「無限のリヴァイアス(TVアニメ動画)」

総合得点
82.3
感想・評価
958
棚に入れた
5790
ランキング
364
★★★★☆ 3.8 (958)
物語
4.0
作画
3.5
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

chariot さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

娯楽として観るには重いが巧みな心理描写と群集心理が見所。

1999年放送のオリジナル作品、全26話。
ジャンルはSFとなっているがメインは孤立した少年たちの対立や精神状態の悪化、そこからの成長をテーマとしていると思われます。

(あらすじのようなもの)
外洋型航宙可潜艦リヴァイアスに乗った487名の訓練生たちが大人たちのある計画により孤立無援の中で救助を求めて宇宙を彷徨う。
みんなで助かる道を探しながらも閉鎖された空間でリーダー格の少年たちが各々のやり方で秩序を作ろうとするが……


閉鎖された空間、交わらない心理。
{netabare}救難信号も無視され、訳もわからず敵ではないはずの艦から攻撃を受け、逃げるように救助を求められそうな星へ向かう中、艦内では確実なリーダーシップを取るには足りない未熟な少年たちが正しいと思うやり方で艦内をまとめ、救助される日まで生活を守ろうとします。
メインとなる少年たちには過去があり、信念があります。
規律を守らせたり力で支配したり。
統治される一般の搭乗員も支配階級の特権を妬み、クーデターを企む派閥が暴露した情報に暴動を起こし、どこもかしこも不満だらけでまとめきれない…

救助の希望が見えない事、食料や水などの配給や仕事の成果に対する待遇の不満やストレスが溜まり続けている事、きちんと考えて合理的且つ平和な解決策を見つけられない子供たちしかいない事、リーダーとなる人物もまた自分の信念のみで圧制を強いる事、「バックヤード」※という現象※{netabare}公式より:スフィクス(ヴァイア艦に存在する艦の制御システム)とリンクする事で精神支配を受ける。リヴァイアスで起こった暴動、クルーたちの感情の発露、リーダーの情緒不安定等も、バックヤードによるものだったという一説がある。{/netabare}の影響…
様々な要素が組み合わさって捩れ続ける中で不安だけが増大していく艦内。
殺し合いには発展しないものの中盤以降のギスギスした人間関係で追い詰められた人間の本性を見事に描いているように思います。

しかしその見事さ故に作中で「こいつなら」と思える人物が見当たらず、視聴を続けていくのも辛くなるほど。
兄への憧憬をこじらせてしまった好戦的な祐希、冷静な状況判断は出来るが打開策は見いだせない昴治、普段は明るく人当たりも良いが過去のトラウマから逃れられなかったイクミ。
不満を募らせた民衆を抑えるだけの物資もなく、各リーダーの信念に基づく支配も全員を納得させるだけの力もなく、切迫した状態からの選択で仲間を見捨てる策を取る場合もあり…
理想主義だけでも現実主義だけでも成り立たない平穏の均衡を保てる支配の方法が見い出せないまま、25話で救助が来るまで誰の在り方にも納得出来ず協力して何かを成すようなスカっとする場面もなく。。
壊れて行く関係とそこから過去を断ち切って進んで行く少年たちの精神的成長が巧妙に丁寧に作られていて、重さはあるものの心理変化が非常に面白い作品でした。

難点。
問題が起きてから重い部分が長く続く事。(そこがメインの見せ場なんだけど)
後半の解決までがやや駆け足な事。(上記に時間を取りすぎたか、スピーディな展開にしたかったからか…収束までが早い)
22話辺りから回想シーンが多く、まとめ的な物ではなく話に混ぜ込んで欲しかった。(同じ映像繰り返されても…)
{/netabare}


SF要素。
{netabare}最初は孤立した少年たちを描くための舞台装置としての設定にも思えましたが、意外と細かい設定で納得の作品。
ただしそれを主とする場面はあまりないので期待すると残念な結果になるかも。。
そもそも物語の中で用語の説明らしきものがあまりない。
視聴だけだと「何言ってるの?」状態になるが、興味をもって公式サイトに行けば用語説明があり、その情報が作中だけでは把握しきれないのが勿体ないように思えました。

とても面白く感じた設定はヴァイタル・ガーダーの操縦システム。
まず操縦管を握るのではなく複数人でソリッドと呼ばれるプログラムを入力作成し、ヴァイタル・ガーダーへの命令とする事。
個人の天才的操作能力ではなく、大勢の協力によるプログラミングで次の行動に必要なソリッドを作成するのは面白い。
またリフト艦にある制御室のシステムも面白い。
ゲドゥルトというレーダーの効かない状況がある為、本艦もリフト艦もリアルタイムでの映像的な物は見られず、レーダーやニュートリノピンガーを用いて索敵する設定上、制御室にはヴァイタル・ガーダーのミニチュア版の模型が設置されている。
これは発進しているヴァイタル・ガーダーと同じ動きをするようで、本体の実際の動きが確認出来ないから模型で動作確認を行なう為の装置のようだ。

作中での説明はかなり足りていないのは残念だけれど、きちんと過不足なく設定されているところは良いと思います。

難点。
SF設定を盛り込んだせいで素直な群像劇に徹しきれなかった面もあり、足の引っ張り合いな雰囲気もあった。。
{/netabare}


まとめ。
非常に多くの人物が登場しそれぞれに基本となる信念があり、相容れない中で少しずつ変わって行く過程を丁寧に描いた作品でした。
閉鎖空間での長く過酷な生活で通常では理性が働いて表面化しにくい強欲さや利己的な行動も目立って共感はしにくいものの、その辺の醜さを生々しくしっかりと表現しながら僅かながら内面も明かす事で各個の行動原理を汲み取る事で納得は出来たと思います。

爽快感とは無縁の作品ですがシリアスな群像劇としてはとても面白く観られました。


御礼:
僕のお気に入りの棚から「あれが好きならこれ好きそうじゃね?」とお勧めされた作品でした。
両作品を比較すると若干面白いと思う方向性は違いましたがこれはこれで面白かったです。
ありがとうございましたm(_ _)m


気になる事:
{netabare}ファイナはどうなったんだろう。
どうしたんだろう。
過去を糧に出来ているんだろうか?
過ちを認められたんだろうか?
僕ならこんなサイコパスともう一度関わるなんてごめんだけど…
やっぱり昴治って凄いよね。。{/netabare}


好きなキャラ:
{netabare} 青のインプルスの艦長。
艦長「吶喊!」
船員「吶喊!!」
…なんかいいよね、こいつらだけ作中のテンション違う(笑){/netabare}

投稿 : 2016/11/19
閲覧 : 253
サンキュー:

6

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