「プラネテス - ΠΛΑΝΗΤΕΣ(TVアニメ動画)」

総合得点
90.7
感想・評価
3113
棚に入れた
15532
ランキング
49
★★★★☆ 4.0 (3113)
物語
4.3
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
4.0

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ネタバレ

USB_DAC さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

耐えながら観た先で得られた充実感

物語:
SF作品にありがちな派手な戦闘描写や兵器類などは一切登場せず、
リアルな近未来を描く作品。いつか自分の宇宙船を手に入れること
を夢見るスペースデブリ回収業の社員こと星野八郎太改めハチマキ。
新たに配属されたタナベとの関わりで、愛や夢、そして自身の思い
を見つめ直し共に成長していく物語。宇宙開発に伴う社会的な問題
や深い闇、人間の深層心理など、改めて考えさせられるものがある。

必要不可欠な末端の仕事というものに着目し、現実と対比すること
でより共感を覚え興味を抱く。また開発の裏に潜む闇の部分を描く
ことで、開発と欲に突っ走る現代社会に警笛を鳴らし、それを一般
民衆に知らしめた意義は非常に大きいと思う。

そして様々な人種が入り交じり、ごく普通に会話し共に暮らす社会
は理想的な未来の姿でもある。

作画:
時代を感じさせる映像だが、近未来のリアリティは未だに失なわれ
ていない。主人公たちの容姿は特に魅力的とは言えないが、人種や
キャラの違いもはっきりとした仕上がりで、現代でも充分通用する
作り込みだと思う。動きも極自然で違和感は無い。

声優:
ハチマキ役の田中一成さん。若さは感じるが常に一本調子で台詞も
聞き取り辛い部分があったのは残念。その他のキャラとのマッチン
グに違和感は強く感じない。

音楽:
酒井ミキオ氏が歌うOPとED。流石に今聴くと古臭さを感じてし
まう。お世辞にも歌は上手いとは言えない。物語を知らず、そのま
ま聴けばSF作品の曲だとはあまり想像出来ない。ただ日常的な爽
やかなイメージが漂い、印象は決して悪くない。

キャラ:
漫画版でもそうだがフィー・カーマイケルの存在感が圧倒的にいい。
しかし何故メインキャラはあんなにも騒がしい設定なのだろう。鬱
陶しいのは少数の脇役だけで充分。いちいち怒ったり叫ぶシーンが
あまりに多く、序盤はかなり不快感が残った。人間らしいといえば
そうなのだろうが、社会人の描写としては少々疑問が残る。


[感想]

飛んでいる弾丸とも言われるスペースデブリ。その軌道は当然一定
では無く、大型(10センチ以上)の物の動きをシステムに登録し、
その軌道を回避することで衛星の周回は保たれ、破壊から守られて
いる。未だ国際レベルでのデブリの回収は実行されず、漸く数年前
にベンチャー企業による計画が発表された段階。そして昨年、ある
企業が網による小型衛星の捕獲に初めて成功したとのこと。

一つの衛星を上げればそれ以上の廃棄物を宇宙に残してしまう現実。
このままこの問題を野放しにすれば、いずれ地球の周回は難しくな
るという国際レベルで解決を急ぐ問題でもある。関わりや関心が無
ければ一生知り得なかったこの事実を、広く認識させたことについ
ては大いに評価すべき内容だし、また貴重な作品でもあると思う。

大きな開発には一定の犠牲が伴うもの。それでも人類は自身の進歩
の為にその手を止めることは無い。自らをエゴイストと語るロック
スミス。非道ともいえるその人物を通し、仲間の犠牲を受け止めな
がらも邪魔なものを切り捨て、それでも前に進まざるを得ない人類
の野心と悲しい性が濃く描かれている様な気がする。

テロ組織のリーダーであるハキムの活動背景にある貧困問題。技術
がいくら進歩しようとも格差という根幹は全く変わらない。開発国
だけが資源を食い漁り、枯渇すればまた新たな場所を探し回る。そ
して、その利益は決して隅々には行き渡らない。まさに現代社会の
縮図を映している様にも思える。実際テロ活動の根源の一つにそれ
がある限り、今後も決して無くなることはない根深い問題だと思う。

一人で生きていくと粋がっては藻掻き苦しみ、絶対に芯を曲げずに
愛を語るヒロインによって、それは全て間違いだと気付き救われる。
再会後に明るくタナベに連絡を取るハチマキ。そして懸命にリハビ
リを続け涙する彼女を見ると、やはり目頭が熱くなってしまう。

原作者の幸村誠さんが問う「なぜ生きるのか」。アリストテレスや
パスカルなど多くの哲学者が「幸せになること」と答える。夢を追
いかける為に人は生きる。そして、それを導くには「愛」というも
のが絶対に必要なのかも知れない。この作品で描かれているそれら
のことが、きっと氏の求める答えなのだろうと思った。


[唯一釈然としない部分]

2070年、高度な宇宙技術が存在する世界。例え宇宙デブリの回
収という末端の業務とはいえ、一応先端技術を担う企業のはず。な
のに社員教育や採用選定がまさしく小規模企業のそれで不思議で仕
方ない。一般入社だろうが何だろうが、こんなにも直ぐ熱くなって
は協調性を乱し、一方的で縦社会への配慮が著しく欠如した若者を、
いきなり宇宙飛行士に採用するなんてことが有り得るのだろうか。

また性処理や初歩的とも言える理念への問いかけなど、そもそも入
社前の研修等でしっかりと教え込むべき問題だと思うが。恐らくこ
のタナベの未熟さと成長も描きたかったのだろうが、あまりに非現
実的で幼稚な初期設定にはやはり疑問符が付く。序盤は特に鬱陶し
くて苦痛でしかなかった。終盤は充分魅力的な人物として描かれて
いただけに、そのことはとても残念に思う。



2クール分の全26話。ちょっと長く不満も一部あるが、見る価値
は非常に高い作品。未だ見視聴でお悩みの方、是非お勧めします。



以上、長文拝読頂きありがとうございました。


2019.11.15 誤字修正

投稿 : 2019/11/15
閲覧 : 345
サンキュー:

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