「フルーツバスケット [スタジオディーン版](TVアニメ動画)」

総合得点
82.7
感想・評価
882
棚に入れた
4958
ランキング
350
★★★★☆ 3.9 (882)
物語
4.1
作画
3.5
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

少女漫画の世界にようこそ。

アニメーション制作:スタジオディーン
2001年7月5日 - 12月27日に放映された全26話のTVアニメ。

原作は、『花とゆめ』に連載されていた高屋奈月によるベストセラー少女漫画。
この作品の登場人物の子供の世代の物語『フルーツバスケット another』がweb連載中です。

【概要/あらすじ】

本田透。16歳。海原高校に通う高校一年生。
過剰にまでに礼儀正しくて笑顔が明るくお人好しなのですが、鈍くさくて天然ボケっぽい女の子。

3歳の時に父親・勝也が病死し、アパートでずっと母子家庭で育ってきたのですが、
一生懸命働いて女手一つで育ててくれたパワフルな母親・今日子を物語が始まる4ヶ月前の5月に交通事故で亡くし、
透は年金暮らしをしている父方の祖父に引き取られて二人で暮らしていました。

そして最近になって、祖父の家で亡き父の妹と子ども二人が同居することになり、
ついでに家の改築をすることになりましたので、
工事中は友達の家に泊めてもらうように言われたのですが、
学校でたった二人の親友の魚ちゃんと花ちゃんの家庭に迷惑をかけられないと、
透はテントで一人で寝泊まりをして高校に通うという生活を始めてから一週間。

ある日、登校中に山中にて一軒家を見つけて家主である草摩紫呉という27歳の青年と出会います。
透がテントを設置していた小山は実は草摩家が所有する土地でした。
透は更に家の住人である草摩由希と遭遇し、これをきっかけに仲良くなります。
由希は透のクラスメイトであり、学校中の殆どの女子が熱狂的に恋焦がれている眉目秀麗なイケメン王子です。

その日の夜、崖崩れで透が住んでいたテントが母親の遺影もろとも地中に埋まってしまいます。
ショックと熱で倒れた透が目を覚ますと布団に寝かされており、由希が掘り出した遺影が透に返ってきます。

そして、祖父の家の改築が終わるまでの間は紫呉の家で同居することを由希から提案されます。
透は若い女の子ですから、イケメン二人、とりわけ学校の王子である由希と同居だなんて恐れ多いと思いながらも、
なし崩し的に由希の厚意を受けてしまいます。
無償ではなく、家賃代わりに家事全般と炊事を受け持つという条件を紫呉から提示されましたが。

二人?いえ、三人目の草摩のイケメンの草摩夾が透に充てがわれた部屋の天井をぶち破って登場。
夾は口よりも拳が先に出るタイプのやんちゃ坊主な感じです。
性格が正反対である夾と由希は険悪な関係。
修羅場を止めようとした透はつまずいてしまい、抱きつかれた夾は猫の姿になってしまいます。
由希はネズミ、紫呉は犬。続くアクシデントで残る二人も動物の姿に。

『宴会を始めましょう』

『みんなと楽しくいつまでも』

草摩の人間の十二人は十二支の物の怪に取り憑かれていて、
異性と抱き合うと変身してしまうという呪いのために一生を縛られてしまい、
身内を始めとした人間関係に暗い影を落としています。
ちなみに、草摩一族とは伝統と格式のある物凄い資産家で、
現在の当主は、十二支の上に位置する“神”として生まれていて、
呪いの中心に位置して十二支を縛っています。

十二支の彼らが透と心を通わせる事によって傷つき凍てついた心に温かな光を灯していく様子を描いた、
また、透とイケメンたちの同居生活のなかで恋愛を育んでいくという物語です。

【感想】

『花とゆめ』の看板作品であり、世界で最も売れた少女漫画と言われる私にとっても想い出深い作品ですね。
1850万部を超えてギネス登録されているらしいです。

地味な女の子・透を巡って草摩のイケメン二人が張り合う、更にイケメンキャラいっぱいで逆ハーレムっぽい作り。
“元ヤンキー”魚谷ありさと“電波女”花島咲という透の親友二人や、
複数の草摩の少女(特に12歳の中学生・杞紗さんが可愛いです)
といった女性キャラもいますので美少女成分もありますが。

読者は女性がほとんどですが、女性読者は夾と由希に萌えるのと同じように、男性読者は透くんに萌えるということで、
とっかかりやすい作品だったと思います。
透くんの十二支に向けられた“癒やしの言葉”で読者の心も満たされていくというのが作品の基本ですね。

アニメの透くんの声優はアニメオタクに大人気の堀江由衣でしたので、尚更男性層向け要素もありましたかも。

原作少女漫画のスタイルとして微細に伏線を張って回収という形でして、
あのときの台詞と行動が後の伏線になっていたりと芸が細かったりしています。

とりわけメインキャラの上位三人の透・夾・由希の描写が凄く丁寧でして少年漫画では真似出来ないレベルですね。
シリアスになればなるほど重くなりがちな空気を暖かな癒やしオーラとヲタっぽいギャグで緩和していましたね。

この作品がヒットしたのは、
北風(子供を傷つける心無い大人)と太陽(十二支からは聖女である本田透による癒やし)を使い分けていて、
それが作品のメイン読者層である中高生女子のメンタルにカッチリとフィットしたからに違いないですね。
多くは親が精神的に脆くて悪役だったりで子供を迫害して、それを“女神様”である透くんが癒やしていくというのは、
成人、とりわけ子を持つ親の目線で見たら当然のごとくツッコミどころ満載なストーリーだとは思いますけどね。
物語の都合上、社会通念上ありえない不可解な部分がいろいろありますよね。(改築の間、叔母が透を預からないとか)
透くんを無垢な善人に仕立て上げるために、彼女をうとんだり嫌っている人間がクズ扱いなのも気になりますね。
(原作で透くんの内面を知ると本当は彼女なりに苦しさや悲しみを背負っていて、
 それでも笑顔で明るく強く生きていこうという気持ちが見えてくるのですが)

フルバに登場する親は子供を全力で受け入れてニコニコしてる親バカか、
子供を正視できずに拒絶するか憎んでいるクズ親かの二択ですから、
なんと極端なのでしょうか?
原作者の高屋奈月の頭の中の家族論を、とことん追究したくなったりして?
未成年女子に受けの良い流行歌の歌詞に通じる価値観ではあると私は思います。

親子関係の歪み以外にも同級生や親族によるイジメやイヤガラセ(悪気があってもなくても傷つけたり)
が普通に存在する温くない世界ですので、世にいう癒し系日常アニメとは毛色が違いますね。
これこそ、少女漫画の醍醐味ですが。

『フルーツバスケット』とは極論すれば、
作家である高屋奈月によるメンヘラ要素の入り混じったポエムであり文芸作品ですね。

『考えるな!感じろ!!』

理屈ではなく、作中の純粋な心を持った美形の少年少女らの恋愛や傷の舐め合いに、
読者が酔って感動するタイプの作品であって、
心の汚れた大人によるあら捜しは野暮なのかもしれませんね。
実際にベストセラーですし、読者の心に作用する力が大きい少女漫画ですしね。
原作の絵柄の劣化は悲しかったですが。

さて、アニメ版についてですが、
岡崎律子さんの唄うOP『Forフルーツバスケット』とED『小さな祈り』
更には挿入歌の『セレナーデ』の優しくも切なく美しいメロディと歌詞が、
これ以上無いほど作品世界に調和していましたね。

作画もシナリオも質が保たれているアニメなのですが、
アニメ版の監督である大地丙太郎が以前に手掛けた『こどものおもちゃ』のバビットに類似した、
大地監督作品特有のコメディ演出が原作の雰囲気にそぐわないような気がしました。

このアニメの良くないところは、原作が全23巻なのですがアニメ化が早すぎたせいで8巻半ばまでしか話が進んでなくて、
6巻の大事件をベースにアニメ独自の要素を加えた最終回を迎えたっきり、続きをアニメ化しなかったことですね。
更に後に続く伏線もカット!カット! 透くんの担任の白木繭子先生なんか、
複数の登場人物とは旧知の間柄で展開に絡んでくるのに存在自体が抹消されて、
不可思議にもジャージ姿の男性教師にアニメでは差し替えられています。

アニメ終了後の原作での展開では、草摩依鈴や新生徒会メンバーなどの新キャラが続々と登場したり、
恋愛関係に急激な変化が訪れたり、メインキャラの人格掘り下げ、
草摩家の核心とドロドロ劇、透くんの本当の気持ちetc.

フルバの本質的な部分が目白押しであり、これらを映像化してないという点で、
原作初期しか扱っていないアニメ版は感動癒し系コメディどまりに過ぎず、
本当はほんわかとしていないフルーツバスケットという作品を十分に表現しているとは言い難いですね。
アニメ終盤の24話~最終話でやっと作品の闇の部分に触れただけですし。
(アニオリシーンで原作と紫呉の性格が違っていたりとかツッコミどころも終盤にはありますが)

このアニメは原作との違いを無視すれば出来自体は良いのですが、
視聴者層を開拓して『花とゆめ』と原作単行本の売上向上に貢献した、
プロモーション映像作品に上記の理由でとどまっていて、

原作漫画をアニメという媒体で十二分に表現するには、
最終話後半のアニメオリジナル展開を無かったことにして続きをアニメ化するか、
省かれた繭子先生ありで最初から完全リメイクしないといけなく、
惜しい、非常に勿体無い作品というのがアニメ版に対する正直な評価でした。
(仮にリメイクしてもOP/EDは据え置きが望ましいですね。)


グダグダしてしまいましたが、これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

【余談】

『花とゆめ』誌上のフルバ人気投票にて、夾くんがオール1位を達成したのですが、
中性的な顔だちでアニメでは女性声の由希より雄っぽさが強い夾のほうが人気があったのは、
読者が女性ですから必然ですね。
夾の不器用でツンデレでヒロインの透にだけ優しいという性格も、
少女漫画キャラの王道なのですが、そこが重要な萌えポイントには違いありません。
由希透でカプリングしても女の子二人が並んでいるようにしか見えず、カプリング妄想で夾透のほうが捗るでしょうし。
男性がボーイッシュな少女キャラよりも女の子らしいキャラを二次元に求めるのと一緒です!
由希が読者人気で夾に対抗するには久川綾の演技がいくら似合っていようとも、
由希役は男性声優の方が良かったかもです?

投稿 : 2019/04/21
閲覧 : 943
サンキュー:

77

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