「この世界の片隅に(アニメ映画)」

総合得点
82.8
感想・評価
691
棚に入れた
3060
ランキング
345
★★★★★ 4.2 (691)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.2
音楽
4.0
キャラ
4.2

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ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

戦時中の日常が確かにある

原作は既読でしたが、単行本発売当初なので随分前。
映画が素晴らしい出来で、改めて原作を読みたくなったので再度購入しました。
終了してから知ったんでしょうがないんですが、クラウドファンディング参加したかったなあ…

作画、演出、音楽も素晴らしく、原作に比べストーリーもスムーズに展開していて、原作とは違う良さがありました。
2時間ほどの長めの上映時間も気にせず観られ、誰にでも薦められる質の高い作品です。

戦時中(非日常)の日常系といえば良いのでしょうか。
その時代にしかない日常、どの時代でも当たり前の日常を、現代人にも共感できるように作り上げています。
原作にある当時の人々の息遣いを、映像によく反映させていると思います。

{netabare}
キャラクターの生き方に共感する部分が多いですね。
不安定な時代に居場所を求める登場人物たちには感情移入せざるを得ませんでした。

すずのいる家を自分の居場所と思ってはいても、すずが望んで嫁いできたとは思っていない周作。(まあ水原の件は「やっちゃったなー」って感じなんですが…ああいうのって当時よくあったんですかね…?)
まだ妻もなく、いつ死んでもおかしくない水原にとっては、幼い頃のすずとの思い出が自分の拠り所です。(ラスト付近で腕を無くしたすずが水原らしき兵士の後ろを行き過ぎるシーンがあります。終戦によって、水原にはもう心の拠り所は必要ないのかも知れません。)

自分の好きなように生きてきたものの、すずの嫁入りによって実家でも肩身が狭い上、最後の支えであった晴美も失った径子。
そして、晴美を守れず腕を無くしたことで変わっていくすず。
当時の女性にとって跡取りを産むまでは婚家では肩身が狭いものですから、コミカルに描かれているとは言ってもすずにも心労はありますし、径子にしても離婚してからずっと不安は付きまとっていたと思われます。

径子もすずも、お互いが居る呉の北條家を自分の居場所としていくことを決め、終戦後の闇市で二人でどんぶりをつつく姿には少しホッとしました。
{/netabare}

【原作の良さ】 {netabare}
原作は反戦意識は感じるものの、日常風景がもっと多く、それが非凡さでもあります。映画ではそのあたりは映像に上手に落とし込んでいる印象でした。

原作ではすずの絵を交えた手記が多く描かれていて、嫁いですぐのほのぼのとした内容から、戦争末期に進むにつれ暗い内容に変わっていきます。
そのためすずは語り部の性質も持っているのですが、一本の映画にまとめる上ではないほうがスムーズだと思います。

それから戦時中の時代性を具体的に感じる部分がかなりカットされています。
戦時中の習俗、文化、言葉は独特で、原作者こうの史代さんの丹念な取材と調査により作品にしっかり反映されています。
こういうのって規制にひっかかるのかなあ…。時代性を感じる描写ってとても面白いと思うので少し残念。 {/netabare}


【映画の良さ】 {netabare}
アニメーションならではの映像がとても素晴らしかったです。
ビジュアル面のリアリティを徹底して追求していたと思います。印象の柔らかい水彩画のような画風で、かえって身近さが増して感じられました。
すずの腕がなくなった際の演出には特にこだわっていて、本編中では数少ないすずのイラストのような描写が面白かったですね。
スタッフロールやクラウドファンディング出資者一覧の最後まで拘り抜いた映像作りもとても良かったです。

声優さんの自然な演技や、生活音、環境音も世界観に没頭させてくれる大切な要素だったと思います。
ストーリーとしては全体的に反戦映画の印象が強くなっているかも。
{/netabare}

余談ですが私の祖父母がすずや周作と丁度同じくらいの年代で、祖父母からわずかに聞いた当時の話に近い感覚が確かにありました。戦時中の時代感覚や生活の苦労がこういう形で伝わるのはとても良いことではないかと思います。
(2016.1.19)

投稿 : 2018/12/06
閲覧 : 454
サンキュー:

48

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