「秒速5センチメートル(アニメ映画)」

総合得点
87.0
感想・評価
3987
棚に入れた
18428
ランキング
171
★★★★☆ 3.9 (3987)
物語
3.9
作画
4.3
声優
3.5
音楽
4.1
キャラ
3.6

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

アニメ史に残るラストシーン

今までアニメでの、駅のシーンや、
電車すれ違いシーンの中で、最も印象に残っていたのは
映画『海が聞こえる』の吉祥寺駅での
ヒロインと再会を果たすシーンだったが、
それを越えた衝撃を受けた。

全編通して見ていると
『まぁ、居ないよな、居ないよ、居ないはず…』
と男性視聴者は思ったのではないだろうか。

あの印象的な、
時間をかけた電車のすれ違いシーンで、
主人公は焦りながらも、
今までの人生を文字通り振り返り、
視聴者の『でももしかしたら居るんじゃないか』という
淡い期待と同じ様な事を抱いていたに違いない。
※でなければ、電車が過ぎ去るまで待たなかっただろう。

だが

やはり

あの日に確かめ合った恋人はもう居ないのだ。

踏切は上がり、確かに二人の間の空を断ち切る・

そして、過去に捉われるのをやめ

断ち切った踏み切りの影から
明るい未来へ踏み出すカットで映画は終わる。

当時見終わった後
『うわーーーーーーーーーーー…だよなぁ…』
と脱力したのを覚えてる。
アニオタ界隈でも
『見ると一週間は鬱になる」
と言われる所以である。

もしかしたら女性の方には理解されない内容なのかもしれない。

男は本当都合のいい馬鹿な恋愛脳をしていて、
いつまでも元恋人は自分に気があると思い続けてしまうんだよなぁと
改めて身につまされるストーリー笑
※よく言われる、恋愛の上書きと個別保存の男性女性の違い

この3部作は本当に印象的で、実に人間らしい視点と、
構図が素晴らしく、物語の没入感が半端ではない。

それは意図的に、
主人公の年齢の身長に合わせた
アイレベルでのカットを多用しているからだ。
例えば
・誰も居ない学校の廊下
・駅の待合室に主人公が入り視線をストーブに向けるシーン
・帰りに買い食いしながら主人公を見つめるシーン
等々…上げればきりがない。
さらに夢なのか、現実なのか、
曖昧になるような幻想的な美しい描写を繰り返す。
このふり幅も視聴者を飽きさせない魅力の一つだ。

またシナリオも秀逸。
理解最優先の様な直接的なセリフや出来事を描くことを避け、
現実で起こりうる範囲内での、センスあふれる印象的なワード、
小さな奇跡を重ねていき、登場人物たちの物語を紡いでいく。
なぜ、第一章で手紙をお互いに渡しそびれたのか…
なぜ、あのロケットの話をお互いの唯一の共通の話題にしたのか…
なぜ…と静かな描き方で視聴者の感性を揺さぶってくる。

そして、これは結構話題になった演出だが
随所に、1つの背景等が2つに分かれてるカットが多い。
1つだけ、お教えすると、夕方の空が電線や、
ロケットの雲で分けられている。
これは明らかに章によって、登場人物の二人が
結ばれることは無い事を暗示しているのだ。
ぜひ、作品を楽しむ1つとして探してみてほしい。

男性は特に落ち込むこと間違いない映画だが、
良い振り切り方の作品ともいえるので
ぜひおすすめだ。

※物語評価が満点じゃないのは、原作ではもっと詳細が描かれている
未来へ向くことになったエピソードがあるのだが
出来ればそこも描いてほしかったが、この3部作ならば
致し方ないかなとも思い小しだけ減点。

※評価者へ手引きとして
よく、物語の結末が
・思い人と結ばれる
・勝利
・復活
等のみが、「ハッピーエンド」と思い込んでる方が
いるがそれは、貴方の主観という事を理解しよう。
つまり人それぞれで、評価基準に入れてしまうと、
感想の域にとどまってしまい、好き嫌いでしかない。

ハッピー=幸せとは別れや敗北の中にもあり。
登場人物の歩みの中にあるものである。
この作品で言えば、
淡い期待と思い人を、残酷に切り捨てられることで
未来への一歩を踏み出した、ともとれる様にラストは描かれている。
これは不幸なのだろうか?救いが無いのだろうか?
考えてみて欲しい。

投稿 : 2020/09/04
閲覧 : 329

秒速5センチメートルのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
秒速5センチメートルのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

ページの先頭へ