ブリキ男 さんの感想・評価

4.2
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

あたたかな洋食屋「ねこや」にて食の喜びを思い出す

毎週土曜日だけ入り口の扉が異世界と繋がってしまう大衆食堂「洋食のねこや」を舞台に、様々な事情を抱えた様々な種族の人？たちの料理を楽しむ姿が描かれるグルメアニメ。

物語の大体の流れは異世界に出現したドア（どこでもドアみたいな）を見つけ「ねこや」に迷い込んだ人が、そこで振舞われる料理に舌鼓を打ち感激すると言うもの（笑）ほぼ毎回異なるゲストキャラが登場し、物語前半にはそれぞれのキャラのバックボーンとなるショートストーリーなんかも添えられています。

サブタイにもなっている料理名をいくつか挙げると、カツ丼、じゃがバタ、オムライスなど、日本人の私たちには御馴染みのものばかり。奇抜な工夫を凝らした料理などは登場しない模様。

上の様な品目が異世界人に振舞われるのには恐らく理由があって、強い臭いを持つもの、酸味や辛味、苦味や甘味が際立っているもの等を極力除いているのではないかと思います。万人が好む料理というものは多分存在しませんが、※口当たりのいい料理というものはあるものです。子供の為に料理を作った事のある人ならよく分かると思いますが、店主の作る料理からはそういった思いやりが感じられます。

料理解説がやたらと詳細で長ったらしいのもこのアニメの特徴です（笑）これは視聴者に絵と音だけで味を伝える必要のあるグルメアニメ全般に言える事でもありますが、このアニメに限っては、私たちが普段から口にしている料理の内どれ一つを取ってみても、実に様々な食材からなる貴重な賜物であるという事を思い起こさせる意図あっての演出なのではないでしょうか。食育という言葉はちょっと似合いませんが、そんな色もそこかしこに見受けられる様でした。

ただ割と気になるのがお客同士のケンカのシーン。色々なアニメで散々見せられてきたシーンですが、いい加減うんざり‥。世の中には比べられるものとそうでないものがあります。料理は間違いなく後者。人が美味しいと言っているものを不味く感じる事もあれば、その逆もまた然り。

それぞれの料理にはそれぞれの良さがありますし、感覚も人それぞれ。なのでどちらが美味しいかなんて議論はどこまで行っても平行線、不毛なのです。

食への愛を語るのは大いに結構ですが、テリヤキとカツのどっちが美味いかなんて、作中の人たちが拘ったみたいな下らない理由で皆さんはケンカなんかしちゃダメですよ（笑）

キャラについて、メインキャラはナイスミドルの優しい店主とツノの生えたかわいい給仕のアレッタさん。落ち着きのある諏訪部順一さんの声と、かどの無い上坂すみれさんの声には癒されます。脇を固める声優さんたちも超豪華。大塚芳忠さん、杉田智和さん、伊藤静さん、日笠陽子さん、田村ゆかりさん他、そうそうたる顔ぶれ。毎週楽しみです。

飽食を極めた私たち日本人が当たり前の様に享受している食の喜びを、改めて噛み締めたくなる気持ちにさせられるアニメです。

いただきますとごちそうさまの言葉は常に忘れない様にしたいものですね。


※:全種族の味覚が人間のそれと近いという前提で。種族の部分を人種、国籍なんかとそっくり置き換えてしまえばすんなり納得出来る感じです（汗）


最後まで見終えて

みんなおかわりし過ぎ（笑）というのは見ていて微笑ましい光景ですが、嗜好の事でキャラ達が口喧嘩する場面が割と頻繁に描かれる所など、テンプレ表現、というか前時代的な表現がそこかしこに見受けられるアニメだったと思います。

とは言うものの表現は概ね明るく無邪気ですし、料理を楽しむ人達の笑いも絶えなかったので、辟易する事はあっても、不快な場面は一つも無かった様に思います。ねこやには終始和やかな空気がありました。

後半になるにつれて、キャラ同士の繋がりが深まっていく描写があったり、会話の中から世界観が徐々に見えてきたりと、構成は巧みで、全話見終える頃には、いつの間にかグルメパート以外の部分にも多くの面白さを見出す事が出来る様になっていました。

料理に関しても、最終話付近には定番メニューからちょっと外れた変り種がちらほら出てくるなど気の効いた演出があり、観ていて全く飽きを感じさせません。２期への期待も膨らみます（笑）

マスターさんにアレッタさんにクロさん、美味しい料理を毎週どうもありがとうございました。

感謝の気持ちを込めて、ご馳走様！