「バケモノの子(アニメ映画)」

総合得点
70.3
感想・評価
637
棚に入れた
4204
ランキング
1551
★★★★☆ 3.8 (637)
物語
3.8
作画
4.1
声優
3.6
音楽
3.7
キャラ
3.8

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7
物語 : 2.0 作画 : 4.0 声優 : 2.5 音楽 : 3.0 キャラ : 2.0 状態:観終わった

ぼやけているアニメ。

【概要】

アニメーション制作:スタジオ地図
2015年7月11日に公開された劇場版作品。
監督は、細田守。

【あらすじ】

両親が離婚して、母親とふたりで暮らしていた9歳の少年、蓮(れん)は、
交通事故で母親を亡くし、自分を迎えに来てくれない父親、
そして養子として引き取るというものの、跡取りがどうのこうのと利己的で、
言葉の端々に情の薄さを感じる親類に嫌気が差して家を飛び出してしまう。
夜の渋谷をうろついていた蓮は、路地裏で全身毛むくじゃらの大男たちと遭遇して一悶着。
熊のようで人間ではない大男の姿に蓮(れん)は、『バケモノ』と呟いてしまった。

彼らが去っていったあと、夢なのか?と疑いながらスクランブル交差点をふらつく蓮。
蓮は補導の警察官に捕まりそうになり、逃げているうちに不思議な場所に迷い込む。

そこはバケモノの世界「渋天街」。
来た道が塞がっていて帰れなくなった蓮は、
バケモノの世界をうろついていると、百秋坊に助けられ、
百秋坊の友人である熊のようなバケモノ「熊徹」と再会する。

バケモノ界の長老である「宗師」から弟子をとることを命じられていた、
長老の後継者候補の一人である熊徹は、蓮を引き取り「九太」と名付けて弟子にした。

粗暴なバケモノの師匠と行き場がない人間の子供。
いがみ合う2人であったが、徐々に関係が変わっていくのだった。

【感想】

このアニメは、アングルを変えながら膨大なモブのひとりひとりが動きまくる作画。
本当にお金がかかっていて技術と手間暇は凄いのですが、作画を通して何を表現したいの?
と思うと絵に魅力が感じられず、喜怒哀楽の表情などの作画芝居を見ても感情に作用しない、
アニメのキャラを魅力づけるものは言葉の巧拙よりも、
作画表現と声優の声の表現に価値を置く自分としては惹かれるものが薄いアニメーションでした。

お話としては、子供を持つようになった細田守監督に思うことがあるのか、
近年は子育てアニメばっかりになってる気がしますね。

子を育てる経験を通して、親もまた子供から教えられて成長をする。
子は親の庇護を受けて成長するが、自分で考えて自分の道を歩き始めるようになる。

作品を通して伝えたいメッセージらしきものはあるかと思います。

カンフー映画をモチーフにした、蓮(九太)と熊徹の義理の親子にも似た師弟関係とか見るに、
絵柄とか好きじゃないのですが、ショタアニメとして子供の成長を見守る擬似親子物語として、
否定的意見ほど悪い作品じゃなかったのでは?とは思っては見たものの、
蓮(九太)が9歳から17歳になって声優が染谷将太に変わってから、あれ?て感じが。

大きくなった蓮(九太)が妖怪の世界と人間社会を行き来出来るようになって急に本を読み始めたり、
社会復帰に興味を持ち始めたりするのですが、妖怪世界では武術一辺倒だった蓮(九太)が、
文字に触れて人間社会を学ぼうと思うに達するまでの伏線や、きっかけ作りの描写が存在しない。
何故こうなった?という蓮(九太)の心情の流れが丁寧に表現されていないと思います。

蓮(九太)の父親が唐突に出てきたものの、
父親が妻の親族によって妻子と引き離されたという原作にある説明が全く無いのと、
その父親が善良な人間であるというだけの薄くて事務的な扱いで、
キャラ的に掘り下げられていないために、実の親子関係の描写が実にあっさり。
妖怪世界にいて8年間人間世界では失踪状態だった蓮(九太)の人間世界での居場所づくりという、
役割キャラでしか父親がなっていない。

また、ヒロインの女子高生・楓が登場するのですが彼女に対しては批判的な意見が多いですね。
これもまた蓮(九太)に高卒認定&大学進学を進研ゼミの勧誘漫画の如くに勧めてくる、
蓮(九太)の物語のためのメンター(助言者)の域から出ていなく、
彼女の過去を語ってみても、話の内容が薄っぺらすぎて共感性に訴えかけてこない。

全体的に、ひとりひとりが感情をもった人間がぶつかり合っているというより、
ストーリーの都合で役割を演じているだけという作為の積み重ねが、
この作品の本質に見えてしまいますね。

あれもやろうこれもやろうと後半にいろいろ詰め込みすぎたために、
「九太」と「熊徹」のふたりの物語としては薄くなり、
更には「蓮」と「父親」の親子の話が適当になってしまったこと。

極めつけは「九太」と物語のラスボスになる「一郎彦」の精神的な対比が話の軸になるはずが、
「一郎彦」の描写が圧倒的に薄くて足りないこと。「一郎彦」を重要キャラにするのであれば、
幼少期から「九太」と積極的に絡ませて「一郎彦」の心が壊れていく伏線を張って、
丹念に描くべきではなかったのか?

説明台詞だらけの脚本なのに、物語にゴテゴテといろいろ引っ付けてしまった挙げ句に、
話の軸になるはずの部分が人間としての描写が不足しているうえに配分がよろしくない。
個人的には見せるべきであった部分が圧倒的に足りてないうえに、
しまいには少年誌的&中二病的な展開にして、
ありきたりな台詞を吐かせて決着でドラマとして足りていない。
だから、台詞や展開に胸が熱くなることもない。
身も蓋もない言い方をすれば展開が雑に見えてしまいます。

人と人の物語というよりも作者である監督の言わせたいことを登場人物に言わせてる感じが強くて、
脚本の重要性を改めて感じさせる作品でした。細田守監督は今作品から自分で脚本を書いていますが、
プロットだけ作ってプロの脚本家に任せて、あとは演出に専念したほうが良いのでは?
というのが正直なところですね。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2020/04/15
閲覧 : 316
サンキュー:

37

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