「リズと青い鳥(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
547
棚に入れた
2284
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (547)
物語
4.0
作画
4.3
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ムムッ!出たな、怪人シロ眼鏡!

原作は未読だけど、TVアニメ版は第1期、第2期とも視聴済み。

何やかんやで映画館には見に行けなかったけど、BDを購入して、ようやく視聴できました。
そして、比喩と対比に秀でた演出を少しも見逃したくなくて、何度も何度も視聴しています。

チョット熱めのレビューになりそうだったので、タイトル”だけ”は遊んでみました(笑)。
本当は《比喩と対比に秀でた作品》とかにしようとも思ったんですけどね。

『響け!ユーフォニアム』の劇場版第3弾。
ただし、完全新作としては初めての作品となります。
(劇場版の第1作と第2作は、総集編みたいな作品でしたからね)

【今作の主役は・・・】
{netabare}TVアニメ版で描かれた北宇治高校吹奏楽部には、3人のエースがいました。
ユーフォ担当のあすかとトランペット担当の麗奈、そしてオーボエ担当のみぞれ。
全国大会出場を果たしたのも、この3人の力によるものと言っても過言ではないと思います。
強気なエースのあすかと麗奈とは対照的に、無口でおとなしいみぞれが今作の主人公です。{/netabare}

【驚くほど男性が登場しない作品】
{netabare}男女共学なのに、男性部員もいるのに、ほとんど男性を見かけない、不思議な作品。
滝先生と橋本先生、担任の先生以外、男性の声を聞くことも無い、不思議な作品。
(恐らく)男性なんて眼中にない、『みぞれ目線で描かれている作品』であることがうかがえます。{/netabare}

【そして、もう1人の主人公・・・】
{netabare}もう1人の主人公は、南中時代にみぞれを吹奏楽部に誘った、フルート担当の希美。
彼女は、みぞれとは対照的に、明るく人付き合いの良い性格です。

そんな希美が、みぞれにとって『何よりも大事な心の拠り所』というのが本作の重要なポイントになります。{/netabare}

【2人の関係を関係性を、分かりやすく表現した導入部の演出は見事!】
{netabare}本作の冒頭。
一足早く学校に着いたみぞれが、階段に座って希美を待っているシーン。
すぐに靴音が聞こえてきますがみぞれは無反応。
やってきたのは希美ではなく別な生徒。
さらに、その後、別な靴音が聞こえてきます。
大きく目を見開いたみぞれは、靴音の方へ振り返ります。
そこには、さっそうと歩いてくる希美の姿が!

昇降口で下駄箱から上履きを取り出すシーン。
上履きを無造作に足元に放り投げる希美と、対照的にそっと足元に置くみぞれ。
ところが、希美が下駄箱の角を触りながら通り過ぎると、同じところを同じように触りながら通るみぞれ。

廊下を、背筋をピンと伸ばし、手を振りながら跳ねるように歩く希美と、あまり手を振らず静かに歩くみぞれ。
一見、2人の歩くペースは全く違って見えるけど、2人の差はほとんど広がらない。

開始数分の、この冒頭のシーンを見るだけで、みぞれと希美の性格や2人の関係性が、よく分かります。{/netabare}

【まあ、本当は{netabare}絵本の中の{/netabare}シーンから始まるんだけどね(笑)】
{netabare}絵本のような色鮮やかで優しいタッチの絵本の中の世界。
まさか『BDの中身が違う!』とまでは思いませんでしたけどね(笑){/netabare}

【TVアニメ版の1、2年生が進級して、新1年生が入部して・・・】
{netabare}本作において一番大きいのは、オーボエ担当のみぞれに後輩が出来たことでしょうか?
剣崎梨々花。
彼女の人懐っこさと根気強さが、みぞれの成長を促していきます。
本作の序盤から中盤の立役者です。
みぞれと梨々花のオーボエのアンサンブルのシーン以降、物語が大きく動き始めます。{/netabare}

【みぞれにまつわるTVアニメ版の第2期第5話との対比】
{netabare}『(コンクールのことを)たった今、好きになった』
第2期の第5話のエンディング。みぞれが満面の笑みを浮かべながら言った言葉。
しかし、この作品の序盤。みぞれは全く真逆の言葉を呟きます。
『本番なんて、一生、来なくていい』

みぞれにとって、希美に聞いてもらうことを想像しながらする練習こそが至福の時、というせいもあるでしょう。
第2期の第1話で紹介されたように、みぞれはいつも音楽室に一番乗りするほど練習好きです。

しかし、最大の理由は別にあると思います。
『本番の終わり』は『卒部』を意味し、『希美との別れ』を連想させるせい、というのが一番の理由?

今年のコンクールの自由曲の見どころは、オーボエとフルートのソロの掛け合い。
言うまでもなく、担当はみぞれと希美。

ところが、2人のアンサンブルは、滝先生のみならず、周囲からも心配される程、上手くいかない。
一番の原因は、いまいち乗り切らないみぞれと希美の心の中にあるようです。{/netabare}

【希美サイドの物語を大きく動かす、「後輩」と「スカウト」!?】
{netabare}みぞれをプールに誘う希美。
「ねえ、希美。他の娘も誘っていい?」
みぞれの申し出に、希美は『珍しい』って言ったけど、本当は初めてだったのでは?
みぞれに自分以外に大切な人が現れたことに対する、希美の『嫉妬』がうかがえます。
もっとも、希美自身は全く気付いていないようですけど・・・(笑)。
だから希美は、『みぞれが自分によそよそしい』って感じてしまう。
『1年生の時に1回吹奏楽部を辞めたこと』
これは希美にとっても大きなトラウマ。
「これが原因で、みぞれがよそよそしいんだ」と勘違いしてしまう。
本当は、知らず知らずのうちに、自分の方が距離をとっていることに気付かずに。

もう一つの大きな出来事は、新山先生によってもたらされます。
みぞれが新山先生から音大に『スカウト』されます。
初めて聞かされた時、希美が『スカウト』の重みを計り知れなかったは致し方なかったと思います。
だから、みぞれに対して『私も音大に行こうかな?』なんて、軽々しく言ってしまう。

「私、音大受けようと思っていて」
「あら、そう。頑張ってね」
新山先生の、当たり障りのない社交辞令な返事。
みぞれにマンツーマンで指導する新山先生。
それを見つめる希美の心中には、今度は希美にもはっきりと感じられる『嫉妬と羨望』の感情が・・・。{/netabare}

【物語を大きく動かすのは、北宇治高校吹奏楽部のもう1人のエース】
{netabare}この状況を黙って見逃せないのが、新生・北宇治高校吹奏楽部のもう一人のエース、麗奈。
「すみません。実は自由曲のオーボエソロがずっと気になっていて」
「先輩、希美先輩と相性悪くないですか?」
「なんか、先輩の今の音、凄く窮屈そうに聞こえるんです。わざとブレーキ掛けているみたいな」
麗奈ならではの表現で、みぞれに問題点を伝える麗奈。
「でも、私は先輩の本気の音が聞きたいんです」
みぞれの抱える問題点はみぞれ自身で乗り越えるしかない問題点。
麗奈は、自分の希望を伝えることで、それを促そうとする。

麗奈の行動はこれだけでは終わらない。

麗奈は、ユーフォニアムの久美子を誘って、校舎裏でみぞれと希美のソロパートを演奏します。
この演奏をみぞれと希美が聞いていたのは偶然ではないでしょう。
肝心なことを言葉で伝えることが苦手な麗奈ならではの伝達方法。{/netabare}

【誰がリズ?誰が青い鳥?】
{netabare}みぞれと希美。
初めは、2人とも同じことを感じていた。
『みぞれがリズで、希美が青い鳥』
ところが、そうじゃないってことに気付いた2人。
さて、この作品の中で2人が導き出した回答は・・・???

実は、この結論って、作品のなかではキチンと描かれていませんよね。
視聴者に委ねられているというか・・・。

私なりの解釈は・・・、
{netabare}みぞれにとっては、リズも青い鳥も、どちらもみぞれ。
希美にとっては、リズも青い鳥も、どちらも希美。
絵本の中のリズと青い鳥を、どちらも本田望結ちゃんが演じたのは、その象徴なのでは?って。{/netabare}

きっと、色々な解釈があると思うんですよね。
あえて正解を描かない演出って、素敵だと思います。{/netabare}

【圧巻のオーボエソロ】
{netabare}いよいよ、『怪人シロ眼鏡』登場ですね(笑)。
私のような素人が聞いていても感じることの出来る迫力ある演奏。
言うまでもなく、本作の見どころの一つです。

演奏終了後の先生たちや部員の姿からも、圧巻の演奏であったことがうかがえます。

演奏中、思わず涙を零す希美。
これは寂しさからくる涙だったのでしょうか?
これは悔し涙だったのでしょうか?
どちらにしても、周囲の人たちとは違って、ただの感動の涙ではなかったことだけは間違いないと思います。

覚醒したみぞれの演奏を聴いて、初めてみぞれの旅立ちを悟った希美。
自分では辿り着けない表現力を見せたみぞれに抱いた、希美の思い。{/netabare}

【山田尚子監督の真骨頂:随所に散りばめられた比喩と対比】
{netabare}今作も、足を使った感情表現の手法は、完璧でしたね。
それとともに、作品の中の至る所に散りばめられた比喩と対比の表現も完璧。
視聴を繰り返すほどに、新たな発見があるほどです。
このきめ細やかさ、丁寧さは、さすが京アニ、さすが山田尚子監督です。{/netabare}

【らしさを見せた他の登場人物。ただし久美子以外は・・・(笑)】
{netabare}デカリボン優子とポニテ夏紀は、みぞれや希美と同じ3年生で同じ南中出身。
2人とも、良い味を出してましたよね。

北宇治カルテッドの麗奈も強気キャラ全開だったし、葉月とサファイヤも癒しキャラ全開!

だけど、久美子だけは影が薄かったような・・・(笑)。{/netabare}

【キャラデザについて】
{netabare}この作品を見た後でTVアニメ版を見ると、TVアニメ版のキャラデザは少し子供っぽいように感じました。
そう思うと、本作のキャラデザは大人っぽいのかなぁ・・・と。
少女から大人への成長を描く本作では、このキャラデザで良かったと思います。
少なくとも、誰が誰だか分からないようなレベルでは無かったし(笑)。{/netabare}

【最後に】
こうやってレビューを書いた後も、繰り返し視聴が止まりません。
『響け!ユーフォニアム』という作品は、本当に奥深く、中毒性のある作品今後もこの作品から目が離せそうにありませんね!

投稿 : 2020/08/06
閲覧 : 580
サンキュー:

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