「アシュラ(アニメ映画)」

総合得点
62.9
感想・評価
155
棚に入れた
576
ランキング
4497
★★★★☆ 3.6 (155)
物語
3.7
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.5

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

(人を)食べなければ生き残れない!極限で「人間性」を問う問題作、残酷で鬱ですが、純粋で尊い名作です。

1970年に連載され、カニバリズム(人肉食い)で有害指定された伝説の問題作を、約70分のフルCGで劇場版アニメ化。
平安時代末期の地獄のような飢餓の中で、人を殺し食らう獣のような少年アシュラの生き地獄が描かれていく…

鬱!残酷!グロい!無修正で人肉食いや血飛沫があり、耐性の無い方は要注意。
極限の地獄で「生きる事」や「人間性」の尊さを問う、究極の問題提起をしており、考えさせられる名作です。

{netabare}『物語』
平安時代末期の生き地獄……マッポーの世に救いは無いのか!?
いや、「仏教」は本作のキーワードとして大事だったり。
私は仏教に疎いのですが、本作は仏教的な思想も根底にあるのかなと感じました。
肉食がまず禁忌、ましてや「人を殺して食う」というのは究極の禁忌のはず。
本作は、究極の醜さや非人間性の中にこそ、一滴の尊い人間性を見い出す…
究極のドラマかも。

序盤は生き地獄の中で獣のように生きる凄惨さに目を奪われますが、残酷ではあっても、まだ切なさはありません。
しかし…
アシュラにとって重要となる、ふたりの人物との交流を経て、獣だったアシュラが人間に近づいていく…
だが。それはアシュラに、生存本能のおもむくままに人肉を貪っていた獣だった頃には無かった苦しみを産んでいく。
アシュラに人のぬくもりをくれた優しいヒロイン・若狭との顛末が壮絶にして悲劇的過ぎた…。

本作が問題作とされる真の理由は、カニバリズムのグロさではなく「豊かな文明人の常識的倫理観を危うくさせる」危険な問題提起にあるのでは?


最大の山場(だと思う)、飢え死に寸前の若狭と、肉を食べて生きて欲しいと願うアシュラの想いが相容れないシーンが圧巻でした。
生きる為に人を殺し食らう、人間性とは対極なアシュラの方が、人の尊厳を貫く高潔な若狭よりも、人間的に思えてしまう…これは大変危険です。
視聴者視点ではアシュラの若狭への想いの純粋さ善意が痛い程分かる(肉はアシュラの言う通り、本当は人肉じゃないのもポイント)だけに、人間として高潔なはずの若狭の方に疑問感じてしまう。
「ひとでなし!」心抉られる悲しすぎる一言…アシュラかわいそうじゃん若狭そりゃないよ…
無論、若狭が悪いわけでは決して無いのですが、今までの徹底して地獄を生き抜くアシュラの生き様と、芽生えた人間性の尊さを描いてきた上での、この究極の選択を問う場面で、(心情的には)若狭憎まれ役になっている事で、暗に「我々文明人の既存の倫理観」に痛烈な疑問符を突き付けているように思いました。

「こんな苦しい場所に生みやがって!」と絶望するアシュラの慟哭が、最高潮に鬱でした…。
その後…
「何のために生きる?」までは示されず、若狭との離別が山場だった。


総じて、飢餓での人肉食いという究極の非人間性の中に、純粋で尊い人間性を見い出していく、恐るべき作品でした。
70分間全く目が離せない!
「飢え死にに瀕して、人肉を食らうか否か?」は各々の価値観の問題であり、本作の本質では無いと思います。
(私的には断固拒否したいが…真に飢えた事が無いので実の所分からない…)
物語としての醍醐味は、ただ純粋に、アシュラの若狭への想いの尊さにこそありと見ます。
それは一歩間違えれば危険な思想。有害指定図書は伊達では無い!だが!
漫画やアニメなんだし、たまにはこういう作品で揺さぶられてもいいじゃないか…
そう思います。

こんな漫画が連載される、70年代の週刊少年マガジンすごいな…。
続編も映画化されないかなー。


『作画』
フルCGながら、キャラデザも背景も違和感感じさせぬ。若狭かわいい。
残酷だがある種の美しさすら感じる、見事な作画でした。
アクションシーンも何気に凄いです。
…昨今の規制もなんのその!真っ赤な血飛沫や血肉が容赦なし。
ここまでやられると、逆にグロさがマヒしてくるような。

『声優』
初めは獣のようなアシュラを大ベテラン・野沢雅子さんが熱演。
後半の悲痛さも含め、圧倒されました。
若狭の林原めぐみさんも、前半の慈愛と後半の落差が凄まじい。
実力派の豪華声優陣の中で北大路欣也さんは俳優ですが、演技力はお見事でした。

『音楽』
BGMが素晴らしいです。生き地獄のような世界を終始盛り上げていた。
本作が一瞬たりとも目が離せないのは、映像や物語の他にもBGMも大きい。
主題歌は、やや合ってない気がします。


『キャラ』
アシュラは獣としても人間としても、ある意味純粋な尊さを感じた。
若狭に懐いていく過程が小動物みたいで結構可愛い。

若狭は…
非の打ちどころの無い、高潔で慈愛に満ちた女性のはず。
でも作劇上是非もないとはいえ、印象良くないです…。

法師は、仏教の体現者なんだろうか?
求道者的な壮絶さを感じる。

モブは生きるのに必死で、アシュラとの対比で人間らしさって何だろう?と思いました。{/netabare}

投稿 : 2017/02/01
閲覧 : 431
サンキュー:

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