「魔法少女サイト(TVアニメ動画)」

総合得点
69.5
感想・評価
388
棚に入れた
1476
ランキング
1733
★★★★☆ 3.3 (388)
物語
3.2
作画
3.2
声優
3.4
音楽
3.2
キャラ
3.3

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ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1
物語 : 1.5 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

玉座にいる者

いつの間に、理不尽に殺し合いを強制される少女たちに「魔法少女」という名前を与えることが普通になったのだろう。
詐欺契約の飴玉のようなものとして、殺し合いへ引き込む罠の餌として「魔法」は便利に使いまわされているようだ。

視聴していて、なんとも居心地の悪い不快さを感じるのは、「不幸」の中であがく魔法少女たちの姿に、容易に視点を寄り添わせることの困難なゆがみを感じさせるせいだ。


「不幸」な日常に垂らされた蜘蛛の糸に縋り付くように、怪しげなサイトの提供する「魔法」に縋り付く少女たちだが、この「不幸」そのものに違和がある。

「幸せ」が、自身の能力で獲得する「満足」とは範疇の異なる、由来も知れずに到来する敬虔な多幸の経験であるように、「不幸」もまた、因果の定かでない理不尽な困難だ。
因果が明白であるならば、それは「不幸」ではなく障害だろう。

少女たちの陥っている困難は、明確に「他人からの攻撃/暴力」であって、因果関係に曖昧さはない。
極端な話、攻撃してくるものを排除すれば、それで解決するものだ。

泥沼のような澱んだ暴力の連鎖と閉塞感は、この明確な原因と対処法を、「不幸」という定義づけをして曖昧化する「詭弁」から生じている。

言い換えれば、少女たちを泥沼の殺し合いへと引きずり込みたいという作為が、因果と対象の明確な攻撃/反撃という当たり前の認識と対応を、得体の知れない「不幸」へと置き換えることを要求する。
恣意的に曖昧化された「不幸」は、「解決法」もまた曖昧化されて特定が困難であるかのように見せかけることになる。
さらには、「攻撃」を、誰もが持つことを避けられない「悪意」一般へと拡散して、特定可能な「加害者」を不特定多数の背後へと曖昧化する詭弁へと発展させる。

この「詭弁」を「魔法少女」たちがあまりに真に受けていることが、製作者のドラマありきの作為性を、どうしても強く想起させるのだが、それは本作に固有の欠陥ではない。

たとえば『Angel Beats!』でも、「神の箱庭に反逆する」というドラマを設定するために、反逆のリーダーの少女が、自分を殺した犯罪者を一切恨むことなく、犯罪被害の「運命」を与えた〈神〉の責任のみを問うという不自然に寄りかかって製作されていた。

このようにドラマありきの作為性を露呈させる未熟は、本作に特有ではない。
その作為を体現するのは、作中では「サイト管理者」であり、その頂点に立つ「女王」なのだが、彼女(?)らを、単純に少女たちを破滅させる敵役という視点で視聴しきれない印象が、居心地の悪い視聴感となって現れるようだ。


ゲームをやらないので多少の勘違いは大目に見てほしいのだが、最近のゲームでは、「提督」とか「プロデューサー」として、「他人を動かす」ことで得点を挙げる人気ゲームがあるらしい。
あえて意地の悪い言葉を使うと、「他人を働かせて上前を撥ねる」ことを競うゲーム。

もちろん、ゲームにおいては、ゲームキャラを「管理する」という「仕事」の成果を競っているのだという設定ではあるのだろう。
しかし、再度妄言を許してもらえるならば、「上前を撥ねる」ことの言い訳として「管理するという仕事である」と詭弁を弄しているようには見えないだろうか。
(直属の上司が「管理が俺の仕事だ」といって座り込んでいるのを、立派な仕事をしていると心から尊敬している社会人は、ここに居るのだろうか?)

本作のサイト管理人=女王が、魔法少女をコントロールする方便として持ち出す「不幸」の詭弁は、上前を撥ねてキャラをコントロールする言い訳として持ち出される「管理」とよく似ている。
してみると、魔法少女を「不幸」の泥沼の中で殺し合わせるサイト管理人は、ゲームキャラを「管理」して動かすように、魔法少女たちの殺し合いを見たいと欲望する視聴者と重ねあわされているのではないだろうか。

単純な敵役として女王=管理人たちを捉えきれない印象は、こんなところにありそうな気がする。

そうして、「詭弁」に安直にコントロールされる「魔法少女」にも、自堕落な視聴者の欲望を体現する管理者にも、安易にどちらにも落ちつけることのできない視線のぶれが、すわりの悪い視聴感になって現れてきたようだ。

上述のようなゲーム解釈が多少とも妥当であるなら、視聴者の娯楽のために殺しあう「魔法少女」は、もうすこし画面に登場し続けるかもしれない。

投稿 : 2018/06/23
閲覧 : 281
サンキュー:

5

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