「銀河英雄伝説(TVアニメ動画)」

総合得点
89.1
感想・評価
944
棚に入れた
4039
ランキング
90
★★★★★ 4.3 (944)
物語
4.6
作画
3.8
声優
4.5
音楽
4.2
キャラ
4.5

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デリダ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

政治的、戦記の長編作品として一つの完成をみた作品です。

小説原作からOVA展開のこの不朽の巨塔作品。
同い年の作品としてはトップをねらえ!で、この作品もまたOVA展開であり、重なる部分は多いですが内包する指向性は全く異なるものでしょう。
まあこの話は置いておくとして、心に残る作品でした。
同時に評価も難しい作品だなあとも。

ということでとりあえず評価は保留のオール5、
時間をかけて徐々に感想を整理して個人的ながら評価をしていきたいです。笑
数量的な評価よりも質的な文章による評価の方がこの作品には向いてる気がします。

真面目な感想の前にもし言うべきことがあるとするなら、
ポプラン、シェーンコップ、アッテンボローの伊達と粋狂に生きた
愛すべきバカ達が好きになっちゃいましたね、あの生き様はイカンですよ。

ヒルデガルドの父君の求婚の下りも最高でしたね、あれ一体なんなんですか、、、
笑うなという方が無理ですよ、、、ヤンとフレデリカにしたってなあ
まったくもう、、、最近のギャグアニメより破壊力ありますよあれは。


ということで真面目な評価を書きたく思うのですが、
この作品の個人的な評価点はひとえに制度的な統治支配と物理的領域の限界といった問題が物語において非常に意識的に使用されているところです。
「人が作り出したものなんだ、ならば不滅ではない」と言った内容の発言をヤンやラインハルトがしきりに言っていたポイントです。これが具体的な一国家ということにとどまらず専制政治や民主政治といった抽象的な社会構造自体へ向けられていることで、
よく比較対象で名を上げられるガンダム作品とは根本的に性質が異なるところだと考えます。初代ガンダムではその問題自体が人類にとって初めての経験であり、物語を彩る一要素になるにとどまっていると考えます。
これは宇宙世紀がターンエーガンダムまで来てやっと触れられてるものだと思うのでガンダム作品群に比べ評価に値すべき点だと思います。

現実的に現在人類が作り出した政治的、経済的社会は物理的な基盤を地球の表面のみで止めていますが、多くの国家に分かれ統治し、その上に地方自治、地方分権的な政策も見受けられます。
銀河英雄伝説の舞台に比べてはるかに狭い領域でこの社会構造が採用されているのにまあこのザマなんですが、それは置いといて

この物語が始まる前史とされて用意されている宇宙進出後の人類史は生活圏拡大に伴う物理的な距離と時間差による避けがたい中央集権型の政策採用と、そこからのさらなる拡大による自治権問題と政策不行き届きに伴う失敗と格差、格差だけならまだ他の作品でも描けているのですが
人類の現存する思想の物理的限界と政府と軍隊の別ですね、軍隊にも風通しの悪い中央集権型の腐敗と、分権型の暴走や紛争にもつながる。拡大というのが非常に具体的な想像を持って構成されている。
そして最終的には専制政治への後退。これはマキャベリの君主論に習ったものみたいですが、これはまあ著名な古典なので言及する必要もなさそうですね。
ともかくこれは思想の限界だけでなく国家という概念を構成する要素の問い直しも含まれているということじゃないでしょうか。
現在と国家という概念と民主主義という組み合わせの先にはまだ新たな組み合わせやあ発展の余地があるというこではないかと。民主主義の問題点は人々が戦争の痛みを忘れなければどうにかなるという日本純粋培養のエリート的な歴史解釈による批判ではなく、そろそろ統治構造と民主主義の限界を宇宙に出た先ということで想定で描いたものではないかと考えます。多数決という最も公平とされている原則そのものが間違っているのではないか、市民意識にうったえるとかそういうもっともらしい話ではなく、そもそものマイノリティを切り捨てるのが原則である社会システムを冷静に見つめなおす機会なのではないか、とか。社会が健全に機能してる間しかマイノリティの意見を汲み取る余地がないシステムはどう考えても欠陥品なんですよねー
あ、これは僕の個人的な意見ですね

このレビューを書いた現在はアメリカでトランプが大統領就任しましたが、多少なりともトリューニヒドと似てなくもないというか。トランプは民主主義の腐敗だとか失敗だとかじゃないんですよね、最も方法論的に民主主義の多様さを示しているわけですから。
とりあえず単なる戦後日本が持ったイデオロギーの解体と構成の過程みたいなものには見えないんですよね

あまりうまくはまとまっていませんが、世界設定としてはこんな風に感じました。

そもそもアニメ作品が持つ社会的意義とはなんなのでしょうね。
この話はアニメにかかわらず大衆的な文化生産領域全体にかかわる問題だと思うのですが。
この手の作品の感想をお書きになる方が使う哲学的、政治的、学術的な作品の価値やメッセージ性というのはどのように解釈され評価されるべきなのか。
よく直接的に「現実にあるこの問題を批判あるいは表象してる」ゆえに評価に値する、しないがされていますが
ニコラスルーマンという哲学者が自己言及性についてという著書の中で
芸術が持つ自己言及性(端的に言ってしまえば形式批判やフォーマリズムの概念)
こそが社会がこれからより良い発展を遂げるために参照すべき点であり、
社会における芸術の価値とはこの点にある。みたいなことを述べているんですが
その通りだと思っていて、このような間接的な接点によってもあらゆる文化生産は評価されうると思うんですね。
(故に安易な元ネタ賛美の肯定的なメタ表現や、表面的な引用は僕は逆に否定的な立場をとります。)

直接的な批判や引用ではなく物語の進行を通して、アニメの中における物理的な領域と概念的な構造を作り上げ一種のコンピューターシュミレーションみたいなことがなせているのではないかとか考えました。
直接的な批判は学問の内でやれば良いですし、引用であれば既存の問題に依存する形でしか作品自体が持つ意義を成立させることができず時代が経てば無意味なものとなってしまうと考えます。
ある程度の作品価値の普遍性を保ちつつ、一つの社会的意義を持った提案をできるためにはそう言った作品構造を持つことが重要ではないかと
その上で後日談的な語りを持って戦記、スペースオペラといった形式を採用するのは非常に納得のいく選択ですしアニメという商業媒体とも親和性が高いように感じられます。

長いな、、、とりあえずここでやめときます。
他にもやたらドイツ語や北欧神話を多用しているのが見られますが、こういった作品に対する北欧神話の価値とかもろもろ
後日気が向いたときに修正なり追記なりして読みやすくまとまりがあるようにしますね。
なんかくどくど書きましたが必見の価値はあります。おすすめです。笑

投稿 : 2017/02/14
閲覧 : 281
サンキュー:

2

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