退会済のユーザー さんの感想・評価

4.5
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態：観終わった

発達段階測定装置

★
U-NEXT課金
冴えカノファン待望の完結編。1期2期必修。


劇場版らしいハイクオリティですが本シリーズはもともとTV版からしてかなりの高品質なのでそこまでの驚きはないです。ですが画面の統一感が改善したことで没入感はかなり向上しているのではないでしょうか。ステルスコメディの1期、ラブコメ半々の2期から満を持しての劇場版。微塵も奇をてらうことなくやるべきことを見事に全うしています。人気シリーズの締めとして期待されてる事を見事に真っ直ぐにやり切っていると思える作品です。作品のファンの方なら大満足の逸品でしょう。

三部作の構造は俺ガイルに近いなという印象です。痛快コメディの1期、半々の2期、ラブコメ一直線の3期。俺ガイルの3期は1期のコメディ成分を期待していた方にすればただ退屈なだけの駄作に映るでしょう。俺ガイル3期はまさにファン向け。完結作なので脇目も降らず主題に真っ直ぐにシリアス一辺倒。最後まで楽しめない方も一定数いたと思います。だからこそ最後まで満喫出来た選ばれし民にとっては至高の作品と成り得るのです。刺さる人にはブッ刺さるが、それ以外の多数には微妙。一部において熱狂的人気の尖った作品とはそういうものだと思います。

本シリーズは最初からメインと提示されている加藤以外のルートを期待する方もいないでしょう。本作ではテンプレツートップの役割も最終段階。テンプレをアピールする段階は既に終えてますので完全に脇役です。その代わりもう一つの軸、ご都合展開の強度が跳ね上がります。キャラに主張を代弁させる頻度も然り。1期では「これはテンプレと言ったら負けだな。話もなんかご都合臭い」のバランスでしたが今作は「ご都合と言ったら負け」です。妄想全開フルスロットルです。このバランスの転換がホントにお見事だと思います。比重を変えながらも1期からやりたいことが一貫している作風はなかなかお目にかかれない。ほんとに素晴らしい。絶賛に値すると思っています。

ご都合というのは倫也が加藤とくっつくことではないですよ。この世界ではそこは世界の理なのですから。創作関連の描写のことです。まあ妄想の具現化ストーリーなのでご都合もクソもないんですけどね。本作ではスケープゴートを無くしヴェールを脱いだ本来の姿、オタクの妄想を一切隠さない全開剛速球ストレートが惜しげもなく披露されます。

まさに「ぼく(オタク)のかんがえたさいきょうのラブコメ」です。






で、「加藤恵は俺の嫁ッッ」と宣言できたのか？結果は…またも自分の器の小ささを思い知らされました。倫也があまりにもクズ過ぎです。カノカリの和也なんか比較にならない程のクズ。和也はクズというかただのダメ人間で数々の失態は故意ではないし他人を傷つける意思はないのでまだ許容できます。ですが倫也は唯我独尊我儘放題オレ様野郎。未熟という言い訳では許されない傲慢さ。そしてこんな我儘なボクでも許してねというところが果てしなくキモイ。オタクの外見してるだけのただのチンピラです。趣味がキモイのは全然いいんですよ。そこらへんはシナリオ作成時でも提言されてた様に「どうだ俺キモイだろう」と胸を張って生きるのは全然カッコいいし素直に憧れます。でもこのチンピラに憧れるオタク感がマジでキモイ。まあオタクとチンピラって真逆の様に見えて同質ですからね。そういう意味では説得力はあるんですよ。そこがよく描けてるからこそキモイ。だから良く出来てるとは思います。

いや課金して観ましたし「加藤恵は俺の嫁ｷﾘｯ」って言いたかったんですよ。自分にもキャラ萌えという概念を理解できるかもってワクワクしながら観始めたんですよ。進めるうちに脳内にムクムクと様々なツッコミが生まれ始めたんですよね。「いやいや俺はこの作品を楽しむと決めて観てるんだから邪魔するんじゃねーよ」と邪念を払いのけその後も沸き起こる横槍を度々退けながら最後の最後までなんとか見届けました。



内容ははっきり言って中学生の考えたサムイ妄想です。
でも、だからこそ、人によっては美しい物語に映るのでしょう。
心の清い方は楽しめるのかもしれません。
きっと私は汚れきってしまったのかも。
何も知らないあの頃には戻れないのです。

でもね、戻るわけにもいかないのですよ。




あまりに真っ直ぐすぎるこの作品と対峙した時
自分が何者かを知れる可能性があるのではないか。
そういう意味では凄い作品だと思います。

現実逃避目的ならば至高。作品の品質も極上。
観る価値はあるとは思います。