「山賊の娘ローニャ(TVアニメ動画)」

総合得点
58.4
感想・評価
116
棚に入れた
494
ランキング
6444
★★★★☆ 3.3 (116)
物語
3.4
作画
3.3
声優
3.3
音楽
3.3
キャラ
3.3

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

宮崎吾朗監督(ジブリ外の)デビュー作。スウェーデンの児童文学原作のCGアニメ

宮崎駿監督の御子息、宮崎吾朗監督のジブリ以外でのデビュー作です。
原作はスウェーデンの作家アストリッド・リンドグレーンの児童文学です。
NHKアニメ。全26話。
中世ヨーロッパ風の世界(鳥女等の怪物存在するので多分童話ファンタジー)を舞台に、山賊の頭の娘ローニャが、元気一杯に森を駆け回ったり、ライバル山賊の頭の息子ビルクとラブコメの波動を感じさせたりするお話。

キャラ作画がフルCGなのが大きな特徴です。
慣れないと異和感ありますが、作画は綺麗です。
ストーリーはスロースターターで序盤~9話くらいまで退屈かも。
全般に良く言えば丁寧、悪く言えばテンポは極めて悪いので、刺激を求める人には決定的に不向き。
通して観れば、名作児童文学らしい面白さや優れたメッセージを感じさせてくれる良作です。
子供に視聴させてあげたい、NHKらしい教育的アニメ。
…あと、意外に「ラブコメの波動を感じる」♪


{netabare}『物語』
昨今の分かり易くテンポ重視の脚本とは根本的に異なり、西洋の児童文学を丁寧かつゆったりと尺を使って描いていく感じ。
主人公のローニャが山賊達から愛されながら天真爛漫、元気一杯に育っていく過程が(ちょっとくどい位に)丁寧に描かれる。
この序盤の展開も結構和むので私は嫌いじゃないのですが…
流石に30分アニメで10話近くまで延々とやられたら…飽きますよねぇ。
特に序盤の3話くらいまで、ひたすらホームビデオ見せられている感じ。
最後まで視聴すると、終盤のカタルシスは序盤の丁寧さが活きている事は分かるのですけど、現代の飽きっぽい視聴者向けには、もう少し序盤のテンポ上げても良かったような。

西洋の中世で、森には鳥女や灰色小人などの異形の存在も沢山いる、童話的な世界観が魅力的。
森は危険もいっぱい、けれど、とても美しくて楽しい一面も見せてくれる。
序盤のスロースターターも、本作の世界観を丁寧に描き出されていたので、私的には悪くは無いと思いました。

10話辺りでライバル山賊の頭の息子ビルクと「きょうだいの絆」結ぶ辺りからが面白くなっていきます。
その前にビルクと出逢い、最初は「やな奴!やな奴!やな奴!」な感じでしたが、段々仲良くなっていくのが微笑ましい。
本作はローニャとビルクのラブコメの波動が一番の見所でした♪
二つの山賊団はライバル関係なので、必然的にローニャとビルクは「ロミオとジュリエット」状態…
それでも無邪気に友好を深めていくのですが。

ローニャの父マッティス率いる山賊団が、ビルクに酷い事した事案をきっかけに、急展開。
…こ、子供向けアニメだよな!?これ子供が観たらトラウマになりそうな暴行なんだが!?
無邪気で牧歌的なアニメかと思いきや、まさかの危険な展開にビックリです。
ローニャの強さと決意、親子関係の危機…

かなりハラハラさせる展開の後、ビルクと共に洞窟で家出生活する事に。
ここから二人の新婚生活が終始ラブコメの波動を感じる!
サバイバルしていく様子も興味深いです。
(NHKアニメだと、無人惑星サヴァイヴっぽいワクワク感)
森で野馬(ニコ動ではクロスアンジュネタでノーマと呼ばれてたw)と追いかけっこしたり、鳥女に狙われて滝壺に落ちそうな恐怖味わったり、楽しい事と怖い事一杯で波乱万丈。
ローニャが大切なナイフ失くしそうになって夫婦ゲンカ→仲直りイベントが割と重要なお話でした。
…楽しい日々。
けれど、次第に冬の足音が迫って来る。
二人に冬を越すすべは無く、冬まで留まれば…命の終わりを意味している。
ロミオとジュリエット状態の二人が、徐々に追い詰められていく展開はジリジリとした焦燥感感じました。

終盤。
なんやかんやで親子和解→両山賊の頭同士で決闘→仲直りして大団円。
ここら辺、グダグタと理屈言わずに、勢いで分かりあえてしまうのが良い。
途中でマッティスが酷く落ち込んでたりする伏線もありますし。
最後はローニャとビルクが一族公認でめでたしめでたし♪
スカッレ・ペールじいさんは寂しいが…
それでも大切なメッセージを残してくれました。

本作の持ち味は「あまり説教くさく無い」点だと思ったです。
本作は別に山賊(略奪)が悪だと断じているワケではない。
ローニャ含む山賊達は、ビックリする位に「謝罪や反省をしない」
ローニャがごめんなさいしたシーン殆ど無いような…
普通なら山賊は悪!とかケンカは悪!で反省しようとなりますが…
作中、決して直接的に悔い改めたシーンが無い。
けれど、ローニャとビルクの仲良しっぷりと、大人達の醜い争いを対比させる事で、言下に「争うより仲良く、奪うより自然の恵み」の方が楽しい♪
と思わせてくれます。
ロビス母さんやスカッレ・ペールじいさんの、控え目だが度々示してきた言葉が、しっかりと伏線になってました。
ある意味分かり難いが、ある意味、とても素直で分かり易いメッセージを感じました。

総じて
非常に丁寧に原作児童文学を再現した
ロミオとジュリエットのラブコメの波動を感じる!
最後まで視聴すれば、安っぽい倫理や正義を超えた、大事なメッセージ伝わる。
…素晴らしい良作なのですが、エンタテイメントとして見ると、序盤のスローテンポが難なのは否めない。
多分序盤でかなり多くの視聴者が脱落している模様なのは残念。
ここら辺は多少構成を工夫して欲しかった気もします。
(物語評価は4.5点級の名作だと思いましたが、若干減点しました)
とはいえ、元々この手のアニメは、じっくりかつ呑気に視聴するタイプ。
こういう良作を、ゆとりを持って楽しむ人が増えれば良いなぁと思います。


『作画』
キャラクターがフルCGなのが特徴なのですが、残念ながら異和感が大きいです。
キャラ作画のCGでは「蒼き鋼のアルペシオ」「シドニアの騎士」等にかなり見劣りします。
表情が固い、若干不気味の谷に掛かってしまった感。
とはいえ、慣れてくれば、問題無く楽しめましたが…
実験的な試みは素晴らしいが、CGならではの利点が少なかった。
…あと、子供がガチでボコられたシーンがかなり生々しい。
子供視聴者にはキツイかも?

背景作画は手描きで、かなり美しいです。
まるで上質な絵本や童話の世界に入り込んだかのよう。
背景作画は素晴らしい…と言いたいところですが。
些か陰影が乏しい気も。
絵画的な美しさはありますが、アニメーションとしては些か硬質な印象。
近い時期には蟲師続章やヤマノススメ2期など、本作より背景に魅力感じる良作少なく無い。
ちょっとイジワルな視点ですが、背景作画も「抜きん出て優れている」とまではいかないと見ております。

…いやまあ、色々と難癖は付けましたが。
欧州の童話的世界観を魅力的に表現した作画は、十分良かったです。
慣れればローニャも可愛いし♪


『声優』
主人公ローニャを演じたのは白石晴香さん。
戦国コレクションの大谷吉継を演じた若手声優さんの模様です。
ローニャの、通常のアニメヒロインには居ないタイプの元気さ(というより野蛮さ)を存分に発揮した熱演でした。
特に叫び声は素晴らしい♪
宇山玲加さんは本作のビルクが初主演の模様。
ビルクの飄々としたイケメンっぷりを如何なく発揮した好演でした。

全般に俳優業中心のベテラン陣多かった模様。
本作自体がまるで原文を直訳したかのような独特の言い回し多くて、普通のアニメらしくない喋り方多かった。
ビルクはちょっと芝居掛かった感じが気になるが、まあ本作の持ち味ですかね。
声優陣は優秀な仕事されていたのですが、通常アニメ基準だと若干異和感ある点を考慮。

『音楽』
吾朗監督本人が作詞したOP「春のさけび」が中々良OP。
EDも良い余韻残します。
BGMや、自然の音響も中々美しい。

『キャラ』
ロビス母さんとスカッレ・ペールじいさんとビルク以外は、ほぼ全員脳筋でしたw
引かぬ!媚びぬ!省みぬ!
特に父マッティス、あんたが一番子供かw
愉快な一方で、平然と略奪したり、子供をボコボコにして大笑いしたりと、悪党っぷりも。
この点本作は別に勧善懲悪では無いので、陽気さも粗暴さも素直に描いている印象。
本作は短絡的に善悪度外視して、とっても人間的な明るさに満ちている。

ローニャは普通のアニメヒロインにはまず居ないタイプ、そのアグレッシブさに終始驚かされました。
滅多に謝罪や反省はしないけど、心優しく聡明な少女でした。
そして旦那ポジのビルクがイケメン過ぎる!
なんという人間力!ニコ動では「流石ビルク!」「さすビル」と称賛されてましたw
芝居掛かった哲学じみたセリフや詩的な表現もステキ。
何気に2014年度でも指折りのイケメンですよビルクさん!
ローニャとビルクのラブコメの波動がスバラシイ♪

キャラ層はそんなに厚くは無いのですが、一人一人が本当に飾らずに魅力的に描かれました。
あと、鳥女や灰色小人たちも、不気味&可愛かった。{/netabare}

投稿 : 2015/03/30
閲覧 : 353
サンキュー:

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