「かんなぎ(TVアニメ動画)」

総合得点
80.5
感想・評価
2252
棚に入れた
12293
ランキング
446
★★★★☆ 3.7 (2252)
物語
3.6
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

神様コメディ。

【概要】

アニメーション制作:A-1 Pictures
2008年10月 - 12月に放映された、未放送話を含んで全14話のTVアニメ。
原作は、『月刊ComicREX』に連載されていた漫画作品。原作者は高梨えり。
監督は山本寛。

【あらすじ】

神薙町に住む平凡な高校一年生・御厨仁は美術部員であり、地区展に出展するために、
最近になって切り倒された神木から、“手彫り製樹の精霊像”を完成させた。
学校に持っていこうと地面に置いて、自転車を持ってくると精霊像が地面の土と同化しており、
精霊像が砕けて「産土神(うぶすながみ)」を自称する少女、ナギが現れた。

ナギが言うには、神樹の守護を失ったことで、抑えられてきた「ケガレ」が活性化し、
神薙町は不安定となり災厄がはびこりだすという。
仁とナギは共にケガレを祓うことになり、二人っきりの同居生活が始まった。
ナギは自分を神と言うがヘンテコで俗っぽい。

これは、仁の幼馴染のつぐみ、ナギの妹のざんげちゃんなど様々な登場人物を交えた、
神道日常コメディである。

【感想】

原作全12巻と並行してアニメ版を視聴。
丁度原作3巻までピッタリ終わって最終回の13話で一区切り。

性格は違いますが『うる星やつら』に例えますと、
仁=あたる、ナギ=ラム、つぐみ=しのぶ

のポジションである、押しかけ女房ヒロイン的な古典的なラブコメ。
ちなみに、ギャグ回は展開がグダグダ気味が基本。

原作者の武梨えりはフトモモが大好きなだけあって、
ちょっぴりエッチなアニメ。そのフェチはアニメでも発揮されていて、
元気で明るい作画であると同時に、女の子キャラの足に目が行ってしまいます。

2008年当時としては滑らかな作画。OPアニメなんか特に動画枚数多そう。
作画に裏打ちされた女の子キャラ(ナギ、つぐみ、ざんげちゃん)
の魅力を楽しむと言っていいのでしょうか?
萌え系アニメの成功例の一つと言っても問題ない完成度かと。

エンドロールを見たら倉田英之脚本。他のA-1アニメでもよく見られるスタッフ名がズラリ。
グロス請けの会社名を見ても、このアニメを本気で成功させるというA-1の本気が見えますね。

一方で、ネットの定説ではサボタージュかました監督の代わりに、
シリーズ構成の倉田英之が実質上の監督をやっていて、
名目上の監督は結婚準備だの新婚旅行だのでスタジオにろくに来なかったと、
倉田氏や当時のスタッフが公然とコメントしているという話(出産直後に離婚という話も)。
そのくせに名誉が欲しいのかイベントには顔を出していたという話もあります。

内容は基本的には原作に忠実、構成上で多少話の順番を入れ替えたり、
原作のコマとコマの間の話を補完したりで丁寧な仕事。
画面のレイアウトもアングルが多彩であり、
WUG旧章と違って精鋭のスタッフが実力を額面通りに発揮した結実なのでしょうか。

アニメでは11話から最終回の13話まで空気が重くなるのですが、
原作自体が中盤から後半にかけて恋愛要素とシリアス要素がメインになっていて、
コメディ色が主食でなくて調味料的役割に変化していて、
かんなぎ原作のストーリーではキャラが恋愛絡み神絡みで真剣な展開がメイン。
ギャグが一回も無い話が何話も続くことなんて当たり前にあります。

アニメ化の範囲ではシリアス編外での展開でバカ話が多かった序盤を取り扱っていますので、
ネタ的にアニメならではのイジり方で遊ぶのが可能であった段階。
その暴走がヤ●カンらしさ満載の演出というところなのでしょうね。
しかしながら演出の特徴が、

・アニメの中で自分自身を登場させる。
・台詞の中で業界人への誹謗中傷だらけの監督の有料ブログ“妄想ノオト”をサラッと宣伝する。
・福原香織演じる名無しモブに『臭いよねー』をしょっちゅう言わせる、
 『らき☆すた』でも用いた監督固有のネタ。
・宮○、庵○、富○といった著名なアニメ監督や、ら○すた4人組をアニメの中で登場させる。

これって称賛するポイントなのでしょうかね?
監督氏は、『うる星やつら』における押井守になりたかったのでしょうか?

アニメの中でお遊びをするのは、作品の中でスターウォーズのパロディをやったり、
ケンシロウをゲスト出演させていた『うる星やつら』みたく、
80年代アニメ特有のフリーダムさの継承と言ってみれば聞こえはいいのですが、
かんなぎでの遊びは監督の存在を連想させるものが殆どであって、そこがイヤラシイ。

監督を引き受けた経緯にせよ、インタビュー記事では元々やる気が無かったが単行本1巻を手渡されて、
目にして“直感”で引き受けた程度の表現しかしていなく、
原作についていろいろ語ったり作品作りに対しての詳細な説明がない。
そこを天才と評する人もいるのでしょうが、
京都大学文学部に在籍していたしては、もうちょっと語彙がどうにかならないのでしょうかと?

『みんながブレることなくひとつの作品を作るには世界観が大切なんですよ』
『原作を大好きになり、良いところを誰よりもよく理解する』

と言ったのは佐藤順一監督でありますが、
その逆を行く過度な自己主張は、世界観を壊す作品のノイズにしかならない!と自分は思います。

アニメでも終盤になって、そんなお遊び要素を挿れる余地のないシリアス面が露出するのですが、
そこは監督の指示で制作されたのか、スタッフが頑張った結果のものなのか判断し難いです。
ただ、フラクタルやWUG旧章でのグダグダでダメな仕事ぶりを見てると、
何故、かんなぎで出来ていた作品の質が後の作品で一度も達成出来ていないのか?
そこに、本当に監督自身の仕事の結果であったのか?と疑問を挟む余地が生じて、
才能って何?天才って誰?みたいな感じで、困惑してしまうわけです。

原作通りに進んだ作品自体はオリジナル回を除いて概ね良かったですが、未放映の第14話が問題作。
クレジット上ではシリーズ構成の倉田英之が脚本なのですが、
つまらんので全面的に没にして作り変えたとかなんとかで監督がネットで吹聴してた自信作。
実質的に脚本・コンテ・演出の全部が監督。
それが、過去の成功体験に縋っているのかも引き出しが少ないのか、
『朝比奈ミクルの冒険』の二番煎じ・焼き直し。中身はグダグダしてるだけでつまらない。
原作を全部読んだ身としては、ただ単にどうでも良い猿芝居劇に原作キャラを割り当てているだけ。

おまけのギャグ回とはいえ、監督総指揮の14話の異様なクオリティの低さと本編とのギャップに、
途中で抜け出して製作期間中の大部分をサボタージュ説を信じたくなってしまう。
原作への敬意が全く感じられない独りよがりな内容に、
14話を見なければ良かったかな?と、ちょっと後悔してしまいました。

原作自体は可愛くて面白かったので、これからアニメでかんなぎを見たい!て方がいましたら、
原作漫画の方もオススメしておきます。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2019/10/27
閲覧 : 525
サンキュー:

40

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