「ゲド戦記(アニメ映画)」

総合得点
58.7
感想・評価
514
棚に入れた
2604
ランキング
6390
★★★★☆ 3.2 (514)
物語
2.8
作画
3.6
声優
3.0
音楽
3.5
キャラ
3.0

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ネタバレ

狗が身 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 2.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

なんか、好きなんです。

※長文だけど半分近くただの妄想なので、文末に要約しておりまする。


僕的には良い作品なんだけど、それはあくまでもテーマとかメッセージの内容が僕好みだから。オススメできる作品ではない。
…けどちょっと酷評されすぎかな~、とは思う。
原作からかけ離れたストーリーとキャラなんだけど、これって一概に吾朗氏のせいとも言い切れないんだよね。
制作過程で他でもない駿氏が「ゲド戦記なんかやらずにシュナの旅をやればいい」と吾朗氏に助言している。シュナの旅ってのは駿氏の作品。
そして冒頭の父親殺しの発案者はプロデューサーである鈴木氏。
初監督作品がジブリの長編映画っていうプレッシャーを考えれば、こういう意見を取り入れながらもよく作れたと、素直に思う。


さて。今作のメッセージは、かなり現実に沿って描かれている。
本作の世界は生態環境、人間の倫理観といったものの均衡が崩れつつあり、それは農作物が実らないといった環境の汚染や、麻薬中毒の流行や伝統の技術が人々から失われていっているという人間のモラルの低下などとして描写されている。
そんな世界で、父親殺しという罪を犯してしまった主人公のアレン。彼の犯行は突発的であり、明確な理由がないのだ。これもまた、現実性を感じる設定だ。
世界の異変に対する恐怖や不安が積み重なったアレンの心は闇に呑まれ、父親を殺すという凶行に至らせる。まさにそれは、正気の沙汰ではない。
少年であるアレンにとって、国という一つの世界を象徴するのが父だ。父親殺しはアレンにとって、恐怖から自分を守る防衛行動であり、心の均衡を保つ為だったのだろう。もちろん、擁護できるものではないけれど。

世界や未来、自分自身に絶望した末に大罪を犯した少年が、退廃的になりつつある世界で人との小さな温もりや汗を流して働きながら少しずつ再生していく姿を描くことで、命を説く内容となっている。
ただし、命を主題にした本作のストーリーは、残念ながらその完成度は低いと思う。
メッセージやテーマをそのままキャラクターに喋らせすぎていたのが残念なんだよね~。中盤までは本作のやりたいことが分かるようになっていたし、それに見合った世界観とストーリーとキャラクターだった。これはいつもの駿ジブリでは間違いなくできなかったことだし、そういう意味ではかなりの意欲作。

そのメッセージとテーマを終盤でほとんど言葉で話しちゃったのがすごく勿体ない…。言葉じゃなくて、アレンが生きることを受け入れた終盤で彼の姿を描くことで訴えるべきだったんだ。言葉じゃなく、映像で。
テルーがアレンを抱きしめて命を説いたシーンは、肌の温もりを感じるかなり良いシーンだったんだけど、その後がねー…。
というか、そもそも社交性に乏しくて人間嫌いであるテルーが諭すってのも変な話ではあるんだけど。

そしてクモとの決着を長引かせ過ぎたよね。アレンを主役に据えたドラマをずっと描いていたのだから、あそこは魔法の剣を抜いてババッと畳んで欲しかったところ。
たぶん、アレンと竜の対面をキービジュアルにしてしまったから、どうにかしてあそこに持っていこうとしたからなんだろうけど。


いつものジブリのように分かりやすい楽しさといった娯楽性は致命的なまでに欠けてるけど、作品としては悪くないと思う。方向性がかなり違うってだけで。
ぶっちゃけ、こういう映画は監督の意図とか解釈を頭に入れず、自分で独自に解釈して説明不足な部分を補完していった方が結果的に面白い作品になることが多い。本作もその例に漏れず、監督の意図とかをインタビューで知ると「あ、ただの説明不足か」なシーンが結構ある。でも自分なりに解釈していくと面白くなる。僕はそういう作品が結構好きなのです。
でもテルーの竜化だけは理解できん(笑)
アレンの物語としてはかなり良かった方だと思うので、題名が『アレン』だったら普通に良作って言ってたかも。

『ハウルの動く城』や『崖の上のポニョ』辺りがまあまあの評価で本作が酷評されてる点からみて、ジブリを観てる大多数はキャラ重視なんだろうな~。

投稿 : 2017/05/28
閲覧 : 359
サンキュー:

15

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