「空の青さを知る人よ(アニメ映画)」

総合得点
75.0
感想・評価
232
棚に入れた
1070
ランキング
830
★★★★☆ 3.8 (232)
物語
3.7
作画
4.0
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.7

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

雀犬 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

さらば青春の光

この物語の本当の主人公は18歳の女子高生あおいではなく慎之介、
それも31歳の慎之介である。

慎之介は「ビッグなミュージシャンになってやる」と大口を叩いて上京しておきながら、
鳴かず飛ばすで、現在は演歌歌手のバックバンドとして生計を立てている。
彼はミュージシャンとして大成しなかったことに引け目を感じている。

だがしかし、それは恥じるようなことではない。
むしろ音楽の世界で生きていることは普通の人から見れば尊敬に値するのである。
多くの人は子供の時に思い描いた夢に挑戦することすらなく、
諦めて、妥協して平凡な人生を送っているのだから。

本当にカッコ悪いのは、彼が今の自分に納得できないあまりに、
素の自分を見せれないことなんだろう。
「なんだ演歌歌手のバックバンドか、落ちぶれたもんだ」
なんて揶揄されるのが怖いから、
自己防衛として悪ぶれた態度を取っている。
「東京に出て辛酸を舐めさせられて、大人になったなんだ」
というような素振りをみせていても、傍から見れば不良高校生のようだ。
そういうのってすごくカッコ悪い。でも慎之介の気持ちも僕にはとてもよく分かる。

13年の月日は短くない。もうみんな大人になった。
地元で働いている同級生は彼を笑いはしないだろう。もちろんあかねだってそうだ。
だけども彼だけが大人になりきれないでいる。

あおいが練習に使っているお堂に18歳の「しんの」が現れたのは
「ビッグなミュージシャンになってあかねを迎えに来る」という
幻想を慎之介が捨てきれないでいるからだ。

やさぐれているのは本心を悟られないように隠しているだけで
「あかねの前で思い出のギターを弾いてみせれば…」
なんて一発逆転を夢見ている子供っぽい男なのである。

成長することは、古い自分の死でもある。
だから大人になるのはつらいことなんだろう。
超平和バスターズが秩父三部作で共通して描いているもの、
それは変わりたいという気持ちと、変わることへの恐怖心。
人は幸福になることよりも今が変わることを恐れる。
だから過去に執着しようとする。

しかし大人の男と女として、今のあかねと向き合いたいのなら
止まったままの時計の針を進めるべく、
自分の心のなかにある「少年の自分」を成仏させなければならない。
たとえ痛みを伴ったとしても。

投稿 : 2020/03/26
閲覧 : 290
サンキュー:

26

空の青さを知る人よのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
空の青さを知る人よのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

雀犬が他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ