「劇場版 響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~(アニメ映画)」

総合得点
78.3
感想・評価
258
棚に入れた
1397
ランキング
552
★★★★★ 4.2 (258)
物語
4.1
作画
4.4
声優
4.2
音楽
4.3
キャラ
4.2

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ネタバレ

P_CUP さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

総集編詐欺

これはもう総集編じゃない。
1期総集編映画についても似たようなことを言った気がするが、こっちはそれ以上に総集編感がない。
発表時点で「いろいろあった2期を振り返る内容」と告知されていたことを思い出すと、これはタイトル通り、総集編詐欺である。
TV版カットを使用しつつ、そこに新規カットを相当数投入することで、原作3巻を元にした映画を1から作った、と言った方が近い。
なので、もし、2期のダイジェスト版を期待してる人がいたら(そんな人がいるのかどうかは置いておいて)この映画はおすすめしない。
だが逆に「なんだ総集編か。じゃあ見なくていいや」と思ってる人は是非見に行って欲しい。
{netabare}
まず、2期前半のメインテーマであった、みぞれと希美の件は全カット。
そして麗奈の恋心とか滝先生の過去についても全カット。
さらに出来事の時系列までも入れ替えてる。
そこまでして完全に「あすかの物語」に寄せ切った作りにしてきた。
それだけに、あすかの想いがきっちり伝わってくる。
もはや彼女は分厚い仮面に素顔を隠した謎の先輩じゃない。
いじらしい想いを抱えた、1人の高校生としての田中あすか像が描かれている。
故に、久美子の「先輩だってただの高校生なのに!」という叫びはTV版以上の説得力を持って響きわたる。

「届けたいメロディ」というサブタイトルも秀逸である。
メインヒロイン(とあえて言ってしまう)のあすかも、我らが主人公たる久美子も、「届けたい」相手が確かに存在している。
あすかにとっては言うまでもなく父親であり、久美子にとっては姉である。
音楽を始める切っ掛けとなった、いわば原体験を作り出した存在に、そのメロディを「届ける」ことによって、彼女らの、音楽にかけた青春は報われるのだ。

翻って、響け!ユーフォニアムというシリーズについての魅力も再確認させられる。
全体を見れば、これは北宇治高校吹奏楽部という集団を描いた物語である。
だが、集団というのは、突き詰めれば個人の集合体に過ぎない。
その個人とは、それぞれにそれぞれの「物語」を持っているのである。
65名(葵と希美を含めた、アニメ版準拠の人数)の誰にフォーカスを当てても、映画の1本くらい作れるのではないだろうか?
主要キャラは当然のこととして、エンドロールで「吹奏楽部員」とまとめて扱われている部員たち、
例えば1期では滝先生に泣かされていたが、最後にはお礼を述べて卒業して行った三原さん(フルート隊)はどうか?
チームもなか内にあって、滝先生への信頼度・心酔度が低そうな雰囲気を漂わせていた釜屋さん(パーカス隊)でも面白そうだ。
そう思えるくらい、この物語世界は豊穣である。

唯一不満があるとすればエンディング曲がサウンドスケープ(吹奏楽版)だった点。
あの曲は、北宇治吹奏楽部が、関西大会、そして全国大会へと突き進む、TV版2期全体を通してのテーマ曲としては相応しいものだったが、この映画のテーマ曲としてはどうか?
あすかが、その青春を終わらせて卒業し、物語が美しく閉じられた後で流れる曲として相応しかったのかは疑問が残る。
せっかく、河川敷での「響け!ユーフォニアム」独奏シーンを最後に持って来たのだから、そのシーンに続くように、吹奏楽版「響け!ユーフォニアム」へと繋いでエンドロール、という作りだったら完璧だった。


ちょっと言い忘れたことを追記

実は今回の映画を見るまで、あすかというキャラはちょっと苦手だった。
だが映画を見終えた今は大好きになった。
そしてこの変化自体、久美子のあすかに対する感情の変化をトレースしている
(トレースさせられている)ことに気付いて、鳥肌が立った。お見事。


さらにちょっと追記(原作話ですが)

この劇場版が久美子とあすかに絞って掘り下げて来たと思ったら、
原作者が前触れもなく、香織とあすかについての短編を投下したもよう。
原作サイトの「北宇治吹部だより」の第11回で読めます。
なぜ、あすかの鉄仮面を久美子は剥がせて香織は剥がせなかったのか?
その辺りが深まります。てかこれ、もし映像化したらえらいことになりそうなw


さらにさらに追記(劇伴曲について)

舞台挨拶で小川監督の話を聞くまでうっかり見落としていた点だ。
これは迂闊だった。そう、この劇場版、劇伴曲もTVからリニューアルされてる。
そして、鶴岡音監と、さらに山田尚子が関わってる映画の劇伴曲が
単に雰囲気を盛り上げるためだけのBGMであるはずがなかった。
今回の劇伴曲は大別してピアノ曲とストリングス曲の2種類に分けられており、
ピアノ曲が久美子の、ストリングス曲があすかの心象描写となっている。
この2つがラスト、2人の別れの場面で重ねられる。
ここで2度「響け!ユーフォニアム」の第1主題が奏でられるのだが、
それが一体、どの瞬間なのか、鑑賞される際は、注意して聴いてみて欲しい。
{/netabare}

投稿 : 2017/10/10
閲覧 : 365
サンキュー:

29

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