「Fate/Apocrypha(TVアニメ動画)」

総合得点
71.1
感想・評価
541
棚に入れた
2468
ランキング
1373
★★★★☆ 3.5 (541)
物語
3.2
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.5

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ネタバレ

なばてあ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

王政復古にとどろくラ・ピュセル

原作未読。ただし以下、型月世界はFGO含めそれなりに嗜んでいるマスターのレビュー。

「Fate界隈」の「2クールもの」という条件は、『{netabare}Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-{/netabare}』を想起させる。かの作品と比較するといろいろ見えてくる気がするので、その線ですこし整理をしてみたい。

お話としては、かの作品よりは「よくまとまっている」と思う。各キャラクタごとの背景をきちんとストーリィ展開に沿ってつまびらかにしつつ、後悔や未練や希望をいちいち二重写しにすることで、目の前の光景に奥行きを与えている。「黒のアサシン」編がやや冗長で、それなのに演出は攻めたりていない気がしてもったいなさがつのるけれど、それ以外は良い意味で安定安心のクオリティ。

善悪の切り分けがどんどんスライドしていくスリリングな展開なのに、ちゃんと着地できているのも格好いい。それはストーリィテリングの基本や常識に忠実なおかげ。それがもたらす鑑賞時の滑らかな触感は、多分『{netabare}Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-{/netabare}』どころか『{netabare}Fate/stay night Heaven’s Feel{/netabare}』よりも上を行く。一般的なアニメ作品として見るならそれでレビュー終了なのだけれど、型月作品として見ると残念ながらここが瑕疵となる。つまりあまりにも滑らかすぎて物足りなさが残るのだ。

本作未見のヒトに向けてフォローするなら、ドラマが薄味ということはけっしてない。とりわけ黒のアーチャーやルーラーのエピソードはしっかり刺さる質量があって、充実感も得られる。けれども、きのこ御大の手になるそれと比べると、どうしても気持ちの傷跡が見せる断面がキレイすぎるといわざるを得ない。この点は、『{netabare}Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-{/netabare}』と比べたときに、どうしても弱く見える。

リアルタイム時に評判になったバトル作画は、さすがにすごかった。A-1っぽい爽やかな仕上がりで、ufotableのネチっこい厚みのあるそれとはまったくちがう。大多数の視聴者はufotableのわかりやすい超絶作画に軍配を上げるのだろうけれど、A-1の作画もちゃんと良質だし、見やすいし、劇場ではなくテレビで見るのなら、こっちのほうがむしろチューニングとしてはバッチリなのではないだろうか。

とはいえ『{netabare}Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-{/netabare}』と比べるとすれば、ちょっと位相が変わって見える。かの作品の制作会社CloverWorksは、本作の制作会社A-1を出自とする。それゆえ、当然、リミテッド感をブーストしてそれを活かす軽やかな作画という傾向は共通している。でも、かの作品はその傾向を起点としつつも、挑戦的にもほどがある画作りを試みていて、カット割りやカメラワークで生み出す外連味は、えげつない快楽を眼にねじ込んできた。

その経験と比べてしまうと、本作はどうしたって「A-1 Pictures作品のなかでもまあ良質なほう」という範疇に収まるクオリティ。評判になった赤のランサーの宝具展開シーンも、「ああ、おもしろいね」という画作り。画作りだけで、何度も繰り返し「・・・(唖然)」とさせられた『{netabare}Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-{/netabare}』の魅力を再認識させられたというのが、実際のところと言わざるを。まあわたしが高瀬さん贔屓にもほどがあるというだけなのかも。

CVについては、ルーラー役の坂本真綾さんの声がたくさん聞けて、鼓膜がうれしい悲鳴としか。あと赤のセイバー役の沢城みゆきさんもさすがの安定感。わたしは沢城さんのキャラクターのなかでは、赤のセイバーがいちばん好きかも。めちゃくちゃ合ってると思う。赤のセイバーはマスターもかっこ良すぎて、正直、もうすこしキャラクタを減らしてこの二人にスポットを当てた「外典」を見てみたいくらい。黒のライダーの大久保瑠美さんも好演。

総じて、お勧めできる力作であり佳作であるのは間違いない。最後の決着は、じつにスマートでロマンティック。ぶっ飛んだ「Fate界隈」がこんなにもエンターテイメントに軟着陸できるものなのかと、惚れ惚れしてしまう。ともかくルーラーかわいい。セカイ系といえばセカイ系で、セカイ系の定義にいちばんバチっとハマる作品は本作だと思う。「Fate界隈」では『{netabare}Fate/Zero{/netabare}』の次に、万人にお勧めできるのかも。

・・・でも、だからこそ、逆説的に型月ファンがたぶん物足りなく思うこともたしか。それを思うと、『{netabare}Fate/Zero{/netabare}』の特異性が際立つ。

最後に。ルーラーかわいい。

衝撃:★★★
独創:★★☆
洗練:★★★★
機微:★★★☆
余韻:★★★

投稿 : 2020/08/22
閲覧 : 260
サンキュー:

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