ひろぞう さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
男達の昔気質と女達のたくましさのコントラスト
この作品はトミノが残してしまったF91での莫大な負債をサンライズとして背負ってしまっていた時期に作られた作品で
ビジネス展開としてもサンライズが基本としていた、おもちゃの売り上げによる、協業という物に対しての、限界点を超えていた時期に制作された物で
大きくいろいろなばくち要素、IP権ビジネスという物に対しての実験要素をはらんでいた
その一つが地上波での放送を半分以上諦めてしまった円盤販売+当時普及しつつあった、衛星局+ケーブルテレビでの放送に比重を置いた、新しいビジネス展開を模索しつつ、それに大きく舵を切った作品だった。
それはもちろん成功が約束された物でもなく、これはかなりの予算がかかったらしいので、かなりサンライズの社運を賭けた作品でもあった。
ここまで全ての要素がアニメーションという物の作品の中で、融合された作品はないと思う。
ストーリーラインとして強く感じるのは、時代に適合してたくましく生きていく女達と、自分の身体の芯がねとして貫かれている
「生き方」をどうにも変えられない、昔気質な男達の対比だと思う。
時代に適合させて「生きる方法」を多様に変化させていく女達と
それに対して心がねとして身体の中心に貫かれている物は容易に変えられない
どうにも昔気質すぎる不器用な「生き方」しか選択できない、男達の美しくも悲しい物語だと思う。
それはジェットとスパイクの関係性においても、ビシャスとスパイクとの関係性にも言える
作中のジェットの台詞にもあるように
「男は過去ばかり思い出す」からのスパイクとの乾いた笑いと
フェイの「それなのになんで行くのよ」「あなたが行かせたくせに」からの台詞回しに物語全てが凝縮されてしまう。
そもそも星間マフィアのレッドドラゴンなんかととっくの昔に、縁が切れているスパイクには、ビシャスと絶対に決着を付けねばならない理由などとうにないはずなのに、そんなことはスパイクにはビシャスにも、他の男達にも絶対にそれは曲げられない。
そのスパイクの言う「渡世の仁義」なんて現代日本国でも死語になっているものを、男達は絶対に曲げて生きることはできない。
それは男は女から母親から生まれてくる物だし、生物学的に見てXX染色体を持つ女が生命の基本形で、XY染色体を持っている男という物はそこから派生する物で
人類史が始まって以来、いつの世もたくましく生命力あふれて生き抜いていく女と、過去を捨てられない男という対比は、普遍のテーゼだと思う。
良くも悪くも作中で時代の波に乗れている男は、いつも酒場で酒を飲みながらカードに興じている「三爺」だけだ。
そのたくましい生命力あふれる時代に適合した生きる方法を身につけた女達と、美しくも悲しい昔気質の男達の生き方の対比を見るアニメだと思う。