「RErideD-刻越えのデリダ-(TVアニメ動画)」

総合得点
60.8
感想・評価
149
棚に入れた
558
ランキング
5593
★★★☆☆ 3.0 (149)
物語
2.8
作画
3.0
声優
3.2
音楽
3.1
キャラ
3.0

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ネタバレ

とーとろじい さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

なぜ『RErideD』が駄作なのか

感想を書こうか迷ったが、一応書こう。
本作は残念ながら駄目なアニメの典型である。
時間跳躍、タイムループものというのは基本的に設定が難しく、理解させるために技術が必要だと思うのだが、本作はそれができていない。ところで現在、タイムループものをやるというのは、かなり勇気のいることだろう。『うる星やつら ビューティフルドリーマー』やハルヒなど、時間を操作するSFの類型はアニメ文化に脈々と生き続けているが、2011年に『Steins;Gate』がヒットし(まどマギもそうだが)、タイムループものに求められるストーリー構造は年々難しくなっている気がする。例えば2018年夏アニメの『ISLAND』はかなり複雑だったし、『君の名は』もわざわざ時間をずらすなど工夫を凝らして、タイムループものに新鮮さ(いわばその類型から少しズレること)を付け加えている。このように、タイムループもの自体が繰り返されている時代のなかで、時間跳躍を売りにしてヤルとなると、ある程度の緊張感を持ってヤッてもらいたいのだが、本作はその期待に応えられてはいない。いや、構造自体は悪くないのだが、満足のいく作品として仕上がっていない。
私が思うに、アニメ文化のタイムループものの消費続きによる、斬新さや複雑さの要求が、結局作品の首をしめてしまっているのではないか。ISLANDでも本作でもそうだが、1クールで複雑な世界観や時間跳躍の設定を持ち出されても、その説明や説得の時間が足りないし、かといって2クール分の尺も資金的に取れず、かといってこのご時世ありきたりなタイムループではいけないし、という具合に。

タイムループするタイムループもの、繰り返されるたびにハードルの上がる物語類型……確かに不幸な話だが、ともあれ出来上がったものについては語ってあげなければ、安倍先生(lainや灰羽でもお馴染みですが)にも申し訳ない。
どうやら小説版では幾分かアニメにはない説明があるようだが、アニメだけを見ると、アンジュという存在(デリダと姉!さんが生きてる世界線のマージュ)がなぜ出てきたのか謎だし、マージュによる幾度も行われた過去改変がどんなものなのかわからない。マージュ視点が抜け落ちているため、かなりワケワカメにならざるを得ないし、マージュがどんな女の子なのか(まさにキャラクター)も不足してしまうし、最終回にドンッと大盛りの設定を出されても視聴者は消化できない。駄目アニメによくある最終回の大盛り一丁である(私の経験上、小説書き始めの人もこの手の「最後にびっくりさせたるでー」をかまして駄作を生み出してしまう傾向がある)

細かい描写の粗雑さ(ピタゴラスイッチ式冷凍装置室ダイブ、マッチョおじさんさいつよ説、ヘリからの攻撃が無効化されるえげつない車)はともかく、これはまさにセカイ系なのだと思った。本作においては、少女と男主人公の理由(きっかけ)のない恋愛関係(男にとって都合のいい女性像、勝手に好きになってくれる女性)が何よりも優先的な部分であり、そのほかの世界に関する事実は希薄であり抽象的である。例えば国家間はどのような関係にあるのか、政治はどう機能しているのか、産業はどうなっているのか、人口は?などなど不明瞭な点は多い。特に、謎の機関が話し合いをし、町を破壊しようとするが一体どれだけの利益が彼らにはあるのだろうか(ただでさえ人口少なそうなのに、住民を巻き込んでまで。そのあと開発や持続は可能なのか)。ロボット開発企業と国家との関係も(説明はあるものの、人と人とが交渉を行う場面や政治家の姿は描かれない)漠然としているが、戦争とはこの作中世界ではどのような事態なのか(それは誰が得するのか、誰が直接参加するのか)はっきりしない。
世界を救うと言うときの世界は一体何なのか、セカイ系の例に漏れずぼんやりしているが、私がこの点を問題視するのは作品のメッセージとこの点が関わると思うからだ。というのは、この作品のメッセージは、世界をよくするために個人が理想の世界像を選び取ること、の推奨であろう。化学やテクノロジーの進歩への批判検討もそうだが、我々は、政治や社会情勢が戦争に向かおうとしていないかチェックし、批判精神を持って生きる必要がある、というような制作者の声が私には感じられるのである。それは政府の下っ端の言った「社会は行為の積み重ねに過ぎない」という固定的、静止的な見方に相対するデリダの叫び「何を成すかじゃない。何を求めるか。何を願うかなんだ!」という前向きなセリフにも表れている。自分の理想の社会像を持つこと、恥じずに冷笑的にならずにそれを求める(希望する)ことの肯定だ。これはキャラクターデザインを担当した安倍先生がリベラリストだということも関係しているかもしれない。こうした批判意識を掲げるならば、それこそ政治や国家のあり方を具体的に描くことが肝要ではないか。個人間のつながり(それも男と女の型通りの恋愛関係)ばかりに注視していてはいけないのである。国と企業が戦争で儲けるという紋切り型の説明で終わらせず、作中における世界の地理的状況、蠢く権力者の姿(それは決してあのトランプのようにアホなキャラとして風刺・劇画化するだけではいけない)を描かなければならない。これは作品の思想から当然的に要請されるべきことだ。

と、厳しいことを言いましたが、語るだけのエッセンスは持っている作品だと思います。というより駄目駄目なアニメこそ語らなければならないのです。ちなみにSF小説『夏への扉』が着想元?らしいですよ。私は知りませんが……!

投稿 : 2019/02/05
閲覧 : 425
サンキュー:

7

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