「トライガン [TRIGUN](TVアニメ動画)」

総合得点
71.2
感想・評価
320
棚に入れた
2265
ランキング
1354
★★★★☆ 3.7 (320)
物語
3.8
作画
3.5
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

不殺ガンマンのドラマが素晴らしい、西部劇風味のSFガンアクションの傑作。

少年漫画原作のガンアクション、全26話です。
一見三枚目だがムチャクチャ強く、徹底した「不殺」を貫く賞金首「バッシュ・ザ・スタンピード」が、西部劇っぽい惑星で波乱を巻き起こす…。

「カウボーイビバップ」と同時期で知名度落ちますが、不殺に揺れるヒューマンドラマは素晴らしいです。
1998年放送、深夜アニメ黎明期の名作の一角かと。
…主人公の頑ななまでの不殺の在り方が、評価分かれるところ。
不殺に反感感じるタイプの方には不向きな作品でしょうか。

{netabare}『物語』
地球とは別の惑星(太陽複数あったり、荒廃した砂漠だらけだっり)を舞台に、600億$$(ダブドル。この世界の通貨)もの賞金が掛けられた男、バッシュ・ザ・スタンピード。
彼の通るところ凄まじいトラブルで街一つ消滅する「ヒューマノイドタイフーン」
……と恐れられるウワサとは裏腹に、ツンツン頭でメガネを掛けた、飄々と呑気、女好きな軽薄さ。
こんないい加減な男が本当にヒューマノイドタイフーンなのか!?
そんなバッシュを監視する(という名目で旅する)保険会社の女性2人の視点で、その破天荒なキャラクターとドタバタ西部劇活劇を描いていく。

前半は個別エピソードで比較的コミカルな雰囲気。
凶悪なガンマンやゴロツキ共相手に、一見頼りなさげなバッシュがチート級の強さで無双するガンアクションが爽快!
バッシュは徹底的なまでの「不殺」が信念なのですが、序盤は敵が弱い為か、バッシュが手加減しても無双出来るので痛快活劇としては安心できる感じ。
丁寧口調だがツッコミ役の苦労人メリルと、天然娘ミリィそしてバッシュの掛け合いもコミカルな雰囲気、コメディーとしてはまずまずです。
もう一人の主役格ともいえる牧師、ニコラス・D・ウルフウッド登場で更に掛け合いや共闘が楽しい。
ウルフウッドの巨大十字架マシンガンの方がド派手な事もあり、ガンアクションも盛り上がる。

前半の個別エピソードも各話ごとに名エピソード多し。
列車強盗に立ち向かう少年にバッシュが加勢する話が好き。
…徐々に浮き彫りになる、バッシュの不殺の信念。
娘の仇を討とうと外道な金持ちのボンボンを射殺しようとする父親を、必死に止めようとする話が印象的でした。
過去の記憶、レムという女性との思い出などの伏線を張りつつ、バッシュの旅が続いていく。
…「プラント」というロストテクノロジーが、不毛な惑星で生きる人々の生命線な辺りも、少しずつ匂わしていくなど、終盤に向けて伏線がきちんとしている。

…17話がターニングポイント、バッシュの出生の秘密、この惑星の謎が判明。
そ、そういう事だったのか!
一見西部劇風な異世界かと思いきや、結構壮大なSFだった世界観が良いです。
育ての母親代わりだったレムとの思い出、バッシュの優しさと不殺の源流、そしてバッシュに執着し、人類を敵視する双子の兄・ナイブズの存在。
ここからのドラマは一気にシリアスに、最終話まで目が離せず。
バッシュの良き相棒だったウルフウッドとの、不殺を巡る生き方の対立…
後半~終盤にかけての「不殺」の信念と葛藤は、凄まじいです。
バッシュの不殺の生き方を、ラスボスが徹底的に否定し愚弄しにかかる過程で凄まじく「モブに厳しい」為、かなりの鬱展開なのが難。

敵のナイブズと、良き友ウルフウッドどちらからも「誰かを救う為に誰かを殺さねばならぬ場合どうする!?」
的な命題突き付けられるバッシュは…

いかなる時も他者の命を奪わない。
それはあまりにも難しい生き方。
苦しんで、苦しんで、それでも僕は誰も殺したくない!


23話が本作で一番心に響きました。
バッシュとギリギリの葛藤をぶつけ合った末の、ウルフウッドの選択とその結末は、涙無くしてはみられないです。
(速水さんファンなら尚更名場面!)
…ふしぎの海のナディアの潜水艦に閉じ込められて毒ガスで死んでいくシーン思い出した。

終盤は、ナイブズの配下達との対決はやや駆け足気味だったり、不殺の是非にも、必ずしもスッキリした結論出ているとは言えない面も。
…バッシュの不殺に対しては、あまりにも頑なで、結果的に他人を傷付けている(ウルフウッドとか)そこを身勝手で許せないと見るか?それでもなお不殺を諦めなかったバッシュの生き方に共感するか?
前者の感じ方も決して間違いでは無いですし、正直イライラするのは確か。
けれど。
どんなに愚かでも。どんなに見苦しくても、身勝手でも。
それでもなお貫いて見せた、それはアニメ(マンガ)というフィクションだからこそ、そういう在り方もたまにはアリなんじゃないかな…そんな風に思います。

総じて、前半の個別エピソードの方が、エンタメ的には面白いです。ウルフウッド登場以降が最高。
でも後半の「不殺」に葛藤するドラマもまた素晴らしい。鬱だけど…。
SFとしても世界観や設定が骨太でしっかりしているのも魅力。
…原作が連載途上でのアニメ化故に原作と異なる展開で、かつ綺麗に締めているのも高評価。
アニオリは(特に当時は)失敗し易い中で、本作はアニメ化として成功作なのでは。
「カウボーイビバップ」の方がエンタメ的には圧倒的ではあるのですが、トライガンとて十分以上に名作級です。


『作画』
現代基準は勿論、同時期のトップレベルの作品(ビバップ等)に比して作画は良くない面も。
それでも西部劇風の背景や、ガンアクションの見せ場は中々。
独特の雰囲気が良いので、綺麗さだけでは測れない魅力を感じます。

『声優』
バッシュ・ザ・スタンピードは小野坂昌也さんの代表役、三枚目からの葛藤や決める所は決める、最高の好演でした。
メリルの鶴ひろみさん、ミリィの雪乃五月さんも絶品。
レムの久川綾さんの存在感も大きい。

МVPはウルフウッドの速水奨さん。飄々とした胡散臭い関西弁なのに、妙にカッコイイのは流石速水ボイス。
23話は圧巻でした。これは最高の速水さんでしょう!
小野坂さんも素晴らしいのですが、速水奨さんを持って5点満点で。

古澤徹さん、関俊彦さんもシブい悪役イケボ。
サムライの大塚明夫さんも印象的でした。
あと、若かりし日の神谷浩史さんも出演。ザコっぽいキャラですけど。


『音楽』
OPがスタイリッシュでかっこい。EDは最後まで観ると、バッシュの心情にグッと来ます。
BGMも含めて雰囲気ばっちり。


『キャラ』
「ヒューマノイドタイフーン」バッシュ・ザ・スタンピードのキャラクターが強烈な魅力あり。
「るろうに剣心」の緋村抜刀斎と並ぶ「不殺」の代表的主人公ですが、その信念と葛藤はある種狂気の域…
そんな彼を受け入れられるか否かで、トライガンという作品への評価が両極端になりそうです。
物語の全てが彼中心に動き、俺強い系、不殺という「我儘」を押し通す…
正に「主人公」の器です。良くも悪くも。

もう一人の主役格と言えるニコラス・D・ウルフウッドの魅力もバッシュにヒケを取らず、むしろ彼の方が好感持てるかも。
牧師なのに金にがめつい、胡散臭い関西弁、飄々と掴み所のない性格…
だがその実力はバッシュと互角、ひとたび戦闘となれば、背負った巨大十字架からの圧倒的火力で大暴れ!
バッシュと違いリアリスト、それでも最期までバッシュの生き方に共鳴し続けた優しき男。
いや~~、ウルフウッドかっこいいですねぇ~ああ^~速水さん最高や~♪
…アニオリ展開にて、きちんとウルフウッドも掘り下げられていたのが良い。

彼らツートップが非常に素晴らしい一方、メリルとミリィの女子ふたりも中々。
メリルはお嬢様口調と裏腹の逞しさとのギャップ、ミリィは呑気な天然娘だが戦闘では滅法強かったり。
ミリィは「(身長体格が)でかいヒロイン」の代表格みたいです。
ミリィの良さは終盤の純粋な優しさで良く分かる、良い子ですねぇ。

ラスボスのナイブスは双子のきょうだいであるバッシュの表と裏な感じ。
ナイブスの狂気も、気持ちは分からんでもないです。人類って醜いですから。
ナイブスよりも中ボスのレガートの方が強敵でキャラも立っていた。
幹部のガンホーガンズは尺不足で描写不十分なのが勿体ない。

オリキャラのチャペルが良かった。
ウルフウッドとの師弟関係、最後にウルフウッドへの愛と意地を見せた。
彼の存在で、ウルフウッドが掘り下げられている為、重要です。

バッシュにとって母であり、不殺の生き方を示した女性レムも、全編に渡り大きな存在。

ゲストキャラでは、列車強盗が極悪非道ながら悪のカリスマっぽくてガンホーガンズより好き。
この回の少年も良かった。あと、プラント技師の女性など、女性キャラに魅力あり。

5点満点か迷うのですが。
ガンホーガンズの描写不足が惜しいです。{/netabare}

投稿 : 2016/05/22
閲覧 : 281
サンキュー:

22

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