「凪のあすから(TVアニメ動画)」

総合得点
90.5
感想・評価
6451
棚に入れた
25518
ランキング
53
★★★★★ 4.2 (6451)
物語
4.2
作画
4.4
声優
4.2
音楽
4.2
キャラ
4.2

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ネタバレ

ぱんだまん さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

全てのティーンへこの群像劇を

私が深夜アニメを見るようになったきっかけとなった作品。
第1話を見た時はドロドロ過ぎてなかなか見る気になれなかったけど、気づいたらのめり込んでいた。自分が一番好きなアニメだし、良いところは本当にたくさんある。でも、多くの人がそれを書いてくれているので、良くなかったところをあえてメインに書いていこうと思う。

まずこの作品はあまりに人を選ぶ。作中では恋愛関連からほとんどの出来事が起こるのだが、まさに行動原理が全て恋心で、恋愛物や青春物にむず痒くなってしまう人にはとても厳しい。逆に恥ずかしい話だけどピュアな人に受けやすいと思う。私も当時高校生の時に見たわけだが、高校生の時でよかった。また、これは大抵の見終わった人に当てはまると思うけど、見ていて非常に疲れてしまう。劇中で分かりやすく示してくれる心理描写が逆に情報をあまりに生み過ぎたのかもしれない。これのせいで一回見て満足して円盤は買わないファンが続出して、売れ行きが評価と一致しなかったのだと思う。

次に1クール目のグダグダ感。{netabare}全てを見れば1クール目が溜めなのは分かるけど、それでももっと楽しめるものにできたはず。これも売れ行きが伸ばせなかった要因の一つ。具体的な改善点はあかりと至の話を減らすべきだったということかな。海と陸の相互理解の架け橋となる役目を担い、美海の話につなげるためにも必要だったのは分かる。しかし、やり過ぎた。ネックレスを渡したあたりでやめておき、おふねひきでお女子様の代わりになろうとする話はやめておくべきだった。第一にそんな興味が引かれるほどのキャラでもなかったのも痛い。また、主人公の光も目に見えて成長していったけど、最初はまさに思春期の少年で見ていてあまり気持ちいいものじゃなかった。当時は日常物がまだ流行っており、頭を空っぽにして楽しめる作品が今以上に求められてた年。対して凪あすはSF混じりのがっつり恋愛物。これでは1クールの途中で切った人が多かったのもうなずけてしまう。

あと紡の扱い。1クール目は光たちのウミウシ、つまり良い相談役としてうまく収まっていたけど、2クール目はもはや説明係となっていた。その年齢差によりウミウシとしてさらにパワーアップした紡だが、「ちさきは俺のことが好きだ」とかはあまりに不自然。正直見ていて引いた。エナの発生についてもいいように使われていた印象(エナの説明役にもなっていた)で、せっかく2クール目から自分の気持ちをはっきりと表現するようになり、20話の美海とのシーンにはとても感動したのに残念。制作側まで紡をウミウシとして頼ってしまっていた。

最後に美海だけ余る結末。まあ物語の展開上、やむを得ないのは分かるのだが、どうしてもかわいそうに思えてしまう。負けヒロイン感は終始あったけど、あそこまで持ち上げられると光との可能性を感じてもいた。このせいで結末に納得がいかない人も多いはず。私も最初はそうで文句を垂らしていたけど、冷静に考えてなるべくしてなっていたと思えた。それにしても、PAはそれほど美海というあまりに魅力的なキャラを作ってしまったなぁ。 {/netabare}

他にもご都合主義とかはあったけど、私が思った主な不満はこれくらい。好きが故に、こうすればもっと良かったのにって気持ちが溢れてしまいこんなレビューになってしまった。申し訳ないです。このまま締めるのも悲しいので、良かったことも少し書きます。

まずは「変化」というテーマをここまでわかりやすく真摯に扱っていたのは素晴らしい。あの花でも同じテーマだったけど、凪あすの方が完成度は高かった。まあ万人受けするものではなくなってしまったけど...。
ファンタジー要素を入れたことも、アニメとしての意味も与えられたし、ありそうでなかった設定で見ていて惹かれた。まあなんで海中で味噌汁飲めるのかとか細かいところを気にしちゃ駄目。あくまでアニメなんだからね。
OPやEDも見事で、特に2クール目のOP「edd and flow」は世界観を良く表せている。また {netabare}同じく2クール目のED「三つ葉の結び目」の映像は『光にとって思い出の中のまなか」をイメージしており、目覚めてから色づく演出は面白かった。 {/netabare}もちろん、挿入歌やBGMもグット。
作画もハイクオリティで、詳しくないが歴代のアニメ作品でも美麗さでは上位に位置するのではないだろうか。twitterで東地和生美術監督のこぼれ話を見ていて思ったけど、リアリティや世界観の表現への追求が凄まじい。例えば、 24話序盤の要とちさきのシーン。{netabare}ちさきの独白で光たちがいない5年間の思いが告げられた。とても重要なこの場面には、様々な仕掛けがある。まずは泣いているちさきの後ろに花があること。こんなものこれまでの2人暮らしの家にはなかった。じゃあ、なんでこんなところに花があるのか考えてみてほしい。それは、新たに住むようになったちさきに少しでも明るい気持ちになってもらおうしたのだ。男二人で暮らしている家に華やかさなんてない。玄関には花を置き、襖(ふすま)にはくじらのプリント。木原家による精一杯の計らいが見え、これは5年の歳月を物語る役割を果たしている。また、泣くちさきの後ろにある花が重い雰囲気を緩和してくれてもいる。次に要だが、太陽を背中に照らされている要と部屋の影に包まれているちさきというレイアウトだった。日が落ち影はちさきの方へ伸びていくも、ちさきを包む影に飲まれ、ちさきには届かない。要の想いがかなわないことを暗示している。また、話を聞こうと要が座った直後の要の影がちさきのいる影に届いていない。まさに、要がちさきから身を引いたことも分かる。{/netabare}この通り、普通に見ていたら気付かないディテールへのこだわりが随所にある。それこそ制作側もこの作品に入れ込まなくればできないレベルだ。続きを見たくないと絵コンテを見たがらなかったスタッフが続出したのも愛されている証拠だ。


しかし、これほど惹きつける作品でも、売り上げを見ればわかるが、売れる訳じゃない。良い作品が売れる訳ではないことを証明する一作品になってしまった。

いろいろ好き放題言わせてもらったけど、本当この作品を作ってくれたPA、ありがとう {/netabare}

投稿 : 2018/02/27
閲覧 : 308
サンキュー:

25

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