「茄子 スーツケースの渡り鳥(OVA)」

総合得点
64.6
感想・評価
105
棚に入れた
393
ランキング
3638
★★★★☆ 3.8 (105)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.8

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ネタバレ

えりりん908 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ロードレースの楽しさを、どうぞ♡

高坂希太郎監督、言うまでもなく、アニメ界の重鎮のお一人ですけど、
意外なことに作画監督でのご活躍に比べると、監督作品は少ないです。

そんな高坂監督の、劇場公開アニメ「茄子 アンダルシアの夏」の、
続編にあたるのが、OVA作品として制作された本作です。
何しろ、アニメ界屈指のローディとして名を馳せ、
エリートクラスでレースに出て入賞まで果たしちゃうほどの自転車野郎(≧▽≦)
ロードレースを舞台にアニメ作ったら、この人にかなうアニメーターは、たぶんいないのですw

そして、{netabare}アンダルシアの夏では、単独でロングエスケープを仕掛けるレーサーの孤独や苦悩を、
家族や恋人の裏切りやチーム内でのいざこざとかまで絡めて描いたのとは対照的に、
この作品では、所属チームの年内での解散が決まっているのに、
選手はみんな明るく穏やかで、来年無くなるチームとは思えない程に、
みんな仲良しですw
その成果として、今回の舞台となるワンデイレース「JAPAN CUP」では、
ロードレースでのアシストの重要性がよく解る「チームプレー」が機能する様子が鮮やかに描かれます。

ヨーロッパ三大ツアーのひとつ、「ブエルタ・ア・エスパーニャ」を主戦場とするチームにとっては、東洋の自転車レース未発展国でのワンデイレースなんて、ちょっとした気分転換ぐらいなのかも知れないし、
個々の強さよりも、仲の良い選手を選出したという感じなのかも知れませんが、
そこに、日本でのサービススタッフ紅一点も加わって、
本当に、チームの輪がしっかりしていて、気持ちいい感じです。

では私が、この作品お気に入りなのに、なぜ感想書かなかったかと言うと、
実は、変速レバーの扱いと、連動するディレーラーの動きとか、
逃げグループとプロトンの関係性とか、
他のチーム同士で協調したり牽制したりとか、
レーサーの、洟をとばす仕草とかビンディングシューズの増し締めする仕草とか危険を後続車に知らせるハンドサインとか、
徹底的にディテールをきれいに描いていながら、
日本到着直後、宇都宮市内をチームみんなで足慣らし走行しているとき、
信号待ちしている選手が、サドルにお尻を乗せたまま、片足を路面に着けて止まっている仕草が不自然過ぎると思えてならなかったから。

スポーツ自転車のサドルの高さって公式があって、
股下長×0.875とか、
股下長×0.88とか、
股下長×0.894とか、
いくつか考え方はあるけど、サドルに腰かけたままでは足は路面に届かないと思っていたのです。
それが、去年の実際のレースをみているとき、覆りました。
グランツールで、ヨーロッパの一流選手がスタートラインに着いたとき、
サドルにお尻を乗せたまま、片足はしっかり路面に届いてる!
なんで?
ヨーロッパのレーサーは、違う公式でサドル高決めているの?
そんなセッティングで上手くペダリング出来るの?
結論は出てないままですけど、
どうもその映像を見る限り、少しお尻をずらして、車体を微妙に傾けて、
それで何とか足が着いちゃうみたいです。
不思議。でも、厳然たる事実。
これ見てしまって、まあこの作品に突っ込みは要らないわと納得して。
で。
やっと、何か書こうって。

お話は、来年には無くなるチームと到底思えない、和気あいあいとしたチームの、
主人公ペペが、この日のレースでは、
落車アクシデントで逃げが無理になった結果、アシストに徹すると決めて、
今年限りで引退すると前の晩に言ってきたチョッチを、
最後の最後にスプリント勝負出来るように引っ張りまくる、そういう展開です。
アシストって、地味っぽいけど、カッコいい!!
先頭交代しようとするチョッチを片手で制して、
「ここは俺の見せ場だ!」と前を譲らずにチームメイトの脚を温存させるプロ根性。
50km/hオーバーで走行するときの疾走感。
視界の悪い下り路面の恐ろしさ。

それから、これを忘れちゃいけない、
チョッチの先輩で、イタリアの英雄と称えられるマルコ・ロンダ二ーニの自死と、
その事件ゆえに、奇行に走るライバルチームのエース、ザンコーニの思い。
前にどなたかのレビューで読んだのですけど、
自死を罪深いことと考える欧州にあって、
ライバルをそういう形で喪ってしまって、それでも、それゆえに、
「どうだ!俺はこの地獄を生き抜いて走り切ったぞ、マルコのバカ野郎!」っていう清々しい態度は、千手観音の前で苦悶の果てに掴んだ、彼なりの結論だろうと考えると、胸が熱くなります。

{/netabare}秋の宇都宮の、紅葉が美しく映える市内や郊外の背景美術もなかなかです。

50分ほどの掌編、
ぜひご覧になって、そのカッコよさ、ご堪能ください!

投稿 : 2023/02/06
閲覧 : 174
サンキュー:

11

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