「ギャラリーフェイク(TVアニメ動画)」

総合得点
65.1
感想・評価
104
棚に入れた
612
ランキング
3399
★★★★☆ 3.7 (104)
物語
4.0
作画
3.4
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.8

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

「芸術」の魅力が伝わる渋い(でも観易い)良作。ブラックジャックっぽいです。

小学館のビッグコミックスピリッツの漫画原作、全37話。
「美術」や「芸術」「骨董」を題材にした珍しい作風、さながら美術版「ブラックジャック」あるいは「美味しんぼ」「マスターキートン」な感じです。

話数多目ではありますが…1話完結で観易いストーリー多い。
例えるならば「良質故に、苦みはあるけれど飲みやすく美味しいブラックコーヒー」
美術・芸術方面に関心の薄い人にこそ、オススメしたい良作です。(お宝鑑定団を楽しめる人ならば…)
「マスターキートン」の良さが分かる方ならば多分いけそう。
(私、美術とかサッパリだけど本作は大好き)

…あと、アラブ系の褐色ヒロイン・サラちゃんが可愛いです。(CV:川澄綾子さん)

{netabare}『物語』
元メトロポリタン美術館のキュレーター(美術品の専門家・学芸員)だったがエリート街道からドロップアウト後、贋作(がんさく。偽物)専門の店「ギャラリーフェイク」のオーナー、裏では違法取引に手を染める闇の美術商…
さながら美術版ブラックジャック&マスターキートンみたいな中年紳士・藤田玲司の華麗な活躍を通して、美術・芸術・骨董にまつわる多岐に渡る人生模様や問題提起・バリエーション豊かな展開を見せてくれる…。
美術や芸術という、とっつき難そうなテーマながら、藤田の一貫した信念(真の美とは何か?)や、お宝鑑定団で知られる石坂浩二さんの解説ナレーションなど、素人にも芸術の素晴らしさを分かり易く伝えてくれる話多いです。

…展開にバリエーシュンあり比較的飽きさせないです。(反面、合わない回も多いけれど)
時に秘境にトレジャーハントしに行ったり、カリオストロの城みたいに囚われの少女救ったり(未来少年コナンみたいなジャンプ→足ビリビリw)、呪いの人形に憑かれたり、任侠物もあったり、色んなタイプの話あり。
ラストの37話は地味なんですが、本作らしい。
どちらかというと前半(20話前後)までの方が面白かったですが、どの話も良質。
美術芸術に疎くても、表層ではない真摯な美というものが(なんとなくながら)伝わってくる。
1話完結だし、過度なシリアスは(11話など一部除いて)あまり無いので観易いです。

元アラブの姫で藤田の助手…というか押しかけ女房な感じのサラ・ハリファちゃんも可愛らしく、彼女の闊達さもドラマに親しみ易さと華を添えている。
十代少女と中年男性なんですが、結構ラブコメの波動もあり。

全37には地味な回も多いものの、特に序盤はエンタメ的に華のある活躍で、まずは藤田という男の魅力が分かる。
「エリート街道から外れた闇世界に身を置く、実は真摯に本質を問うている」この路線はまさしくブラックジャック!
3話「13人目のクーリエ」なんて、患者→美術品に置き換えたブラックジャックそのものでした。
いや、ゴルゴ13で頻繁にありそうな展開w

7話「レンブラント委員会の挑戦」
巨匠・レンブラントの名作「光と影」の真贋にまつわるドラマ。
「天才の創った駄作もあれば、無名の凡人が創った傑作もある」
本作を貫く大テーマ、真の芸術に対する姿勢が、レンブラント作品の鑑定に人生を捧げる老貴族の生き様と絡めて、(美術に疎い視聴者にも)ヒシヒシと伝わる良回でした。
…権威主義的な美術界に対する、ダークヒーロー藤田の華麗な活躍が小気味良い。
ここもやっぱりブラックジャックを彷彿とさせます。

13話「監獄のミケランジェロ」
藤田の原点ともいえる重要エピソード。
美大生だった若かりし日の藤田が、壁画修復職人の囚人に、過酷な壁画修復作業を通して学んでいく。
文化遺産である壁画修復の凄さが素人にも分かる興味深さ、名も無き囚人の芸術にかける想いが、深みのある人生ドラマとして紡がれる。
…ラストが切なくほろ苦い。
諸行無常だけど、非常に美しいエピソードでした。

31話「孤高の青」
13話と並び、藤田の原点。
美に対し真摯で誇り高かったが故に、腐敗した美術界に潰された父の想いを、息子の藤田が数十年越しに小粋な復讐を果たす…。
勧善懲悪で、美術に疎い視聴者にも、はっきりと「真の美は権威や高価な具材ではない」「本当に美しいのはどちらか」がビシッと分かるラストは爽快でした。
あと藤田を案ずるサラちゃんかわいい。

11話のベトナム戦争にまつわる話は重いけれど、悲惨な戦争の歴史とその後の人生にも、確かにあった美しい瞬間…感動です。

25話「雨宿り」みたいな渋い人生ドラマも捨て難い。
美術品を通して、すれ違ってしまった父と娘の想いを、藤田の審美眼と説教で解いていく…
まるで一本の映画を見ているような良エピソード。
本作は美術以上に、美術品を絡めた人生ドラマも魅力的な話多し。

19話「知念、危機一髪!」
笑えるという意味では本作随一の面白さ。
5話で藤田にギャフンと言わされた、小役人だが美への執念が凄い知念という男が貴重な国宝級美術品を壊してしまい大ピンチ、これをブラックジャックもとい藤田が華麗なるダーティーさで解決していく。
いや~面白いです。


私的にベストエピソードは20話「山水の星」
美大生時代に藤田が出逢った親友は親の意向・本人の才能共に恵まれた天才山水画家であったが、彼には本当にやりたい夢があった…
13話と並ぶ藤田の原点の一つであり、また日本のワビサビを介さぬ外国人相手に日本の美はこれだ!と見せつける話でもあり。
夢だった宇宙飛行士として宇宙から地球を見た親友の感動と、藤田が愛する小っぽけな山水画の美…そして親友同士の人生が交錯する…
白黒の山水や小さな庭に「宇宙」を表現する日本的な美意識の醍醐味。
ミクロとマクロ、闇の美術商と宇宙飛行士、生き方は違えたけれど共に「真実の美」で結ばれた友情物語として、非常に良かった。
藤田と友人は直接再開はしてないけれど、これぞ男のユウジョウ!


総じて全体のテーマが良質な上に素人にも分かり易く、芸術…とアニメって本当に良いものだな~、こういう作品を視聴するたびにそう思います。
何話かのベストセレクション的な名エピソードに限れば5点満点でも良い程なんですが…
全37話中には地味だったり、オチに納得いかない話も多く、全編通して凄く面白い!かは微妙な所。
それでも、オンリーワンな良作には違いないです。


『作画』
藤田はイケメンだし、サラちゃんはキャラデザ的にかなりヒットです。
喜怒哀楽激しく、むくれ顔かわいい。胸も丁度いい♪
作画的には地味かもですが、好みなので。
原作よりも褐色薄まっているのは、やや残念。それでも褐色娘は可愛いです。
全体的には粗い面もありますが、美術品の美しさなど、ここぞという場面ではしっかり見せてくれる。
素人にも(こういうものが美しいんだろうな~)と分かり易いのは見事。


『声優』
お宝鑑定団で知られる石坂浩二さんのナレーションはまさにハマリ役。
藤田玲司は森川智之さんハマリ役でした。森川さんの渋く爽やかなイケメンボイス最高です。
時に情けない場面での抜けた演技も含めて、藤田の魅力引き出している。
(ドラマCD版の子安武人さんも良いんですが、やっはり森川さんの方が合っている)
サラちゃんの川澄綾子さんも良いですねぇ。川澄さんの元気娘タイプの演技大好きです。
三田村館長の雪野五月さんの颯爽とした美人っぷりもステキ。
知念の長島雄一(チョー)さんの小物ボイスも流石です。

ゲスト声優も豪華で、10話の青年ヒロトの石田彰さんの儚げな美声絶品、11話戦場カメラマンが古川登志夫さんだったり(ガンダムのカイも後に戦場カメラマンに)、13話の囚人職人の故・青野武さんの頑固一徹な老人ベストキャスト。
21話の若き天才時計職人・計(はかる)役の山口勝平さんも印象的。
小山力也さん、故・郷里大輔さんのキャラなど、ハマリ役多かったです。

…16話の変態香道家ジャン・ポール・香本の速水奨さんも。
はやみんのイケメンだけどド変態ボイスも堪らないw


『音楽』
37話中いくつか主題歌変遷しますが、最初のOP「ラグタイム」が一番好き。
各主題歌全般的にスタイリッシュですが、主題歌としては微妙。
ただ、作中のBGMはかなり良い。11話のベトナム戦争の話など、音楽面で心に響きました。


『キャラ』
主人公・藤田玲司の魅力に尽きる。
経歴や反権威の生き様など、マスターキートンとブラックジャックを足しつつ、身体能力ダメにした感じの中年ヒーローでした。
40近い大人の余裕と飄々とした紳士っぷりの一方で、まるでダメなオッサンな一面もあるのも魅力。
キートン程のスーパーマンでは決してないけれど、ヒケを取らぬ名主人公。
カッコ良さと親しみ易さを両立した主人公です。
首尾一貫した信念が、要所でバックボーン見せてくれるのもあり、回が進む程にこの男の魅力が分かってくる感じ。

ヒロインのサラ・ハリファちゃん超好みですかわいい。
アニメでは珍しいアラブ系ムスリム(イスラム教徒)ヒロイン(作中イスラム色は殆どなし)。
アラブの王族(滅ぼされたけれど)で大富豪なので、自分が気に入れば大金ポンと出せるお姫様な一面もステキ。
財力活かして、時に藤田に頼らず独力で海外に取引に出たりする自立した女性でもあり。
天真爛漫で喜怒哀楽が激しいけれど、密かに藤田を想う奥ゆかしさもいじらしい。
藤田周辺の女性に嫉妬するのもかわいい♪

日本美術界の若き才媛・三田村小夜子さんもステキな女性でした。
初期のルパンに対する銭形ポジ…からの、デレてきた頃の可愛さ…

文化庁の醜い小役人・知念も憎めない名キャラクター。
こいつの美術品に対する執念は、滑稽にして尊いです。

アメリカ人トレジャーハンターのラモスも面白い男、こいつが絡むと話が面白い方向に…
生粋の冒険家、男の生き様。

イタリア人少女エリザベータちゃん可愛かったけれど、出番はカリオストロ回(26・27話)の前後編のみ。
出番少なくて勿体ない。

他ゲストでは獄中の老職人や藤田の恩師など、藤田の人生に関わる人物が軒並み印象的でした。
…サラちゃんの体臭嗅ぎまくったジャン・ポール・香本、へ、変態だー!{/netabare}

投稿 : 2016/12/20
閲覧 : 390
サンキュー:

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