蒼い星 さんの感想・評価

2.3
物語 : 1.5 作画 : 2.5 声優 : 3.5 音楽 : 2.0 キャラ : 2.0 状態：観終わった

酷いアニメ(褒めてない言葉)

アニメーション制作：セブン
2017年10月 - 12月に放映された全12話のTVアニメ。

原作は、双葉社から書籍化されている、金沢伸明・作のケータイ小説。
作画/連打一人『王様ゲーム』
作画/栗山廉士『王様ゲーム 終極』
で、それぞれ漫画化もされている二冊のエピソードが一本のストーリーとして再構成されている。
監督は佐々木勅嘉。

【概要/あらすじ】

高校二年生の金沢伸明が、呉市（作者の出身地）がモデルと思しき土地に転校してきた。
伸明と仲良くしようとクラスメイトたちが接してくるが、彼の表情は暗く人との接触を拒んでいる。
それは、何かに怯えているかのように。
クラスメイトたちの計らいにより、クラスに馴染めるように体育大会のスウェーデンリレーのメンバーに選ばれた伸明。
クラスの中心である明るい少女・本多奈津子をアンカーに勝ち抜く二年一組。皆で喜びを分かち合った。
久々に楽しさを感じた伸明。願わくば、このまま何も起きませんように！

だが、その夜にやってきた。

「送信者：王様

　件名：王様ゲーム

　1 クラス全員強制参加です。

　2 王様から届いたメールの命令に24時間以内に絶対に従ってください。

　3 命令に従わなかった場合は罰があります。

　4 王様ゲームを途中でやめることは絶対にできません。」

二年一組の生徒全員を対象にしたメールが一斉に届く。
誰かのイタズラだろうと本気にしないし、
最初は、笑いながら面白半分に従ってみる。

だが、伸明は知っていた。王様の命令には絶対服従。
最初は、キスをするといった程度だが、命令内容は心を弄び生命をオモチャにするまでエスカレートして行く。
誰も逆らえない逃げられない。伸明も7ヶ月までは明るい高校生だった。
それが冗談みたいな王様ゲームによって、
恋人の智恵美や友人など前の学校のクラスメイト全員を失い、唯一人生き残ったのだった。

伸明は奈津子にも協力してもらい、公園にクラスメイトを集めて説得を試みた。
『みんなで一致協力して王様に立ち向かい、解決方法を見つけるべきだ！』

だが、夜中に呼び出されて機嫌が悪い。
（メールに従わなかったとして）罰を与える。とメールに書かれた数人が電話に出ない。
罰の対象として書かれていた友人の様子を見に行ったら首を吊って死んでいたとの証言もある。

恐怖心に駆られて耳を貸さないクラスメイトたち。更には王様ゲームに詳しいことで伸明を怪しむ皆。
伸明＝王様 であり、メールを送っている犯人！人殺し！としてリンチが始まる。
リンチで伸明に直接に暴行を加えていた佐藤勇一が突然に全身から血を噴き出して惨たらしく死亡する。
王様の命令に逆らうと罰は絶対であり、どこにいようが王様の目を盗むことも欺くことも不可能で、
死の制裁が与えられるという絶望を場にいる全員が思い知る。
(文面には、はっきり書かれてないが『伸明の邪魔をしてはいけない』という意味の命令を破った罪らしい)

次々と人が死に続けるデスゲームの中で少年少女の恐怖と葛藤が語られるのが、この物語である。

【感想】

原作小説は未読で漫画版二作のみ読了。主人公の名前が原作者と同じってのがアレ？て感じ。
そういや、江川達也も自分の名前を主人公に与えて酷い漫画連載してたけど9話で打ち切りでしたね。
『終極』ではキャラデザがリニューアルされているのですが、連打一人が作画の無印コミカライズでは、
伸明が真城 最高、大輔が高木 秋人、美咲が見吉香耶と外見の特徴が一致。
人気作品のバク○ン。のパクリではないか？という話までありましたね。
流石にアニメでは、『終極』同様にキャラデザがオリジナルになっていますけどね。

この王様ゲーム。モバゲータウンの最大ヒット作であり小説・コミックを合わせたシリーズ累計発行部数は800万部！？
アニメ化エピソード部分のコミック単行本は平均すると38万部ですか！凄いですね。
そんなにも売れている作品なのにアニメ化したら、酷評以外の感想がどこにも存在しないので興味が湧いてきました。

漫画とアニメと見ましたが、設定は『デスノート』『バトルロワイヤル』など様々な作品の要素をくっつけた感じで、
『バクマン。』に登場する漫画家が描いた邪道系の劇中劇みたいなストーリーですね。

王様に弄ばれ次々と命を落とす高校生たち。
極限状態で醜い本性を曝け出し傷つけ合う者もいれば希望をもって抗い続ける者もいる。
吊り橋効果の状況下で愛や友情や勇気が生まれたり壊れたりする。王様の正体探し。
悲惨なシチュエーションにワクワクして、次はどうなるの？と気になるのが、この作品の醍醐味なのでしょう。

ケータイ小説の性質上、閲覧数を稼ぐのが目的で毎回のストーリーにヤマ場を入れるのが義務的になっていますね。
現実世界では無い猟奇的なもの・性的な展開・作者が考える感動要素 など全部が横一列で扱われていて、
読者に驚いてもらうのが目的で衝撃的な展開を継ぎ足し続ける。
いわばポルノ映像と同じですよね。リアルでやっちゃいけない、不可能なことを劇中で登場人物が代行してくれる。
それを観て視聴者が興奮するという性質の作品。そこが人気の秘訣なのでしょうね。

しかし、ウケ狙い一辺倒にも限界がありますね。
ひとつひとつのシーンが読者・視聴者の興奮を呼ぶためのわざとらしさが露骨なので、
登場人物が涙を流して叫んでも、観てる側は“ポカーン”で泣けないんですよね。

シーンを盛り上げようと、それっぽい言葉を涙を流しながら喋らせてはいますが、
登場人物を殺すことを前提に不自然な行動が多いので、全体を俯瞰して見るとチグハグなんですよね。

疲労困憊の怪我人を堤防のへりに座らせて→案の定、海に落ちる→横に寝かせていれば落ちなかったでしょ？
→助けようと海に飛び込む主人公→水中で人工呼吸と心臓マッサージ（ﾅﾆｺﾚ？）→沈む怪我人
→また、助けられなかった！！号泣→　主人公は頑張ったし、可哀想！！()

代表的なのがこれで、登場人物の生命が主人公のために用意された物語の小道具でしか無いですね。
いつも主人公が、後悔して泣いていますし。

綺麗事を言ってクラスをまとめようと叫び続ける主人公ですが、彼の行動で少しでも良くなったことが何一つ無い。
『みんなを助けたい！』と言っていても無能で言動がチグハグな主人公・伸明が何故かリーダーとして持ち上げられ、
彼のために自分を犠牲にすることを厭わない者が唐突に出てくるようになる。

見せたいシーンありきで、そこに至るまでの伏線や心情の流れが雑というか特に無いままに、
作者がカッコイイと思うとか感動して欲しいシーンが次々と挿入されて、単に繋げているだけという。
それはファッション以外の何者でもなく、視聴者の思う違和感の正体がこれじゃないかな？と思います。

しかも主人公を作者と同姓同名にしてるがために、
展開もまた、主人公のために用意されたナルシシズムに満ちてるように見えますね。
本当に主人公が無能な働き者です。ご都合主義だらけのチート主人公も問題ですが。

主人公が王様に立ち向かって頑張ってるつもりでも、いい人描写を入れても、
無力すぎて何一つ実らなく達成感は存在しない。
そこに“ともだち”だの“俺はお前が好きだ”みたいにスイートな言葉で綺麗に化粧したつもりでも、
作者のナルシシズムに他ならないように思えてきます。

野球で例えれば全登板で6回10失点を繰り返してはマウンドでうなだれて悔し涙を流す投手を、
『お前がエースだ！』『お前についていく！』『お前はカッコイイよ！』とチームメイトが励ましていくという感じ。
15試合 0勝15敗 防御率15.00　のピッチャーをカッコイイと思えますか？彼はエースですか？
そういった感情移入に遠い対岸の盛り上がりを12回も繰り返してしまえば、流石に視聴者も飽きてしまいますね。
しかも、そのエースの名前が作者と同じというのだからギャグの領域ですよね。

もっとも、王様が強すぎて人間が何をやっても全部無意味で解決方法が一つも存在しないという背景があるのですが。
結局この作品で何をやりたかったのか意味不明、単に状況と次々と殺される登場人物が描きたかっただけで、
特に、これといった中身が存在しないのですよね。抗う頑張りがカッコイイとか思えるのなら、いざ知らず、
勝負になってないのは見ての通り。むしろ、視聴者が王様になった気持ちで登場人物が苦しみ死んでいくのを、
楽しむという、見世物ショー的なモノなのでしょうか？

王様の正体も物語のオチも酷くて叩く人が多い作品ですが、グロテスク自体が問題なのでは無いですね。
物語にテーマ性もバックボーンも存在しない、行き当たりばったりのウケ狙いの限界でしょうね。
物語全体の設計図があったり演出やキャラが秀逸であれば、誤魔化しようがあったのでしょうが、
その場しのぎ的な内容に終止したがために、作中の登場人物が流した涙の数に反比例して生命も話も軽いという問題。
プロの土俵で勝負するには、いろいろと足りてなかった原作を誤ってアニメにしてしまったというのが正直なところでした。


これにて、感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。