「響け!ユーフォニアム 番外編 かけだすモナカ(OVA)」

総合得点
68.3
感想・評価
210
棚に入れた
1185
ランキング
2079
★★★★☆ 4.0 (210)
物語
3.9
作画
4.2
声優
4.0
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

P_CUP さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

映画を1本観たような満足感

今回、葉月視点から、オーディション後~コンクール当日までが描かれているのですが、
見事に本編とリンクしていて、番外編を見たあとは、本編をもう一度見返すことをオススメします。

【演出家・小川太一】
{netabare}
今回の絵コンテ・演出は小川太一さんですね。
まだ若手の演出家ということですが、これまでも氷菓19話や境界6話、たまこ3話などで良い仕事をされています。
カットの繋ぎ方がリズミカルで、横構図→横構図とシンプルな構図を続けた後には、
短く斜め構図を挟むなどして、画面を退屈させない工夫してるのですが、
それを実にサラッとやっていて、如何にも「工夫してまっせ!」とアピってくるような煩さがない。
なので、意識しないうちに、いつの間にか画面に引き込まれれてるような感覚がありますね。

演出も巧みです。秀一とチューバを運びながら階段を降りるシーンを例に挙げますが、
最初、葉月は背にチューバのハードケースを背負っています。
そこに秀一が後ろからケースを持ち、立ち上がって、お互いに正面から向き合います。
そのまま階段とは平行の状態で、それぞれ前を見ながら降りて行きます。視線は合わせません。
重いものを持って階段を降りてるのですから、相手の顔を見てたら足元が危ないわけで、
2人は、ごく当たり前の動きをしているに過ぎません。しかし、当たり前の動きをさせつつも、
「気まずくて顔を合わせられない」「いずれ向き合わないといけない」「けど、まだ真正面からは向き合えない」という、
葉月と秀一の心の揺れを、チューバケースの上にカメラを置いたかのような画作りで、
2人の表情を丁寧に追うことによって描写・表現しており、実に上手いですね。
{/netabare}

【チューバは支えるもの】(※原作バレあり)
{netabare}
秀一に振られた後、葉月は「久美子との恋を応援する」と約束します。
そして今回、失恋の辛さを乗り越え(緑輝の扇動にも乗らずw)その約束を果たします。
この公約、原作では果たされないんですよ。葉月は2人のために特に何かするわけじゃありません。

また、サポートメンバー「チームもなか」としても彼女は頑張り、コンクールメンバーを支えます。
マレットを取りに戻るため、学校への道のりを必死で走る葉月の姿からは、
自分以外の誰かを目立たぬところで「支える者」としての自覚と誇り、そして喜びが垣間見えます。
この辺り、原作葉月とアニメ葉月の描かれ方の大きな違いだと思います。
(まあ原作だとオーディション落ちはB編成としてコンクールに出場しているため、サポートメンバーじゃありませんが)

この「支える者」としての自覚や誇り、そして喜びですが、ほぼアニオリだった6話がじんわり効いてます。
あのとき後藤先輩はチューバ吹きの哲学を何と語ったか?思い出してみてください。
「チューバの良いところは、良いところが無いところだ。
 良いところなんか無いのに一生懸命頑張る。ひたすら頑張る。
 それが良いんだ。その気持ちが分れば、お前も立派なチューバ吹きだ」
あの時はただのギャグだと思ってましたが、今回の葉月の行動は、この哲学を体現してます。
秀一を応援しても久美子との仲を接近させるだけ。コンクールメンバーのために頑張っても晴舞台に立てるわけじゃない。
葉月自身にとっては何も得なんかない。それでも頑張る。それが良いんだ、と。

{/netabare}

【ラストシーンについて】
{netabare}
この番外編、ラストは「はじまる」という葉月のつぶやきに続いて、大きく息を吸うところで閉じられます。
このシーンも13話Aパートラストの久美子との対比になっていたりもするのですが、
それはさておき、「はじまる」という葉月の言葉、いったい何が「はじまる」のでしょうか?
自分の仕込んだメッセージが功を奏して、秀一と久美子が一歩接近したところを見届けたことで、
葉月は秀一への想いに区切りをつけたのではないかと思います。(葉月は笑顔でしたしね)
そこを考えに入れると、この「はじまる」は、単に「コンクールメンバーの演奏がはじまる」という意味ではなく、
葉月にとって「新しい何か」が、今から「はじまる」んだという意味を持たせてるのではないかと思います。
だからこそ、彼女は、まるで今から演奏を始めるかのように、大きく息を吸うのです。

{/netabare}

完全アニオリだった番外編ですが、わずか30分足らずのエピソードなのに、
まるで映画を1本観たかのような、ズッシリとした満足感がありました。
ユーフォ本編のレビューで、主筋以外の部分にもちゃんと物語があるなどと書きましたが
やはり、この作品、誰を主人公に持って来ても成り立つだけの奥行きがあると、改めて思いました。

投稿 : 2016/01/04
閲覧 : 280
サンキュー:

22

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