「百錬の覇王と聖約の戦乙女(TVアニメ動画)」

総合得点
60.4
感想・評価
301
棚に入れた
1239
ランキング
5738
★★★☆☆ 2.7 (301)
物語
2.4
作画
2.7
声優
3.0
音楽
2.8
キャラ
2.7

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.9
物語 : 1.0 作画 : 1.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

戦記作品にもネタ枠にもなれない。

アニメーション制作:EMTスクエアード
2018年7月 - 9月に放映された全12話のTVアニメ。

原作は、ホビージャパンの『HJノベルス』レーベルから刊行されている、
作者・鷹山誠一によるライトノベルで原作イラストは、ゆきさんが担当。
漫画家・chanyによるコミカライズ版は、web漫画サイトのコミックファイアで閲覧可能。
監督は小林浩輔。

【概要/あらすじ】

時代も場所も定かではないが中世よりも遥か昔を思わせる世界。
一軍を率いる黒髪の少年がいた。

「狼」の氏族を束ねる宗主である彼の名前は、周防 勇斗(すおう ゆうと)
彼は、幼馴染である志百家美月(しもやみつき)と月宮神社に肝試しの最中、
御神体の鏡の間とスマートフォンの間に自身を挟んで合わせ鏡で自撮りしたところ、
日本語が通じない異国の世界・ユグドラシルへ召喚されたのだった。
勇斗が召喚された理由は、危機的状況にある「狼」の氏族を救うためなのだが、
救世主である「勝利の御子」どころか勇斗自身には何の力もなく、周囲の期待は落胆へと変わっていた。

それから2年後。彼は何故か通じるスマートフォンを使ってネット書籍などから得た、
人類が数千年培ってきた、この世界には存在しない戦争や産業など様々な知識を実践できる協力者を得て、
「狼」の氏族の危機を救い宗主の座を継いでいたのだった。

そして今、金髪の副官・フェリシア、銀髪の武人・ジークルーネなど、
勇斗を信頼する女性たち腹心が彼の傍らにいて、共に氏族を治め戦っていた。

【感想】

また、なろうか?と言えば、原作者はラノベを何冊も出しているプロの小説家らしい。
『異世界はスマートフォンとともに。』と同じ『HJノベルス』であることに、
この出版社は大丈夫か?と思わないでもない。読む人買う人がいるのだから趣味趣向は人それぞれだが。

作品の内容は、西暦が始まるより遥か以前の文明レベルの世界で、
現代日本人の主人公がスマホでググったり電子書籍で勉強した知識を元に、
軍人としても政治家としても無双。主人公は部下からも民からも慕われる少年王であり、
出てくる少女キャラの殆どが主人公にべた惚れで彼女らは主人公を称える台詞だらけという。

主人公は英雄扱いで部下は女の子だらけでモテモテで色仕掛けのサービスシーンありきで、
なんとも安易なアニメに見える。これを観て主人公になった気持ちになれば承認要求が満たされるのだろうか?
女キャラはエロ担当兼主人公に役に立つ技能持ちというわけで、
人柄云々より主人公に尻尾振って組織内で役割を持つことだけが存在意義ってことで、
形式的にじゃなくて精神的にも完全な主従関係に見える。
それは、スマホでのみで主人公と繋がった献身的な正妻・美月も同様なわけで男尊女卑っぽいような気がする、

主人公の周りの男キャラは女キャラと比較して扱いが更に数ランク下がり空気だったり老害の無能だらけで、
年配のおじさんが親子ぐらい年齢が離れた歳下の小娘上司に仕えて敬語が当然な世界。
有能扱いのおっさんもそれなりには存在してるけど、例外中の例外みたいなもので、

主人公>>>>ギャル>>>>>>>>>>>>>>おっさんや若者

と、作中の描写では「狼」の氏族内での登場人物の扱いにカーストが明確にあって、
発想がギャルゲやエロゲ並なのに軍事や内政の専門用語を乱発して中途半端に真面目ぶってるのが引っかかる。

『サラリーマン金太郎』も主人公がモテモテで主人公補正で強運とコネで仕事ができるマンではあるが、
あちらは失敗も少なくはないし立身出世モノではある。
立身出世といえば、太閤秀吉の歴史小説なんか織田家に仕官する前は針の行商人など職を転々としていたり、
信長に取り立てられてからは小物から始まり、武将として出世を繰り返して天下人に駆け上がる。
『国盗り物語』にせよ主人公が血筋によらずに偉くなる話では、出世前からじっくり描いたうえで、
立身出世に伴う様々な出会いや出来事を噛みしめるのがストーリーの肝なのではある。

だが、このアニメでは第1話では既に主人公は君主であり、
(主人公は自嘲しているが)借り物の知識で主人公無双を横目にハーレムメンバーが主人公万歳をしているだけである。
先人の未来知識で美味しいとこ取りで、知識を目に見える形にする過程の描写が作中には無く結果の羅列の繰り返し。
知識はあるだけでは意味がなく、伝授するにも教える技術を要するし、される側に理解力がないと無意味なのだが。

酷いアニメとしてネットで一時期話題になったが、そりゃそうだ。
現代から過去世界ユグドラシルに飛ばされるまでの下りを本編でやらずにOPアニメでやる。
原作は読んでもないのだが漫画では現代知識を再現する前後の説明や主人公の行動原理を語っているのだが、
アニメではそれすら省略して行動の結果だけを繋ぎ合わせるという構成なので、
視聴者は登場人物やストーリーに没入することなんて不可能ではある。
全12回で原作8巻まで詰め込むのに無理があるし、知識無双アニメであるのに、
作中では専門用語や固有名詞が並ぶものの、設定や知識の説明がアイキャッチでしかやっていない。
だから、ノリと勢いと借り物のスマホ知識で俺TUEEEEEしているアニメにしか見えない。

16巻も出ている原作小説を今更読む気にもなれないので、
単行本を売る気があるのか無いのか最新話まで全部web公開中の漫画版で確認してみたのだが、
主人公がユグドラシルという世界に召喚されて、役立たずとして蔑まれる身から部族の信頼を得る過去編の途中である。
比較すると、アニメ版では慣れない土地での食事で主人公が腹を壊したなどの苦労の数々も特に語られてもなければ、
『あのときは苦労したな』などと会話の端々にあがるのみなので、口先だけの苦労にしか見えない。

前宗主の息子でフェリシアの兄でもあるロプトとの精神的な交わり&関係の破滅と、
宿敵としての因縁ができるまでのストーリー。主人公が召喚されて第1話冒頭に繋がるまでの経緯も含めて、
役立たずだった主人公の変化や氏族内での人間関係の変遷をせめて1話まるまる使うべきなのをこともあろうか、
此のアニメではアバンのサービスシーン1回とルーネとの模擬戦&殺害事件の短い回想2回だけで処理している。

だから、主人公の積み上げてきた実績や周囲から得た信頼、
再登場したロプトの主人公への敵愾心などが描写不足・説得力不足ではあるし、
描写不足と言えば、主人公配下の男武将と敵の切り札武将との一騎打ちの省略など合戦シーンは迫力皆無で、
元々が戦記物としてのこだわりが薄い上に、萌えない女キャラでエロコメっぽいことやらせて客引きをしようとする、
そんな、スタッフの志の低さから恵まれないアニメではあるのだが、
特に悪い部分として、雑で説明不足なうえに媚び売りまくりな構成のシナリオ作りが、
そのままアニメ版の欠点になっている。
読んではいないんだけど、作者の知識が間違ってるの指摘もある原作そのままにアニメ化してもグダってたかもだから、
1クール向けに編集したのが悪いとも言い切れないけどね!

低予算で作画がイマイチなのを鑑みても良い作品作りをしようという熱意が、このアニメには存在しない。
ぬるい考えで適当に作られたアニメなのを視聴者に見透かされているのも不評の原因ではないのか?
単なるビジネスでやる気のないアニメを作るぐらいなら、もっと有意義なお金の使い方があるのではないか?
と思わないでもなかった。まあ、良いスタッフを揃えれば良くなったとは言い難いし、
メインスポンサーがホビージャパンと自社枠アニメなので、
業界の関係で偶々アニメ化された粗製濫造アニメの一例として、どうでもいいものを観てしまったと正直なところである。

・最後に素朴な疑問!

スマホ代を2年間払い続けてくた美月もそれが不可能になってしまって、
これからどうするんだろう?スマホ使えないんじゃ主人公がただの少年じゃん!と思ってたら、
実は美月がバイトして支払ってるという名目で、主人公とギクシャクしてた父親が本当は払っていたというのが、
原作者のツィートで発覚。え?これ重要じゃないん?アニメ未登場の父親が実は最終回で主人公と和解してるのに、
主人公と美月のイチャイチャデートには潤沢に尺を使うくせに、主人公と家族の関係とか大事な部分までカットするの?
ってことで、本当にダメなアニメだなと思ってしまった。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2018/12/12
閲覧 : 469
サンキュー:

40

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