「NieA_7-ニア・アンダーセブン(TVアニメ動画)」

総合得点
65.9
感想・評価
142
棚に入れた
774
ランキング
3026
★★★★☆ 3.7 (142)
物語
3.7
作画
3.5
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.8

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ネタバレ

ドリア戦記 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.5 作画 : 2.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

作家の裏庭

一見すると脚本が灰羽連盟の安倍氏とはわからないかもしれない。

なんでこんなアニメ作ったのだろうなあという疑問が私の中で付きまとう。
出来が悪いというのではなく
灰羽連盟に付き物だった傷つきやすさや繊細さをどこかで忌避している作風。
なにかそういう繊細さを作り手が恥じている感すらある。

宇宙人で最下層の出身のニアは差別されるだけでなく戸籍さえない。
世の中からいないことになっている「透明な存在」。
でも「かわいそう」なんて言葉をうっかり使ったら
ぶっ飛ばされそうな野性児の逞しさと図太さがある。
盗みもカタリも物乞いもなんのその。生きる為には何でもする。
陽気で懲りない手に負えない反逆児のいたずらっ子。
インドや東欧のストリートチルドレンよろしく
他人が憐憫することを拒絶するキャラになっている。
なるほど憐憫はある種の優越性の確認でもある訳だから
誇り高く生きているニアに同情するような作りや設定は許されないだろう。


対する相棒の貧乏苦学生のまゆ子も恵まれているとは言えない。
ただまゆ子は金に苦労しながらも大学に行って卒業さえすれば
未来は明るいであろうという展望がある。
この何だかわからないが懸命に努力すれば
未来はそれほど悪くないだろうという展望を個人が持つのが昭和の特徴でもある。
平成に入って放送されたエヴァはその展望すら挫かれている。


まゆ子とニアは同じように貧困だが置かれた環境は違う。
物語は青春の無駄にグダグダ時間を過ごす感と
他人と自分を無為に比較してつまらないことと分かっていながらも
悩んでしまう開き直れない痛々しさを孕みながらも
2人の主人公のドタバタ劇と共に過ぎ去った日を懐かしむ色調で進む。


ストーリーの起伏は本当に何もない。日常を描写しただけの作品なのだが
物語が終盤になり、その日常が過ぎ去って見ると
日常こそがかけがいのないものであったことが実感できる。
青春は二度とない。時間は戻らず無慈悲に進む。
物語は時間の不可逆性を感じさせる作りになっている。


ただ難を言えば、作り手が自分の繊細さを恥じて何とか誤魔化そうと
無理している感がどうしても漂う点。
キャラは弾けているけど、無理して弾けているが伝わってきてついていけなくなる。
ギャグも盛大に滑っており、洒脱なユーモア感覚があると思えない。
しかしそれこそが青春の痛々しさであるというテーマでもある。
やせ我慢と言っていい。
「わかるよ。そういう自分が嫌いだったんだろう」と言いたくなるが
「別にいいんじゃないかな。
少し自己陶酔的なところがないと灰羽連盟のような作品は作れないよ」
と言いたくもなる。


またどうしてもかわいそうな境遇の主人公を描いてしまい
そういう人物しか本気で描けないというのも分かる。
ただ特に社会的な意義を求めようとする意識がある訳でもないだろう。
己のままに描いているようにしか見えない。
どちらかというとクリエーターとして問題は
「かわいそうな自分」という認識に耽溺してしまいがちな点である。


クリエーターが何か作品を生み出そうとする時
あるがまま、自分の個性を作品に叩きつけることがままあるが
どこかで報われないどうしようもない
自分のドロドロとした衝動を発散しようとする「ダメな自分」を客観視する姿勢がないと
万人にはウケにくい作品になる。

「かわいそう」な自分を投影した自己憐憫への耽溺とクリエーターとしてプロ意識を持ち
作品や自分を客観視しようとする葛藤が作品の背後に透けて見え
なんだか痛快な娯楽作品を見たというよりは
見てはいけない人の秘密を見てしまった感があるのはこのせいなのか。
生垣の隙間から裏庭越しに風呂でも覗き見るような気分にさせてくれる。

まあ作家とはそんな生き恥をさらしていく生き物なのだろうけど。

投稿 : 2019/11/14
閲覧 : 602
サンキュー:

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