「ARIA The ANIMATION-アリアジアニメーション(TVアニメ動画)」

総合得点
88.5
感想・評価
1814
棚に入れた
9539
ランキング
106
★★★★★ 4.1 (1814)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.0
音楽
4.3
キャラ
4.2

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

理想と現実の絶妙な配分

いわゆる「癒しアニメ」というカテゴリに分類されるアニメだろう。この手のジャンルの作品に共通してるのは、徹底的に「敵」を排除した舞台設定だ。
「敵」というのは武器を持って襲ってくる者のような直接的なモノも指すし、仕事の上での苦労や、自分の抱える悩みといった、抽象的なモノも指す。

これらを舞台上から消し去ることで、癒しだけを追求できる理想的な空間を創り上げ、視聴者を辛い現実から一時的に解放し、ささやかな安らぎを与えるのが癒しアニメであると勝手に定義付けてみる。

しかし、行き過ぎた理想郷は現実味を奪い過ぎる。
創作は自分があたかも体験したり、そこに実在しているような気になり、没入して楽しむものであり、
「あくまでファンタジーだけど、何処かにきっとあるはずだ!」というような最低限の現実味を保たないと萎えてしまうのだ。

この話を踏まえて、私はARIAは非常に優れた作品だと思えた。舞台は、その殆どが水に覆われた惑星「アクア」に存在する、実際のヴェネツィアを模した「ネオヴェネツィア」であり、どこを取っても神秘的で、まさに理想郷のような空間だ。しかし、それを創り上げるために、長年にわたる惑星地球化改造(テラフォーミング)が行われ、その過程に起きてしまう、現実に報道されるような不慮の事故も珍しくはなく、尊い犠牲が確かにあったことを作中で描いている。これにより、今描かれているネオヴェネツィアという舞台が存在していることに、掛け替えのない思いを抱き、より一層の没入感が強まるのである。

また、主人公はネオヴェネツィアをゴンドラという小舟で観光案内することを業務とする、この世界の女性の花形職業とも呼べる「ウンディーネ」の見習いである。可憐な制服を着て、ゴンドラを麗しく漕ぐ姿は、ファンタジーにおける理想そのものだ。
しかし今作では、その部分においても、障壁を描いている。ウンディーネ には階級があり、物語が始まった段階で主人公はまだ、指導員の同乗無しでは、お客様をゴンドラに乗せることが出来ない、「シングル」なのだ。その上の階級「プリマ」は厳しい試験を合格しなければいけない狭き門で、また、「シングル」のその下の階級、「ペア」への降格も場合によってはあり得る。そういった背景から主人公はほぼ毎日、同世代のウンディーネたちと鍛錬を重ね、時には先輩たちからの厳しい指導も受けている。

このような一見、「敵」を廃したような理想郷に、現実と同様の厳しさを残すことで、今作は癒しアニメというカテゴリの中でも、かなり高い没入感を与えてくれ、不都合を一切取り入れず、理想郷だけを追求した他作品とは、一線を画した癒しを味わうことができるのだ。

唯一物足りなかったのは作画。
決して悪いわけでは無いが、どうしても華やかというには少し美術力が欠けている気がした。
とは言え、水面の表現や、夜に浮かぶ燈は綺麗だし、高尚な音楽のおかげもあって、舞台そのものは非常に魅力のあるものとなっている。

投稿 : 2018/11/22
閲覧 : 296

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