「薄暮(アニメ映画)」

総合得点
62.3
感想・評価
53
棚に入れた
160
ランキング
4853
★★★★☆ 3.1 (53)
物語
3.0
作画
3.2
声優
3.1
音楽
3.3
キャラ
3.0

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ネタバレ

USB_DAC さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 2.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

★物語
・原案 : 山本 寛
・脚本 : 山本 寛
・監督 : 山本 寛

震災復興プロジェクト「東北三部作」の最終章を飾る作品。発表当初は
2018年の公開予定も紆余曲折?し、翌年6月に漸くお披露目となる。

作品のモチーフは仏の恋愛映画「緑の光線」。メリル氏の美しい背景画
と併せ、芸実的価値を目指したもの。しかし、その意欲は認めるものの
様々なシーンで詰めの甘さが目立ち、完成度は今ひとつ。しかもその後、
監督のオフィシャルブログでの心無い発言に多くの人が憤慨し、火に油
を注ぐ騒動が発生する。「プロジェクトは欺瞞」というコメントが出る
など、純粋な評価が難しくなってしまった残念な作品でもある。


★作画
・作画監督 : 近岡 直
・美術監督 : Merrill Macnaut

メリル・マックナウトさんが描く深みのある美しい背景はとても印象的。
ただキャラクターの彩色が淡白で、画が重なった時のマッチングやほぼ
動かない背景には非常に違和感がある。そして自慢の「弦楽四重奏」の
演奏シーンも悪くはないが、ライバル視されていた劇場アニメには到底
及ばないクオリティ。選曲も名曲ではあるが少々マニアック過ぎる。


★声優
・小山 佐智 : 桜田 ひより   ・リナ   : 雨宮 天
・雉子波 祐介: 加藤 清史郎   ・松本先輩 : 花澤 香菜
・ひいちゃん : 佐倉 綾音

声優は初挑戦というふたりの主人公。佐智役の桜田ひよりさんは拙いな
がらも若々しさや初々しさが感じられ、キャラの性格との違和感は無い。
ただ清史郎君の声質と演技は生理的に全く合わず、バス内での台詞など
は正直鳥肌が立った。基本俳優の起用に対しては必ずしも批判的では無
いが、今作品に於いては幾ら宣伝の為とは言え、やはり彼の起用は完全
なミスキャストだと言わざるを得ない。


★音楽
・主題歌:「とおく」 / AZUMA HITOMI
・音楽 : 鹿野 草平

ピアノやヴァイオリンなどクラシック主体の明るくて落ち着いた曲調の
劇伴は好印象。また主題歌の「とおく」。物語にしっかり同期した歌詞
とAZUMA HITOMIさんの歌声も魅力的。


★キャラ
・キャラクターデザイン : 近岡直

決して悪くはないキャラ設定とデザイン。ただあまりにも平凡過ぎて特
別な魅力を感じないそれは、盛り上がりの少ない物語と相まって視聴後
の余韻が殆んど残らない。福島の今を残そうとする祐介の志には共感す
るものもあったのだが・・・。



[感想]

薄暮に一瞬だけ現れる緑閃光を密に愛する音楽部所属の高校生小山佐智。
そして帰還困難区域からこの街に避難して来た雉子波祐介。未だ震災に
よって心に傷を負う福島県いわき市に住む若い二人の出会いを描く。

グリーンフラッシュ。水平線に太陽が沈む瞬間に発する緑の光線を目撃
すると自分と他人の心の中が見えるようになり、それを見た者には幸福
が訪れるのだという。仏のジュール・ヴェルヌの恋愛小説をモチーフに
した映画「緑の光線」。パリに住む独身女性を突如襲った孤独。次第に
興味索然となっていく彼女にやがて素敵な出逢いと奇跡の日没が訪れる。
悲しみの涙が希望の涙に変わる素晴らしいラストシーンの映画です。

そしてこの「薄暮」。作中で語られた「緑の光線」を被災地の高校生に
置き換え、若年層向けにアレンジされた一作となっています。

しかし「緑の光線」が持つヒロインがシリアスになっていく描写が薄く、
また作中の盛り上がりもあまり感じられなかった為に、本来感動するは
ずのラストシーンもそこまでには至りませんでした。約一時間足らずの
中編故に無難な演出での纏め方や拘りの緩さは中途半端感がこの上なく、
不自然な描写から来る違和感も手伝い何となくスッキリしない。

例えば、
{netabare}
①動いたり動かなかったりする雲。風をあまり感じない風景。
②キャラクターの作画も同様にチグハグな部分がある。
③作品には関係なく、全く不要に思えた下ネタやヒロインの裸寝シーン。
④奇妙に感じた祐介の行動・台詞と残念なCV。
⑤物語の深みを削ぐヒロインの長すぎるモノローグ。
⑥突然静止画を挟んだ文化祭での演奏シーン。
⑦古い小説をそのまま引用した様な古風な台詞を高校生が使う不自然さ。

など物語よりも先ず、次々と現れる突っ込み所に意識が割かれてしまう。
{/netabare}

とは言え、未だ癒えぬトラウマを抱えながら、この地域で明るく前向き
に生きようとする被災者の日常が感じられたのは唯一良かった点でした。

一言居士の性格故、とかく他の作品を非難したり過去をひけらかす発言
が多い山本寛監督。今作品を機に廃業を宣言され久しいですが、本当に
これでお辞めになるのでしょうか。まあ前科も在ることですし、再び引
退を撤回し何食わぬ顔でひょっこり表舞台に現れる気もします。(笑)

口は禍の門。今後活動される際には先ずは驕心を捨て、意匠をこらした
価値ある作品で我々を唸らして欲しいものです。




以上、拙い感想をお読み頂きありがとうございました。

投稿 : 2020/03/30
閲覧 : 375
サンキュー:

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