「メイドインアビス(TVアニメ動画)」

総合得点
92.5
感想・評価
2230
棚に入れた
9188
ランキング
20
★★★★★ 4.1 (2230)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

そこに大穴があるからだ

原作未読


2020年1月公開劇場版の前セツで再放送やってました。1月にはTV版ダイジェストな前後編の劇場版総集編もやる念の入れようです。最終回のみ拡大1時間の全13話。事前に聞いてたのは

 {netabare}絵柄可愛いけど身も蓋もないっす{/netabare}

評価も高いし、視聴しない理由はありませんでした。
ただ…感想も1,000件超えてるし何を書こうかね。あらすじは省略。


謎の古代文明の栄枯盛衰やその痕跡とやらが物語の根っこにあるお話にはいまだ心を揺さぶられます。
それこそ最近あまり見られなくなった純粋な冒険アニメ。ある日突然…なんてことはなく、1900年前に発見された深さ不明の縦穴の周りに次第に人々が集住し、穴の底を目指すという思いつきそうで誰も思いつかなかったワクワクする設定、独特な世界です。

下へ下へ。
これまでだと思いつくのはダンジョンものくらい。人でも神でも創造された遺物を進むのがほぼ全て。ネイチャーなのだと『グラン・ブルー』など素潜りものくらいでしょうか。風光明媚なタオルミナの景色が無ければ地味極まりない映画です(褒め言葉)。


{netabare}「そんなもんじゃ憧れは止められねぇんだ」(第12話 ナナチ)

“上昇負荷”にめげず奈落の底に挑む探窟家を指してナナチが放った一言。
OPの歌詞をやや強引に回収か?とも聞こえたこの台詞。{/netabare}


OPの歌詞にある『鼓動は本物 二度と憧れは止まらない』…嗚呼なるほどつまり

上へ上へ。
登山家と山の関係に近いものを感じます。

・「そこに山があるから」と同じく“合理性”を超える魅力があるということなんでしょう。
・自ずとクレージーなのが探窟家に。リコ(CV富田美憂)のDQNな感じに納得感が出る。
・ヴァーティカルリミット(生存限界):薄々な酸素や過酷な条件と“上昇負荷”は類似。
・{netabare}マルルク(CV豊崎愛生)いないけど、{/netabare}富士山八合目に山小屋あるしね。
・ついでに原作者も山男のような風貌(偏見)

そしてなによりこれでしょうか。

{netabare}・安易な救いがない{/netabare}

自然はベテランにもビギナーにも平等なのです。
進行方向は上か下かの違いはありますが山登りの名作の親戚みたいなもんでしょう。大穴とそこにまつわるあれやこれやのアイディアは素敵でした。
リコを止めようとする仲間たちこそ真っ当な反応です。私ならきっと止める側でしょう。そこを空気読まない、人の話聞かない。英雄となんとかは紙一重を地でいく主人公も素敵でした。


自身の想像力をフル活用しオリジナル世界を構築できるのはファンタジーの醍醐味であり、それを実践した感じです。これと対峙できそうな大穴は“ギアガの大穴”くらいしか思いつきません。

漫画『岳』とか好きなら相性いいかも。劇場版にてめでたくR15指定を獲得したくらいのグロ表現はTV版にもあるでしょうが、ハードルはそれくらいでお薦めの良作です。



※以下ネタバレ所感

■それなりに纏まってはいるが

{netabare}続編期待の終わらせ方。
ナナチ(CV井澤詩織)もいってみれば第10話初登場のキャラクター。
続きものとしてみれば、リコとレグ(CV 伊瀬茉莉也)のパーティに加わる強力な味方に10話~13話でスポット当ててとても収まりがよい。
その前提がなくぼーっと観てた私の場合。前半オースの街は当然のこと、オーゼン(CV大原さやか)の監視基地を後にする第9話まで、軸は“母子の物語”かと思ってましてね。10話以降のライザ(CV坂本真綾)臭が抜けた残り3話はややめんくらってました。恥かしながらミーティ(CV喜多村英梨)の正体はライザお母ちゃんかと勘違いしてましたもん(^_^;)

残話数から逆算して「どうオチをつけてくるんだろう?」の視点で観てたら足元掬われた感じです。完走して視点を“続きもの”と変えれば前述の通り収まりがよくなるのでやや戸惑った程度のボヤキです。{/netabare}



■そして続きものを受け入れられると

1時間と力の入った最終話がしっくりおさまってきます。
一見、唐突に見えた彼の登場もその後の行動も意味をなしてくるみたいな。

{netabare}主役コンビのリコ&レグ。我々にすんごい爪痕残したナナチ&ミーティ。
この二つのコンビが重なって見えます。ミーティはレグのような強力な相方がいないリコ。いや単に主人公補正のないリコ。周囲とは異次元の好奇心を持った女の子で“憧れは止められない”のは一緒です。

“安易な救いがない”ことで、ミーティのような純粋な希望を抱いてる子供が信じてた大人に裏切られて酷い目にあうわけですからね。正直きっつい展開です。
これまた黎明卿ボンドルド(CV森川智之)から悪意のようなものを感じないというのも末恐ろしいですよ。やはり大穴に挑む連中がいるのは狂気の世界です。{/netabare}



■結局物語の構成は

{netabare}9話以前と10話以降で分けるとしっくりくる。オーゼンの監視基地を抜けて第三層にアタックするところから始まるのが第9話です。マルルクと涙のお別れしたところですね。

「この世に死ほど平等なものはない。どんな生き物にも必ず死は訪れる。死は公平にして絶対的な理である。常に我々の傍らにある」
「だが人は知恵と勇気を駆使してもがき、あがき、最後まで生にしがみつく。我々はこの不公平で不平等な世界が好きなのだ」

このナレーションにてイージーモードからハードモードへのチェンジ!
それこそ山登りでいうところの酸素ないと死ぬ高度の領域へ突入。だからワクワクするのでしょう。{/netabare}



さてさて続きは未踏地への冒険。ワクワクしないわけないのです。…もとい

 {netabare}「憧れは止められねぇんだ」{/netabare}

リコたちもしっかり戻ってきてほしいですね。帰るまでが遠足です。
スラムのわちゃわちゃした感じ。段々の民家。オースの街並みは美しいです。帰ることのできる故郷が魅力的だからこそ、土壇場で「必ず戻る!」原動力になることを期待して。



視聴時期:2019年10月~2019年12月 再放送  

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2020.02.16 
《配点修正》+0.1


2020.02.01 初稿
2020.02.16 配点修正
2021.08.28 修正

投稿 : 2021/08/28
閲覧 : 859
サンキュー:

91

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