「けものフレンズ2(TVアニメ動画)」

総合得点
57.2
感想・評価
320
棚に入れた
760
ランキング
6883
★★★☆☆ 2.5 (320)
物語
2.0
作画
2.5
声優
2.8
音楽
2.9
キャラ
2.4

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キャポックちゃん さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.5
物語 : 1.0 作画 : 1.0 声優 : 2.5 音楽 : 2.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

子供向けを装った子供だまし

 放送開始前から悪い意味で注目された作品だったが、実物は予想の遥か斜め上を行った。第1期が「子供向けを装った大人の寓話」なのに対して、この第2期は「子供向けを装った子供騙し」である。
 大ヒットとなった第1期は、脚本・監督を担当したたつきの作家性が強く表れた作品である。原作(スマホゲーム)にないディープなSF的設定を付け加え、それぞれのキャラに厚みを持たせた。しかし、たつき監督は大人の事情で降板。それまで子供向けショートアニメやCM映像を作ってきた制作会社トマソンが、急遽第2期を任された。おそらく、アニメーターたちはかなり戸惑ったに違いない。完成作を見ると、脚本は練り上げ不足(と言うより支離滅裂)、キャラへの愛情も感じられず、どう贔屓目に見てもやっつけ仕事である。

 ストーリーは……(おかしい。1話も漏らさず見たのに、ストーリーが全く思い出せない)……措いといて、キャラの表現に関して第1期と比較しよう。
 第1期の制作を担ったヤオヨロズのスタッフは、キャラの内面を丹念に表現した。第1話終盤、独りでジャングルに向かうカバンちゃんをサーバルが見送るシーン。心配そうに前のめりになっていたサーバルは、カバンちゃんが立ち止まって振り返った瞬間、元気づけるように手を振る。カバンちゃんが再び歩き出すと、その手を胸の高さに保ち、振り返りそうになるとスッと挙げて再び振り始める。相手がこちらを見たから手を振ったのではなく、振り返ることを予想していたのである。そのまま手を挙げた状態で見守るが、カバンちゃんはいったん立ち止まりながらも、振り返ることなく歩を進める。二人の心情が胸に迫り、見ていて泣きそうになる名シーンである。
 一方、第2期では、キャラの内面が窺えるシーンはほとんどない。フレンズが手を振るシーンなら何箇所もある(例えば、第2話のレッサーパンダ)。しかし、いずれも棒立ち状態のまま大きく手を振るだけなので、心情は読み取れない。
 第1期では、「リアクションの入り」の描き方もうまい。第10話でカバンちゃんらがロッジの正面扉を開けたとき、受付にいたアリツカゲラは、微かに首を右にかしげてから「いらっしゃいませ」とお辞儀をする。客がほとんど訪れないロッジなので、誰が来たかを確かめる必要があり、間をあけてリアクションするのは実にナチュラルである。
 第2期におけるフレンズのリアクションは、直截的で間をとらない。第4話に登場するアリツカゲラは、アードウルフの「良い巣をたくさん知ってるフレンズがいるそうなんで」という台詞を受け、即座に「その通り」と胸を張って現れる。第1期で部屋を案内するエピソードに倣って、次々と巣を紹介するが、その姿は押しつけがましく刺々しい。ロッジを好きすぎて、工事前のガランとした洞穴まで激賞してしまう、ちょっとアイロニカルで哀しい第1期の姿とは大違いである。

 第1期のフレンズは、人間が残したレガシーの中で暮らしながらも、その意味は理解できない。そこにアイロニーが生まれ、作品を奥深いものにする。
 第1期で描かれるロッジは、部屋や家具は立派であっても、ベッドに寝具がなく客はその上でごろ寝するだけ。暗に、フレンズに管理能力のないことが示される。ところが、第2期のホテルでは、テーブルの上に氷で冷やされたワインが置かれ、ベッドにシーツが敷かれる(第10話)。
 第1期第6話での戦いのシーン。アラビアオリックスらは勇ましそうに幟を掲げるものの、そこに書かれている文字は「(フリ?)ーパス発売中」。一方、第2期のハブは、おみやげコーナーにそのものズバリ「おみやげ」という暖簾を掛ける。ほかのフレンズも、字が読めるようだ。
 第1期のフレンズは、なぜそんなものが用意されるのか考えもせず、ラッキービーストが配布するじゃぱりまんを美味しそうに食べる。これに対して、第2期では、ロバがキッチンカーでじゃぱりパンやじゃぱりチップス、じゃぱりソーダまで売っている(第1話;金は取らないだろうが)。社会の仕組みと、そこで生きるフレンズのライフスタイルが、まるで異なる。
 第1期のジャパリパークは、危うい均衡の上に成り立つ「黄昏の楽園」であることが示唆される。それだけに、知恵のある一部のフレンズが、パークの危機を乗り越えようとする姿は感動的だ。しかし、第2期になると、パークの状況もフレンズの行動原理もはっきりしない。
 第2期の脚本家(知らない人です)は、第1期から面白そうなネタを借用しただけで、作品世界の全体像を構築しようとはしない。好意的に解釈すれば、準備期間が足りなかったせいなのだろう。演出も、急なピンチヒッターだったからか、切れ味が悪い。うまく扱えば、ビジネスに利用できる強力なキャラクターに成長させられたかもしれない素材を、何とも能のないやり方でおじゃんにしてしまった。

投稿 : 2019/04/06
閲覧 : 498
サンキュー:

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