「海獣の子供(アニメ映画)」

総合得点
71.0
感想・評価
128
棚に入れた
526
ランキング
1402
★★★★☆ 3.7 (128)
物語
3.5
作画
4.3
声優
3.5
音楽
4.0
キャラ
3.5

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

瑠璃とハイビスカス。

お祭りのあとの酔い醒めが、厄介だってことは、分かってるつもり。


煌々と輝くネオン
 
陽気で楽しげな音楽 

舌つづみを打つお料理 

気のおけないお友だちの屈託のない笑顔

お酒まで入ったなら、舞い上がるばっかり


ふわふわする浮遊感のなかに、恋しさみたいな情を覚えてしまうと、ついつい溺れてしまってもいいかなと思ってしまう。



非日常を手軽に味わうならそんなパーティーライクもアリだとは思うけれど、スピリチュアルに包まれるほうが、圧倒的に「ザ・非日常」だ。

だから、たまには「日常のなかの非日常」な映画はやめにして、いつものポップコーンとかコーラとかも、今回だけは見送ることにしよう。

海の祝祭という、なんだか意味深で、わけのわからない「非日常の先の非日常」な世界の真ん中に、ぽーんと自分を放りなげてみてやろう。


そう。きっと、それがいい。





祝祭は、・・・・・・凄かった。



極彩色は、巨大なスクリーンの枠をはみ出して、シアターの上下左右を縦横無尽に跳ねまわっていた。

ソングは、電撃となって脳みそをゆるがし、四肢の神経を痺れさせ、わたしという文明を消し去ってしまった。

劇場のスペースは、琉花の一回の吐息で濃密さを増し、それでいて海のわずかな領域をささやかに潤すだけなのだ。



いったい、何だろう。

何が、わたしに、触れにきているのだろう?




わたしの記憶は、身体からゆっくりと離れていき、いつのまにか海底に横たわっているわたしの中にあった。

10メートルほどの上に揺らいで見えているのは船の底板で、まるで中空に停泊しているような奇妙なカット。

このビジュアルは、たしか、琉花と同じ頃合いのわたしのデジャヴであるような気がする。

鼓膜にかかった圧力、手も足もヒレだったらいいのにと感じたもどかしさ、言葉など何の意味もないと確信が持てた、わずかな時間の記憶。



あぁそうか・・・・・・。

この作品は、絵を見せているだけじゃないんだ。

海洋生命のインターナショナルを、ダイレクトに、脳に感じさせようとしているんだ。



わたしは、琉花の身体に同化を試みる。

海の主人公たちの思念に包まれてみようと念じてみる。

言葉によらないコミュニケーションの進化の実相に触れてみたいと願ってみる。




オーバーフレームな演出

スペクタクル・フルなシーン

壮大なシンフォニー



そう。わたしは、突然、思いついたのだ。

わたしは、知るべきことを知ろうともせず、ただ漫然と生きてきたのではないか。



DNAに織り込まれた命のリレーション。

遠い遠い記憶の撚り糸。

未来も。





ため息を、ひとつ。そっと。

慎重に。もうひとつ、いくらか深めに。

眠りからの目覚めは、このお作法がいつも有効なの。

やんわりと、ゆったりと、たっぷりとした余裕が必要なの。



体のなかの何かが騒めきだしてきている。

これって、なんだか祝祭っぽくなくはない?

身体は、2時間もスクリーンに圧しつけられて、すっかりがちがちに固まってしまっているけれど、不思議と気分だけは、琉花のように坂道を駆け上がってみたくなっている。



そう。彼女のように微笑んでみよう。

うん。彼女みたいに意思を示してみよう。

メッセージは、言葉に限らないのだから。




なぜだか無性に、海に行きたくなった。

わたしにも、会ってくれるだろうか。



あの聡明なクジラは。

投稿 : 2020/02/18
閲覧 : 288
サンキュー:

13

海獣の子供のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
海獣の子供のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

薄雪草が他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ