「映像研には手を出すな!(TVアニメ動画)」

総合得点
80.0
感想・評価
583
棚に入れた
2214
ランキング
465
★★★★☆ 3.8 (583)
物語
3.8
作画
3.9
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

ヲリノコトリ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 2.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

魂を込めた妥協と諦めの結石

 アニメを作りたい3人娘が映像研究会を設立して空想の世界へダイブ!

 前評判が高すぎた上に、『空想系×湯浅』なら面白いに決まっているから見なくていいやという私の謎思考回路によって長らく放置していたんですが、OP映像だけ見る機会があって、「3人のうち1人だけ顔面偏差値が高いのは気のせいか?」と思ったのをきっかけに本編も一気に見ました。漫画も読みました。

 顔面偏差値に関してはホントにそういう設定でした(笑)

 「素材や原作を一度噛み砕いて、私の好みに合わせて再編集してからアウトプットしてくれる機械」こと湯浅監督(と私が勝手に思っている)なので、一話見るごとに引き込まれ、続きが気になって一気に観てしまいました。


 原作との違いでいうと{netabare} 、自走三脚式重カメラの足が碁石かさねたみたいなアレになってるのとか、めちゃめちゃ良い改変だと思いました!私も常日頃から「アレは歩けそうだ」と思ってたんですよ常日頃から!
 あとパンツ丸見え型ヘリコプターが逆回転しないアイデアも、アニメオリジナルです。反作用を生む部分は原作では普通に羽を回転させる動力という設定で、体が逆向きに回ってしまうから落ちた、というストーリーでした。これもめちゃめちゃ良い改変!

「光線や砲弾が出ない違和感?そこじゃない!『いいかお前ら、これは光線が出ない指向性エネルギー兵器なのだ』というメッセージを、シーンに込めて伝えることが重要なのだ!」
 このセリフが一番カッコよかった!職人のシャウトって感じ!

{/netabare}

 あとやっぱり、視聴のきっかけになったOP!{netabare} あのへんな曲にテキトー感漂う映像がついてるだけなのに、なぜここまで中毒性があるのか。曲序盤の「3人×2パターン」というだけの動きなのに、何回見ても飽きないというか、動きが読めないというか、全容がつかめないというか(笑)
 というか意図的に「セルを使いまわしてます!」ってアピールしてますよね!曲のサビのとことか、渦巻きで画面を埋め尽くせばバレにくくなるはずなのに、わざわざ「中盤で使った細かいセルを渦巻き状に並べて、だんだん小さくしてます」ってわかるように渦巻きが途中で途切れてます。

 あとEDの3人の走りのアニメーションってもしかして原作者が作った?気のせいだったらすみません(笑)なんかそんな気がしました。 {/netabare}



 だがしかし!一つだけ!看過できない重大で根本的で致命的なミスがあります!{netabare}
 むしろそれを書きたいがためにあにこれに感想投稿したのです!

 正直、作品の全権を湯浅監督が握っている状態で十分な時間があれば、こんなミスを犯すはずはない。と、個人的には思います。NHK提供なのがなんらかの要因になったと邪推しますが、裏事情は知りません。
 そのミスとは。

『このアニメの制作者たちが、「映像研が作ったアニメ」を信用していない』

 ということです。すなわち、

『「映像研が作ったアニメ」をそのままの形でアニメの中に登場させなかった』

 これです。

 致命的です!

 「映像研が作ったアニメ」がこのアニメで一番こだわるポイントなのは誰の目にも明らかなのに!

 1作目の女子vs戦車は「ストーリーがない、シーンのつなぎ合わせで、全編白黒であり、さらに当日朝に書いたシーンは線画」のはずなんです(ほかにもいろいろ妥協した点があった)。アニメ内で描かれたあのアニメを映像研が作ったわけがないんです。50日ちょいの製作期間のうち最初の1か月で4カットしか出来ていないのに、残りの20数日でその5倍も10倍ものカットを書いたことになりますし、1作目では百目鬼氏はいないので音響は泥道を草鞋で歩いた音がコツコツ音なほどの残念レベルであるはずなんです。あの1作品目はどう見てもストーリーがあり、予告編的構成は一切ありません。ただの、プロが作っためちゃくちゃ面白いアニメーションです。

 なぜそうなったか。

 表面上の制作陣の言い訳は、「あの一連の予算委員会のシーンは、映像研の予告編アニメを見たあの場の視聴者たちが、頭に思い描いた『作られなかった完成版』のシーンなのです」だと思います。

 しかし本音は「『ストーリー上で映像研が作ったアニメ』をそのままアニメ内の時間を割いて放映すると、現実での視聴率や評価が下がる」ということです!

 この考えが2作目3作目にも引き継がれ、映像研が作ったアニメ全体のバランスを崩しています。
 映像研が作ったアニメは設定上、それを観たときに誰もが「面白い」と思わなくてはならない。しかし「原作で映像研によって作られたとされるアニメの設定」を忠実に守ると、それはアニメのプロから見て、視聴に堪えない駄作になってしまう。
 つまり「原作で映像研によって作られたとされるアニメ」はそのまま放映できない。1作目は色を付けないといけないし、2作目時点ではロボの戦闘シーンで絶対に高品質な音源を用いたいから、百目鬼は2作目より前で登場しなければならない。そうなると原作での2作目と3作目との差がなくなってしまうから、3作目には「ストーリーを重視した試行錯誤」という原作にはない要素を入れなくてはいけない。しかし設定上で30分程度になる3作目を1話分まるまる使って放映する勇気はないから、実際の放映ではセリフなしのダイジェスト版を流すにとどめよう。

 そりゃ誰が見ても3作目が一番の駄作になりますよ!ストーリーが分かるようにするだけで精一杯じゃないですか!むしろあの数分でよくあの難解なストーリーを表現できたな!いやギリギリできてないよ!

 実際のアニメにしたときに視聴に耐えうるか!?
 そこじゃない!!
 「いいかお前ら!これは、部活としての学校側の承認すら曖昧な高校生の小娘3人組が50幾日で作ったアニメもどきの処女作なのだ!」
 というメッセージを、シーンに込めて伝えることが重要なのだ!

 扉は開くのが仕事だろ!仕事しろ!オラァ!

 でもこれ湯浅監督がきづかなかったとは思えないんだけど……。なんかあったんじゃないかなあ。そういう意味で「魂を込めた妥協と諦めの結石」だと思いました。  {/netabare}

投稿 : 2020/06/13
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