「To Heart [トゥーハート](TVアニメ動画)」

総合得点
67.3
感想・評価
181
棚に入れた
1036
ランキング
2443
★★★★☆ 3.6 (181)
物語
3.5
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

丁寧に描かれた青春を感じる物語。

1999年放送。当時に産まれた子が高校を卒業しているとは月日の流れを感じますね。

アニメーション制作:オー・エル・エム
監督:高橋ナオヒト シリーズ構成:山口宏 キャラクターデザイン:千羽由利子
シナリオ監修:高橋龍也 キャラクター原案・監修:水無月徹

keyのkanonと並んで当時の18歳以上を対象としたゲーム界に新たな旋風を起こしたleafのヒット作。
今は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』でシリーズ構成を担当し、
『きんいろモザイク』などでアニメ脚本家として活躍中の高橋龍也さんの代表作であり、
とある学園を舞台にした、学生の日常を送りながらヒロインと恋愛をするのが目的のビジュアルノベルが原作です。

ゲームではメインヒロイン格の神岸あかり(高校二年生)が本作では主人公。
とても家庭的で優しい女の子です。声優の川澄綾子さんの声が、とてつもなく似合っていますね。
原作では最初はお下げ髪でイメチェンで髪型を変えるのですが、アニメでは最初から後期バージョンになっていますね。
柊つかさ(らきすた)のデザインの元ネタとして知ってる人も結構いますかと!

1話目の冒頭…あかりの回想シーンから始まります。
雨の幼き日、小学一年生の記憶から始まる物語。
そう、それは…幼稚園のときからの付き合いの幼馴染の“浩之ちゃん”藤田浩之をあかりが好きになった瞬間。

浩之ちゃんはゲームのプレイヤーであり主人公。
普段は、ぶっきらぼうで気だるそうにしているやる気のない男。
本当に面倒くさがりだけど、一旦やる気にスイッチが入ったら凄まじい実力を発揮します。
言葉にはあまり出しませんが人を思いやる気持ちが強く、
いざというとき困った人に手を貸してくれる、やるときはやるカッコイイ男。

ふたりは、いつも一緒にいるのが当たり前。
ずっとずっと昔からそれは同じで、一緒に過ごした10年以上の歳月は、あかりの想いを育むに十分すぎて。

冒頭シーンが終わり、中司雅美さんの歌うオープニングテーマ「Feeling Heart」がスタート。
プレステ版でも使われていたこのOP動画のキャラ原画は千羽由利子さんが担当らしいです。
ノスタルジックな良い歌ですね。サビの部分で学校の背景のみが移り変わるところなんか青春を感じさせます。

浩之とあかりは毎日いっしょに、たわいない会話をしながら登校しているのですが、
まだ恋人関係でもないですが、熟年夫婦のように傍にいるのが当たり前な関係で見ていて、すっごくニヤニヤできます。

学校に着き始業式、体育館に全校生徒が集まり校長のスピーチの最中、あかりのモノローグが良いのですよね。
ホームルーム・席替えで一騒動、帰りに幼馴染の佐藤雅史、中学からの友達の長岡志保と4人でカラオケ。
ただそれだけの平凡な日常で1話目が終了ですが、作画も芝居も音楽もびっくりするほど丁寧。
この作品にはエロゲ原作アニメにありがちな、ラッキースケベ的なイベントが全く無く、
媚び・エロ・あざとさとは一切無縁で健全そのものな青春映画を見ているような気分でした。

千羽由利子さんによってデザインがアレンジされたキャラが良いですよね。
可愛さと大人びた感じがいい具合にバランスが取れています。

ギャルゲーが原作なので当然、色んな女の子が出てきます。(男もいますが!)

一見、ただの賑やかしの騒がしいだけの女に見える・長岡志保。
浩之ちゃんとはよく口喧嘩してる性別を超えた悪友って感じ。
でも、志保はそれだけじゃなくて、彼女にも彼女の人生・人格が感じられるお話があってイイ女・イイ友だちなのです。

浩之、あかりとは幼馴染トリオでサッカー部のエース。笑顔が可愛い美少年・佐藤雅史。
彼は本当に性格が良いイケメンで、担当の声優が由来で「きれいな保志」とも呼ばれていたような。

浩之、あかり、志保、雅史は四人一緒の仲良しグループです。友達って良いですね!

他に出てくるヒロインたち。

ちょこっと無愛想な感じの神戸生まれの眼鏡っこ委員長・保科智子。
実は私、この委員長の怒気をはらんだ呆れたような声が好物だったりしています。
委員長大好き!

無口で無表情で黒魔術にハマっている黒髪お嬢様・来栖川芹香先輩。
ルックスが素晴らしくて、この人も人気が高かったですね。
声が小さくてヘッドホンつけないと聞き取りにくいので有名?

日本文化が大好きなハーフの金髪少女・宮内レミィ。弓道部所属。
アニメでは本当に脇役扱いでメイン回がなくて可哀想でした。
ゲームのシナリオを絡めるとヒロインにしないといけないから?

一年後輩で爽やかでひたむきな格闘技少女・松原葵。
これもまた後輩で、寂しげな瞳をした超能力少女・姫川琴音。
弟の面倒を見てる一生懸命な勤労少女・雛山理緒。

ゲームのキャラひとりひとりがちゃんと人格を持ってる感じでです。

おっと、忘れちゃいけませんね。
純真無垢なドジっ子メイドロボ・HMX-12マルチ。
人に作られし物でありながら、生き物の心を学習しようとする姿。
いつも一生懸命でドジっぷりと健気さに人気ナンバーワンヒロインの座を不動とし、
アニメでの登場は遅かったものの、前後編2話を使ってゲーム版のシナリオをほぼやりきるなど、
真打ち登場で優遇された感じでした。やはり、メイドロボはこうでなくちゃ!と思えるお話でしたね。

でもやっぱり一番良いのは、ゲームでは主人公の浩之ちゃんでしょう。
普段は「だるい」「めんどくさい」しか言わないような彼ですが、
気取らず飾らず、それでやるべきことを当たり前のように自然にさりげなくやる感じで男らしくてカッコイイのですよね。
5話目の「青い空の下で」は、浩之ちゃんの真骨頂発揮でオススメエピソードのひとつでもあります。

構成としては、あかりをアニメの主人公にして、あかりの視点から物語を作っているのが特に好印象です。
それによって、ゲームの主人公がスーパーマンで便利屋でハーレム男で,
主人公○○最高!俺TUEEEEな自画自賛話になるのを抑えていますね。
周りを助けるカッコイイ彼を見守ったり、一緒に手伝ったりするヒロインという風になっていて、
ちょっと少女漫画っぽい作りになっていたと思います。

まあ、浩之ちゃんの行くところ高い確率であかりも同行していますので、
他のヒロインのフラグ成立を阻止していると言えますが!

原作の性質上、当然のように恋愛要素もあります。
でもハーレムアニメにならないように工夫していたとも思います。

あと、このアニメを観ていて気づいたのですが、学校の日常感を丁寧に描いていますね。
各クラスの週番が集まっての委員会活動。掃除当番による全校の清掃が、しょっちゅう繰り返される。
きちんと生徒を見守ってくれる良い先生がいる。校長先生が生徒のこれからの人生・進路について訓示をしてくれる。
ブラスバンド部の練習の演奏、体育会系の部活のランニング・全体練習の掛け声、ホイッスルの音。
アンドロイドや超能力者が出てくる原作ゲームのアニメ化作品ですが、
日常風景をリアル寄りにして、なおかつファンタジー要素を融合させていた感じですね。

言っては悪いですがTH2のOVAが、水着だのパンチラだのを押し出したオチャラケ過ぎた凡百なハーレムアニメで、
あっちには存在しないリアルな空気が、こちらでは徹底して何重にも描かれているので尚更比較してしまいました。

作品の傾向として非常におとなしい作りの学園ドラマですので、
人によってはそれほど面白くないかもしれませんが、
今どきのアニメと比較しても上位に入る内容ではないか?と感じました。

最後まで見終わりましたが、途中あまり面白くなさそうな話が少しばかり存在した感じで、
それ故に退屈扱いする人がいても仕方ないかもしれません。
それでも、良質のエピソードが多くて打率8割ぐらいあったかな?というのが個人的な感想です。
なかでも8話目の「おだやかな時刻」は素晴らしかったです。
{netabare}浩之とあかりの二人っきりで試験勉強をするお話です。
アニメならハプニングが起きてサービスシーンてんこ盛りでドッキリ頬を赤らめたりするのが通例な状況ですが、
このアニメでは本当に普通に粛々と数学や世界史の勉強をしてるww
一緒にいるのが当たり前すぎて今更おかしな空気になりようがない。2人はそんな関係なのですね。
途中、2人であかりのアルバムを観て思い出を振り返るシーンがあります。
幼稚園のころから高2の現在にまでいたる写真の数々。そこに写る、あかり・浩之ちゃん(+雅史・志保)
皆一人一人が自分の人生を生きている人間であり、
アニメの中で語られているエピソードはその中の本当に極一部なんだって思えてきて、じんわりと来ましたね。
12話目で志保が中学の思い出を語るシーンがありましたが、そっちも人生の歴史が感じられて良かったですね。
他にも11話目!こっちは、ほぼ原作通りなのですがPSE版をプレイした時のことを思い出して感動出来ました。
この回にしか登場しませんが、マルチの開発者である長瀬さんとの会話も良かったですね!
あと、最終エピソードで志保の女心がクローズアップされていて、
すっごく良い表情をしてて青春なお話でしたね。(あかりがちょっと怖かったけどw){/netabare}

他にこの作品で特に印象に残ったのは小林七郎さんによる背景美術ですね。
手書きの柔らかいタッチの校舎を是非色んな人に観てほしいと思いました。

このアニメも一つだけ欠点がありまして、あかりを演じる川澄綾子さんによるED「Yell」
下手すぎて苦笑するレベルでした。これさえ無ければ音楽評価は5.0だったのですが!
あとね!本来なら作画は綺麗なのですが、現存している配信版/LD/DVDに使用されている画質が良くないうえに、
マスターテープが紛失しててリマスター出来ないのが無念です…。
リマスターされたBD画質で観たかった作品部門を作ったら1位に推薦してしまう作品でした。


これにて感想を終わります。読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2018/05/23
閲覧 : 987
サンキュー:

69

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