂も在るべき場所を見失ってしまうのだろう。


 爺さまの次に印象的だったのは
光酒を熱して沸き立った煙のようなものが鼻の穴から体内に入るシーン。
古代エジプトで、ミイラを作るときに鼻から脳を取り出す図解を思い出した。要するに不気味だった。奇しくも人の復活のための儀式で共通している。どちらもまともな人間として復活できていないのも同じか。


 蟲師を知らない人が見たらTV消えてる?と間違えてもおかしくないくらい
暗く、暗く、暗い画面に
音の無い静かな映像が続いた後に
何かを失い何かが入ったクマドが見たのは
多彩な色、光、音を発する蟲の
棘のみちの
世界の本当の姿だった……。
しかし彼はそれを美しいとも怖いとも思えなかっただろう。美しいと思う感覚が抜けるのだけは嫌だな、もし自分だったら耐えられない。いや、耐えられないとすら感じないのか…

サネクイムシ、魂を喰う蟲
かつてクマドが
闇が蠢いた…?と感じたのも実はサネクイムシだったのか。
棘のみちの奥に潜む蟲は集団で蟲・人関係なく魂を喰い尽くしてしまうとは。まるでピラニアか軍隊蟻みたいだ。
奥に近づいていき「…何かデカいのがいる」とギンコが言ったとき
あれはRPGで魔王の間へ続く扉を前にしたときの感覚に似ていました。
魔王の腕のようなサネクイムシが迫ってくる姿はぞっとしましたよ。
 それでも意識が揺らいだときにギンコが見た記憶は
夜を一人でさまよっている時のもの。ヌイが消えた後の、ヌイとの日々が消えた後のもの。やはり、あのくらやみはサネクイムシとは違う存在なんだろうな

クマドの中の蟲と闇が戦うシーンはギンコのように圧倒されっぱなしだった!あの後あいつはどこへ行くのだろう?



  辛い宿命を背負う二人
どこにも行けない淡幽と
どこに行っても何も感じられないクマド
余談だが、回想で
山の頂から見る景色は綺麗だろうなあって感想をクマドにバッサリ切られたときの淡幽の表情がすごい可愛かった!子役の演技も素晴らしかった。
丘の向こう、二人で見た夜明け。綺麗だと感動する淡幽に間をおいて同意するクマド。ただ会話を合わせただけなのか、それとも……

 棘のみちから生還したクマドに再会して、また変わってしまっているのに気づいたときの淡幽の表情はもう……悲しそう、とかそんな簡単な言葉では表せられない複雑なものだった。昔馴染みなだけに何度も何度もそういう経験をしてきたのだろう。これは一週間フレンズ。より辛いなあ
ってあれ、もしかしてギンコよりお似合い……?

全編を通して暗さがあったが、それでも最後はギンコと淡幽の掛け合いのおかげで明るく終われたのではないか。あの二人の会話を見れたのは本当に久しぶりで、それだけでも見て良かったと思える。
 ラスト。お茶の味についてギンコが言った
「好みの問題だよ」
味覚や感性なんて人それぞれ。
別に…と答えたクマドも救われた気がした。本人はそんな感覚無いだろうけど

{/netabare}

投稿 : 2014/09/05
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サンキュー:

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