「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~(TVアニメ動画)」

総合得点
79.3
感想・評価
513
棚に入れた
2041
ランキング
497
★★★★☆ 3.6 (513)
物語
3.8
作画
3.4
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.7

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ネタバレ

はあつ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

素朴な家族愛と無垢な友愛に心打たれる転生物語

異世界転生物は昨今のアニメの一大ジャンルですが、中世欧州の風情を丁寧に醸す舞台と優しさの溢れる物語は、往年の世界名作劇場を思わせる仕上がり。
1話から最終話まで、家族の素朴だが深い愛情がいたるところで描かれ、思いやりに満ちた作品です。

憧れの司書となる直前の不慮の事故死から転生した女性主人公。
当初、愛らしい幼女の見た目とは違い、自分のやりたい事だけに執着する性格は中途半端に大人で身勝手に感じます。
そんな彼女が、貧しくも温かい家族の優しさに触れ、転生後の家族を大切に思うようになる、その変化していく態度の描写が非常に丁寧で好ましい。
主人公がタイトルの「本への情熱」だけじゃなく、「人への感謝と愛情」を示すようになればなるほど作品をどんどん好きになりました。

また、数多の転生した主人公としては、かつてないほど虚弱で歩くことさえままならない彼女を、家族と共に支える人々も温かい。
中でも同い年(中身は違うが)の少年とのふれあいは見た目は微笑ましく、純真な思いで深まる絆には胸が熱くなります。

今期の1クールで描かれたのは原作(未読)の第一部との事。
タイトルに「下剋上」を入れた理由が最終話で分かり、第二部への新展開に期待を繋げる見事なまとめ方でした。
春からの続きの放送が凄く楽しみです!

以下、ネタバレ感想。

《キャラとストーリーに関して》
{netabare}
・家族が互いを思いやる描写が素晴らしい!

上述したとおり、中盤あたりまで主人公のマイン(麗乃)には、あまり好感が持てませんでした。
それでも1話目だけで作品に惹かれたのは、5歳になる子をおんぶして買い物に行く母親エーファの姿を見たから。
小柄でもあの年になるとかなりの重さで、背負っての買い物は一気に重労働になる。にも関わらず、娘の体調がいい時は普段から当たり前のように行っている事が伺える母の愛情描写。
その後も家族を励まし諭す姿が随所に描かれ、ラストの交渉時、震えながらも声を振り絞る演出も繊細で、マインと視聴者に緊張感と愛情の強さを感じさせました。

続いて姉のトゥーリ。
働き者の彼女は体の弱い妹を常にいたわる家族思い。
3話、凍える中で木の実をもぐ姿、あかぎれる小さな手を見せられと健気なヒロインにメロメロです。
最終話の家族を心配する姿も切なく胸を打ちました。

そして父ギュンター。
最初は親バカぶりが滑稽に描かれますが、家族への愛がストレートな言葉だけじゃなく、高い枝から木の実を取るトゥーリを心配したり、マインの病気の真相を知った夜のやるせない姿で表現され、ラストの命懸けの交渉は同じ父親として感銘を受けました。

11話と最終話で、マインに寄り添い眠る家族の寝姿など周到に挟まれるカットも心に染みます!

そんな優しい家族にマインが感謝し、言動や接し方が変化していく様子も細やかに描かれます。
11話、最初は嫌がっていた父親の胸の中へ自ら駆け寄るシーンは自分の属性的に歓喜!
最終話で自分を育てるのが大変だったと自覚した時の、母に寄り添うさりげない描写も良かった!
生きる目的が本だけじゃなく家族と共にある事を加えたマインに心の成長を感じ、こんな主人公の成長のさせ方もあるんだと感嘆です。

・作品に更なる優しさを添える少年ルッツとのふれあい。

中身成人なのに子供っぽいところのあるマインに対し、5,6歳にしてはルッツはしっかりし過ぎですが、彼の客観的で純真な眼差しが、真のマイン=麗乃に気付きます。
8話の二人のやり取りは迫真の名シーン。
転生後の世界で初めて本音で苦しみをぶちまける麗乃マイン。
すがるように確かめる彼女に、
「俺のマインはお前でいいよ」と応えるルッツ。
もう一人のマインの真実の声を聞き、1年間共に過ごした彼女を受け入れる度量は男前過ぎます!
彼に認められた事で麗乃はこの世界のマインとして生きる自信が芽生える。
その後、彼を立てる事を忘れず彼の気持ちを気遣うようになるマインに最初の身勝手な印象はなく、手を繋ぐ二人が可愛くて仕方なくなりました。

・スローテンポなストーリーだが設定や脚本がよく作り込まれている。

タイトルの「本好き」に繋がる部分も興味深く観れましたが、「下剋上」に関する部分が最終話で一気に面白味を増します。

物語の途中で気になったのが、
娘の命が繋がるなら、なぜ父親は貴族の元に無理にでも行かせようとしないのか?
神殿の聖杯でマインの命が助かる可能性を知りながら、なぜベンノは教えなかったのか?

それが最終話を見てようやく理解できる。
ここまでマイン達にほとんど絡まないほど「貴族」と「平民」は、この世界の隔絶された絶対的な上下関係なんだと。
フリーダのように後ろ楯でもない限り、貴族の下に契約して行く事は魔力でいつ殺されてもおかしくない奴隷になるようなもの。
それは神殿で平民として働くのも同様。
あの陽気な父親が悩み、貴族との交渉にトゥーリがあれほど心配するのも当然だと見事に合点がいきました。

しかし、最弱転生主人公と思われたマインが、強力な魔力で横暴な貴族をねじ伏せた!
ここからの知識と力を駆使した下剋上的な新展開に俄然期待が膨らみます。

《作画》

親子で二人づつ揃えた髪色のキャラデザがシンプルで可愛い。
室内の質素な美術や背景もしっかりと作り込まれ、木靴の音なども心地よく、素朴な世界観が丁寧に描かれてます。
ラストの父親のバトルシーンは派手にせず、虹色の瞳になるマインの「威圧」だけ独特の迫力を持たせる渋い演出で、作品の落ち着いた雰囲気を保っていました。

《声優さん》

マイン役の井口裕香さんをはじめ、ベテラン声優さんで固めたキャストは安定感抜群。
ラストの井口さんの威圧演技はなかなかのホラー感でした♪

《音楽》

ED「髪飾りの天使」はマインにとっての天使であるトゥーリを演じる中島愛さんが担当。ムーディーな歌唱力は抜群です。2番の歌詞の天使はルッツの事?

爽やかで伸びやかな曲調と優しさが広がる世界を感じられる歌詞のOP「真っ白」も私好みでした。

《最後に》

直近の秋クール、異世界転生物を続けざまに3作観た私は(うち2作は途中断念)このジャンルはお腹一杯で本作は視聴候補でなかったんです。
もういい加減、異世界転生ジャンルは飽きそうな気がしてたのに、こんな自分好みのハートウォーミングな作品に出会えるなんて!
勧めてくださったキャッチさんに感謝です(^^){/netabare}

投稿 : 2020/01/04
閲覧 : 342
サンキュー:

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