「楽園追放 -Expelled from Paradise-(アニメ映画)」

総合得点
76.1
感想・評価
886
棚に入れた
4645
ランキング
723
★★★★☆ 4.0 (886)
物語
3.9
作画
4.2
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

こまたち さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

強いメッセージ性に惹かれる

2014年公開のSFアニメ

フル3DCGで制作されたSF作品。一応メカ・ロボットものにも分類される。環境汚染問題と人口の肥大化問題を背景に、地球を脱して宇宙に生活空間を映した人類と地球に残された人類が描かれている。ここだけ聞くと、おや?ガンダムか?と思われる人もいるかもしれないがこの作品は一味違う。なんと人類を電子化してバーチャル空間に身を移すという斬新な方策がとられる。そこではもちろん肉体(※アバターはある)はない。そして肉体から生み出される様々な欲望や苦しみ(病や寿命など)ももちろん皆無。社会貢献さえしていれば(永遠の)幸福の追求と生活の安定が保証される。そんな理想郷のような仮想社会の住人と荒廃し無法地帯となった地球で未だ生活を続ける人たちの生き方が色濃く対比されています。

本作の一番の評価点はその強いメッセージ性。現実社会への風刺や警告とも受け取れる。まず面白いのはこの作品で描かれている仮想社会は現実の我々が生きる管理社会の写し鏡であるということ。社会のために働かなければ生きていけないし、反社会的なことをやれば排除される。常に社会のご機嫌を伺いながら生活を続けなければならない。その恩賞として私たちは幸福を手に入れる。もちろんニート等の例外が現実社会にはあるから一辺倒にこうだとは言えない。ただ基本は同じ。この例外をなくしたものが本作で描かれている仮想社会というわけだ。

そこで問われていることは果たしてその社会において人間の”自由”や”幸福”があるのかということ。作中で”社会という檻に閉じ込められた奴隷”というような言い方で人間が表現されていたのが印象的。常に社会の目を気にしながら社会のためにせっせと働く。果たしてそこに自由はあるのか?そこに幸福はあるのか?そんなことを考えさせられる。まあ考えても仕方ないことではあるのだが…。現代において社会(政府)なしの生活なんて考えられないし、いまさら文明が原始時代に帰ることもできない。ただ、選択できるとしたらどうだろう?選択できる状況にいるならどうだろう?この作品で描かれている地球やその住人はまさしくそういう状況下にある。彼らの生き方や哲学を見聞きし、何を感じるか。それは人それぞれだと思う。私も未だに答えを見出せない。ただ、とにもかくにも本作の一番の魅力はそういった普段あまり考えないことについて再考する機会を与えてくれることにある。物語を追いながら哲学的探究を進める-。これが本作における一番の楽しみ方であり一番の面白さであると私は思います。

ちなみに本作で描かれる地球はまるで原始時代のような生活が続く星。ほとんどの人類が宇宙に生活圏を移したので秩序は崩壊。統一政府なんかはもちろんない。狩りをして、それを取引して生計を立てる-。そんな生き方をする人々が住む。もちろん生活の保障、安定性はない。仮想世界とは違い肉体があるため、生きるために行動を起こさねばもちろん死ぬ。でもそれは社会のためじゃない。すべて自分のため。結果も責任もすべて自分に返ってくる。さあ、そんな背景も踏まえて先ほどの問いを。”地球で生きることと仮想世界で生きること、どちらに”自由”がありどちらに”幸福”がありますか?ね、難しいでしょ?

また本作では永遠の命と寿命のある命、肉体のある生命と肉体のない生命との対比も並行して行われている。これまた面白い哲学的テーマ。さらにサブテーマとしては人間とは何か?といった根本的な問いまで問われている。長々と本作の魅力を語ってきたが、言葉では言いあらわせないほどそれぞれのテーマが微妙な関係を構築しており、そういった関係性がこの作品の魅力を十二分にひきたてている。もはや語るまい。制作陣に最大限の賛辞を贈り結びとする。

以上。

フル3DCG×ロボに敬遠せず多くの人に見ていただきたい。
文句なしの傑作

投稿 : 2018/09/08
閲覧 : 378
サンキュー:

8

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