「銀河英雄伝説 わが征くは星の大海(アニメ映画)」

総合得点
70.9
感想・評価
133
棚に入れた
600
ランキング
1412
★★★★☆ 4.0 (133)
物語
4.0
作画
3.8
声優
4.1
音楽
4.0
キャラ
4.1

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 1.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

原作と違うシナリオ。

アニメーション制作:キティフィルム
1988年2月に公開されたアニメ映画。


銀河帝国と自由惑星同盟の戦争を描いたベストセラー小説、銀河英雄伝説。
その記念すべきアニメ化第1作目。

原作小説第1巻とOVAでは最初の戦闘になるアスターテ会戦は宇宙暦796年/帝国暦487年2月。
この作品での日付は5ヶ月遡って、宇宙暦795年/帝国暦486年9月4日。

原作小説で言う外伝1巻の、

第8章 惑星レグニツァ
第9章 わが征くは星の大海

の映像化作品です。

銀河英雄伝説では定番である、マーラー交響曲第3番第1楽章から始まり、
ドイツ語の筆記体による長文が延々とスクロールして行きます。
そして、屋良有作さんによるナレーション。

戦闘シーンでは勇壮なクラシック音楽が流れて終盤にはボレロ。
作画では劇場版にふさわしくOVAより数段上で、
映像作品としては素晴らしい銀河英雄伝説に見えました。

でも、私はこのアニメに強い違和感。
登場人物の性格や口調が私が知ってる銀英伝とは違うのです。

注意…ここからはかなり愚痴が多くなります。
    この映画を好きな人は回れ右をしたほうが賢明です。

帝国のラインハルト・フォン・ミューゼルと同盟のヤン・ウェンリー。
主役であるこの2人は原作小説でも比類なき軍事の能力を持った英雄でありますが、
原作のこの部分ではそれほど悪く描かれていない同盟軍と帝国軍がまるごと、
彼らの引き立て役として人格的にも能力的にも貶められてるような印象を受けたのですね。

帝国軍宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥なんか、
門閥貴族のフレーゲル男爵と結託して悪代官みたいな雰囲気になっていますし。

そこはまだ目を瞑るとして、問題だと思ったのは、
ラインハルトが尉官たちにスカートの中の大将と品のない笑い方で陰口を叩かれるシーンがあって、
あれ?軍隊って階級が絶対的なものじゃありませんでしたっけ?
尉官程度がゴシップネタに絡めて雲の上の地位にある大将をあざ笑うとか銀英伝ってそんな話でしたっけ?
そもそも銀河帝国って身分が絶対的な社会だったはず。
こいつら皇帝陛下を皇帝様とか変な呼び方してるし、
皇帝陛下の寵姫でラインハルトの姉であるアンネローゼに対して散々下品な侮辱を口走ってるし。
私が知ってる銀河英雄伝説って、もっと品のあるお話でしたよね?

フレーゲル男爵などの門閥貴族が成り上がり者のラインハルトを嫌い悪口を言うのなら原作通りですから、
問題無いのですけどね。

そもそも、ラインハルトが自分の部下の名前と顔を全員覚えてるとか妙な設定をオリジナルで作りだしたりして、
ラインハルトは野心家ですが良い人なんですよーな描写に違和感。
後に権力を握ってから貴族の特権を廃止して民衆寄りに社会を改革していったラインハルトですが、
姉と赤毛の親友さえいれば他には誰も必要としないのがラインハルトの本質でしょうに。
社会を変えようという意志も下々の者を大切にしてるからじゃなくて、
自分から姉を奪ったゴールデンバウム王朝の因習や制度を破壊して真っ当な政治をすることこそが、
復讐になるからに違いありませんしね。

同盟もねー、なんかいろいろと酷い。
ヤンの上司にパエッタ中将という提督がいるのですね。

艦隊指揮能力は自分の知識と経験の及ぶところでは熟練の域に達していて、
人格も融通のきかないところもあるのですが、
ヤンの忠誠心を刺激する部分も存在するといったふうに、
原作の文章を鑑みるにそれなりの器量を持った人物という描かれ方なのですよね。

それをこの映画では、
人格面では尽くヤンの助言に怒り狂い怒鳴り散らす狭量さ、
戦艦で敵に体当りして道連れで死ねといわんばかりの無茶な命令、
ヤンの警告に逆らいラインハルトの天才的な用兵と奇策の前に為す術も無く艦隊の8割を失い呆然とする無能、
会戦が終わって最後に愛想笑いを浮かべてヤンに媚びへつらっては振られる無様で情けない姿、

なんですか?これは?
まるでパエッタに恨みであるの?ってぐらい凄まじい改悪です。
原作を正史とすると、このアニメはこの作品世界の後世の人間が作った映画かドラマなのでしょうか?

そもそも、この「第4次ティアマト会戦」で原作では全く活躍してないヤンを映画では無理やり大活躍させたり、
なにからなにまで違いすぎるのです。

原作では同盟軍はラインハルトに散々傷めつけられながらもウランフ・ボロディンの両中将の奮闘で、
帝国軍の損害も小さくなく痛み分けに近い結果に終わった。

この映画ではヤンが実行した無人艦だらけの囮作戦で、
ラインハルトの乗っている戦艦を人質にとり帝国軍の攻撃の手を止めて会戦を終わらせた。

みたいに全くの別物。映画ではウランフもボロディンも1秒も登場しません。

まあ、原作には無い今回のヤンの過剰な持ち上げについては脚本家以外の意志の介在もありえますけどね。

とにかく、原作やOVAから浮かび上がる銀河英雄伝説のイメージと、
この映画の脚本を書いた人の頭のなかにある銀河英雄伝説は全くの別物なのですよね。

それもそのはず。脚本家(故人)のコラムを読んだら、
原作を下敷きにオリジナル路線で行きたかったようでして、
結局は原作通りにやりたいプロデューサーの人との話し合いでOVAの脚本を最初の数話だけ書いて、
銀河英雄伝説から降板することになったのですよね。

やっぱり、原作付きの作品は、
原作を知ってる人からは違和感を覚えないようにアニメを作らないと行けない!
そういうものだと思いました。


感想というか憤りに近い文章になってしまいましたが、これにて終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2016/03/11
閲覧 : 403
サンキュー:

33

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