「イバラード時間(OVA)」

総合得点
56.5
感想・評価
14
棚に入れた
39
ランキング
7101
★★★★☆ 3.5 (14)
物語
3.2
作画
4.2
声優
3.2
音楽
3.8
キャラ
3.2

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Dkn さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

茨木の原風景 『イバラード』 “ラピュタ”と“耳をすませば”好きは頭に入れておくと楽しい。

前に「イーハトーブ幻想〜KENjIの春」をレビューした時から書きたいなと思っていました。

この「イバラード時間」は画家の“井上直久”さんが描く『イバラード』と言われる架空の地を巡る。

イバラードというのは、宮沢賢治が思い描く心象世界の理想郷『イーハトーブ』からきた名称。
「こんなところへ行ってみたいな」と思わせるような雄大で美しい世界が広がっています。

出身が茨木だという井上直久さん。幼少の頃に彼が見た畑や川、野原に丘や山々がモデル。自身の記憶を心のフィルターにかけエッセンスを加えて描いたもの。つまり想像したファンタジー世界ではなく身近にある原風景なのですね。世代が違えど懐かしいなと思わせるのは、少なからず見ている側にも同じような場所を思い描かせるからかもしれません。

絵からは、光や物の質感などを丁寧にとらえていることが見て取れます。

ただ写実的に描くのではなく、主線などを描かず硬質的になることを避けていて、まるで一番美しい瞬間を切り取ったような表現。絵画の歴史に関してここでは触れませんが、筆で点を打ち像を浮かび上がらせて形成されていく中で、光源や、日と共に動く影。風によって形を変える雲や草木を、表現しているのだと思います。

奥行きと緻密さ。思わず覗きこんでしまいそうになる高低差や浮遊感。手前に生活感があり、
遠方には巨大な建造物や飛行物体が描かれる。

地平の先まで世界が広がっていると思わせてくれますね。


――「それで、絵画を映像化ってどうやるの?」

正確にはアニメーションはあまりしないのです(笑)

あくまでイバラードの世界を楽しむ事が目的。絵自体はアニメーションでいう背景美術として扱われる。ただ、背景と言っても元の絵に描かれている人物や静物を動かすので“絵が動きだす”感覚が味わえます。これにより、絵との融合を見事に果たしています。

是非とも、絵を邪魔しないBGMや世界観に沿った丁寧なアニメーションに癒やされて下さい。


その昔・・プレイステーションでゲーム版が発売されたのですけど、当時の技術では再現が追いつかずストーリーも有ってないようなモノでした。今もう一回作ってくれたらなと思いますね。けれど、このイバラードをモチーフにしたようなゲームは既に沢山あるので難しいのかもしれません。

イバラード時間以外に絵本や漫画等も出版されているので興味持った方は調べてくださいな。


【↓ここからジブリ情報】

ちなみに、上述のゲーム版でタイトル画面に使われている絵は「上昇気流」


宮﨑駿さんが個展へ行き購入した絵だそうです。その絵は現在も宮崎さんが所有しているとか。この上昇気流に宮崎さんが惚れ込んだことにより「耳をすませば」のバロンと雫(しずく)のシーンへと繋がるようです。みなさん、どこだかわかりましたかね?・・あの場面と、あの台詞です(^^♪

他にも井上直久さんの絵を元にしたものが作中に沢山あります。勿論このイバラード時間にも上昇気流は収録されているのですが・・なんと! 上昇気流の2作目が三鷹の森ジブリ美術館に展示されています!宮崎さんが依頼したもので、絵の中には“あのキャラクター”が描かれていますね。井上直久とイバラード時間を知っていた人はそこでフフフ・・となるでしょう。他にも多数展示がありますのでお見逃しなく。

そして映像展示室「土星座」ではイバラードを題材にした「星をかった日」が劇場限定公開されてます。行かれるときは上映スケジュールを確認してからお出かけになって下さいませ。

最期に・・。「イバラード時間」この映像を見る上で楽しむ一つの方法として、ジブリが好きな方はこれが元になったのか~と探してみるのも楽しいと思います。元々、絵画やアートアニメーションなどが好きな方は存分に堪能して下さい。


なんだかジブリの回し者みたい(笑)

投稿 : 2018/05/16
閲覧 : 363
サンキュー:

6

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