「PSYCHO-PASS サイコパス(TVアニメ動画)」

総合得点
90.2
感想・評価
5576
棚に入れた
26360
ランキング
61
★★★★★ 4.1 (5576)
物語
4.3
作画
4.0
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

フリガナふってください

錚々たる顔ぶれによるオリジナルアニメ


これは確かに面白い!


ずいぶん前にレビュアーさんからお薦めいただきながら、3期開始を機にやっと観ることが出来た一品。
総監督の本広克行氏。2期からはシリーズ構成冲方丁氏とむしろ一般層に名の知れた御仁がクレジットにあることに驚きます。


設定・世界観。良く作りこまれてます。西暦2112年の日本。現代テクノロジー起点でありえそうな技術の進化を辿りつつも、現代とは全く異なる価値観を有したおよそ100年後の我々の子孫たちの物語。

価値観の変化についていけず取り残された者も登場します。技術の進化が人間の行動や考え方に影響するさまやそれを土台に法が整備されていった果ての近未来SFとして説得力のある作りになってます。
また、哲学者や有名本からのフレーズの引用が目立ち、それをキャラに語らせ視聴者に考察を促すなど、虚淵玄氏の手グセみたいなものなのか、彼の脚本なりの楽しみ方も用意されてます。


舞台装置についても少し・・・
嗜好/適正/性格/感情などなど心理状態や性格傾向みたいなものを定量化/数値化する巨大監視システムで治安維持される近未来が舞台。

その巨大な監視装置は〔シビュラシステム〕と呼ばれ、算出される〔PSYCHO-PASS(サイコパス)〕の値によって、職業/結婚相手が決まるのです。
とりわけ“ドミネーター”からはじき出される“犯罪係数”で閾値を超えた者は“潜在犯”という扱いとなって、隔離されたり処分されたりのふんちゃらかんちゃらと設定を読み込むのも楽しい作品でした。


2~3話ざっと目を通しての印象。

 {netabare}気持ち悪っ{/netabare}

意思決定のほぼ全てをシステムに依存した社会への違和感は相当なものです。
{netabare}第3話八王子での社内いじめ容認描写が“はじめの嫌悪感”でした。作品のテーマとなり得るものです。{/netabare}
違和感といえばこれまた数話進んでからの印象。本作唯一の不満と言っていいかもしれない。

 {netabare}名前覚えられねー{/netabare}

一人か二人に留めておいてくれてたら助かるのですけどね。画数多いのも考えものです。

{netabare}■フリガナ必須の面々
狡噛慎也(こうがみ しんや):CV 関智一
常守朱(つねもり あかね):CV花澤香菜
宜野座伸元(ぎのざ のぶちか):CV野島健児
征陸智己(まさおか ともみ):CV有本欽隆
縢秀星(かがり しゅうせい):CV石田彰
六合塚弥生(くにづか やよい):CV伊藤静
禾生壌宗(かせい じょうしゅう):CV榊原良子
佐々山光留(ささやま みつる):CV浅沼晋太郎
槙島聖護(まきしま しょうご):CV櫻井孝宏
王陵璃華子(おうりょう りかこ)CV坂本真綾
泉宮寺豊久(せんぐうじ とよひさ):CV長克巳

{netabare}狡噛→鴻上 征陸→正岡 六合塚→国塚 だとやっぱり雰囲気でないのかな。姓名の姓で遊んでます。
しばらく“かがりくん”は脳内でEDクレジットと一致しませんでした。老化かしら。{/netabare}{/netabare}



全22話。
作品冒頭で感じた嫌悪にも似た違和感はそのままヒロインの葛藤と意を同じくしていく事になります。


お隣Chinaの“社会信用システム”の実例もあって我々もイメージしやすいシビュラなる仕組み。
“顔認証技術”でChinaは世界のトップを走り監視装置として実運用されてます。

独裁国家での実例ゆえに負のイメージがつきまとうのはしょうがないとして、この作品ではその一方で恩恵があることもしっかり描かれております。

負の側面のみを強調するわけではない。現実的で説得力があり特にこの点を高く評価してます。


 シビュラに支配された世界の受容と否認


考えさせられる社会派作品です。好みでしょうがたまには重いのもいいもんですよ。
深みのあるテーマが骨格だとして、展開されるのはクライムサスペンスになるんでしょうか。


 サスペンス要素てんこ盛りの緊張感のある展開


狡噛と槙島の対立構図。頭脳戦やグロ描写をスパイスに手に汗握る展開が待っております。

白状すると、作品の落ち着きどころと思っていたポイントがわりと早め{netabare}(第16話。1話アバンにもあった狡噛と槙島の対戦のとこ){/netabare}にきてしまいました。展開が読めないことも魅力になるでしょう。

音も良曲。キャラ絵も嫌いではありません。
シビュラに対してどういう視点で向き合っているか?キャラの視点が必ず描かれそちらも様々。足を引っ張る要素が少ないため、純粋に物語に没頭できる作品。
傑作といってよいと思います。


続編楽しみですね。これから2期→劇場版といって現在(2019年10月)放送中の3期まで追いつくつもり。
2期から参画の冲方丁さんがどんな物語を見せてくれるのでしょうか。その後が気になるキャラも複数います。楽しみでしかありません。




※ネタバレ所感というより余談

■受容と否認

「最大多数の最大幸福」を追い求めたらこんなんなっちゃいました、な世界でした。効率最大化すると余白がなくなっちゃって息苦しく感じます。無駄があるって素晴らしい。


{netabare}CASE 1 泉宮寺(100歳超えサイボーグ)の取材シーン。

論理的に正論をかざす泉宮寺と反論控えめながらも嫌悪感を隠さないインタビュアとの対比が面白い。

「そらあんたの言ってることに間違いないんだろうけどさー」

論理的であることは大切でありそこを無視してはなにも始まりません。ただし施策に落とし込む時に確実にやらかすのは感情部分を無視した時です。{/netabare}



{netabare}CASE 2 されど受け入れられる仕組み

シビュラへの信頼が大前提となる社会。社内いじめスルー所長(第3話)、公衆の面前で撲殺(第14話)を見るにつけ負の部分が目立ちます。
一方で「治安維持」「失業率低下」に資する仕組みとして国民が受け入れてもおります。その信頼に揺さぶりがかけられる終盤の展開は見ものでした。

さて現実世界でも遡ること20年前。「監視社会になる」との触れ込みで市民団体と言論人が強固に反対したものがありました。

 条例による「防犯カメラ設置」の推進

です。反対意見の論旨は「プライバシー侵害」。プライバシー侵害の懸念よりも治安の維持を優先し、20年後の現在、そのことが検挙率の向上やスピード逮捕に寄与していることに異論はないでしょう。
細々と反対は続いてますが、今となっては「監視されて不都合なのはもっぱら犯罪者だろう」との合意形成がなされてる世の中です。

我々も受け入れているのです。


その延長で、ドライブレコーダー搭載が昨今のトレンドでしょうか。
なにかことが起これば証拠物件として前の車と後ろの車とのドラレコ対決が始まることでしょう。搭載有無により証拠能力に差が出るため普及も進むはずです。裁定は保険屋と警察が行います。今後はドラレコ映像の解析技術も上がり、ナビの位置情報をもとに同時間帯に走行中だった車両を割り出して警察が情報提供を依頼するといった未来も想定されます。

単なる記号情報のカメラ映像でも運用を見据えると意味合いが若干変わってまいります。
防犯カメラの場合は被疑者特定やアリバイ判定とあくまで捜査のための公共利用目的。
ドラレコの場合は公共目的に加え、保険比率や賠償金など個人の利害関係が色濃く絡んでくることになります。微妙に違いが生じるのです。


法案化するでもルール化するにせよ一括りにすることの難しさを感じます。そんなものを一律で一定の指数で測定可能としたのがシビュラ。
無理がありますし、無理があることを作中で触れてます。
衝突も生むでしょう。保険屋と警察の現場検証つまり人間の判断がいらなくなって、算出された結果(数値)が全て。あいまいさやグレーゾーンの遊び部分が消えることになります。
納得できないと2010年代の私たちは思ってしまいますが、作中ではそうではなく判断を委ねて生殺与奪の権すらシステムに与えております。

シビュラの本格運用は作中年度の30年くらい前からのようですが当然前段階があります。
100年かけて合意形成を重ねていった結果、一見安定してるように見えても制度疲労を起こし飽和点を迎えつつある。事ここに至るまでどんな過程を経てきたのだろうと考えるのも楽しい作品でした。{/netabare}
 


※以下、完全に無駄話

{netabare}CASE 3 それでも気持ち悪いのは気持ち悪い

思い出話。私が“AI”という単語をはじめて意識したのがファミコン版『ドラゴンクエストⅣ』。
ボス相手にクリフトがザラキ連発したり
 ※注 効くわけないのに即死呪文を唱えること
はぐれメタルに呪文唱えたり
 ※注 打撃攻撃で1PずつHPを削るお作法を無視すること
具体例を挙げればきりがないほどプレイヤーの意図を無視しまくるためマニュアル操作に還っていく。人工知能との出会いでした。

あれから20数年。技術の進化は原体験を覆してくれるほどには未だ至らずです。{/netabare}



{netabare}CASE 4 能力の低下

これも思い出話。とある管理部門長さんとのやりとりで伺った自動計算に頼ることの弊害について。
制度や法律に照らし合わせて演算の仕組みや根拠を理解することがなくなる。すると新たに社内の制度を作る場合に路頭に迷ってしまうと。そうでしょうね。中身を知らないのだから。

EXCEL(この際LOTUS1-2-3でもOK)の登場で経理部門のパートのおばちゃんが涙をのんで会社を去っていった一方で、人件費の削減に繋がりました。
効率化名目で多くのビジネスが成り立っているのは承知しつつ、人材能力開発の機会を奪うというジレンマがあるというのです。

さらに効率化の先にあるだろう究極の形。判断や意思決定を人ではないなにかに委ねることは21世紀初頭の人類には抵抗があるのです。{/netabare}




不完全で難儀なこともあるけど、ときおり道を誤ることはあっても、お茶目な人間同士でお付き合いしていきたい私です。



視聴時期:2019年10月

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2020.07.03追記

今月からのあおり運転防止に資する法律の施行に伴いドライブレコーダー需要がいっそう高まることでしょうね。さらに9ゆくゆくは「個人の資産力によって証拠能力に差が出るのは不平等」とか言っちゃって衛星追尾その他ドラレコの代替となるものが政府や自治体によって整備されちゃったりして(^_^;)


2019.10.29 初稿
2020.07.03 追記

投稿 : 2020/07/31
閲覧 : 977
サンキュー:

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