をれ、 さんの感想・評価

3.8
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態：観終わった

恋愛を通して描いてあるけど、恋愛物語ではないような気がした。

以下、この物語への私の感想は、素人視聴者の勝手な解釈です。

この物語は、ケガで陸上部を引退した高校生女子がファミレスで雨宿りの最中にそこの店長に恋心を抱くところからはじまります。しかし、この始まりは、私のようなリアル不充実だった中高年男性的には、猛毒ｗです。この少女と自分のアバターとしてのおじさん店長の恋愛物語を、特にドロドロしたそういうものを期待してしまうからです（キモイですねスミマセン）。本作は、そういう期待ｗとは真逆の爽やかな物語です。でも話題性を高めるためにこの設定からお話を作り始めた感はありますよね。
　恋愛経験の少ない女子が恋愛に憧れ、恋愛で障害のある対象を選んでしまうことは、少女漫画だったらよくある話だと思います。この場合の障害の状況は、少女が大人の男性の包容力のような未知なものに惹かれ、中年男性を社会的な規範から逸脱させる危険に晒しているのみならず、やがて捨てられる未来を想像させて戸惑わせ凹ませるという心理的ダメージまで与える、といったところでしょうか。
　このヒロインのあきらのコミュ力は、好意を持って接してくれている陸上部の幼馴染と仲違いしてしまうところなどから、それほど高くはないと思います。そして周りの意見を受け入れないので、我が強く思い込が激しい性格なのではと思います。それで、それが故に不器用で後先考えられずに、件の店長に憧れてしまうのかもしれません。
　物語の結末であきらは結局この恋のようなものを諦めて、思い出にしてしまったと私は解釈しています。それは、最後の踏切の場面で、店長に向かって走っていくのは現実ではなく、あきらの心の中での情景だと思うからです。だからと言ってこの恋の（ような）経験が無意味に終わったわけではなく、二人は各々のやり残していたことに、これまでよりもより多くの情熱をかけることができるようになります。ヒロインは陸上に、店長は昔の情熱を思い出して純文学小説書きに。そのきっかけになったのがあきらの恋心だった訳です。以上が私の勝手な解釈ですが、この物語の結末は自然で納得できます。だからこの物語は恋愛を通して描いてあるけど、恋愛物語ではなく人間の成長/変化の物語の気がしました。