「Back Street Girls -ゴクドルズ-(TVアニメ動画)」

総合得点
70.1
感想・評価
257
棚に入れた
925
ランキング
1583
★★★★☆ 3.5 (257)
物語
3.6
作画
3.1
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.0 作画 : 2.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

フィクションではヤクザの人権は無視されるのが通例。

【概要】

アニメーション制作:J.C.STAFF
2018年7月4日 - 9月5日に放映された全10話のTVアニメ。
原作は、ジャスミン・ギュによって『週刊ヤングマガジン』で連載されていた漫画作品。
監督は、今千秋。

【あらすじ】

関東有数の暴力団「大酷会」分家の「犬金組」に所属する若手構成員である、
山本健太郎、立花リョウ、杉原和彦の三人は仕事で大きな失敗をやらかして、
犬金組長の逆鱗に触れてしまい、その落とし前として三つの選択肢が組長から与えられた。

・タイに行って性転換手術と全身整形をしてアイドルになる。

AKBとかアイドルは儲かるらしいから、お前らもやれ!とのこと。
嫌なら、別にやらなくていいよ!と与えられた残りの選択肢がこれ。

・切断して両足と一生バイバイする。
・使える臓器を全部摘出して売る。

5秒で選べなかったら殺すと脅され、考えるまもなく一番マシ?なアイドルを三人は即決。
1年後。少女の姿に改造されて、洗脳教育と地獄の特訓で徹底的にアイドルに仕込まれてしまった、
彼(彼女?)らは、山本アイリ、立花マリ、杉原チカの名前で、
女性裏路地アイドルグループ「ゴクドルズ」としてデビューしてしまい、
しかもそこそこ売れてしまった。

『こんななりでも極道の魂は捨てちゃいない!』
『俺たちは男の中の男だ!』と心までは屈していないつもりだがマインドコントロールの効果は絶大。
男としてヤクザとしての自分と刷り込まれたアイドル性の間で揺れ動く三人であった。
この作品は、横暴な組長に人生を狂わされて振り回され続けて、
怯えながらも組長への忠誠心とヤクザ稼業の仁義を忘れまいと奮闘する三人の哀愁。
そしてゴクドルズによって被害を負った主張する人たち、頭のおかしなファンたちなど、
狂った世界を楽しむブラック・コメディである。

【感想】

全身改造だと三人分の整形費用で採算合わなくね?と当初から計画が破綻してる気もするのですが、
ギャグ漫画だから気にしたら負けですよね。(作品内でもわざわざ男を整形しなくても、
女の子をスカウトすれば良くね?と後に突っ込まれていますし)
この、常人にはない発想こそが犬金組長のクレイジーさを視聴者に理解させるには必要な設定。
あまりにも人でなしな展開からはじまりますが、
フィクションではヤクザの人権は無視されるのが通例で、命あるだけでも儲けものですよね。

女みたいな男キャラというのは、『ストップ!! ひばりくん! 』『パタリロ』
など既に昭和の時代から数多くありますが、概ねが萌えや耽美の世界に属するのが通例。

たいていが見た目が女の子そのものな美少年が正体を隠してのカモフラージュ生活を送る。
それは女装男子とヒロインとのドッキドキな疑似百合関係であったり、
女装男子×男らしい男とのホモショタのドッキリハプニングというジャンルもあったりする。
完全な女性化のトランスセクシャル元男の女性が男に恋をするという創作物もよくあり、

男だって可愛くなりたい!というイケナイ性癖の扉を開けてしまいそうなものが定番なのですが、

この作品では、ごっついヤクザとか気持ち悪くかかれたアイドルオタクとか、おばさんたちとか、
美少女やきれいなお姉さんよりも、そっちの加齢臭のする作画のほうが本領発揮であり、
甘酸っぱさのカケラも無い作風。元ヤクザ男のアイドルキャラにふりかかるドッキリハプニングも、
ヤの字方面やら業界の掟方面やらで色気も恋の予感も皆無な組織人の悲哀&シモ系ギャグ。
意図的に汚れと加齢臭が漂ってくるネタづくしと、オンリーワンの個性を発揮。

ヤクザの理屈、アイドルの理屈、アイドルファンの理屈、業界人の理屈。
普通に生きてるはずがどこかおかしい一般人の理屈。
それぞれが必死なのですが、違う生き方の人間同士。
噛み合わないがために理不尽な展開を連鎖的に引き起こして、
不条理なオチについ笑ってしまうというギャグ作品です。

そんな舞台環境の主人公たち三人がアイドル活動をしていても、
当然まっとうなアイドルアニメになるはずもなく、
歌って踊れるアイドルグループのアニメのはずが、ライブシーンは全部静止画。
登場人物の多くがヤクザでバイオレンスな作風のはずなのが殴る蹴るのシーンも全く動かない。

あまりの動かなさに『視聴者を舐めとるんか!!』と普通は思ってしまうところなのですが、
どうもわざとやってるらしい。口パクシーンで奥まで歯を見せるのにこだわったり、
原作独自の空気感をアニメで再現する一環っぽい。

紙芝居芸のアニメスタイルが成立しているためか、作品の粗になってないという。
それを可能にしているのが、組長役の藤原啓治さんを筆頭とする渋い男性声優陣。
おじさん声優たちの泣きや哀願や絶叫の演技に支えられている部分が大きいですね。

比較すると性転換済みのゴクドルズの三人の女性声優が若干弱い気もするのですが、
作り物のアイドルロボットとして、これぐらいで十分と思えてくるから不思議。
中身がヤクザで、ピー音だらけの台詞を本当に頑張ってくれました。
『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』と違って、
ピー音を外せないので本当に喋っているのかは不明ですけどね!
彼女たちが汚れキャラの役柄に引っ張られるかのように、
ノリノリの演技になっていくのも見どころのひとつなのかもしれません。

ともあれ台詞だらけで動かないアニメに抵抗感が強い自分でも、
このアニメはキチンと計算された演出と声優の演技力で支えられているので、
チープな作りの紙芝居系アニメなりに楽しめる出来でした。
お下品なシモネタ展開とブラック・コメディに抵抗なければ、
普通に水準以上のギャグアニメであると思いました。

最後に、今千秋監督自らがカツラをかぶって三人分踊って制作した、
ダンスシルエットという変わったOP。
本編が動かないから、OPやEDで動かしたら不自然だろ!と苦肉のアイデアなのですよね…。
アニメを作るのも大変だなあと思いました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2020/06/04
閲覧 : 329
サンキュー:

33

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