空知 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
期待感が大きかったため後半が残念
細かい話の流れは他の方がまとめてくださっているので省きます。
見始めた後、中盤くらいまでは「これはすごい名作になるんじゃないか」という期待を持ちました。人類や世界の矛盾を描こうとしていると感じたからです。
しかし、期待は見事に打ち砕かれました。
タイトルが『正解するカド』ですが、カドは正解を出したということなら、何が「正解」だったのか全く理解できませんでした。
{netabare}
異方世界から来たヤハクィザシュニナがもたらした「ワム」。
無尽蔵に電気を供給してくれます。
昔から一部の科学者が編み出そうとしているいわゆる「永久機関」です。
(物理学的に不可能ですけど)実際に作った科学者が暗殺されたなんて都市伝説があるくらいです。原油も要らないため二酸化炭素などを排出しないクリーンなエネルギー。原発も不要になります。
しかし、実際にこれが発明されたとしたら、世界が混乱に陥るかもしれません。
現実の世界経済というのは、石油資本という既得権益が大きな力を持ち、すさまじい圧力がかかることが予想されるからです。
ヤハクイザシュニナは、眠らなくてもよい装置である「サンサ」をも提供しましたが、彼がカド内から出られなくなった飛行機の乗客に提供した食糧を作り出す方法が提供されていれば、もっと面白いのになあと思って観ていました。
子供なら誰でも考えることですが、「アメリカや日本など豊かな国でたくさんの食品が捨てられているんだから、世界の困った人達にあげたらいいのに」と。
ところが、世界はこれを絶対に許しません。なぜなら、食糧で困っている国と貿易をしている国家があるため、無償で食糧を与える行為は経済のバランスが崩すからです。
人間社会というのは、「差別をするな」「死刑をなくせ」「人権を守れ」と言いますけど、そう強く言い張る国家が、自分達にとって都合の悪い事態になればミサイルをズドンとかまします。
実に矛盾しているのがこの世界の現実ですよね。
この作品は、ワムという夢のエネルギー源が異方からもたらされることで日本が安保理から制裁を受けてしまいます。この辺りでは、「これは強烈なテーマをぶち込んできたな-」と期待感でワクワクしました。
ところがです・・
中盤以降、このテーマは無視されてしまうのです。
あれ、それはもう扱わんの??
9話あたりからの展開はう~ん、個人的にはいきなり冷めてしまって、もう考えなくなったというか・・考える価値も正解もないかって感じになってしまいました。
すっきりしない終わりかた。
真道を殺さなくてもよかったんじゃないかなあ。
2クールにして、
「無尽蔵のエネルギー源」
「世界の気象バランスを正常化し、食糧生産を安定化させる方法」
「脳の潜在力を100%引き出し、疲れた脳を睡眠によらず取り去る方法」
なんて設定にして、そこから引き起こされる混乱を人類がいかにして
乗り越え、新しい経済体制を作り上げ争いをなくすのか、などというストーリーだったら画期的名作になったろうになあ。
異方の存在がどういう生命体なのかという謎もSF的に説明し、もちろん恋愛ネタも仕込んで(男同士はいらんから)。
まあ、監督にも脚本家にもなれない僕が言っても「ならお前がやれ」って言われそうですから(笑)。
酷評したい気分ですが、好きな方もいると思うので、カドが立たないように(笑)言葉を和らげて言うと、
期待値が大きかったために、ちょっと残念でした。{/netabare}